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報告書&レポート

2007年4月12日 シドニー事務所 久保田博志、永井正博 Tel:+61-2-9264-2493 e-mail:kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp masahiro-nagai@jogmec.net
2007年34号

オーストラリアに対する鉱業投資環境評価-Fraserレポート2006/2007年度版より-

 先日、カナダのシンクタンクFraser Instituteによる世界の主要資源国・州の鉱業投資ランキングが発表されたが、オーストラリア最大の鉱業州である西オーストラリア州は、オーストラリア各州の中で最も低い評価を受けた。地元紙は、「Miners give thumbs-down to WA」(鉱山会社は西オーストラリア州にダメ出し)との見出しでこのことを大きく取り上げた。
 本稿では、Fraserレポート「Fraser Institute Annual Survey of Mining Companies 2006/2007」から、オーストラリアに対する投資環境評価についてその概要を報告する。

1. はじめに

 カナダのシンクタンクFraser Instituteは、1997年から鉱山会社・探鉱会社に対して世界の主要資源国・州に関する調査を実施している。2006/2007年度は、約3,000社に65か国・州に関するアンケート調査を実施、そのうち333社(世界の探鉱費の14.5%にあたる10.2億US$)からの回答があり、それを基に主要資源国の鉱業投資環境評価・ランキングを行っている。*
 
 * Fraserレポートの内容等に関しては、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構, 金属資源レポート2006.9,「世界の鉱業投資環境評価」-2005/2006年版Fraserレポートより-に詳しく説明されている。
 

2. オーストラリアに対する鉱業投資環境評価

 鉱業投資環境評価は、政策・制度面を評価した「鉱業政策指標(Policy Potential Index:PPI)」と、鉱物資源の地質学的なポテンシャルを評価した「鉱物資源ポテンシャル(Mineral Potential Index)」とによって表されている。
 
(1) 鉱業政策指標(Policy Potential Index:PPI)
 「鉱業政策指標」とは、主要資源国の法制度や諸手続の透明性、環境規制、税制、先住権・土地所有、労働関係、地域社会、治安、政治的安定性などを評価した指標である。
 オーストラリアの各州の評価・ランキングは下表の通りであった。総じて上位にランクされているがオーストラリア最大の鉱業州である西オーストラリア州が同国内では最も低い評価となっている。また、上位10か国・州は例年、上位20か国が占めるがクィーンズランド州は今年度、20位圏外からのランクインとなった。
 

表1.オーストラリア各州の鉱業政策指標ランキング

州・準州

鉱業政策指標ランキング

スコア(100満点)

南オーストラリア州

5位 

(前年度14位↑)

87

クィーンズランド州

8位 

(29↑)

81

タスマニア州

9位 

(15↑)

77

ビクトリア州

12位 

(30↑)

77

ニューサウスウェルズ州

14位 

(12↓)

76

北部準州

15位 

(20↑)

76

西オーストラリア州

18位 

(11↓)

72

 
(2) 鉱物資源ポテンシャル指標(Mineral Potential Index)
 「鉱物資源ポテンシャル指標」とは、鉱物資源の地質学的なポテンシャルを評価するもので、「現行法規制」を前提に経済的に採掘可能な、地質ポテンシャルを評価したもの(Current Mineral Potential Index)と、企業が「ベストプラクティス*」に基づいた政策をとれることを仮定した理想的な環境の下での地質ポテンシャルを評価したもの(Best Practices Mineral Potential Index)とがある。後者は、「ベストプラクティス」に基づくものとして各国・州の政策的な要因をそろえたことによって、「純粋な」鉱物資源ポテンシャルが評価されるとしている。
 オーストラリアの各州の評価・ランキングは下表のとおりであった。
 
* ベストプラクティス: 法制度や国・州政府による規制ではなく、企業が自主的に最前の方法を選択して事業を実施するという考え方。企業や諸条件に合わせて企業側が自主的に方法や目標を選択・設定できることから柔軟性があり効果的・効率的で確実な実施が可能となると期待されている。オーストラリアではクィーンズランド州の鉱山保安などが有名。最善の方法が如何なるものかと言った情報共有が普及の鍵となる。また、事故等に対しては自己責任を従来以上に厳しく問われる。

表2.オーストラリア各州の鉱物資源ポテンシャル指標ランキング

州・準州

鉱業政策指標ランキング

スコア(1満点)

西オーストラリア州

4位 

(前年度13位↑)

0.97

北部準州

8位 

(19↑)

0.96

クィーンズランド州

12位 

(32↑)

