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報告書&レポート

2007年3月1日 シドニー事務所 久保田博志、永井正博 e-mail:kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp masahiro-nagai@jogmec.net
2007年18号

オーストラリア マイン・ツアー報告(1)-オーストラリア最大の金鉱山/アルミ生産施設(産)とCurtin鉱山大学(学)とコア・ライブラリ(官)の現状を視察-

 JOGMECは、資源ブームに沸くオーストラリアの代表的な鉱業地帯である西オーストラリア州において、2007年2月9日~10日に同国を代表する金・ニッケル鉱山地域であるKalgoorlie地域において、また、2月16日には、APEC鉱業大臣会合のPerth近郊アルミニウム関連施設見学会に参加するかたちで「JOGMECマイン・ツアー」を実施した。
 本稿では、この「JOGMECマイン・ツアー」について報告する。

1. はじめに
 「JOGMECマイン・ツアー」は、資源ブームに沸くオーストラリアの代表的な鉱業地帯である西オーストラリア州において、稼行中の鉱山や製錬所、鉱山業界に専門技術者を多数輩出する工科大学、鉱山、企業の探鉱を支援する州政府施設を訪問し、関係者へのインタビュー等を行うことにより、産学官における生産・探鉱、鉱業振興、人材養成の各現場の現状と課題など幅広く情報収集することにより、投資・鉱業振興策・人材育成の検討に資すること目的として実施したものである。
 本ツアーは、2月9、10日の両日が同国の金・ニッケル鉱山地帯の中心地であるKalgoorlie地域、16日がPerth近郊のアルミニウム生産施設において、在オーストラリアの本邦非鉄企業現地法人、政府系金融機関、報道機関、本邦アルミニウム関係企業、商社、現地大手法律事務所を含め延べ14名が参加して実施された。

図1 マイン・ツアー位置図

2. Super Pit金鉱山

 Super Pit金鉱山は、Perthの東方約600kmの西オーストラリア州の内陸部の都市Kalgoorile市街の南西に位置する。交通の便は、PerthからKalgoorlieまでは中型ジェット機で約1時間、空港から鉱山までは車で10分程度と非常に良い。
 本鉱山は、米国資本のNewmont Mining Corporation社(50%)とカナダ資本のBarrick Gold Corporation社(50%)が共同経営するKalgoorlie Consolidated Gold Mines Pty Ltd社(KCGM)によって操業されているオーストラリアで最大の金鉱山であり、非鉄金属鉱山では最大の露天採掘鉱山である(一部坑内採掘も行われている)。操業開始は1983年。
 鉱床は、塩基性火成岩の分別結晶作用によって生成したドレライト(Golden Mile Dolerite)を母岩として、複数回の変形作用(褶曲・断層)を経て構造的に規制された鉱脈状鉱床。鉱体は、Golden Mile断層を境にEastern Lodes鉱化帯とWestern Lodes鉱化帯に大きく分かれる。金は黄鉄鉱に自然金、テルル金(tellurides)として存在する。
 本鉱山の埋蔵鉱量(Proven and Probable)は154百万t(2005年12月時点)、平均品位は金1.98g/t(Cut off 0.9 g/t)である。2005年の金生産量は834,063oz、回収率85.6%。
 採掘(採掘量86百万t/年、剥土比6.7:1)は、大型機材(総重量685t・容量60tのショベル、積載時重量225tのトラック等)を使用、発破用ボーリング機は無人遠隔操作、各トラックのGPSコンピュータ管理等により効率化を図っている。採掘された鉱石(約13.5百万t/年、金品位2.24 g/t)は、トラックで破砕機へ運ばれて拳大に破砕され、ベルトコンベアにより貯鉱場へ運ばれる。
 鉱石処理は、SAGミルにより粒径1/5mm以下に粉砕後、浮選選鉱され黄鉄鉱精鉱が生産される。精鉱は20数km離れた焙焼炉で金塊(金92%、その他銀、銅)となる。選鉱尾鉱は、CIL(Carbon in Leach)によって更に金が回収される。
 今後、露天採掘ピットは、長さ4km以上、幅1.5km、深さ650mまで拡大(現在は深さ450m)し、2017年まで露天採掘による操業を継続、それ以降は、その時の金価格によって坑内採掘の可能性を検討するとのことである。
 現状の課題は、露天採掘を始める以前の歴史的な坑道が約3,500kmに及び、それらの空洞が採掘の際に転落等の危険があること、また、旧坑道から木材や鉄材が大量に出てくることなど。
 従業員は、直接雇用が約750名、間接雇用が約3,000名、ほとんどの従業員が、Kalgoorlieに居住、フライ・イン-フライ・アウト(Fly in – Fly out)は行われていない。12時間/日、2交代制シフトを採用し、365日24時間操業。なお、大型トラック運転手の約60%は女性で、運転が慎重で優しいと評判がよい。

