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報告書&レポート

2007年3月29日 シドニー事務所 久保田博志、永井正博 e-mail:kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp masahiro-nagai@jogmec.net
2007年27号

オーストラリアの金事情 2007(2)-統計資料にみる過去と現在-

 米国地質調査所(USGS)の最新データ「Mineral Commodity Summaries 2007」によると、オーストラリアは、全世界の金生産量の約10%を占め米国と並んで世界第2位となり、金生産量世界第1位の南アフリカに迫っている。
 本稿では、資源ブームで沸くオーストラリアの金事情について、最近の傾向をまとめた。

1. はじめに

 オーストラリアの金生産量*1は、2005年が266t、2006年(推定)が250tとやや減少したものの、200t台を推移し、世界最大の金生産国である南アフリカに迫っている。資源ブームに沸くオーストラリア国内では、近年、圧倒的な産金量を誇る西オーストラリア州に続いて、ニューサウスウェルズ州の産金量が伸びている。
 *1 ABARE, Australian Commodities Statistics 2006
 

2. 生産量

(1) 金生産の推移 *1,*2
 オーストラリアの金生産量*1、*2は、第二次世界大戦前までは20t~50tの間を上下し、世界の金生産量に占めるシェアは3~4%程度であった。第二次世界大戦後は1960年代前半まで20t台から30t台、世界シェアは2%台を推移していたが、その後1980年代初頭には20tを下回り、世界シェアも1%台で金生産は低迷した。オーストラリアの金生産量が飛躍的に増加したのは1980年代後半で、1987年には100tを越え、1990年代には200t台となり、世界に占める割合も10%以上となった。2000年に入って生産量は200t台半ばを推移している。
 一方、世界最大の産金国の南アフリカは、1970年台初頭には世界の金生産の約70%を占めていたが、以降、生産量の減少が続き、現在は10%台まで落ち込んでいる。他方、ペルー、中国などがシェアを上げている。
 
 

表1.オーストラリアの金を取り巻く出来事
オーストラリアの主な出来事
世界の主な出来事
金価格
1851年

1850年代

1856年
1880年代

1890年代
– 1903年
-1929年
1930年代

1939-1940年

1940年代前半
-1950年代

オーストラリア最初の金鉱床発見
(ニューサウスウェルズ州→ビクトリア州)
ゴールドラッシュ(漂砂鉱床)
金生産量90t台で推移
金生産量95tを記録
漂砂鉱床から坑内採掘へ
(クィーンズランド州)
金生産量30t前後へ落込む
ゴールドラッシュ(西オーストラリア州)
(新技術の導入と低品位鉱石開発)
金生産量120t金生産量13tに減少
金生産量再び増加

西オーストラリア州、北部準州で開発進む
金生産量50t台
(世界的な金価格の上昇、浮遊選鉱の導入、失業者の吸収)
金生産量20t台 – 第二次世界大戦時金生産量回復35t

1934-1971年

金固定価格期、
個人取引禁止

35US$/oz

-1970年代

1980年代初

1988年

1990年

金生産量減少20t

金ブーム
(1971年の金自由化による金価格上昇、CIP,CILの導入)

財務大臣金産業の収入税免税廃止を決定

金生産244tを記録

1971年

1973年

1974年
1976年
1979-1980年

1980年代

金価格変動価格制移行
(IMF)
第1次石油危機
通貨変動相場制移行

米国、IMF金放出
第2次石油危機、
旧ソ連、アフガニスタン侵攻
メキシコ債務危機(82)、
OPEC石油価格値下げ(83)、
プラザ合意ドル安(85-86)、
ブラックマンデー 株暴落(87)、
ベルリンの壁崩壊、湾岸戦争突入、ソ連崩壊(89-91)

195US$/oz
100US$/oz
835US$/oz

400US$/oz

1991年
1990-1996年
1997年
1997年-

-2005年

金産業の収入税免税廃止施行
金生産250t前後で推移
金生産314tを記録
金生産は新鉱床の発見なく減少

金生産量が世界第2位へ

米経済の景気低迷(92)

IMFワシントン協定(金売却等制限)(99)
米国同時多発テロ(01)

 

  

データ:
USGS, Minerals Yearbook 1932~2004, Mineral Commodity Summaries 1996-2007
ABARE, Australian Commodity Statistics 2002-2006

