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報告書&レポート

2007年6月14日 サンティアゴ事務所 中山 健 Tel:+56-2-228-4025 e-mail:nakayama-ken@entelchile.net
2007年55号

ブラジル鉱業投資促進策-鉱業権管理近代化と基礎的地質情報整備・提供-

 ブラジルは日本の約23倍、8,547,403.5km2という広大な面積を持ち、かつアマゾンのジャングル地帯のような熱帯雨林・熱帯風化帯、インフラの未整備等からこれまで十分な地質調査あるいは鉱床探査が実施されてきたとは言い難い。それゆえブラジルはいま「新たな探査フロンティア」として期待されている。近年探鉱活動も活発化してきており、ここ数年ラテライトニッケル、IOCG鉱床などの新鉱床発見が報告されている。
 こうしたなか、ブラジル政府は鉱業投資促進のため、鉱業権の管理、申請・認可のオンライン化を積極的に進めている。またこれまでにも地質図幅作成および空中磁気・放射能探査といった基礎的地質情報の整備・提供を行ってきたが、2003年にスタートした第1期ルーラ政権下で更に重点的に実施されて来ている。ブラジルで先行する探査会社はこれら基礎的情報を上手く活用して探査を行っていると言われている。本報告では、新しい鉱業権管理システムの概要、基礎的地質情報整備・提供状況およびデータの購入方法等について紹介する。

1. ブラジルの鉱業投資促進策
 Fraser Institute(2007)による鉱床ポテンシャルの相対的評価ではブラジルは64か国・地域中24位と決して高いとは言い難いが南米では2002年以降チリを凌駕しペルーに次ぐ探鉱投資が行われている(図1)。2006年はCVRD、Votrantin Metais、 Jaguar Mining、Yamana Gold、CODELCO等53社により291百万US$の投資が行われている。しかし単位面積当たりの探鉱費は34US$/km2(チリは279US$/km2)と決して多いわけではない。インフラが未整備であり、かつ基礎的情報が少なく調査地域が限定されていることを物語っているのかも知れない。
 ブラジル政府は、2001年に投機目的の鉱区所有防止のための鉱業権管理近代化、鉱山保安・鉱山閉山規則の確立、政府組織改革を含むReforme do Sector Mineral Brasilreino(ブラジル鉱業セクターの改革)を制定した。2003年に発足したルーラ政権はReforme do Sector Mineral Brasilreino を継承して2004-2007年の4年間に27.5百万US$を投じて鉱業権管理システムの近代化および約180百万US$を投じて地質図幅調査および空中磁気・放射能探査等の基礎的地質情報整備・提供事業を加速化して来た。

図1.中南米の探鉱投資推移(Metals Economics Group,2006)
 図1.中南米の探鉱投資推移(Metals Economics Group,2006)

2. 鉱業権管理近代化
 ブラジル鉱山動力省の下部組織であるDNPM(鉱山局)は、2003年からIT技術を活用した地質情報レファレンスサービス、情報の電子文書化、計画意思決定支援システム、リアルタイムの鉱業権認可システム、DNPM本部と25支所および鉱山動力省のネットワーク化等の近代化を進めてきた。
 ブラジルの鉱業権許認可は、各州にあるDNPM支所が窓口になって行なってきたが、1999年までは、鉱区の重複等多くの問題を抱えて鉱業権申請から認可までに実に4年を要するような実情で鉱業活動の大きな障害の一つになっていた。このためDNPMは鉱業権認可の簡素化、透明化を図るため、新たな鉱業権管理システム「SIGMINE」の導入を図っているところである。現在リアルタイムの鉱業権認可システムの前段階として既に2005年後半からインターネット上での申請事前受付を開始しており、申請から認可までに要する時間は約1か月に短縮された。
 申請者はインターネット上で鉱業権設定状況を確認して、電子フォームに記入を行う。電子フォームはDNPMに暗号化ファイルで送られ(申請者情報は完全守秘)、入力ミス(CIC/CNPJの数字入力・鉱区指定・採鉱鉱物の種類など)が無いかチェックされ、受理された時は申請者にアルファベットと数字のコードが自動的に送られる。電子フォームの申請書はDNPMによって保管される。その後30日以内に申請者は送付されたコードと書面による正式申請書を提出して初めて正式申請扱いとなり、鉱業法の第11条で定められる先願権が決定する。実際申請者は電子フォームの送信後直ちにDNPM支局に出向いて正式書類を提出している。

図2.Carajas地域の鉱区設定状況(DNPM→SIGMIN→Para state)
図2.Carajas地域の鉱区設定状況(DNPM→SIGMIN→Para state)
 濃いピンクが採掘鉱区、中央部がCarajas鉄鉱山