写真1 Super Pit金鉱山露天採掘全景

写真2 Super Pit金鉱山露天採掘ピット内の旧坑道(写真1の赤枠内)

3. Curtin大学(Curtin University of Technology)

 Curtin大学は、Kalgoorlieのほか、パース郊外等にもキャンパスを有するオーストラリアで最初の工科大学で、海外にもマレーシア、インドネシア、シンガポール、スリランカ等に拠点がある。学生数は2~3万人、研究過程の学生が約1万人、教育スタッフが約2,800人。
 鉱山学部は1902年に鉱山局の下に設立された鉱山学校に始まり、1969年には西オーストラリア技術研究所の支所となり、1987年にCurtin工科大学となった。学生数は、約850人、63%が学部生、37%が大学院生である。学科は、採鉱(学生の約半数)、鉱山地質、冶金、資源経済、環境などがある。
 教育課程は、学部には、2年、3年(学位取得)、4年(学位取得)、5年(2学科専攻)の各課程があり、大学院には、1学期課程、2学期(1年)課程、修士課程(コース過程と研究過程)、博士課程(研究過程のみ)がある。金・ニッケル鉱山が近くにあることからそれら鉱山技術の技能向上に貢献しているが、近年は、中国、インドなどの留学生も増えている。
 他大学との連携では、Queensland大学、New South Wales大学との3大学で全国規模の鉱山教育を目指すMining Education Australia (MEA)を形成、また、鉱業界の人材不足対策に対応してオーストラリア鉱業協会が進める鉱業高等教育プログラム(Minerals Tertiary Education Council:MTEC)に参加するなど鉱山教育の中心的存在となっている。

写真3 Curtin工科大学鉱山学部
写真4 Curtin工科大学内の研究室
(研究施設で説明を受けるツアー参加者)

4. 西オーストラリア州ボーリングコア・ライブラリー(Joe Lord Core Library)

 西オーストラリア州産業資源省(地質調査所)は、既存ボーリングコアの提供が探鉱リスクとコストを低減し、探鉱戦略・計画立案、鉱床発見に重要と認識し、カルグーリー(Joe Lord) と パースにボーリングコアの保管、整理、観察等により民間企業等の探鉱支援、情報提供を行うための施設「コア・ライブラリー」を開設している。金属関係を中心に西オーストラリア州東部のコアはカルグーリー、石油ガス関係を中心に北部・西部のコアはパースに保管される。
 カルグーリーのコア・ライブラリーは、2000年に開所した新しい施設、Kalgoorlie空港近くに位置している。現在、3,000孔、450kmのコアを保管している。利用者の多くは探鉱会社、大学関係者で、ボーリングコアの情報はインターネットで公開されている。

写真5 コア・ライブラリー全景
(Geological Survey of Western Australiaパンフレットより)
写真6 コア・ライブラリー内部
(事前に依頼し、観察スペースに並べられたコア)

5. Kalgoorlie鉱山地域

 1893年に金鉱床が発見されてから、Kalgoorlieの鉱山町としての歴史は始まる。その後、金のほかにニッケル鉱山の開発も進み、現在までに約80の坑内採掘鉱山が開発され、開発深度は最深1,300mに及ぶオーストラリアを代表する鉱山町となった。国内の内陸都市としては最大の人口を有しており、現在約30,000人、平均年齢は30歳台と若く、人口は増加傾向にあり、2011年には35,000人に達すると予想されている。
 金鉱床発見当時の歴史的建造物が数多く残されており、ホテルなど当時と同じ目的で使用されているものも多く、建物の外装・内装を活かして店舗などとして利用されながら「鉱山文化」が保存されている。

