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報告書&レポート

2007年3月29日 リマ事務所 西川信康 e-mail:ommjlima@chavin.rcp.net.pe
2007年25号

2006年ペルーの鉱産物生産動向

 2007年2月下旬、ペルー、エネルギー鉱山省より、2006年の鉱産物生産量の速報値が発表された。これによると、最近の政治・経済情勢の安定化、非鉄市況の高騰・高止まりを背景に、鉱業投資が活発化している中、銅、銀は堅調に生産を伸ばす一方、金、亜鉛など多くの鉱種で生産が伸び悩み、鉱種によって明暗を分けた結果となった。本稿では、2006年の鉱産物生産動向、鉱産物輸出動向及び今後の生産見通しについて報告する。

1. 2006年の鉱産物生産量

(1) 鉱山生産量
 エネルギー鉱山省によると、ペルーの2006年の鉱山生産量は、銅が前年比3.9%増の104.9万tと堅調に増加したのに対し、金は、同2.3%減の203tと増加傾向に歯止めがかり、また、亜鉛は、前年並みの120.2万tに留まった。その他の金属では、銀が前年比8.3%増の3,470.7tと大きく拡大したが、鉛は同1.9%減、錫は同8.7%減、モリブデンは同0.7%減と、いずれも前年を下回った(表1)。

表1 ペルーの鉱山生産
鉱種
2006年
鉱山生産量
2005年
鉱山生産量
増減(%)
銅(t)
1,048,897
1,009,899
3.86
金(kg)
203,269
208,002
-2.28
亜鉛(t)
1,201,794
1,201,671
0.01
銀(kg)
3,470,725
3,205,673
8.27
鉛(t)
313,325
319,368
-1.89
錫(t)
38,470
42,145
-8.72
モリブデン(t)
17,209
17,325
-0.67
出典:エネルギー鉱山省

 主要3鉱種(銅、亜鉛、金)を鉱山別で見ると、銅については(表2)、ペルー最大のAntamina鉱山で前年比2%増の39.1万tと過去最高を記録した他、ペルー3位のCuajone鉱山で同9.8%増の18.0万t、4位のTintaya鉱山で同5.7%増の11.6万t、5位のCerro Verde鉱山で同3.2%増の9.7万tなど、2位のToquepala鉱山(鉱石品位の低下により同6.0%減の18.2万t)を除き、主力鉱山はいずれも堅調に生産を伸ばした。
 亜鉛については(表3)、ペルー最大のAntamina鉱山で、採掘対象が亜鉛品位の低い鉱石だった影響で前年比18.4%減の17.8万tと大きく落ち込んだのをはじめ、第3位のCerro de Pasco鉱山や第4位のEl Porvenir鉱山も、それぞれ、同5.4%減、同10.9%減と相次いで減産となったものの、第2位のIscaycruz鉱山(同6.2%増)、第5位のColquijirca鉱山(同15.9%増)、その他中小鉱山の増産により、これら主力鉱山の減産分を相殺した格好となった。
 金については(表4)、主力のYanacocha鉱山及び第3位のPierina鉱山で、鉱石品位の低下により、それぞれ、前年比21.2%減の81.2t、同18.8%減の15.8tと大きく減少したが、2005年6月に操業を開始したAlto Chicama鉱山のフル生産(前年比111%増)で、全体では同2.3%減の203.3tに留まった。
 

表2 ペルー・上位10銅鉱山生産量(2006年)
順位
鉱山名
操業企業
2006年
生産量(t)
2005年
生産量(t)
増減
1
ANTAMINA BHP Billiton 33.75%
Xstrata 33.75%
Teck Cominco 22.5%
三菱商事 10%
390,774
383,039
2.00%
2
TOQUEPALA Southern Copper
182,346
193,953
-6.00%
3
CUAJONE Southern Copper
179,631
163,659
9.80%
4
TINTAYA Xstrata
115,626
109,420
5.70%
5
CERRO VERDE Phelps Dodge 53.6%
Buenaventura 18.2%
住友金属鉱山 16.6%
住友商事 4.2% 他
96,506
93,542
3.20%
6
COBRIZA DOE RUN PERUS
17,224
15,161
13.60%
7
CONDESTABLE CIA.MRA.CONDESTABLE
12,594
11,985
5.10%
8
RAUL CIA.MRA.CONDESTABLE
6,888
4,101
68.00%
9
CHAPI MRA.PAMPA DE COBRE S.A
4,936
0
10
RAURA CIA.MRA.RAURA
3,904
2,737
42.60%
1,010,429
980,800
3.00%
その他
38,468
29,098
32.20%
総 計
1,048,897
1,009,898
3.90%
出典:エネルギー鉱山省

