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報告書&レポート

2007年4月26日 サンティアゴ事務所 中山 健 Tel:+56-2-228-4025 e-mail:nakayama-ken@entelchile.net
2007年39号

世界の金属鉱物資源開発ホットリージョン「ブラジル・Carájas地域」の現況

 Carájasは、ブラジル中央部アマゾンのジャングル地帯において金属鉱物資源の発見・開発により開けた地域である。面積約30,000km2の範囲内に鉄鉱床、マンガン鉱床、銅・金鉱床、ニッケル鉱床、金・銀鉱床、クロム・白金鉱床等の多種類の鉱床が密集する世界でも類をみない特殊な地域である。鉄、銅、ニッケル鉱床についてはワールドクラス規模のものを複数産する。鉄鉱石は、世界最大規模で、既に1985年から生産を開始、CVRD(Companhia Vale do Rio Doce)の北部システムとして鉄鉱石の主要生産拠点となっている。金属鉱物資源の宝庫であることからCVRD以外の非鉄メジャーもこれまでCarájas周辺で探査を行って来たが多くが撤退し、Carájas鉄道等のインフラを握っているCVRDの一人勝ちの状態になっている。銅鉱床については、2004年からSossego鉱床の生産が開始され、ニッケル鉱床は、Onca Puma鉱床の開発およびVermelho鉱床の開発準備が進んでおり、金属鉱物資源開発のホットリージョンとなっている。最近Carájas地域を訪れる機会があったので、同地域の金属鉱物資源の開発状況について報告する。

1. Carájas鉱床発見・開発の歴史

 ・1967年8月Companhia Meridional de Mineracaoが鉄鉱床を発見
 ・1971年Azul マンガン鉱床発見
 ・1974年Vermelhoニッケル鉱床発見
 ・1975年Igarape Bahia金鉱床*発見
 ・1977年Salobo銅・金鉱床発見
 ・1985年鉄鉱石およびマンガン鉱石生産開始
 ・1996年SossegoおよびAlemao銅・金鉱床*発見
 ・1998年Cristalinoおよび118銅・金鉱床発見
 ・2002年Igarape Bahia鉱床(金)終掘
 ・2004年6月Sossego鉱山から最初の銅精鉱出荷
 ・2007年10月鉄鉱石生産量累積10億tに達する見込み
 * Alemao銅・金鉱床はIgarape Bahia金鉱床の深部に相当
 

2. 位置およびインフラ状況

 Carájas地域は、Brasiliaの北北東約110km、Belemの南南西約600kmのPara州南東部位置しており、BrasiliaおよびBelemからCarájasまで定期航空便がそれぞれ1便/日運行している。ブラジリアからは約3時間を要する。鉱石積出港であるSao Luisとの間869kmは鉄道(EFC)が敷設されており、旅客列車も運行している。Carájasは、鉱山開発のためにCVRDが建設した人口5,000人、世帯数1,300の町で、標高は600m、気候は湿度が高いものの気温が低く快適。町内に入るにはCVRDの許可が必要である。町内にはホテルが2軒営業、病院も完備。町の周囲約7kmには猛獣侵入防止のためフェンスが設けられており、不法侵入者防止用にもなっている。また地域一帯は国有林(自然保護区)になっており、近くにはインディオ居住区がある。
 

図1. Carajas地域位置
図1. Carájas地域位置
 

3. 金属鉱床とその開発状況

 Carájas地域はブラジルにおいては、鉄の四角地帯(Quadrilatero Ferrifero)と並ぶ始生代から原生代に形成された金属鉱床密集地帯の1つである。地域内には図2に示すように、銅・金鉱床、金鉱床、ラテライトニッケル鉱床、縞状鉄鉱床(BIF)、マンガン鉱床、クロム・白金鉱床等多種類の鉱床が密集する。ラテライト化という後次の現象を除けば、いずれの鉱床も27億年前(始生代)から19億年前(原生代)の間に形成されたもので、特定の鉱床生成束縛条件をもった複数鉱床タイプが限定された地域に分布するという特殊な条件が重複した稀有な地域なのかも知れない。
 (1) 銅・金鉱床
 Carájas地域の銅・金鉱床は酸化鉄銅金鉱床(IOCG)および貫入岩関連金(銅)鉱床に分類される。前者はSossego、Salobo、Alamao鉱床に代表され、ウラン・コバルトを伴ない銅金属量は300万~1,000万tと大規模である。これに対して後者はBreves鉱床に代表され、錫・タングステンを伴い銅金属量は100万t以下と小規模で、当面はCVRDでは開発の対象にはなっていない模様である。
 

