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報告書&レポート

2006年11月24日 金属資源開発調査企画グループ調査チーム 神谷夏実 e-mail:kamiya-natsumi@jogmec.go.jp
2006年93号

国際鉛亜鉛研究会2006年第51回会合 概要報告

 2006年9月28日~10月6日の間、リスボンに於いて国際非鉄金属研究会(銅、ニッケル、鉛亜鉛)の各定期会合、ニッケル及び鉛亜鉛研究会については総会が開催された。今次一連の会合は上記3研究会事務局統合及びリスボン移転後、2006年5月の会合に引き続き2度目となり、前回同様、3研究会が約1週間に亘って連続して開催された。
 以下、本稿では10月2日~4日に開催された国際鉛亜鉛研究会の概要について報告する。今回の会合は、加盟24か国、オブザーバー5か国、EU本部、民間6団体、合計142名が参加して開催された。3日間の会合は、統計委員会、鉱山製錬所プロジェクト委員会、経済環境委員会、産業アドバイザリーパネル、常任委員会に分けて開催された。以下に、主な討議、講義内容について報告する。

1. 統計委員会

(1) 2006年、2007年の鉛、亜鉛需給の見通しは下記のとおりである。
<鉛>
 世界の鉛の鉱山生産は、2006年は1.3%増の3.38百万t、2007年は8.8% 増の3.68百万tとなる。オーストラリアの鉱山生産は、2006年は-10.9%の663千tと落ちこんだ後、2007年は13.1%増の750千tに回復する見込みである。
 世界の鉛地金の生産は、中国での2006年の14.8%増の2.68百万t、2007年の4.5%増の2.80百万tという増産に支えられ、2006年、2007年とそれぞれ6.1%増の8.03百万t、3%増の8.27百万tと増加すると見られる。
 2006年における世界の鉛地金消費は3.3%増の8.03百万t、2007年はさらに2.6%増の8.21百万tと見込まれる。米国での消費は、2006年は5.7%増の1.65百万tであるが、2007年は3%減の1.60百万tとなり、また欧州では、鉛バッテリーの輸入増による需要の減少から、2006年は1.9%減の1.98百万t、2007年は横ばいとみられる。中国では、鉛バッテリーの生産増加により2006年には2.11百万t、2007年は2.32百万tと、ともに10%以上の増加が見込まれる。
 様々な貿易データを考慮すると2006年の中国からの鉛地金の輸出は580千tと見られる。しかし、中国政府が輸出増値税を廃止したことと国内需要の増加を考慮すると、2007年の中国からの輸出は減少すると見られる。
 以上の需給関係に基づいて検討すると、2006年、2007年の西側世界の鉛地金の供給は需要をわずかに上回るものとみられる。供給過剰量は、2006年は32千t、2007年は55千tとみられる。
<亜鉛>
 2006年における亜鉛の鉱山生産は、前年2.1%増の10.36百万t、2007年は同7.3%増の11.12百万tまで増加するとみられる。生産増となる国は中国、オーストラリア、ボリビア、ペルー、カナダ、カザフスタン、ポルトガル等である。2006年の世界の亜鉛地金生産は前年4.3%増で10.64百万t、2007年は同4.9%増の11.17百万tと予測されるが、特に中国の2006年の生産は前年10%増の3.05百万t、2007年は同9.5%増の3.34百万tと大きく伸びるとみられる。2006年における世界の亜鉛地金消費は3.9%増の11.06百万t、2007年はさらに2.6%増の11.35百万tと見込まれる。中国の消費は、2006年は前年4.7%増の3.18百万t、2007年は同6.9%増の3.40百万tとみられ、おおよそ世界の需要の30%を占める。米国の需要は2005年に大きく落ちこんだが、2006年には7%増の1.08百万t、2007年は横ばいの見込みである。欧州でも、鉛需要は2006年は3.4%増の2.78百万t、2007年は横ばいの見込みである。
 