0.93

南オーストラリア州

21位 

(29↑)

0.92

タスマニア州

30位 

(56↑)

0.86

ニューサウスウェルズ州

38位 

(45↑)

0.81

ビクトリア州

53位 

(53-)

0.65

図1 主要資源国の鉱業政策指標-鉱物資源ポテンシャル指標
 
 図1 主要資源国の鉱業政策指標-鉱物資源ポテンシャル指標

3. 鉱山会社・探鉱会社のコメント

 Fraserレポートでは、主要資源国に対する鉱山会社・探鉱会社のコメントが記されている。その中から、オーストラリア各州・準州に関するものを集めてみた。
(1) プラス評価
 ⅰ 南オーストラリア州、ケベック州(カナダ)、チリは極めて協力的で、政府高官レベルで鉱業の地域経済に与える影響に対する認識が高い。(鉱山会社 社長)
 ⅱ オーストラリアは、長い(鉱山開発の)歴史と卓越した鉱業政策があり、鉱業への理解も深い。(探鉱会社 マネージャー)
 ⅲ データベースなどのインフラ整備、政策的安定性、鉱物資源の質、経験と技能を持った人材がある。(探鉱会社 副社長)
 ⅳ 南オーストラリア州は、企業を惹き付ける様々な(鉱業投資促進)プログラムがあり、それらが成果を上げている。(探鉱会社 社長)
 ⅴ オーストラリアは、(鉱物資源)産業の経済的価値をよく理解している。(探鉱会社 社長)
 ⅵ ニューサウスウェルズ州、オーストラリアは、好ましい鉱業法とデータベース、鉱区システムを持っている。(探鉱会社 マネージャー)
 
(2) マイナス評価
 ⅰ Jabirukaウラン鉱床の場合のように先住権問題が深刻、先住権の見直しが必要。(探鉱会社 副社長)
 ⅱ クィーンズランド州での法規制改正により鉱区ライセンスへのアクセスを閉ざされた。(探鉱会社 社長)
 ⅲ クィーンズランド州の環境規制(フレームワーク)は煩雑、官僚的で実際と乖離している。制度を使う側の立場に立ったものに改めるべきだ(探鉱会社 社長)
 ⅳ 西オーストラリア州では、(鉱業エネルギー関係)大臣の判断で、鉱区ライセンスがキャンセルされた。また、ガス資源が発見されてから税が導入された。データベースや鉱区システムは使いにくい。(探鉱会社 マネージャー)
 ⅴ 先住権は依然として不明瞭。より明確に簡潔にすべき。(探鉱会社 副社長)
 

4. 2006/2007年度版Fraserレポートの評価結果への反応

 「評価結果には重大な関心を持っている」、「複雑な許可プロセスを見直す必要がある」、「西オーストラリア州はオーストラリアNo.1の鉱業州であり、政策的にもNo.1でなければならない。」と西オーストラリア鉱業エネルギー協会(WA, Camber of Minerals and Energy)幹部はコメントしている。政府関係者は、「今回のレポートは、現在、西オーストラリア州の鉱山開発投資が記録的な状況であることを過小評価している」、「州政府は、2002年以来、系統的かつ期限を定めて制度の改善に努めている」とのコメントを発表している。
 また、近年、空前の資源ブームに沸く西オーストラリア州を舞台にして、鉱区更新手続き上の不備によるトラブル(Cazalay社とRio Tinto社等)などの問題が表面化していることも同州の政策面の評価を下げた要因との意見もある。

5. おわりに

  オーストラリア各州・準州政府にとって鉱業投資促進は鉱業政策の中心的なもののひとつである。各州・準州政府とも、自州・準州への探鉱投資額などには重大な関心を持っており、各種データベースの整備や補助制度、国内鉱業投資セミナーやカナダPDAC参加、日本での鉱業投資セミナー開催(JOGMEC・在日オーストラリア大使館共催)など鉱業投資促進のための施策を進めている。
  今回のFraserレポートにおけるオーストラリア各州・準州の評価は総じて高いものであったが、鉱物資源分野において「同国No.1」を自負する西オーストラリア州の投資環境ランキング(鉱業政策指標)が国内最低ランクとされたことは、関係者に少なからず衝撃を与えたようである。

参考文献
Fraser Institute Annual Survey of Mining Companies 2006/2007
“Miners give thumbs-down to WA”, The Australian, 2007/3/12
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構, 金属資源レポート2006.9,「世界の鉱業投資環境評価」-2005/2006年版Fraserレポートより-

 

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