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報告書&レポート

2006年11月9日 金属資源開発調査企画グループ調査チーム 神谷夏実 e-mail:kamiya-natsumi@jogmec.go.jp
2006年88号

国際ニッケル研究会(2006年秋:定期会合)概要報告

 2006年9月28日~10月6日の間、リスボンに於いて国際非鉄金属研究会(銅、ニッケル、鉛亜鉛)の各定期会合、ニッケル及び鉛亜鉛研究会については総会が開催された。
 以下、本稿では10月2日~4日にリスボンの国際非鉄金属研究会本部で開催された国際ニッケル研究会第16回総会の概要について報告する。今回の会合は、国際ニッケル研究会加盟16か国、オブザーバー1か国、EU本部、その他民間団体関係者、合計51名が参加して開催された。3日間の会合は、統計委員会、鉱山製錬所プロジェクト委員会、経済環境委員会、産業アドバイザリーパネル、常任委員会に分けて開催された。以下に、主要な報告、討議内容について報告する。なお、次回会合は、2007年5月10-11日にリスボンにて開催される予定となった。

1. インダストリー・アドバイザリー・パネル(IAP)

 産業界より、ステンレス鋼スクラップ市場、日本のニッケル需給統計、ニッケル資源開発の中長期的展望について報告が行われた。
 
(1) 世界のステンレス鋼スクラップ市場について
 ELG Haniel社(ドイツ)のPawlitzki氏から、世界のステンレス鋼スクラップ市場に関する講演が行われた。ステンレス鋼スクラップ発生量は2006年(推定)は7.47百万tで、地域的には、対前年比で欧州(+7.7%)、中国(+16.2%)で増加幅が大きく、その他の地域では減少傾向にあるとみられる。スクラップ中のニッケルは638千tと推定されている。スクラップ消費量と回収量の差をスクラップ埋蔵量(Scrap Reserve)と定義すると、スクラップ埋蔵量は年々増加しており、将来的なスクラップ回収ポテンシャルの増加になりえるものである。価格高騰の影響で今後もスクラップの利用の増加が続き、生産量の増加に伴いスクラップ埋蔵量も大きく増加していくみられる。
 
(2) 日本のニッケル需給及び統計
 住友金属鉱山㈱大山正紀氏から、日本のニッケル需給統計について報告が行われた。見掛け消費量は、輸入+出荷によって算出されるもので、2005年は輸入(75kt)+出荷(114.8kt)=189.8ktであった。また実消費量は、期初在庫+生産+輸入-輸出-期末在庫によって算出されるもので、2005年は、期初在庫(30.5kt)+生産(165.4kt)+輸入(75.0kt) -輸出(59.7kt)-期末在庫(39.0kt)=172.8ktであった。輸入ニッケルくず(オフカットニッケル)について、2002年までスクラップとして輸入されていたが、見かけ消費と実消費のギャップの原因となっていたので、現在はこのカテゴリーは廃止し、未加工ニッケルとして扱っている。
 
(3)ニッケルの中長期的展望
 ニッケルコンサルタントのPeter Cransfield氏から、中長期的なニッケル需給に影響を与える要因について講演が行われた。
 1960年からの世界のニッケル消費は、年率平均3%で増加してきた。2005年の消費は1.25百万tで、アジアが47%を占めている。2000年から2005年では中国の消費が25.2%と大きく伸びたのに対し、先進国ではほぼ横ばいであった。需要分野は、ステンレス鋼が62%、非鉄金属合金15%、電池4%である。資源としては、硫化鉱埋蔵量が25%、ラテライト鉱埋蔵量が75%で、今後ラテライト鉱の重要性が増す。最近増えているラテライト型鉱開発はリードタイムが長いことが課題である。ニッケル業界の特徴は比較的寡占化が進んでいることである。また歴史的に、新規のプロジェクトの立上がりは、高需要、価格高騰の後にやって来ることが多い。また、ニッケル開発プロジェクトは資本集約型、プロセスが複雑という特徴がある。
 最近の開発案件の例では、開発決定/開始から生産開始まで8-9年かかっている。たとえば、Voisey’s Bayプロジェクト(カナダ)では、Incoによる買収(1996年)→生産開始(2005年)、Raventhorpプロジェクト(豪州)では、BHPによる買収(1999)→(計画見直し) →生産開始予定(2007年)、Goroプロジェクト(ニューカレドニア)では、建設開始(2000)→生産開始予定(2008)等がある。
 

