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報告書&レポート

2007年2月8日 シドニー事務所 久保田博志、永井正博 e-mail:kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp masahiro-nagai@jogmec.net
2007年12号

オーストラリアの2005/2006年度鉱物資源産業の実態-オーストラリア鉱業協会(MCA)の「Minerals Industry Survey Report 2006」の概要-

 オーストラリア鉱業協会(MCA ; Minerals Council of Australia)は、大手会計事務所PricewaterhouseCoopersと共同で、12月13日、2006年の鉱物資源産業界の財務状況などからなる調査報告書「Minerals Industry Survey Report 2006」を発表した。
 本稿は、「Minerals Industry Survey Report 2006」の概要を紹介する。


1. はじめに


 調査報告書「Minerals Industry Survey Report 2006」は、オーストラリア経済における鉱業界の役割を議論するための材料を提供する目的で作成されているもので、オーストラリア国内のダイヤモンド・ボーキサイト・粗鉛・鉛地金・銀・ウラン・ルチル・人工ルチル生産量の全て、鉄鉱石・ニッケル・アルミナ・精錬銅・ニッケル地金・亜鉛の約95%、銀・鉛・ジルコンの約90%をカバーする*企業**の財務データ等をもとに経営実態を解析している。なお、今回の報告書は、オーストラリアにおいて国際会計基準(Australian equivalents to the International Financial Report)が導入されて最初の会計年度報告書***のデータをもとに作成されている。
 *  石油・ガス及び製鉄・鉄鉱及び除く
 ** 大手企業から探査企業までを含む
 *** 2006年6月末時点でのデータを使用

図-1 鉱山生産指数の推移
図-2 製錬生産指数

 

2. 生産と輸出


 生産では、MCAの鉱山生産指数(石炭、鉄鉱石、金の生産)が対前年度7%増加、製錬生産指数(アルミナ、アルミニウム、ベースメタルの生産)が同3%増加した。
 鉱石生産では、鉄鉱石がRio Tinto社のDampier港プロジェクトやBHP Billiton社のRapid Growth 3プロジェクト(共に西オーストラリア州)などの生産施設・インフラストラクチャ拡張工事の効果から対前年17%増加、石炭がXstrata社のNewlands Northern鉱山坑内採掘(クィーンズランド州)などにより同3%増加、銅が同4%、亜鉛が同3%、鉛が同5%増加となった。金はBarrick Gold社(カナダ資本)の新規開発のCowal鉱山(ニューサウスウェルズ州)、Newcrest社のTelfer鉱山(西オーストラリア州)のフル操業開始などにより同6%増加、ウランは需要の伸びから同2%増加した。
 地金生産は、精錬銅が対前年度9%減少、精錬鉛が横ばい、鉛ブリオンが同14%増加、ニッケルが同5%、銀が同1%増加となった。
 輸出では、鉱産物輸出額が堅調な需要の伸びを示し、特に中国とインドの需要が大きく貢献して対前年度32%増加の91,800百万A$に達した。*
 鉱種別では、銅鉱石が対前年度99%増加、亜鉛鉱石及び精鉱が81%増加、原料炭が58%増加、鉄鉱石が57%増加となった。2006/2007年の輸出額も対前年度18%増加の108,100百万A$に達すると見込まれている。
 * ABARE Australian Commodities, September Quarter 2006




3. 財務状況


(1) バランスシート
 2005/2006年度の鉱山業界の総資産(Total assets)は対前年度16%増加の143,544百万A$に達し、営業資産(Operating current assets)は24%増加の20,391百万A$、負債比率(Debt to debt plus equity ratio)*は17%減少して0.19であった。
 * Debt to debt plus equity ratio = Debt / (Debt + equity)
 
