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報告書&レポート

2007年1月18日 金属資源開発調査企画グループ企画チーム 安達直隆 e-mail:adachi-naotaka@jogmec.go.jp
2007年05号

2006年中国国際鉱業大会(China Mining 2006)概要報告

 2006年中国国際鉱業大会が2006年11月14日~16日に「鉱業の促進と調和した発展」をテーマに北京国際会議場で開催された。本大会は中国政府の主催で1999年以降毎年開催され、本年は第8回会合にあたり、中国内、世界の20か国以上の国及び国際機関から過去最高の2500人の鉱業関係者が参加した。
 講演は、各セッションに別れて行われ、約80名の講師が講演を行った。筆者は数少ない日本人として大会に参加するとともに日本からの唯一の講師として「鉱物資源分野におけるJOGMECの取組み」と題して講演を行った。
 また、会期全日程にわたり205団体・企業によるブース展示が行われた。
 本報告では、アジア最大級の金属資源関係の鉱業大会である本会合についてその概要を報告する。

中国国際鉱業大会講演会場


1. 鉱業大会の概要


 中国国際鉱業大会は、貴金属、ベースメタル、レアアース等非鉄金属の他、石炭、鉄鉱石等の鉱物資源を対象とした、中国と諸外国鉱業界の最も重要な情報交流の場であり1999年に第一回会合が開催された後毎年開催され今次第8回を迎えた。大会参加者は、中国内外の鉱業関係政府機関、鉱山会社幹部、探鉱関係者、鉱業関係アナリスト、金融業界、コンサルタント、鉱山機器メーカー等であり、近年の中国の鉱業投資環境の改善、鉱物資源生産・消費急増を受けて参加者数も増加し、2006年は、昨年の参加者数約1,600人に対し、約2,500人に急増した。
 大会の主催団体は国土資源部で、後援を中国鉱業連合会、世界銀行グループ、カナダ探鉱開発鉱業者協会、カナダ鉱業協会、在中国のカナダ大使館・豪州大使館が行った。開会に当たっては、中国政府を代表して、曽培炎国務院副総理、国土資源部の孫文盛部長が開催スピーチを行ったほか、後援団体代表として、カナダ天然資源省のLunn大臣、世界銀行グループ 石油・天然ガス・鉱業・化学部門局長のKaldany氏等がそれぞれ挨拶を行った。
 2005年会合では、主催者側代表として国土資源部長が開会スピーチを行い、後援機関も中国駐在の代表者が挨拶を行っていたが、今回は国務院副総理や訪中したカナダ天然資源大臣が挨拶をする等関係者の大会への意気込みが感じられた。
 今回の大会は、中国鉱業政策の現状及び見通し、鉱業投資動向と金属市場の見通し、鉱業経営のリスク管理、鉱山企業等の事業展開、持続可能な開発と環境問題、中国の鉱業関連環境問題、探査・採鉱・選鉱・製錬、輸送関連技術動向等について講演セッションが設けられ、併せて資源国鉱業大臣フォーラム、非鉄企業CEOフォーラム等が開かれ総計81名(内海外講師が約6割を占める)が講演を行った。また、205件の展示ブースの内、海外の団体・企業が7割を占め、にぎやかなブース展示となった。
 