(2) 最近の亜鉛鉱山開発動向として、Euro Zinc Mining社(カナダ、以下Euro社)のJoao Carrelo氏から、ポルトガルでのNeves Corvo銅亜鉛鉱山の開発についての講演が行われた。ポルトガルでは1993年にAljustrel鉱山が閉山して以来、亜鉛の鉱山生産が途絶えていた。Euro社は、Neves Corvo銅亜鉛鉱山の操業を行うとともに、Aljustrel鉱山の再開発を計画している。両鉱山ともポルトガル南部に位置し、Ivernia Pyrite帯の塊状硫化鉱床である。Neves Corvo銅亜鉛鉱山は、2005年にEuro社がSomincor社から買収、現在、銅を90千tのベースで生産をしており、亜鉛も2006年7月から25千tで生産を開始した。Aljustrel鉱山は現在のところ生産休止中であるが、2007年後半の生産再開を目指しており、2008年以降、亜鉛45千t、鉛18千t、銀120万ozの生産を行う予定 (生産量はいずれも、金属純分、年産)。なおEuro社は2006年中にLunding Mining社(カナダ)と合併し、中堅の鉱業企業となる見込みである。
 

2. 鉱山製錬所プロジェクト委員会

 最近の鉛亜鉛資源開発に関し、2006年に鉛亜鉛研究会に加盟したペルーの生産状況、グリーンランドの鉛亜鉛鉱床再開発の現状について講演が行われた。
(1) ペルーにおける鉛亜鉛産業の現状及び将来予測
 ペルー代表団のJavier Mendez氏によって、ペルーの鉛亜鉛生産動向についての講演が行われた。ペルーは世界有数の鉛亜鉛生産国で、鉛については世界第4位、南米最大の生産国、亜鉛については世界第3位、南米最大の生産国である。その他世界最大の銀生産国であるほか、銅、錫、金の生産量も多い。2005年の生産量は、鉛319千t、亜鉛1,202千t。鉛亜鉛は鉱産物輸出金額の14%を占めている。鉱山生産に対し税安定化契約も実施、カノン税による鉱山収益の地元還元等の政策もあり、投資環境も整備されている。
(2) グリーンランドの亜鉛鉱山ポテンシャル
 Angus & Ross社のAndrew Zemek社長より、グリーンランドBlack Angel鉱山再開発について講演が行われた。同鉱山は1973年から1990年にCominco/Boliden社によって開発されたが、Angus & Ross社が再開発に向けて探鉱実施中。亜鉛12%、鉛4%と高品位であり、欧州、北米の中間に位置し、南米等の鉛亜鉛鉱床とも十分競争できる位置にある。スカルン鉱床の残柱を対象に採掘を行う計画で、投資総額は残柱のみ対象の場合40百万$、残柱+新規鉱床開発で50百万$の予定。2006年は試すい6,000~7,000mを実施する。

3. 経済環境委員会

 経済環境委員会では、鉛亜鉛の環境と調和した利用についての取組みについて議論した。特に、EUが進めるリスク評価、新化学物質規制(REACH)について現状が報告され、今後も業界団体を中心にEUに対し適切な情報を提供していくことが合意された。講演内容としては、鉛亜鉛の市場に関するもの、環境規制に関するものがあったが、以下に、EUにおける鉛亜鉛を中心にした環境規制の動向について述べる。
 