(2) 収入・利益
 2005/2006年度の鉱山業界の総収入(Total revenue)は対前年度31%増加の59,206百万A$に達し、売上げは鉱山部門で33%増加し、製錬部門では25%の増加となった。
 純利益(Net profit)は、対前年度74%増加の11,771百万A$で、1977/1978年度以来の最高水準に達した。株主資本利益率(Net profit return on average shareholder’s funds)*は2004/2005年度の15.3%から24.1%に上昇、これも1977/78年度以来の最高で過去10年間の平均14.7%を大きく上回っている。総資産利益率(Net profit return on average assets employed)**は2004/2005年度の5.8%から8.8%に上昇、1977/1978年度以来の最高で過去10年間の平均5.1%を上回っている。
 *  Net profit return on average shareholder’s funds
    = Net profit / average shareholder’s funds at the beginning and end of the period
 ** Net profit return on average assets employed
    = Net profit / average assets employed at the beginning and end of the period
 
(3) キャッシュ・フロー
 2005/2006年度の鉱山業界の営業活動によるキャッシュ・フロー(Net cash provided by operating activities)は対前年度55%増加の18,610百万A$、投資活動によるキャッシュ・フロー(Net cash used in investing activities)は同29%増加の10,122百万A$、財務活動によるキャッシュ・フロー(Net cash provided by financing activities)は同74%増加の6,352百万A$、期末現金残高は40%増加の3,330百万A$となった。
 
(4) 費用
 総費用(Total Expense)は、対前年度16%上昇して43,101百万A$となった。そのうち、労働コストは同13%増加の5,995百万A$、政府所有の鉄道・港湾の利用コストは同11%増加の1,199百万A$、生産・操業コストは同12%増加の25,404百万A$、減価償却費は9%増加の4,596百万A$、金利コストは同23%増加の3,057百万A$となった。

図-3 財務指標の推移




4. 税コスト


 直接的な税である州・準州政府へのロイヤルティ支払が、対前年度49%増加の2,145百万A$、連邦政府への収入税(Income Tax)が同248%増加の4,334百万A$に及んでいる。
 他方、間接的な税である給与税(Payroll Tax)、フリンジベネフィット税(Fringe Benefit Tax)*、燃料税(Fuel Excise)、土地税その他税が7%増加の553百万A$であった。
 * 金銭以外の雇用者への便益供与に対して雇用主に係る税

図-4 鉱業関係諸税の推移

5.労働力

 総雇用者数*は対前年度19%増加の82,588人(直接雇用**は同19%増加の61,354人)、総労働コストは同14%増加の5,996百万A$であった。労働者一人当たりのコストは対前年度1%増加で、その内訳は実質賃金が3%増加、給与税納付が13%増加、フリンジベネフィット税が26%増加、雇用者保険などその他コストが30%減少となっている。
 * 探査、採鉱部門の労働者でフルタイム労働者の代替となるコントラクター(請負者)などを含む
 ** コントラクターは除く

図-5 直接雇用者数と労働コストの推移

6.投資・探鉱

 
鉱業投資は、対前年度29%増加の10,122百万A$で、総負債/資本比率*は19%減少して1977/1978年度以降最低水準となっている。
 探鉱投資は、堅調であったが、ボーリング総延長は目立って増加していない。2005/2006年度の民間による探鉱支出は対前年度20%増加の1,240百万A$、その内、37%が新規鉱床探鉱、63%が既知鉱床周辺探鉱に費やされた。鉱種別探鉱費は、ウランが対前年度63%増加、亜鉛・鉛・銀が同55%増加、銅が同49%増加、ニッケルが同9%などと非鉄金属の探鉱費の伸びが顕著であった。なお、民間によるボーリングの総延長は6,837kmであった。
 * Borrowings /(borrowings + shareholder’s fund)

図-6 鉱山・製錬所への資本投資の推移

7.環境修復費用

 2005/2006年の環境修復費用は対前年度41%減少の164百万A$であったが、2006/2007年度は12%増加して184百万A$となる見込み。将来の環境修復費用に充てることのできる金額を示す環境修復費用の累積収支は13%増加の3,467百万A$となった。

図-7 環境修復費用・累積収支の推移

8. まとめ

 
近年のオーストラリアは、鉱物資源の生産量、輸出額、鉱山会社の財務数値・各指標、鉱業投資、探鉱投資いずれも近年は右肩上がりで推移しており、鉱物資源業界の好調さを改めて示している。



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