2. 鉱業大会で示された中国の鉱業政策の方向性


 曾培炎中国国務院副総理は、本大会の開会スピーチの中で(1) 鉱業分野の更なる連携強化をつうじた投資促進による資源の安定供給確保、(2) 需給構造改善による金属関連市場の安定化と鉱業収益の合理的な配分、(3) 環境保護に配慮した鉱山開発の持続的発展の推進の三点を図るべきと指摘し、中国政府・企業は世界の鉱業界と連携し、資源需給の安定化と資源貿易の健全な発展を促進したいと語った。
 また、国土資源部孫文盛部長は、本大会の目的を(1) 中国政府の鉱業分野における改革開放方針の表明、(2) 他の資源国との協力関係強化、(3) 鉱業投資環境改善のための措置の現況、(4) 外国企業による中国での鉱業投融資促進に必要な情報提供にあるとした。
 更に、国土資源部汪民副部長は、本大会は中国内外の鉱業関係者の対話・情報交換の場であるとし、国土資源部の基本方針として、(1) 中国企業と政府機関の協力の下、国内の鉱物資源生産を増やすために策定した地質調査への取り組みの拡充(2006年1月策定)や新たな技術開発への取り組み強化、(2) 持続可能な鉱山開発を図るための環境対策対応等規則の見直し(2005年8月)への対応、(3) 技術力のある外国鉱山企業と中国企業とのJVプロジェクトの設立促進、(4) 外国投資を指向する中国企業による探鉱開発プロジェクト形成促進を挙げた。また、中国は、今後5年間で世界の鉱業界で戦略的な連携を強化し、世界の鉱業及び金属市場の牽引役になっていきたいと語った。
 中国の最近の鉱業政策では、第10次5カ年計画(2001年~2005年)において、資源開発における鉱山生産能力や製錬能力を管理することを明記した。更に、現在の第11次5カ年計画(2006年~2010年)では、「資源節約型・環境配慮型社会の実現を目指す」としている。
 具体的な政策としては、(1) 外国企業による中国国内における探査・開発を奨励するため国内の投資環境の更なる改善、(2) 中国企業の海外探鉱開発への取り組み奨励、(3) タングステン、アンチモン、レアアースなど中国の強い鉱物資源については、輸出構造を改善し、輸出品の付加価値を高め、国内外の鉱産物貿易の健全な発展を促進、(4) 採掘、選鉱、製錬による環境汚染を低減するためクリーンな技術による生産を推進、(5) 低品位鉱物資源の活用、リサイクル資源の利用、省エネルギー・省資源の推進を挙げている。
 今回の大会での、中国政府関係者の鉱業政策の基本的方向性に関する講演は、上記の従前の鉱業政策の踏襲を表明したものと考えられる。
 

3. 中国国内の鉱物資源探鉱開発の状況


 大会講演において、リオチント社、アングロ・アメリカン社、テック・コミンコ社等の欧米非鉄メジャー鉱山会社や、エルドラド社、ムンドロ社、スコーピオン社等豪州、カナダのジュニア鉱山会社からの講師により、中国の鉱物資源ポテンシャルの高さや、各社の中国及びアジアでの探鉱開発戦略の他、現在進行中の探鉱開発プロジェクトの紹介があった。ジュニア鉱山会社では、中国での金探鉱への取り組みが多く紹介された。
 中国での探鉱予算支出額は、2002年の15社7.8百万$から、2006年には75社216百万$に急成長している(図1参照)。西側企業による探鉱投資は、十年前に中国政府が鉱業部門の外国投資開放に踏み切るまで不活発であったが、近年ではジュニア鉱山会社と中国企業の探鉱活動が主体となり活発化している。また、リオチント社等の非鉄メジャー企業も、探鉱案件のモニタリングや近隣国も含めたプロジェクト発掘を行うために、中国内に支社を立ち上げ、探鉱開発に取り組みはじめている。

出展:Metals Economics Group

 
中国での探鉱開発のための鉱物資源法は、1996年に実質的な改訂が行われた。この時点の最も重要な改訂は国内企業・地方地質局と外国の鉱業企業との共同企業体(J/V)を形成することが可能となった点である。中国政府は、中国企業が外資とJ/Vを組むことを奨励しており、特に、中国西部の探鉱開発に対しては外資導入により積極的である。その一方で、技術的に開発が容易な鉱床については国内企業のみでの対応を求めている。
 外国企業の探鉱案件進出事例では、コンチネンタルミネラルズ社(カナダ)が、同社が権益100%を保有するチベットの銅・金鉱床の最終段階の探鉱とF/Sに15.8百万$の探鉱を計画している。2006年初時点の確定鉱量は106百万t(Cu:0.49%、Au:0.73g/t)とのことである。
 年産30万ozと中国内最大の産金鉱山会社である紫金鉱業集団公司では2005年の9百万$から、2006年は10百万$の既存金鉱床の周辺探鉱に、4.5百万$の最終段階の探鉱を含む14.5百万$を計画している。
 サウスウェスタンリソーシイズ社(カナダ)は雲南省の金鉱床探査に、2005年の6.5百万$に対して2006年は10.6百万$を同社と雲南省企業とのJ/Vで支出し、2006年中にF/Sを終えたいとしている。当該プロジェクトは、今次鉱業大会において、2006年に最も成果を挙げた探鉱プロジェクトとして、探査・探鉱賞を受賞している。
 

