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報告書&レポート

2006年12月14日 サンティアゴ事務所 中山 健e-mail:nakayama-ken@entelchile.net
2006年101号

アタカマ高地の大規模銅鉱山-チリ・Collahuasi鉱山の概況-

 Collahuasi鉱山鉱山は、チリ第I州Iquique市の南南東約150kmのボリビア国境近く(国境まで15km)に位置し、アタカマ砂漠東端、標高4,500-5,000m、年間降水量数mmの乾燥地帯という厳しい自然環境の中に立地する。1998年から操業を開始し、2005年には456千tの銅を生産し、Escondida、Chuquicamata(いずれもチリ)、Grasberg(インドネシア)に次いで世界第4位の生産量を誇っている。今回鉱山調査のチャンスを得たので同鉱山の概況について紹介する。

1. 鉱床発見から開発に至る経緯

 Collahuasi地域の鉱業活動は15世紀のインカ時代にまで遡る。本格的な採掘は1880年から始まり、地表近くに発達する銅・銀鉱脈鉱床を採掘したが、1930年の世界大恐慌で生産を中止した。1970年代にAnacondaがQuebrada Blanca(現在のQuebrada Blanca鉱山)でポーフィリータイプの鉱化作用を発見、1970年代後半になってSuperior OilとFalconbridgeによって初めてその広がりが確認された。その後1979年にRosario鉱床が発見され、続いて1991年にUjina鉱床が発見された。1995年9月に最終的なF/SがMinorco( 1999年Anglo Americanが買収)およびFalconbridgeにより承認され、1996年8月には日本企業連合が参画し開発が決定された。権益はXstrata(旧Falconbridge):44%、Anglo American:44%、日本企業連合:12%(三井物産:6.9%、日鉱金属:3.6%、三井金属:1.5%)。1998年9月からUjina鉱床対を象として建設工事を開始、1998年7月から本格操業を開始した(1998年はSX-EWカソード:44.7千t、硫化精鉱3.4千t)。その後2004年にUjina鉱床からRosario鉱床に採掘対象を移転し現在に至っている。1999年以降、2003年の382千t/年を除けば、400千t/年台の生産を維持している(図1)。
 

2. 鉱床タイプとその特徴

 Collahuasi地域は、チリ最大のポーフィリー銅鉱床ベルトであるEocene-Oligocene ベルトに属し、Ujina、Rosario、HuinquintipaおよびQuebrada Blanca鉱床がクラスターをなす(図2)。ポーフィリー銅鉱床形成期にはインカ造山運動により急激な上昇と削剥が生じ、ポーフィリー銅鉱床に更にLa GrandeやPodrosaといった浅熱水性銅・金鉱床が重複している。このため浅部で銅品位が高くなっていることが本鉱床の特徴と言える。Rosario鉱床では、銅のうち30-40%が浅熱水性環境で形成されたものであるといわれている(Mastereman et al., 2005)。Huinquintipa 鉱床はRosario鉱床から溶解した銅イオンが古河川の砂礫層のなかで沈殿した酸化銅からなるエキゾチック鉱床である。Ujina鉱床は酸化銅および高品位二次富化帯が発達するのに対して、Rosario鉱床は初生硫化鉱帯が広くかつ品位が高い。またRosario鉱床はモリブデンの品位が高い(180-200ppm)という特徴を持つ。

図1. Collahuasi鉱山の銅生産量推移

 

3. 鉱石埋蔵量

 鉱石埋蔵鉱量(Falconbridge HP)
 確定:245.3百万t、銅品位1.1%
 推定:1,560百万t、銅品位0.86%
 鉱物資源量(Falconbridge HP)
 精測:48.7百万t、銅品位:1.1%
 概測:429.7百万t、銅品位:0.65%
 予測:1,820百万t、銅品位:0.75%
 鉱床別鉱物資源量
 (Masterman et al., 2005)
 Rosario鉱床:資源量1,094百万t、銅品位1.03%
 Ujina鉱床:資源量741百万t、銅品位0.81%

図2. Collahuasi鉱山周辺地質図(Masterman et al., 2005を修正)

4. 鉱山操業概要

(1) Ujina鉱床からRosario鉱床への移転
 2003年まではUjina鉱床およびHuinquintipa鉱床から生産されていたが、2004年にUjina鉱床の採掘を中止し(一部採掘)、Rosario鉱床に生産主体を移転した(写真1)。Ujina鉱床は操業開始当時、銅品位は2%近くあったが、2003年には1.4%に低下した。そのまま操業を継続しても、2004年以降は0.9%以下に低下し、生産量も2001年の453,000tの約1/2の230,000tまで下がることが予想された。450,000t体制を維持するため、2004年に採掘対象をUjina鉱床からRosario鉱床に移転した。移転のための経費は654百万US$と見込まれたが、結果的にペソ安にも恵まれ、見込みより21百万US$少ない633百万US$で完了した。2001年に環境影響評価が承認され、Ujinaの既存選鉱プラントに新たな磨鉱(第3系列)工程の増設、Rosarioオープンピットサイトの一次破砕設備の新設およびRosarioからUjina選鉱プラントまで延長15kmのベルトコンベアー、鉱山用水施設、電力設備、新規道路造成、修理工場、事務所等が新設された。

写真1. Rosario オープンピット(Falconbridge Annual Report 2005より)