図2. Carajas地域鉱床分布
図2. Carájas地域鉱床分布

 
 ⅰ Sossego鉱山:
 Carájas町の南約25km、Carájas高原ジャングル地帯の南側の低地に位置する。1996年にPhelps DodgeとのJ/Vにより発見されたが、2001年Phelps Dodgeが50%の権益をCVRDに42.5百万US$で売却しCVRDの権益が100%となった。埋蔵量:245百万t、銅品位:1.1%、金品位:0.28g/t。開発投資額は413百万US$で2003年5月から建設を開始し、2004年6月に最初の銅精鉱を韓国に出荷した。生産能力は140,000t/年(精鉱中銅含有量)、マインライフは15年の計画である。2006年には117,000tの銅を生産量した。キャッシュコストは20~35¢/lbと推定される。
 同鉱山はSossegoピット(最終サイズ0.8km×0.8km×350m)とSequeirinhoピット(最終サイズ2.8km×1km×450m)から構成される(写真1)。従業員は520人。Sossego鉱床は角礫岩タイプでSequeirinho鉱床より銅品位が高い。剥土比:3.58、鉱石採掘量:50,000t/日。両鉱床から産出する酸化鉱(採掘量の約10%)は118鉱床の酸化鉱と合わせて処理するため貯鉱されている。鉱石は4.5km離れた選鉱プラントまでベルトコンベアで運搬され処理される。選鉱処理能力は40,000t/日、精鉱生産能力は467,000t/年。磨鉱は1基のSAGミル(直径12m)と2基のボールミル(直径8m)、浮遊選鉱はRougher:7セル(160m3/セル)、Scavanger-Cleaner:6セル(160m3/セル)で行われる。精鉱品位は、銅:30%、金:8g/t。精鉱中の鉱石鉱物の構成比は黄銅鉱:87%、斑銅鉱:4%、コベリン+輝銅鉱:2%、その他:7%。精鉱は南部のCanaa を経てParauapebasまで84kmをトラック輸送され、ParauapebasからSao Luis市のPonta da Maderia港まで貨車運搬され輸出される。
 

写真1. Sossego鉱山全景
写真1. Sossego鉱山全景

 現在湿式製錬プラント「CESL(Cominco Engineering Service Ltd)」をSossego鉱山内に建設中である。CESLプロセスはComincoが開発した湿式製錬方法の1つで、銅精鉱を高圧酸化・リーチング・電解で処理しカソードを生産、不純物を含む鉱石の処理ならびに金・銀といった貴金属の回収が可能である。現在建設中のものは10,000t/年の準商業プランで2007年8月に完成予定。CVRDでは2か年間このプラントでSossego鉱床の鉱石を用いて試験操業をした上で、結果が良好であれば本格的商業プラントを建設して、フッ素含有量の高いSalobo鉱床の鉱石を処理する計画である。
 
 ⅱ Salobo銅・金鉱床:
 Carájas高原北西のジャングル地帯に位置しており、1977年に発見された。Anglo Americanが50%の権益を有していたが2002年CVRDに37百万US$で売却、CVRD100%の権益となった。2006年8月にブラジル政府から建設許可が下り開発工事に着手、現在Itacaiunas川の橋梁建設中、2010年から生産が予定されている。埋蔵量:994百万t、銅品位:0.94%、金品位:0.52g/t、開発投資額:10億US$、生産量は200,000t/年(銅金属純分)の予定。前記CESLプラントの試験結果が良好であれば、生産量の半分100,000t/年をCESLで処理する計画である。
 
 ⅲ 118銅・金鉱床:
 Sossego鉱山の西北西約6.5kmに位置する(写真2)。権益はCVRD:50%、BNDES(ブラジル国家社会開発銀行):50%。酸化鉄銅金鉱床の酸化鉱が採掘対象で、埋蔵量:50百万t、銅品位:0.8%でマインライフ11年、生産量は45,000t/年(カソード)の予定。開発投資額は232百万US$の見込み。CVRDは2005年10月に開発を承認、現在鉱山建設のための政府の認可待ちの状況である。Sossego鉱床の酸化鉱も合わせて処理する計画。またVermelhoニッケル鉱床のHPAL(高圧硫酸浸出法)で使用する硫酸プラントを共有すること、電力供給、道路、機械修理工場、管理といったSossego鉱山のインフラを活用することでシナジー効果が期待される。2002年時点では2004年から生産開始とされていたが大幅に遅延している。
 
