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報告書&レポート

2006年11月2日 シドニー事務所 久保田博志、永井正博 e-mail:kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp masahiro-nagai@jogmec.net
2006年84号

深海底鉱物資源開発最前線-Nautilus社 vs Neptune社-

 「世界で最初」の開発を目的とした鉱区をパプアニューギニア沖とニュージーランド沖にそれぞれ取得し、深海底鉱物資源探査を開始したNautilus社とNeptune社。これまで金属鉱物資源を海底から商業ベースで採掘した例は殆んど皆無であり、両社が実際に生産開始までたどりつくか否かは、深海底鉱物資源開発が現実性のあるものかを見極める上で世界中から注目されている。
 本稿では、Nautilus社とNeptune社による深海底鉱物資源開発の動向を報告する。

1. はじめに

 Nautilus Minerals Inc.(本社バンクーバー、以下Nautilus社)は、2006年現在までにパプアニューギニア沖Bismark海Solwara地区における海底鉱物資源探査によって、高品位の金・銀・銅・亜鉛鉱化を把握し、採掘に向けてサルベージ船会社との契約も進み、2009年までに深海底からの生産を開始したいとしている。一方、Neptune Minerals plc社(本社ロンドン、以下Neptune社)は、2005年にニュージーランド沖Kermadec諸島に沿ったWhite Islandの北西海域で海底火山の熱水噴火口を精査し、塊状硫化鉱床のコアサンプルを採取し、さらに資源量の把握のめの探査を計画しているなど、両社ともオーストラリア周辺諸国の近海で活発な海底鉱物資源探鉱活動を展開している。
 

2. 企業概要

(1) Nautilus社
 1997年にパプアニューギニア沖で鉱区を取得して世界中を驚かせたNautilus社であったが、2004年12月のPlacer Dome Oceania Ltd.(産金大手企業Placer Dome 社(本社カナダ)の子会社)がNautilus社とのJV参入でプロジェクトは急速に現実味を帯びてきていた(JVの内容は、Placer社は2006年4月までに探査費7百万US$を支出し、金品位3.0g/t以上の鉱床の権益40%を取得する。ベースメタルはNautilus社が100%権益を保持するというもの)。
 Nautilus社は、2006年5月にはトロント証券取引所に資本金25百万C$(2.00 C$/株)にて上場。JV相手のPlacer Dome 社がBarrick Gold社に買収された後、2006年9月には、Barrick Gold社からパプアニューギニア沖(Solwara地区)のPlacer Dome社分の権益をNautilus社株式と交換する形で取得し、同プロジェクトの権益100%を保有した。Barrick Gold社は、Nautilus社の株式9.59%を保有する筆頭株主となり、Placer Dome社を通じたかたちで12.2百万US$を同プロジェクトに支出。なお、現在の現金残高は20百万C$以上となっている。
(2) Neptune社
 1999年にDr. Simon McDonald氏によって設立、2005年10月にロンドン証券取引所に資本金14.3百万英£で上場。資本金とは別に、投資顧問会社を通じて運転資金として9.3百万英£をワラント債の発行により機関投資家などから市場調達している。この運転資金は、2006年6月末段階で、ニュージーランド沖での調査(Kermadec 2005)に2.92百万英£(全体の30%)、上場費用(投資会社への支払い)に1.0百万英£(10%)、その他費用に0.8万英£(10%)を支出しており、現在の現金残高は5.2百万英£(50%)となっている。
 Neptune社投資顧問会社は、同社を「海底1,800mの金属鉱床の採掘を計画する会社としてシティ(ロンドンの金融街)の関心を集めている」と評価するコメントを発表している。
 

3. 経営陣 -金属鉱物と石油天然ガス・ビジネス経験者から構成される経営陣-

 財務担当役員を除いて、両社とも役員の多くは地質・探鉱・エンジニアリングをバックグラウンドに持つ技術志向の企業と言える。会長職には、Nautilus社がLihir金鉱山(パプアニューギニア)の発見に関係したNiugini Mining Ltd.の元社長、Neptune社がDelta Gold 社の創設者で元社長と両社ともに金ビジネスで成功した人物が就任している。
 社長には、Nautilus社が資源企業戦略に長け国際的な海洋技術団体のメンバーを、Neptune社は石油・金属鉱床探査で多くの経験を有し同社の創設者でもある人物を置いている。
 また、執行役員(Chief Operating Officer)には、Nautilus社が元BHP Billitonのベースメタル探鉱マネージャーを、Neptune社がオーストラリア石油天然ガス大手のWoodside Petroleum Ltd.やAmoco社での石油天然ガス・ビジネス経験者を置いている。
 財務担当役員には、Nautilus社が石炭・石油企業で財務担当経験者を、Neptune社が投資会社等でファイナンス等を手がけたそれぞれ財務・金融のスペシャリストをあてている。
 このように、両社は、金属鉱物資源と石油天然ガス資源の双方の探鉱・開発の経験者で経営陣を構成している。深海底における金属鉱物資源の商業開発はこれまで例がなく、一方、石油天然ガスのオフショア(海洋上)での開発の歴史は長く、前者の開発には後者のノウハウが必要であると考えればこのような役員構成となるのも必然と言えよう。
 

