閉じる

報告書&レポート

2007年3月15日 シドニー事務所 久保田博志、永井正博 e-mail:kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp masahiro-nagai@jogmec.net
2007年21号

オーストラリア マイン・ツアー報告(3)-Alcoa社のHuntlyボーキサイト鉱山の環境修復の事例-

 2007年2月16日、「JOGMECマイン・ツアー」(APEC第3回鉱業大臣会合鉱山視察に参加するかたちで実施)において、環境修復に積極的に取り組むAlcoa of Australia社のHuntlyボーキサイト鉱山を訪問した。
 本稿では、Huntlyボーキサイト鉱山の環境修復の事例について報告する。


1. はじめに

 Huntlyボーキサイト鉱山は、Perthの南東約70kmの西オーストラリア州Darling Range地域に位置する(Perthから車で90分程度)。同鉱山は、Alcoa World Alumina & Chemicals (AWAC)社(Alcoa社(米国資本)権益60%-Alumina Limited権益40%)の現地会社Alcoa of Australia Limited社が操業している。
 同鉱山は、1970年代初頭から開発が始まり、2044年までの採鉱ライセンスが認められている。ボーキサイト年間生産量は約23百万t、品位は20数%(Al2O3)、年間約数100ha規模で鉱区内を移動しながら露天採掘が行われている。鉱床は地表付近に胚胎しており、鉱床の厚さは数mと浅所低品位鉱床である。

図1 Huntlyボーキサイト鉱山位置図
(ALCOA社APEC Site Visitパンフレット「ALCOA C Site Visit」に加筆)




2. Alcoa社Huntlyボーキサイト鉱山の環境方針


(1) Jarrah森林(Jarrah Forrest)
 Alcoa社のボーキサイト採掘鉱区にはJarrah forests地区など4,898km2に及ぶ森林が含まれており、1961~2044年までボーキサイト採掘が許可されている。
 Darling Rangeはボーキサイト資源ポテンシャルの高い地域であると同時に自然保護区や国立公園に指定されている地区も多く、ボーキサイトの採掘が可能な地区は限られている。また、採掘可能な地区では、環境修復は重要事項である。
 
(2) 環境修復方針
 Alcoa社Huntlyボーキサイト鉱山における環境修復は、Jarrah森林をボーキサイト採掘前の森林システムに戻すことであり、そこには自然環境の保護、森林資源の活用、水源地としての機能、レクリエーションの場の提供などが含まれている。同社は、採掘後の修復により200種類を越える植物の100%回復を目指している。
 
(3) 森林の「立枯れ病」
 Jarrah森林をはじめ西オーストラリア州南西部では、Phytopthora菌(疫病菌)による「立枯れ病(Dieback)」が問題となっている。Jarrah森林でも800種弱の植物種のうち33%が「立枯れ病」の影響を受けやすいとされている。この「立枯れ病」は、鉱業などによる道路建設や自動車の立入りなどの人為的な活動によりに菌が持ち込まれ、被害が拡大することが多い。Alcoa社は、1970年代より「立枯れ病」対策に取組んでおり、採掘1haあたりの「立枯れ病」の割合は0.0006haとの調査結果が示されている。

写真1 「立枯れ病」菌の侵入を防ぐための車両洗浄




3. Huntlyボーキサイト鉱山の環境修復プロセス


(1) 剥土・土壌保管・復土
 ボーキサイト採掘は、森林の伐採、地表の土壌及び堆積物の除去(厚さ数10cm)した後、被覆岩(Cap Rock、厚さ1~2m)とその下のラテライト層(2~10mの)を鉱石として採掘している。露天採掘規模は年間数100haで、採掘現場は鉱区内を移動している。除去された土壌には、植物の種子・細菌類・その他生物、植物が生育するのに必要な肥料分等が含まれており、再植生に有効であることから、採掘後の環境修復のために保存され、ボーキサイト鉱石の採掘が終わると、保存しておいた土壌が復土される。

図2 Alcoa社の西オーストラリア州内でのボーキサイト採掘と環境修復面積
 
写真2 ボーキサイト採掘状況 その1
 
写真3 ボーキサイト採掘状況 その2

(2) 植栽
 採掘予定地では、採掘前に採掘地区の周辺約2kmにわたって植生調査を実施し、植栽に適した植物種の検討、植栽後どの程度植生が復帰したか等の生育評価の資料を収集している。
 植栽には、同地区及び周辺地域の自然環境を考慮して外来種ではなく原生種が用いられている。主要樹種は、Jarrah、Marri*1で前者が80%、後者が20%の割合。草から樹木へと段階的な植栽方法はとられず苗木を移植するなどの方法がとられている。また、植物生育を促進するため、雨期の後、年1回、ヘリコプターによる肥料散布が行われている。採掘跡は、酸性や含高塩分の土ではないため、樹木の根が復土部分を越える程度に発育して採掘跡部分に達しても樹木の生育には特に問題はない。修復後の植生の復帰状況は良好で、2000年には採掘後の植生修復率100%を達成している。
 植栽における問題は、植物の芽をカンガルーなどの野生生物が餌として食べることであり、その対策として、植栽を施した地区に網を張る、植物1本1本の周りにプラスチックのカバーをかける(効果は確実だが高コスト)、カンガルーの天敵であるディンゴ(オーストラリア固有の野生の犬)の尿を植物の周りに撒くなどの方法が実施・検討されている。
 
*1 Jarrah(ジャラ;Eucalyptus marginata)、Marri(マリ;Eucalyptus calophylla)は、西オーストラリア州南西部原産のユーカリの一種。高さ30~40m、直径は約2~3m程度に成長する。家具、ウッドデッキなどの建築材、楽器(ドラム等)などに利用されている。

(3) モニタリング
 植栽を施した地区では、毎年、植生の回復状況の調査が行われている。調査は現地調査による個々の樹木・草木の発育状況の調査のほか、航空写真なども利用されている。なお、鉱山周辺では、騒音や粉塵等のモニタリングが年間を通じて行われている。

図2 Alcoa社の西オーストラリア州内でのボーキサイト採掘と環境修復面積
 
写真4 植生修復の様子(遠景)

 

写真5 植生修復の様子(近景)


4. おわりに

 鉱山開発において、採掘後の環境修復は「持続可能な開発」の観点から避けては通れない課題である。環境修復の成否は、鉱山の置かれている自然環境その他の諸条件によるところも小さくないが、Huntlyボーキサイト鉱山の環境修復に対する取組みとAlcoa社の環境に対する姿勢は大いに参考となると思われる。
 
 参考文献
 ALCOA社「2005 Sustainability Report」
 ALCOA社APEC Site Visitパンフレット「ALCOA C Site Visit」
 ALCOA社広報DVD
 ALCOA社Webサイト
 AWAC社Webサイト
 Alumina社Webサイト

ページトップへ