(1) 亜鉛及び鉛のリスク評価(Risk Assessment for Zinc and for Lead)
 欧州亜鉛協会(IZA)のRaymond Sempels氏より鉛亜鉛のリスク評価の動向について講演が行われた。亜鉛のリスク評価の最終段階において、報告担当国(Raporteur)の結論に対し業界として意義を申立て、追加調査が行われた。この結果、結論は変わらなかったが、科学的な見解に基づく提案が取入れられた。議論の対象は、地域影響におけるPNEC(無影響濃度予測値)についてであり、使用中の亜鉛による拡散汚染源による影響はないとされたものの、工場等単独汚染源による影響はモニタリングの対象となるとされた。業界として懸念は残るものの一定の成果と考える。業界の懸念は、水質フレームワーク指令(Water Framework Directive)において第2優先リストへの追加の可能性である。以上の結果は、REACHに取込まれるが、REACHは、2006年12月のEU議会での採択、2007年4月の発効に向けて、EU環境委員会、EU閣僚会議での審議が行われている。
(2) 鉛の自主的リスク評価
 国際鉛開発協会(LDA International)のDavid Wilson氏より、鉛の自主的リスク評価について講演が行われた。EUが進めているリスク評価作業において、鉛等の金属の環境毒性が大きく扱われていることから、業界として自主的なリスク評価の実施とデータ提供を行っている。現在、スウェーデンとデンマークが無毒性量(NOAEL)の見直しを検討しており、これらの国では、環境分野では、Algaeの試験追加、水生動物・土壌の再テスト、健康分野ではCMR(発がん性、突然変異性、生殖毒性)のリスクカテゴリーのグレードアップを行おうとしている。これに対して業界は自主的にリスク評価の客観的な情報提供を行ってきたが、議論がまとまらず、結論は今後の第2ラウンドに持ち越されることとなった。2006年6月にプロセスの見直しが決まり、EUの委員会(EU新規及び既存物質技術委員会:TCNES、EU健康環境リスク科学委員会:SCHER)を巻き込んだプロセスを採用することとなった。新しいプロセスでは、まずTCNESへの報告と合意を得ながら作業を進め、環境分野は2007年3月、健康分野は2007年6月までに報告書をまとめることとなっている。まずTCNESで審議を行い、コンセンサスが得られない場合、SCHERにて審議することとなっている。
(3) EUの新化学物質規制(REACH)の現状(European Union’s New Chemicals Policy REACH)
 欧州金属協会(Eurometaux)のLena Perenius氏より、EUの新化学物質規制(REACH)の現状について講演が行われた。REACHの審議スケジュールは、2006年10月環境委員会議決、11月14日閣僚会議議決、12月4日EU議会議決、2007年4月発効の予定である。REACHの内容は、まだ満足するべくものではないが、業界からの要望は取入れられ、いくつかのポジティブな結果を引き出している。Eurometauは今後も、環境委員会(ENVI)が作成する企業向け技術ガイダンスの作成にあたり、適切な情報提供を行っていく。現在の金属業界として関心のある課題は以下のとおりである。

  鉱石、精鉱、廃棄物が登録(Registration)対象外となった点は、業界として評価できるが、依然として認可(Authorisation)対象であり、この点について今後もEU当局に除外するよう働きかける。
  二次原料(Secondary Raw-Material)は廃棄物でないとして、REACH対象品目となっているが、リサイクル推進の立場から、二次原料も廃棄物と同様に登録対象から除外するよう当局に働きかける。
  2008年4月から10年を目処に登録作業が行われるが、取扱い量1,000t以上の業者は3年以内、100t以上は5年以内と早期に登録が必要であることに留意が必要。
  スウェーデンが推し進める特定危険物質(SVHC:Substances of Very High Concern)に対する代替原則概念(スウェーデンモデル)の適用は、川下の中小業者等にしわ寄せを起こす懸念がある。

(4) 鉛・カドミウムに関するUNECE作業部会及び鉛の移動に関するUNEPレビュー
 (UNECE Working Group on Lead and Cadmium and the UNEP Review of Global Lead Transport)
 国際鉛開発協会(LDA International)のDavid Wilson氏より、国連機関における鉛の使用規制について講演が行われた。国連欧州経済委員会(UNECE)における環境規制に対する動向として、重金属プロトコル(Heavy Metal Protocol)の見直し、鉛・カドミウム移動グローバル評価、化学物質安全性のための政府間協議(IFCS)が行われている。

  ・重金属プ ロトコル(Heavy Metal Protocol)の見直し
 本プロトコルは1998年採択、2003年より施行されたもので、鉛、カドミウム、水銀を対象としており、施行後にこれら金属の排出が削減できたかどうかを再検討する。このために2007年4月より重金属タスクフォースを立上げる。
・鉛・カドミウム移動グローバル評価
 大気、海洋、河川における重金属の移動を評価するもので、2006年9月にジュネーブで検討会議が開かれた。
・化学物質安全性のための政府間協議(IFCS)
 1994年にWHO、UNEP、ILO主体で開始されたもので、2006年9月ブダペストにて、「重金属規制にさらなるグローバルアクションが必要か」について討議した。水銀その他の重金属についての国際的取組みの必要性について2007年にUNEP総会で決定される。