(2) 操業状況
 現在Rosario鉱床(硫化鉱)およびHuinquintipa鉱床(酸化鉱)から生産しているが、一部Ujina鉱床からも生産している。
 Rosario鉱床の生産量は130,000t/日、銅品位1.0%、モリブデン品位180-200ppm、砒素含有量は0-350ppm、

  ・採掘:
 オープンピットは現在東西1.5km、南北1.2km、深さ255m(最下底の標高4,285m)。12時間2方操業、1日当たり処理量:500,000t。ズリ:鉱石比=4:1、0.45-0.65%の低品位鉱石は貯鉱されている。ショベル:7台(453HR73yd3 ×1,Bucyrus495BI56yd3×6)、ダンプトラック:46台(Komatsu830E240t×38台, Komatsu 930E360t×2台, CAT793C240t×2台, CAT797B360t×4台)、ペイローダー:3台、窄孔機:5台。

・選鉱:
 鉱石は一次破砕後、ベルトコンベアーで15km離れたUjinaオープンピットに隣接する選鉱プラントに運搬。磨工程は3系統。第1系統および第2系統は、SAGミル(2機、35’×15’)ーボールミル(2機、22’×36’)、第3系統はSAGミル(1機、40’×22’、世界最大)ーボールミル(2機、26’×38’)。浮遊選鉱は、ラファー、スカベンジャー、クリーン工程からなり、90のセルを有する。選鉱実収率:84-86%、精鉱品位銅:30%,モリブデン:0.48%。銅・モリブデン精鉱生産量は4,500t/日、山元から160km離れた鉱石積出港であるPatacheにパイプ流送される。2005年11月からPatache港のモリブデン分離プラントが操業を開始。モリブデン生産能力:7,000t/年、精鉱中のモリブデン品位:55%。精鉱は、陸路サンティアゴ郊外のモリブデンカスタムスメルターであるMolymet社に出荷される。

・SX-EW:
 鉱石は主にHuinquintapaの酸化鉱、1日当たり処理量は18,000t 粉砕、アグロメレーション後、520m×78m、高さ7m(1レベル)にパイリング、リーチング期間:210日、年間65,000tのカソード生産能力を有する。

・キャッシュコスト:
 2005年のキャッシュコストは68.7¢/lb(Purcell,2006)。

5. 周辺鉱床探査と増産計画

 既述のように、当地域の鉱床はクラスターをなし、ポーフィリー鉱床に浅熱水性鉱床がオーバープリントするという特徴を持つ。現在鉱山周辺で探鉱が進められており、既知のLa Grande鉱脈およびPodrosa鉱脈(写真2)の深部で、浅熱水性鉱床起源の二次富化鉱床を捕捉している(Rosario Oeste鉱床)。2006年4月時点で資源量250百万t、銅品位1.51%と言われており、将来Rosarioオープンピットを拡張して採掘されることになる。またこの二次富化鉱床の深部にもポーフィリー鉱床の存在が期待されており、今後の探査によってCollahuasi鉱山の資源量は大幅に増加することが期待される。
 Rosario Oeste鉱床の開発とは別に2008年までに現在の粗鉱処理量130,000t/日から150,000t/日への増産も計画されている(BNA,2006.4.25)。

写真2. Rosario オープンピットとLa Grande Cu-Ag-Au脈(右の矢印付近)およびPoderosa Cu-Ag脈(左の矢印付近)。両鉱脈の深部で二次富化帯を捕捉している(Rosario West鉱床)。


6. 鉱山用水問題

 鉱山周辺は写真2および3に示すような乾燥砂漠地帯で、鉱山用水確保が大きな課題となっている。現在鉱山では近隣のCoposa(写真3)およびMichincha塩湖から採水をしているが、鉱山用水取水により塩湖の水位が低下し、塩湖周辺に生息する生物の生態系に影響があるとして2006年3月チリ第I州環境当局から取水制限命令を受けた。選鉱用水使用量は390,000m3/日で、このうち再利用水を除く85,000m3/日を塩湖から揚水している。鉱山内各所の”Agua Fresco”と書かれた貯水タンクが印象的である。将来の増産計画に合わせた鉱山用水の確保が課題であり、現在鉱山では周辺での地下水脈の探査を鋭意進めている。


おわりに

 Collahuasi鉱山は1998年に操業を開始した大規模鉱山である。操業開始以来、電気供給停止、SAGミルモーターの故障など予期せぬアクシデントに見舞われたり、鉱山用水問題を抱えているが、450千t体制を維持して操業を続けてきている。鉱山を取巻く自然環境は厳しいものの、イキケから山元まで約200km間は完全舗装されており、車で2時間30分~3時間で至る。高山地帯であるが、周辺は塩湖の発達するような開けた平坦地で山岳地とは異なり運搬・移動は容易である。当地域一体はポーフィリー銅鉱床クラスターを形成しており、またポーフィリー鉱床に浅熱水性鉱床がオーバープリントするという特徴を持ち、鉱床賦存ポテンシャルは高い。最近の鉱山周辺探鉱でも新たな鉱床(Rosario Oeste)を捕捉しており、更に大型鉱山に発展する可能性を秘めている。

主な参考資料
Masterman, G. J., Cooke, D. R., Berry, R. F., Walshe, J. L., Lee A. W. and Clark(2005)
   Fluid chemistry, structural setting, and emplacement history of the Rosario
   Cu-Mo porphyry and Cu-Ag-Au epithermal veins, Collahuasi district, northern
   Chile. Economic Geology, Vol.100, Pp.835-862.
Purcell, F. (2006) Expomin 2006 講演資料.
Business News Americas 2006.4.25.

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