表3 ペルー・上位10亜鉛鉱山生産量(2006年)

鉱山名
操業企業
2006年
生産量(t)
2005年
生産量(t)
増減
1
ANTAMINA

BHP Billiton 33.75%
Xstrata 33.75%
Teck Cominco 22.5%
三菱商事 10%

178,180
218,265
-18.40%
2
ISCAYCRUZ EMP.MRA.LOS QUENUALES(Glencore)
168,384
158,567
6.20%
3
CERRO DE PASCO VOLCAN CIA.MINERA
119,816
126,607
-5.40%
4
EL PORVENIR CIA.MRA.MILPO
79,595
89,346
-10.90%
5
COLQUIJIRCA SOC.MRA.EL BROCAL
69,828
60,230
15.90%
6
ANIMON EMP.ADMINISTRADORA CHUNGAR
62,227
55,576
12.00%
7
SAN CRISTOBAL VOLCAN CIA.MINERA
61,105
57,114
7.00%
8
ATACOCHA CIA.MRA.ATACOCHA
59,795
59,174
1.00%
9
MARIA TERESA CIA.MRA.COLQUISIRI
36,893
39,338
-6.20%
10
HUANZALA CIA.MRA.SANTA LUISA
(三井金属鉱業 70%、三井物産 30%)
32,142
38,100
-15.60%
867,965
902,317
-3.80%
その他
333,829
299,354
11.50%
総 計
1,201,794
1,201,671
0.00%
出典:エネルギー鉱山省

表4 ペルー・上位10金鉱山生産量(2006年)
順位
鉱山名
操業企業
2006年
生産量(kg)
2005年
生産量(kg)
増減
1
YANACOCHA Newmont 51.35%
Buenaventura 43.65%
IFC 5%
81,247
103,168
-21.20%
2
ALTO CHICAMA MRA.BARRICK MISQUICHILCA
36,056
17,103
110.80%
3
PIERINA MRA.BARRICK MISQUICHILCA
15,836
19,513
-18.80%
4
M.D.D MADRE DE DIOS
15,800
16,092
-1.80%
5
ORCOPAMPA CIA.DE MINAS BUENAVENTURA
7,878
7,106
10.90%
6
FLORENCIA ARUNTANI S.A.C
5,752
4,417
30.20%
7
RETAMAS MRA.AURIF.RETAMAS
4,950
5,275
-6.20%
8
SANTA ROSA-COMARSA CIA.MRA.AURIF.SANTA ROSA
4,909
4,728
3.80%
9
ARES CIA.MRA.ARES
4,837
6,176
-21.70%
10
ANTAPITE CIA.DE MINAS BUENAVENTURA
3,215
2,866
12.20%
180,480
186,444
-3.20%
その他
22,789
21,558
5.70%
総 計
203,269
208,002
-2.30%
出典:エネルギー鉱山省

 一方、2006年のペルーの地金生産量(表5)については、銅が、ペルー最大のIlo製錬所の減産が響き全体では前年比3.6%減の33.4万tであった。一方、亜鉛は、Cajamarquilla製錬所で約1割生産が拡大したことから、全体で前年比7.1%増の17.5万tを記録した。また、鉛はほぼ前年並みの12万tに留まり、錫は、Funsur製錬所の増産で10%強拡大し、4万tを超えた。

表5 ペルー地金生産量
製錬所
操業企業
2006年
生産量(t)
2005年
生産量(t)
増減
 Ilo Southern Copper
273,054
285,199
-4.30%
 Oroya Doe Run Peru
59,075
59,663
-1.00%
 Cajamarquilla Votorantim
1,710
1,343
27.30%
合 計
333,839
346,205
-3.60%