2. 環境経済委員会

 環境経済委員会では、今後の事務局の活動、ニッケルリサイクル、リサイクル率、ニッケルを取り巻く環境規制の動向等について討議が行われた。リサイクル率に関しては、今後他の非鉄研究会と産業団体が協力してリサイクル率の統計作成に関して協力することが合意された。また事務局より、情報が整備されているステンレス鋼の生産状況からリサイクルに関する情報収集をスタートさせること、作業は国際ステンレス鋼協会(ISSF)と共同で行うことが提案された
 この他環境経済委員会では、蓄電池協会及び欧州ニッケル協会から講演が行われた。
 
(1) 蓄電池のリサイクル、EUの環境規制等について
 蓄電池協会(RECHARGE)のJ-P Wiaux氏から、蓄電池のリサイクル、EUの環境規制等について講演が行われた。EUでは蓄電池のリサイクルを促進するために新電池指令(2006/66/EC)の導入を計画中で、リサイクル促進のための製品設計、使用済み電池の回収システムの確立、有害物質使用制限に関する規則を含んでいる。小型充電池の回収目標として、施行後6年で25%、10年で45%、リサイクル率の目標値として、自動車バッテリーで65%、ニッカド電池で75%、小型バッテリーで50%(いずれも重量比)を目指す。またカドミウムの含有量0.002%を上回る小型電池を除いて、カドミウムの使用制限に関する規則はないとのこと。
 
(2) 化学物質規制とニッケル
 欧州ニッケル協会(ENIA)のHugo Waeterschoot氏から、化学物質規制とニッケルについて、ニッケルのリスク評価(2002~2007)、グローバル調和システム(Global Harmonised System:GHS)、EUの新化学物質規制REACH、「国際化学物質戦略的アプローチ(SAICM)の動向についての講演が行われた。ニッケルのリスク評価については、最終段階のRisk Characterisationが2006年12月終了予定で、2007年に結論が出される予定である。REACHについては、現在欧州議会での審議が続いており、2007年4月から施行される計画となっている。業界は、科学的根拠、事実にデータに基づく評価が行われるよう、引き続き監視、支援を行う。
 

3. 統計委員会

 本委員会では、最近のニッケル需給動向についての議論が行われ、事務局から需給統計、2006-2007年の予測が発表された。また、ニッケルを取り巻く諸事情についての発表が行われた。
 
(1) ニッケル需給統計

  ⅰ (概況)
 2005年の後半以降、高ニッケル含有ステンレススチールの生産は世界的に減産傾向となっている。このため、2005年の後半における一次ニッケル、ニッケルスクラップの消費が減少している。2006年に入りステンレススチールの生産は回復し記録的なレベルを維持しており、初生ニッケルの消費も増加した。

ⅱ ニッケル需給(2005、2006、2007)
  世界のニッケル鉱山生産は、実績が1.32百万t(2004)、1.30百万t(2005年)で、今後1.45百万t(2006年)、1.56百万t(2007年)と増加する見込みである。世界全体での伸びは、2005/2006が5.4%増、2006/2007が7.6%増である。
 世界のニッケル地金生産は、実績が1.26百万t(2004)、1.29百万t(2005年)で、今後1.35百万t(2006年)、1.45百万t(2007年)と増加する見込みである。世界全体での伸びは、2005/2006が4.5%増、2006/2007が7.8%増であるが、中国は、2005/2006が27.6%増、2006/2007が20.0%増と引き続き大きく伸びると予測している。これに対してニッケル地金の消費は、実績が1.25百万t(2004)、1.24百万t(2005年)で、今後1.37百万t(2006年)、1.45百万t(2007年)と増加する見込みである。世界全体での伸びは、2005/2006が10.4%増、2006/2007が5.8%増であるが、中国は、2005/2006が21.1%増、2006/2007が23.9%増と引き続き大きく伸びると予測している。以上の需給統計から、需給バランスは、2006年は22千tの不足、2007年は2千tの過剰と予測する。
 2007年の需給においても、中国におけるニッケル及びニッケル製品の消費の増加が鍵となる。特に中国では、2005年度末からのフェロニッケル/銑鉄のような新製品の登場が特筆される。