図1.世界の金生産量とオーストラリアのシェアの推移

(2) 州別生産 *1,*2
 オーストラリアの金生産の歴史は、1800年代末のニューサウスウェルズ州、ビクトリア州での漂砂鉱床の発見に始まる。その後、クィーンズランド州、北部準州を経て、西オーストラリア州に至り、1900年代初頭には、西オーストラリア州が国内金生産の約50%、ビクトリア州が約20%、クィーンズランド州が10数%を占めていた。1930年代末になると、西オーストラリア州の占める割合が70%を越え、一方、ビクトリア州、クィーンズランド州の割合は10%前後に下がっていった。
 オーストラリアの金生産量が飛躍的に増加した1980年代後半以降も、西オーストラリア州が国内金生産の中心(70%前後)であったが、ニューサウスウェルズ州が金生産量を徐々に増やし続け、2000年代半ばには10%を越えて、オーストラリア第2位の金生産量をあげている。
 
 *1 USBM, Minerals Yearbook 1936~1994, USGS, Minerals Yearbook 1995~2004, Mineral Commodity Summaries 1996-2007
 *2 ABARE, Australian Commodity Statistics 2002-2006


 データ:ABARE, Australian Commodity Statistics 2006
 図2.オーストラリアの州別金生産量の推移

3. 輸出

(1) 輸出額と鉱物資源輸出額に占める割合*1
 オーストラリアの金輸出額は、ここ数年40億A$台から50億A$台へと徐々に増加していたが、2005/06年度は金価格の高騰から一気に70億A$台に上昇した。しかし、銅、亜鉛などの他の金属価格上昇、更にオーストラリア資源ブームの牽引役である鉄鉱石や原料炭・燃料炭の輸出額増加が金のそれを上回ったことから、金輸出額のオーストラリア鉱物資源輸出額に占める割合は、1990年代末の10数%から10%を割り込むまで低下している。

 データ:ABARE, Australian Commodity Statistics 2002-2006
 図3.オーストラリアの金輸出額の推移

(2) 輸出量の推移と輸出相手国の変遷*1
 輸出量は1990年代半以降、ほぼ300t前後と大きな変化はない*。輸出相手国では、近年、インドへの輸出が急増しているほか、タイへの輸出も増加傾向にある。一方、従来大きな割合を占めていた英国、韓国、香港、日本、台湾への輸出は大きく減少している。
 
 * 輸出量が生産量を上回るのは、生産量が山元での生産量(鉱石中に含まれる金量)であるのに対して、輸出量にはリサイクルによって生産される金が含まれているためである。
 *1 ABARE, Australian Commodity Statistics 2002-2006

 
   データ:ABARE, Australian Commodity Statistics 2002-2006
 図4.オーストラリアの金生輸出量の推移

4. 価格推移・探鉱費・生産の関係

 1971年に金価格自由化(ドル金兌換停止)以降、金価格は上昇を始めたが、オーストラリアにおける金探鉱支出と金生産が増加するのは1980年代に入ってからである。
 当時、オーストラリアの鉱山会社は金以外の鉱種の探鉱に注力していたこと、金への探鉱投資はリスクが高いと考えられていたことから探鉱支出と金生産は、金価格上昇に直ちに追随して増加しなかった。一方で金価格は1980年代も上昇を続け、それと時期を同じくしてCIP、CIL*1等の新しい回収技術が多くの金生産現場で用いられるようになり金生産は飛躍的に向上するようになった。しかし、鉱床発見、鉱山開発にはそれなりの時間(リードタイム)が必要であり、これが1970年代後半の金価格上昇と、1980年代の探鉱支出と金生産の増加との間に時間的ズレが生じた原因としてあげられている。*2
 
 *1 Carbon In Pulp(CIP)、Carbon In Leach(CIL)の略;活性炭素に金を吸着させて回収する技術
 *2 Parliament of Australia, Parliamentary Library, Creg Baker(2005) “Gold! Gold to Australia! Australian Gold Statistics” , Research Note no. 22 2005-06


 
  データ:ABARE, Australian Commodity Statistics 2002-2006
 図5.金価格の推移とオーストラリア金探鉱費と金生産の関係

5. オーストラリア国内の主要金鉱山プロジェクト
  オーストラリア農業資源経済局(ABARE)が、2006年10月に発表した2005/06年度の金探鉱支出は、対前年2%増加の400百万A$であった。ベースメタルは同37%増加の357百万A$、鉄鉱石は同17%増加の161百万A$、ウランは同2倍以上の56百万A$であった。ここでも資源ブームを反映して、探鉱の重心が金以外のベースメタルや鉄鉱石に移っていることがわかる。
  主要金鉱山の生産量と主要プロジェクトは下表(表-2、表―3)のとおり。また、各州におけるF/S段階プロジェクト数は、西オーストラリア州10件、ニューサウスウェルズ州5件、南オーストラリア州23件、クィーンズランド州1件で総額335百万A$であった。*1