 ⅳ Alemao銅・金鉱床:
 Carájas地域のやや西部に位置する。2002年に約100tの金を生産して閉山したIgarape Bahia鉱床の深部に相当しており(両鉱床は同一鉱床)坑内採掘となる。権益はCVRD:67%、BNDES:33%。埋蔵量:219百万t、銅品位:1.4%、金品位:1.86g/t。生産量は銅:150,000t/年、金:218,600oz/年の予定。開発投資額は500百万US$の見込み。
 
 ⅴ Cristalino銅・金鉱床:
 Sossego鉱山の東約40kmに位置する。権益はCVRD:50%、BNDES(ブラジル国家社会開発銀行):50%。埋蔵量:247百万t、銅品位:0.7%、金品位:0.15g/tでマインライフ11年、生産量は150,000t/年、開発投資額は500百万US$の見込み。2002年時点で2006年末からの生産開始が予定されていたが、現在開発に着手しておらず大幅に遅延している。
 
 (2) ニッケル鉱床
 Carájas地域にはVelmelho鉱床、Onca Puma鉱床といったニッケル鉱床が存在する(図2)。いずれも超塩基性岩起源のラテライト鉱床である。Velmelho鉱床はHPALでニッケルマットを生産、一方Onca Pumaはフェロニッケルを生産予定。Velmelho鉱床の開発は、既述のように118鉱床の酸化鉱開発と合わせて行われることになる。また2006年にCVRDがIncoを買収したことに伴い、現在Carájas地域を含めたブラジルのニッケル鉱床開発計画の見直しが行われている模様。
 
 ⅰ Vermelho鉱床:
 Sossego鉱山の東方約15kmに位置する(写真3)。CVRDは2005年7月開発を承認。埋蔵量:44百万t、ニッケル品位:1.5%。生産量はニッケル:46,000t/年、コバルト:2,800t、マインライフ40年の予定。開発投資額は12億US$。このうち硫酸プラントへの投資額が約10%を占める。ニッケル回収にはオーストラリアにおける5か年間の研究結果に基づきHPAL法を採用。実収率は96%で、LME-gradeのニッケルカソード生産が可能。硫酸の原料の硫黄は輸入、Carájas鉄道を経由して山元のプラントまで搬入されることになる。

写真2. 118銅・金鉱床
写真3.Vermelhoニッケル鉱床

 
 ⅱ Onca Puma鉱床:
 Carájas地域南西端に位置する。元々Incoが権益を所有していたがカナダのCanicoに移転、2005年12月CVRDによるCanicoの買収によりCVRDが所有することになった。OncaおよびPumaの2つの鉱床からなる。埋蔵量:109百万t、ニッケル品位:1.8%。2006年から建設を開始、2008年第4四半期から生産予定である。開発投資額は14.8億US$とされている。フェロニッケルを生産、生産量は57,000t/年(ニッケル金属純分)の予定。
 
 (3) マンガン鉱床
 Azul鉱床:
 Carájas地域中央部に位置する。始生代の堆積岩を母岩とした鉱床で、1985年に鉄鉱石生産と同時に生産を開始した。埋蔵量:65百万t、MnO2:75%、2006年には1,692千t(鉱石)を生産した。マンガンの需要に合わせて生産調整を行っており、2007年は100万tの生産予定。現在のピットは大よそ1600m×600m×200m。剥土比:3.5、鉱石生産量:12,000t/日。鉱床は断層でピンチアウトすることが多くまた軟弱であることから掘削はバックホー(キャタピラー製3.5m3)、運搬はキャタピラー製100tダンプトラック(なお2008年には小回り利く38tのハイウエートラックに転換予定)を使用。ピット外の破砕設備で水洗破砕、鉱石実収率65%。鉱石サイズにより、Lump, Mediumu size, Sinter feedに分類され、化学用、バッテリー用として主に国内に出荷している。
 