(5) 天然資源の持続的利用及び廃棄物抑制に関するEUの基本戦略
 EU環境局のAlberto Canevali氏より、EUの天然資源利用及び廃棄物抑制の基本戦略について講演が行われた。EUの基本的な環境規制には、欧州総合的汚染防止管理(IPPC)、新化学物質規制(REACH)、包括的製品政策(IPP)等があるが、リサイクル社会への移行を目的とした資源の有効利用、廃棄物対策の見直しが始まろうとしている。基本戦略は、資源使用と経済発展の分離(Decoupling)及びそれに必要なナレッジベースの構築であり、長期計画(25年)によりライフサイクルアプローチを採用する。このために、基本的データ収集を行うために、データセンターの設立(2006年中)、欧州統計機構(EuroStat)の拡充、データ提供(2008年)を目指す。
(6) Green Leadプロジェクトに関する最新情報
 国際鉛協会(LDA International)のDavid Willson氏から、Green Leadプロジェクトの概要について講演が行われた。本プロジェクトは、鉛の環境調和的かつ安全な開発利用促進を目的としており、手始めに、使用済み鉛バッテリーの自主的第三者認証制度の構築を行う。2004年から、ICMM、国連環境計画(UNEP)、鉛生産業者と協力してパイロットスキーム(Green Lead Protocol)を検討してきた。協力団体は、この他に国際鉛協会、WWF、国連環境計画、バーゼル条約事務局、国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)等がある。2006年1月からは、パイロットプログラムとして、中米、カリビアン地域における使用済み鉛バッテリーの調査を開始し、具体的な指針を得る。
関連サイト:http://www.greenlead.com
 

4. 産業アドバイザリーパネル

 価格高騰が亜鉛、鉛需給にどのような影響を与えるかが議題となり、業界関係者によるパネルディスカッション、講演が行われた。また、JOGMECからは、日本の鉛亜鉛供給事情とJOGMECの役割についての講演を行った。価格高騰による鉛亜鉛需給への影響として、亜鉛めっき鋼の需給への影響について講演が行われた。また、AIMMAP社のA.Brandao氏より、亜鉛価格の高騰が亜鉛めっき鋼の需要に及ぼす影響について講演が行われた。価格高騰の影響を把握するために、亜鉛めっき鋼約11,000t(めっき亜鉛使用量は約680t)を生産する場合のコスト比較が紹介された。原料の亜鉛価格は、2005年の1.22€から2006年の2.8€に2.3倍の値上がりしたことを前提として試算を行った結果、製造コストが同じであっても、亜鉛めっき鋼価格は1.74倍になった。亜鉛めっき鋼製品価格に占める亜鉛原料価格の割合は、2005年が53%、2006年が70%であった。これは、亜鉛価格が10%上昇した場合、製品価格が5.15%上昇することを意味している。また、亜鉛めっき鋼の用途を見た場合、一部用途で価格上昇による代替が起きる可能性がある。特に建築部材、重機械用途では、塗装製品に対するめっき鋼の価格が90%レベルまで上がっているので、今以上に亜鉛価格が上がると代替の可能性が懸念される。これに対して道路用ガードレール等の公共分野での需要では、亜鉛めっき鋼の使用が仕様によって定められており、この分野での代替の懸念は当面少ないとみられる。

5. 常任委員会
  常任委員会では2007年度の役員改選等の議題、各国のナショナルステートメントの発表等が行われたが、2007年の開催行事として、国際鉛亜鉛研究会、ナミビア鉱業会議所(Namibian Chamber of Mines)、Common Fund for Commoditiesの共催による南部アフリカ国際鉱業投資セミナーの開催が合意された。開催時期は2007年5月か6月頃を予定する。このセミナーでは、南部アフリカへの鉱業等投資促進、産業界と政府の透明性のあるパートナーシップの構築等を目的とする。
  また、国際鉛亜鉛研究会の2007年の会合として、5月に常任委員会、経済環境委員会、産業アドバイザリーパネルを開催し、同10月1日から始まる週に年次会合を開催することが合意された。なお、2007年5月には、今年と同様に、3研究会の会合がリスボンにて連続して行われる予定である。実際の日程は、国際ニッケル研究会が2007年5月10,11日、国際鉛亜鉛研究会が同5月14日、国際銅研究会が同5月15,16日の予定である。
*その後セミナーは、ナミビアのWindhoekにおいて、2007年6月3-7日に開催されることが発表されている。

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