写真7 Kalgoorlie市内の歴史的建築物
(左より、1990年建築のホテル、1908年建築の市庁舎、
1898年建築のホテル、1900年代初頭建築の新聞社屋)

6. Huntlyボーキサイト鉱山/Pinjarraアルミナ精錬所

 Huntlyボーキサイト鉱山は、Perthの南東約70kmの西オーストラリア州Darling Range地域に位置する。Perthから車で90分程度と交通の便は良い。同鉱山は、Alcoa社(米国資本、権益60%)とAlumina Limited(同40%)のJV企業であるAlcoa World Alumina & Chemicals (AWAC)社がAlcoa of Australia Limitedとして操業している。
 Huntlyボーキサイト鉱山を含むDarling Range地域でのボーキサイト鉱床は、旧WMC Limited(2005年にBHP Billiton社に買収される)が1950年代に発見し、1970年代初頭から開発が始まり、ボーキサイトの年間生産量は約23百万t、品位は20数%(Al2O3)。鉱床は地表付近に胚胎しており、鉱床の厚さは数mと浅所低品位鉱床である。採掘ライセンスは2044年まで。
 露天採掘の規模は数100ha/年で、採掘場所を順次移動しながら採掘を行っている。植生と厚さ数10cm程度の表土を取除いた後、厚さ1~2mの被覆岩(Cap Rock)とその下の2~10mのラテライト層を発破と重機(KOMATSUブルドーザー(140t)、KOMATSUショベルカー(バケット容量25t)、KOMATSUダンプラック(190t)等)により鉱石として採掘・収集し、ベルトコンベアによってPinjarraアルミナ精錬所、鉄道によってKwinanaアルミナ精錬所へ運搬している。

写真8 Huntlyボーキサイト鉱山

7. Pinjarraアルミナ精錬所

 Pinjarraはアルミナ精錬所、Perthの南方約70km、Huntlyボーキサイト鉱山の西約30km位置している。1972年に操業を開始したAWAC社最大のアルミナ精錬所、アルミ生産能力は420万t/年で世界のアルミナ生産の7%に相当する。操業はAlcoa of Australia Limitedが行っている。
 原料のボーキサイトは、Huntlyボーキサイト鉱山からベルトコンベアで供給されることから、精錬所のコストは極めて低い。精錬工程は、ミルで粉砕されたボーキサイト(褐色粉末)をソーダ(Hot Caustic Soda)と混合し、砂・土砂とアルミナを水和物として分離(6tのボーキサイトから2tのアルミナが得られる)、結晶化・沈殿、洗浄・過熱・脱水を経てアルミナ粉末(Ai2O3、白色粉末)を生成。
 アルミナのほとんどは、Pinjarra精錬所の南約20kmにあるBunbury港から出荷されるが、一部は同北約50kmにあるKwinana精錬所の港からも出荷される。

写真9 Pinjarraアルミナ精錬所
(ALCOA社Panjarr精錬所ポスター)

8. おわりに

 今回の「JOGMECマイン・ツアー」は、オーストラリアの産業施設としてSuper Pit金鉱山及びHuntlyボーキサイト鉱山/Pinjarraアルミナ精錬所、学界施設としてCurtin工科大学、官界として西オーストラリア州政府施設とバランスの取れたツアーであり、産学官がそれぞれの立場で鉱業の維持発展のために絶え間ない努力を行っていることを感じさせるものであった。
 なお、オーストラリアの鉱山会社の多くは好景気による増産と労働者不足のため、取引関係がない場合には見学を断ることが多いなかSuper Pit金鉱山(KGCM)が見学を快く受け入れてくれたこと、また、Curtin工科大学は夏期休暇期間中、西オーストラリア州政府は時間外の訪問であるにも関わらず、それぞれ見学を受け入れてくれたことに深く感謝したい。
 
 参考文献
 KCGM社パンフレット「Welcome to The Super Pit」
 KCGM社パンフレット「KCGM Nws & Views」
 KCGM社広報DVD「The Super Pit」
 KCGM社Webサイト
 西オーストラリア州産業資源省(地質調査所)コア・ライブラリーパンフレット
 西オーストラリア州産業資源省(地質調査所) Webサイト
 ALCOA社APEC Site Visitパンフレット「ALCOA C Site Visit」
 ALCOA社広報DVD
 ALCOA社Webサイト
 AWAC社Webサイト
 Alumina社Webサイト

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