 (4) 鉄鉱床
 Carájas地域の鉄鉱床は、27.5億年前に形成された始生代のItacaiunas 超層群中(火山岩―堆積岩シーケンス)の厚さ400mのBIF(縞状鉄鉱層)で、中央部のSerra Norte(N1, N2, N3, N4, N5, N6, N7鉱床)と南部のSerra Sul鉱床、東部のSerra Leste,鉱床等が知られている。埋蔵量:178億t、鉄品位66.1%。N4E鉱床が最初に開発され、現在N4E, N4W, N5E, N5Wの4鉱床で採掘が行われている(写真4)。N4W鉱床が主力で、2007年にはCarájas地域での生産量の約50%に当たる53百万tを生産する予定。またN5Eは2008年で終掘の予定。トラックはキャタピラー793C(278t)、TerexMT4400(253t)およびKomatsu830E(254t)等60台を、ショベルはP&H2800XPB等13機を有する。鉱石および母岩が軟岩であることから基本的にはバックホーにより採掘、ハードヘメタイト、ジャスペロイドおよび玄武岩の硬岩の箇所は発破により起砕。
 鉱石は3か所のインピットクラッシャーと一次破砕機で破砕後、二次・三次破砕および分級機を経て、Lump Ore, Sinter Feed, Pelet Feedに分級、貨車にて869km離れたSao Luis市のPonta da Maderia港まで運搬される。1列車は206台の貨車(延長2km)から構成される。

 写真4.N4およびN5鉄鉱床(Quick Bird衛星画像)灰色の部分は“Canga”と称される
鉄鉱床の風化したフェリクリートよりなり、Savana Metalofiraという潅木が繁茂、また湿原をなすことがあり可視領域の衛星画像で容易に鉄鉱床分布域が特定できる。
 
 (5) クロム・白金鉱床
 地域北東部のLuanga超塩基性岩中にクロム・白金鉱床が知られている。白金鉱床は資源量:60百万t、PGE品位:2.4g/tとされているが、CVRDの直近の開発計画には入っていない模様。
 
 おわりに
 2002年に発表されたCVRD長期計画によると、Sossegoおよび118鉱床は2004年から、Cristalino,AlemaoおよびSalobo各鉱床も2007年までに生産を開始する計画であったが、大幅に遅れている。その1つの理由には、政府の建設許可に時間がかかっていることがあげられる。また118鉱床の開発は酸化鉱を対象として独自に開発する計画であったが、電解用の硫酸プラン建設を伴うことからHPAL法を採用するVermelhoニッケル鉱床の開発と合わせて開発することになり、遅延することとなっている。
 Soosegoに続きSalobo, 118, Alemao, Cristalinoで生産がスタートすればCarájas地域の銅生産量は70万t/年になり、CVRDは世界7位の産銅会社になる。またブラジルの国内生産はCaraiba鉱山の3万t/年、Chapada鉱山の6万t/年と合わせて約80万t/年の生産が可能となり、国内需要35万t/年を大幅に上回り、ネットで銅輸出国になる。
 Carájas地域はアマゾンのジャングル地帯の中にありながら、Carájas鉄道により869km離れたPonta da Maderia港までの輸送が確保されており、また電力等のインフラも整備されており、豊富な鉱物資源は将来に亘って順調に生産されるものと思われる。
 ところで、ブラジルにおいて第2のCarájasの発見の可能性があるのではないかとの期待が沸いてくるのは筆者のみではないだろう。ブラジルの地質は主に35億年前から5.7億年前に形成された先カンブリア時代の地質帯から構成されており、初期大陸の形成、成長から大陸同士の融合・分裂の繰返し(Wilson Cycle)の歴史が刻まれている。その中は類似した現象の繰返しとカタストロフィックなイベントの組合せからなっており、顕生代に形成されているような例えば、アンデスのポーフィリーカッパーベルト、コースタルカッパーベルトのIOCG鉱床や我国の黒鉱鉱床がその中に畳み込まれてもなんら不思議でない。ブラジルの本格的金属鉱物資源探査は1990年代後半から始まった(前CODELCOチーフジオロジストF.Camus氏談)と言われている。政府も探鉱促進策として、地質図幅や空中物理探査データの提供を行っており、先行する企業は、独自の探査モデルとこれらを積極的に活用しながら探査を行っているところである。第2のCarájasという黄金郷の発見も夢でないかもしれない。
 
 謝辞
 Carájas鉱山見学に際して、同鉱山ならびにブラジル三井物産リオデジャネイロ支店長はじめ職員の方々に大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

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