4. 企業戦略 -集中か分散か-

(1) Nautilus社 
 Nautilus社は、フィジー沖やトンガ沖でも鉱区を申請するなどその他海域も視野に入れつつも、現在は、パプアニューギニア沖Solwara鉱区の探鉱に集中している。同社は、これまでの探査で既に同鉱区での鉱床の存在を把握し、資源量獲得の段階に入っているため、集中的な投資によってパプアニューギニア沖での深海底鉱物資源開発を実現させようとの意向が感じられる。
 採掘に向けてサルベージ船会社とコントラクト・マイニング(請負採掘)の契約交渉も進み、採掘方法、採掘専用船の建造や設備等もかなり具体化されている。
(2) Neptune社
 Neptune社は、ニュージーランド沖の探査と鉱床評価に重点をおくとはしながらも、日本からバヌアツにかけての島弧など全世界的に経済性のある深海底熱水鉱床を探すとしている。同社がパプアニューギニア沖海域、バヌアツ沖海域、マリアナ諸島海域、イタリア沖海域などでも鉱区の申請を行っているのはその戦略の現れといえよう。同社は、ニュージーランド沖での調査(Kermadec 05)で海底熱水活動による鉱化を捕捉しているが、資源量の獲得・確定はこれからの調査にかかっている(2006年には「Kermadec 06」、2007年も継続調査を計画)。
 同社は、初期段階の探鉱・鉱床評価は自社100%で実施し、ある程度探査が進んだ段階でJVパートナーを探すとの方針を示している。
 両社を比較すると、探鉱ステージではNautilus社が一歩Neptune社をリードしている印象である。また。開発に関しても、Neptune社は採掘方法に海底石油掘削技術を転用した採掘イメージを持ってはいるものの、サルベージ船会社と専用採掘船の建造も含めて話の進んでいるNautilus社ほどは具体化されていない。

5. プロジェクトの状況

(1) Nautilus社
  1997年にパプアニューギニア沖に世界で初めて深海底鉱物資源探査鉱区を取得して以来、現在は、同海域を中心に7鉱区(申請中を含む)17,000km2を保有する。
  探鉱の中心は、Bismarck海のSolwara1~4地区であり、同社は、9月26日、Solwara4地区の探査で高品位の金・銀・銅・亜鉛鉱化(閃亜鉛鉱に富む噴気チムニーが幅150m、延長250mにわたり分布)を捕捉したと発表。同地区採取した28個サンプルの平均品位は、Au 13.5g/t、Zn 23.2%、Cu 11.3%、Ag 263g/tであった。また、この調査においてSolwara1地区で新たに採取した7サンプルの平均品位はAu 13.1g/t、Cu 16%で、既に同鉱区で採取した88サンプルを加えた平均品位は、Au 15.5g/t、Cu 10.8%であった。Solwara2、3地区で採取した68サンプルの平均品位はAu 10.3g/t、Zn 22.1%であった。
  Nautilus社は、2009年までに金15.6t/年・銅16万t/年を深海底から生産する計画で、10月4日には、Solwara鉱区の開発にあたり、世界第2位のサルベージ会社Jan De Nul社(ベルギー)と提携を発表している。提携内容は「Jan De Nul社は、自社負担(100百万US$)により専用採掘船を建造し、コントラクト・マイニング(請負採掘)を行う(75米US$/t)。Nautilus社は、遠隔操作海底採鉱機、鉱石を船上まで引上げるポンプとパイプ(1,800m)等を開発(120百万US$)、Jan De Nul社に売却して生産開始後は同社から売上の6.5%を得る。」などとなっている。
  Nautilus社は、環境ベースライン調査を実施中。また、開発許認可を得るための環境影響調査を行うコンサルタントを選定中である。
(2) Neptune社
  Neptune社は、1999年にニュージーランド沖で最初の鉱区33,000km2取得した後、2006年1月と3月に新たに2鉱区を取得して、現在、ニュージーランド沖に60,000 km2以上の鉱区を所有している。同社は、ニュージーランド政府及び国際的な深海底調査機関と連携をとって調査に必要なデータへのアクセスやアドバイスを受けている。
  最初の調査航海「Kermadec 05」を2005年に実施、高品位金-銅-亜鉛鉱化を捕捉している。この調査において、測線70kmに及ぶ精密海底地形測量、遠隔操作車両(ROV:Remote Operated Vehicle)を用いるなどした29個のサンプル採取と23孔のボーリング調査を実施している。サンプルの平均品位は11.2g/t Au, 8.1% Cu, 5% Zn, 0.5% Pb, 122g/t Agであった。その他に生物分布図、生物サンプルの採取も実施している。
  2006年12月には、2回目の調査航海「Kermadec 06」、更に2007年下半期にはニュージーランド沖でのバルクサンプルとボーリング調査を内容とする「Kermadec 07」を計画している。
  現在はそのための船舶、機材の選定作業・手続きを実施中。

6. おわりに

  深海底鉱物資源の商業採掘を目指すNautilus社とNeptune社は隣接海域でそれぞれ調査を実施している。これまで金属鉱物資源を海底から商業ベースで採掘した例は殆んどなく、両社が実際に生産を開始までたどりつくためには、海底での鉱石の採掘方法、海底からの鉱石の引き上げ方法や海洋生物等への環境への影響などの技術的な課題のほかに、排他的経済水域内での採掘行為に関する管轄国の鉱業法規制・採掘権取得への対応(法規制そのものが海洋鉱物資源開発を前提としておらず未整備という問題も含めて)など最先端を走るものが切り開かなければならない課題もある。

参考文献
Nautilus社Webサイト
Nautilus社プレスリリース 2006年10月4日、2006年9月26日
Nautilus社プレゼンテーションDVD
Netutune社Webサイト
Netutune社アニュアルレポート 2006年版
Netutune社上場目論見書
Nautilus社プレゼンテーション資料 2006年8月

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