*1 ABARE, “Minerals and Energy, major development projects October 2006 listing”, Australian Commodities vol13, no.4, December Quarter

表2.オーストラリア国内の主要金鉱山
鉱山名
権益
埋蔵量
(kt)
品位
(g/t)
金属純分量
(koz)
生産量2005/06
(koz)
生産量2004/05
(koz)
Telfer
WA
Newcrest
396,000
1.34
17,104
957
198
Super Pit
WA
Newmont, Barrick Gold
154,009
1.99
9,846
712
951
Kanowna
WA
Barrick Gold
14,870
5.1
2,439
515
339
St Ives
WA
Goldfields
30,200
2.58
2,508
496
527
Tanami
NT
Newmont
14,606
4.97
2,335
418
591
Sunrise Dam
WA
Anglogold
18,455
4.24
2,516
396
488
Granny Smith
WA
Barrick Gold
7,016
3.01
678
384
344
Ridgeway
NSW
Newcrest
47,600
1.44
2,209
367
382
Cadia Hill
NSW
Newcrest
471,661
0.8
12,105
248
309
Plutonic
WA
Barrick Gold
15,018
4.97
2,400
240
280
Pajingo
QLD
Newmont
1,451
9.6
448
171
216
Olympic Dam
SA
BHP Billion
756,000
0.5
12,153
108
99
Cowal
NSW
Barrick Gold
57,697
1.34
2,493
61*1
*1 2006年9月末までの生産量
データ:各社レポート

表3.オーストラリア国内の主要金鉱山開発プロジェクト
プロジェクト名
位置(州)
会 社 名
生産量(oz/年)
生産開始時期
Bendigo
VIC
Bendigo Mining
120,000
2006年第3四半期
Tom’s Gully
NT
Renison Consolidated Mine
45,000
同上
Boddington
WA
Gleneagle Gold
364,000(5年間)
同上
Union Reef
NT
GBS Gold International
150,000(2007年内)
2006年11月
Warrior
QLD
Citigold
40,000
2006年12月
Laverton
WA
Cresent Gold
90,000
2006/07年度内
Bronzewing
WA
View Resources
100,000
2006/07年度内
White Dam
SA
Exco Resources
124,000(2年間)
2006/07年度内
データ:ABARE, Australian Commodity December Quarter 2006

6. おわりに
  金価格は世界経済、国際金融政策、紛争、政治的要因などによって変動し、オーストラリアの金生産もこの大きな流れの中で、増産と減産を繰返してきた。しかし、一方でオーストラリアの金生産の増加には、漂砂鉱床から金鉱脈の坑内採掘、浮遊選鉱やCIP/CIL等の新しい金回収技術の導入など、その時々において探鉱(モデル・手法)や選鉱・製錬などの技術革新が背景にあったとも言える。 また、これまでオーストラリアでは、金単独であるいは金を主な対象鉱種として生産されてきたが、近年はOlympic Dam銅・金・ウラン鉱床に代表されるIOCG型(酸化金銅(ウラン)型)鉱床やCadia Hill金・銅鉱床やRidgeway金・銅鉱床などのポーフィリー金・銅鉱床など新たな鉱床タイプ(モデルによる)の発見・開発も多い。また、Telfer金鉱山の黄鉄鉱中からの金回収など新たな技術による金回収の例もある。
  このように新しい探鉱技術(探鉱モデル)や回収技術が、新鉱床発見や金回収率向上につながっていけば、オーストラリアの金生産は、今後も持続可能な開発を続けていくことができるであろう。

参考文献(データ等)
USGS, Minerals Yearbook 1932~2004, Mineral Commodity Summaries 1996-2007
ABARE, Australian Commodity Statistics 2002-2006
Parliament of Australia, Parliamentary Library, Creg Baker(2005) “Gold! Gold to Australia! Australian Gold Statistics”, Reserch Note no. 22 2005-06
ABARE, “Minerals and Energy, major development projects October 2006 listing”, Australian Commodities vol13, no.4, December Quarter
ABARE, Australian Commodity December Quarter 2006

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