 Cajamarquilla Votorantim
134,240
122,424
9.70%
 Oroya Doe Run Peru
41,010
41,179
-0.40%
合 計
175,250
163,603
7.10%
 Oroya Doe Run Peru
120,311
122,079
-1.40%
合 計
120,311
122,079
-1.40%
 Funsur Minsur
40,495
36,733
10.20%
合 計
40,495
36,733
10.20%
注)銅については、SX-EW生産分を除く。                            出典:エネルギー鉱山省

2. 鉱産物輸出

 ペルー輸出促進庁(Prompex)によれば、ペルーの2006年の鉱産物輸出額は前年比48.2%増の144.7億$であった。内訳は、最大の鉱産物輸出品目である銅が、前年比76.5%増の60.3億$、次いで、金が同27.7%増の39.5億$、亜鉛が同147.3%増の19.9億$など、金属価格高騰の要因で軒並み大幅に増加したのに対し、モリブデンは、同26%減の8.4億$、錫は41%減の1.7億$であった。この結果、2006 年のペルーの総輸出額は鉱産物輸出が牽引役となって、前年比35.6%増の234.3億$に達し、鉱産物が占める割合は全体の61.7%とはじめて6割を超えた。(図1)。
 

表6 鉱産物輸出額
鉱種
2006年輸出額
(百万US$FOB)
2005年輸出額
(百万US$FOB)
増減
6,034.40
3,419.70
76.50%
3,952.10
3,095.40
27.70%
亜鉛
1,991.30
805.1
147.30%
モリブデン
838.3
1,132.40
-26.00%
712.6
491.5
45.00%
478.7
280.6
70.60%
256
216.1
18.50%
177.4
301.4
-41.10%
その他
24.1
21.2
13.70%
合計
14,464.80
9,763.40
48.20%

 
 図1 ペルーの輸出額推移
 

出典:輸出促進庁

3. 今後の生産見通し

 銅鉱山生産については、2007年上半期中のCerro Verde鉱山の硫化鉱のフル生産(銅年産18万t)開始に加え、Cerro Corona(Gold Field 、銅年産5万t)、Marcona(Chariot他、銅年産10万t)、Los Chancas(Southern Copper、銅年産10万t)、Toromocho(Peru Copper、銅年産27.3万t)、Rio Blanco(Monterico Metals、銅年産32万t)などの開発プロジェクトの進展により、2010年には、ペルーの産銅能力が現在の年産100万t規模から200万t近くまで倍増する可能性が期待されている。
 亜鉛鉱山生産については、亜鉛価格低迷の長期化で、探鉱投資が不十分だったことを受けて、銅に比べて、探鉱開発案件は低調ではあるものの、ペルー亜鉛最大手のVolcan社が、現在の30万t体制から2008年には40万t体制に増強することを発表している。また、ペルー亜鉛大手のMilpo社によるCerro Lindo開発プロジェクトの操業開始(亜鉛年産11万t)が2007年5月に予定されている。さらに、Antamina鉱山では、中長期に亜鉛品位の高い鉱石採掘に移行するため、徐々に増産の方向であると伝えられている。以上により、ペルーの亜鉛鉱山生産量は、中期的には、現在の水準を大きく上回ることはないものの、現在の120万tから130万t~140万t程度で堅調に推移していくものと見られる。
 金生産については、世界最大のYanacocha鉱山が、品位低下により2005年をピークに減産傾向にあり、2007年はピーク時の6割程度まで落ち込むと伝えられている他、Pierina鉱山でも鉱量枯渇により2009年に閉山が予定されている。そのため、当面、ペルーの金生産量は減少傾向になっていくものと見られる。
 なお、ペルー鉱業協会は、2007年の鉱山生産量について、銅は13%増、亜鉛は4%増、金は13%減と予測している。
 一方、地金生産については、Southern Copper社が所有するペルー最大のIlo銅製錬所の生産能力を現在の28万t規模から36万t体制に増強する計画がある他、ブラジルVotorantim社が所有するCajamarquilla亜鉛製錬所でも、2007年に16万t、さらに、最終的には32万t体制まで増強する計画があるなど、ペルーの地金生産は拡大傾向にある。それに伴い、両社とも、新たな精鉱確保に向けて、ペルーでの鉱山投資を積極化しており、今後、ペルーにおける原料鉱石を巡る獲得競争は、一層激化していくことが予想される。

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