4. 中国の資源外交・鉱業分野の海外展開


 本大会の資源国鉱業大臣フォーラムにおいて、カナダ天然資源省Gary Lunn大臣は、カナダ政府は、探鉱開発・環境問題対応等の技術分野において中国との鉱物資源分野の一層の連携強化を図りたいとした上で、中国での外資による探鉱開発活発化のためには投資環境の整備維持が不可欠とした。また、南アフリカ鉱物資源エネルギー省Buyelwa Sonjica大臣の他、モンゴル・エネルギー鉱山石油省、ミャンマー・天然資源環境省の大臣等が講演を行い、各国における鉱業の重要性と、中国政府・企業による鉱業分野における協力の現状について言及するとともに、今後の中国政府・企業による鉱業分野への投資・参入を期待するとの発表を行い、中国の資源外交活発化による資源国との関係強化の進展をうかがい知ることができた。
 他のセッションでは、中国企業や相手国関係者から、中国・五鉱集団公司のチリ国営銅公社との提携(2005年5月チリ国営銅公社と提携しチリでの銅資源開発プロジェクトに参入。5.5億$で合弁会社を設立。最終的な、投資規模は20億$の見込み)、キューバのニッケル鉱山等への投資(2005年9月、現地法人を設立し、6億$を投じてニッケル鉱山、製錬所、発電所建設への投資)の他、中冶集団鉱業開発有限公司によるパキスタンでのドゥダール鉛・亜鉛鉱山開発(投資総額約7千万$、2007年末に亜鉛5万t、鉛2万t生産予定)、有色建設集団公司によるザンビア・チャンビシ鉱山操業(98年に権益85%を取得)等中国企業の海外展開について紹介された。
 また、大会会期を通じて、海外の政府・企業の展示ブースでは、中国企業関係者等が多数訪れ熱心に質問していた。ブース関係者によれば、中国側の関心は南北米、豪州の海外開発プロジェクト、特にカナダ、メキシコ、米国、豪州への投資プロジェクト発掘への関心が高いとの印象であったとのこと。また、ここ4年間続けて大会に参加している豪州の当局者は、2005年よりもいっそう多くの人が大会に参加しており、ブースを訪れる中国企業関係者は豪州への鉱業投資について極めて高い関心を示していると語っていた。
 中国政府の積極的な資源外交展開と、中国企業の海外資源探鉱開発進出のための体質強化も進み、海外進出意欲も旺盛であることから、中国企業の海外での鉱物資源獲得は、今後、益々活発化するものと考えられる。
 
 
5. 所感

 中国国際鉱業大会2006では、(1) 中国の鉱業関係組織の計画経済時代からのシフトがここ数年間で大きく進展し、かつては、政府機関として非鉄金属資源の探鉱開発、鉱山操業、貿易を横割り分業していた状況が変化し、探鉱開発、金属鉱産物の輸出入、海外鉱業投資まで一貫して行なう西側基準の鉱山会社化していること、(2) 中国の鉱物資源ポテンシャルの高さに注目する欧米・豪・加のジュニア・メジャーの非鉄金属各社が、ブース出展、講演を通じて積極的に大会に参加し、中国国内での金・ベースメタル鉱床探査、中国企業への技術供与、J/V探鉱開発投資が活発化していること、(3) 近年、国家主席、首相クラスを中心に積極的に展開している中国の資源外交の進捗効果として、豪・加の鉱業先進国との連携強化が図られているほか、カナダ、南ア、ミャンマー、モンゴルの鉱業大臣等が鉱業大会で講演を行い中国との資源分野の協力関係を強調しているのが印象的であった。
 中国は、主要な資源生産国であるとともに、ここ十数年で世界有数の非鉄金属大消費国に台頭(2005年の鉄、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、錫、アルミ、プラチナの消費量は世界1位)しており、中国の、非鉄金属の需給動向、鉱業政策、資源戦略について注視していく上で、中国国際鉱業大会は今後もモニタリングが必要な重要イベントと考えられた。

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