(2) ニッケル資源開発、需給に関する講演
 この他統計委員会では、ニッケル硫化鉱およびラテライト鉱の開発について、ステンレス鋼の需給、中国のニッケル需給についての講演が行われた。

  ⅰ ニッケル需給と資源開発について
 CRUのニッケル専門家Vanessa Davidson氏から、ニッケル需給と資源開発についての講演が行われた。ニッケルの消費は4.3%で今後も伸びるが、現在高止まりの価格は、今後は、過去と同様なサイクリカルな動きをたどると予測。供給面では、硫化鉱開発に関し、開発速度の加速と品位低下、新規プロジェクトにおける小規模化の問題を指摘した。このため安定な供給を図るためには埋蔵量が豊富なラテライト型鉱床の開発を促進する必要があり、そのために湿式生産技術(HPAL技術等)の開発が鍵となる。2009年頃には、ラテライト型鉱床からの供給量が硫化鉱型鉱床からの供給量を上回る可能性がある。今後の需給について、今後5年間程度は供給と需要はほぼバランスするとみているが、新規湿式プロジェクトの立ち上げに問題があれば供給不足となる恐れがある。

ⅱ ステンレス鋼生産、消費に関する最新の動向
 国際ステンレス鋼協会(ISSF)のPeter Kaumanns氏から、ステンレス鋼生産、消費に関する最新の動向についてのプレゼンテーションが行われた。2004年から2006年の世界全体のステンレス鋼の消費は4~6%と増加傾向にあり、特に中国での消費の伸びが2004年の10%から2006年の17%と大きくなっている。2006年から2008年では、中国の消費の増加は17%から12%に減速するとみられ、世界全体でも増加率は6%から4%に減少するとみられる。

ⅲ 中国のニッケル需給に関する調査
 国際ニッケル研究会事務局統計官S.F.Tollin氏から、中国のニッケル需給に関する調査(2006年8-9月実施)の報告が行われた。探査に関しては、中央政府の支援によりニッケル鉱床の探査が進められている。中国のニッケル埋蔵量はまだ限られているものの今後新鉱床発見の可能性はある。2006年1-7月の鉱山生産は前年14%増の40千t、1-9月の地金生産は57千tであった。消費では、2005年が195千tで、日本を抜き世界最大となった。2006年の消費はさらに伸び240千tとなった。消費の55%がステンレス鋼向け、2006年には世界最大のステンレス鋼の生産国となった。2006年のステンレス鋼の生産能力は4.31百万tと推定される。ステンレス鋼の生産者は、国有企業、外資とのJV企業、民間/ミニミルがあり、国有企業、外資とのJV企業は増えつつあるが、民間/ミニミルの状況は情報不足で不明。2010年にはステンレス鋼の生産能力は10百万tを超えるとみられる。スクラップの回収処理は予想より進んでいる。新しい情報として、ニッケル価格高騰により(主にフィリピン産)ラテライト鉱からのFeNi/銑鉄(FeNi/Pig Iron、ニッケル含有量2-4%)の生産が行われ、主にステンレス鋼の民間企業、ミニミルによって消費されている。情報面では、安泰科(Antaike)、CNIA等の機関の活動もあり、以前より情報収集しやすい状況となっている。結論として、中国のニッケル消費は今後も中期的に継続して伸びるとともに、ニッケル価格高騰によりFeNi/銑鉄のような新しい中間品が生産されていることが特徴である。

 

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