 申請の電子化は、数字の記述ミスなどを解消し、分析の効率化および第三者にも閲覧が可能となり透明性を高めることが出来る。また鉱業権申請者が希望する地域が空き鉱区であるのかをインターネット上で確認でき、またブラジル国内における全ての鉱区設定状況および鉱区の検索が出来るようになっている(図2)。地質図、水系、インディオ保護区、自然保護区情報も見ることが出来また、鉱区位置のみならず鉱区設定日、鉱区設定者、鉱種など情報も知ることが出来る。ただし鉱業権申請者はブラジルに国籍を有する個人もしくはブラジル法人でなければならない。それぞれID番号をインプットすることで手続きに入ることが出来る。
 またGISソフトを使用すれば、鉱区情報のみならず付随した地質図、水系、インディオ保護区、自然保護区情報をダウンロードすることも出来る。図3は、ブラジル全土のニッケルを対象とした鉱区(申請中のものを含む)を抽出したもので、下の表に鉱業権者のベスト10を示してある。
 DNPMでは、リアルタイムで申請・認可が出来るシステムを完成しているが、用語の定義を鉱業法上で規定する必要があり現在鉱業法改正手続き中で2007年中には運用を開始することが出来るようになる(鉱山動力省担当者談)。

図3.ブラジルのニッケル鉱区設定状況
 図3.ブラジルのニッケル鉱区設定状況
 下表に鉱業権所有トップ10を示してあるがCVRDがトップである

3. 基礎的地質情報整備・提供
(1) 地質図作成
 2004年以前15年間に国土の3%、基盤岩分布域の7.9%に当たる240,000km2の地質図が作成されていた。第1期ルーラ政権(2003-2006年)は鉱業振興のため、この20年間以上停滞していた政府による基礎的地質情報整備のため2004-2007年の4か年のPrograma Geologia do Brazil(ブラジル地質プログラム)をスタートさせた。当然ながら鉱物資源ポテンシャルの高い地域、基盤岩分布地域が優先された。
 2004-2007年の4か年間に国土面積の29.9%、2,542.972km2において、縮尺10万分の1および20万分の1地質図377シートを作成するというプログラムで予算は80百万US$である。鉱物資源ポテンシャルの高い地域およびアマゾン地域をカバーできるように計画されている。前者は縮尺10万分の1、後者は20万分の1地質図作成である(図4)。このうち40%はCPRM(地質調査所)が独自に実施、25%がブラジリア大学(UNB)ほか12大学と協力して実施、10%を州政府に委託、25%を専門の調査機関(コンサルタント)に発注して実施する。
 また2003年にGIS(ARC VIEW)対応の地質図(縮尺250万分の1および100万分の1)CD-ROMが出版された。100万分の1地質図は緯度間隔4度、経度間隔6度の区画で46シートからなる。内容は、地質単元、構造、鉱徴地、LANDSAT TM画像、空中磁気全磁力図、DEMデータ等から構成されている。なおこれらはCPRMリオデジャネイロで購入することが出来る。

図4.地質図作成範囲
図4.地質図作成範囲

(2) 空中磁気・放射能探査
 空中磁気・放射能探査(以下空中物理探査と称する)は、ブラジルアマゾンのようなアクセスの悪く、植生が密かつ被覆層の厚い地域での広範囲の地質構造把握に極めて有効で、地質調査の予察的段階としても活用されている。1995年にCPRMがブラジル空中物理探査プロジェクトデータベース(AERO)をスタートさせ、またCPRMは独自に空中物理探査を実施するとともに、民間企業、国営企業や他の国立研究機関が実施した空中物理探査データベースの構築と管理も行っている。CPRMは、1953-2006年までに68プロジェクトを実施している(1,000シリーズ)。ブラジル原子力エネルギー委員会(CNEN)およびブラジル原子力株式会社(NUCLEBRAS)によるウラン鉱床探査を目的とした調査は1959-1982年に33プロジェクト実施している(2,000シリーズ)。民間企業によるものは1955-2006年に12プロジェクト(3,000シリーズ)、PETROBRAS、石油公社(CNP)によるものが1952-2996年に68プジェクト実施されている(4,000シリーズ)。CPRMでは特に鉱物資源賦存可能性の高い基盤岩分布地域およびアマゾン地域のような遠隔地での実施に注力している。
 1989年から2003年の15年間に国土の3%、基盤岩分布域の7.2%に当たる249,000km2の探査を実施、ルーラ政権(第1期政権)の計画では予算66百万US$で2004年から2007年の間に国土の32%、基盤岩分布域の77%、2,700,000km2の範囲をカバーする計画があったが最終的にはかなり縮小されている模様である(図5)。鉱業州であるゴイアス州とミナスジェライス州では州政府とCPRMと共同で事業を実施している。2004年から実施されているプログラムでは、Fugro、Prospectos(ブラジル)およびMicrosurvey(ブラジル)の3社が本プロジェクトのコントラクター有資格会社である。測定は固定翼機を使用し、原則測線間隔0.5km、タイライン間隔1km、測定方向は地質構造を考慮して設計している。測定にかかるコストは13US$/kmとのことである。
 CPRMでは取得データおよび解析結果を販売しており、頒布価格は2004年に実施したAnapu-Ture地域(面積24,735km2、測定ライン長53,331km)の場合、取得データのXYZデータが2レアル/km2、グリッドデータが2レアル/km2、また全磁力図(極磁気変換済)、第1次微分解析図、放射性K, U, Th図、同Ratio図、DEMからなる解析図セットは、公表してから最初の1年間は1.5レアル/km2、2年目は1年目の1/2、3年目以降は更に1/2となる。いずれGeosoft対応となっている。
 空中物理探査データの購入方法および問合せは以下のとおりである。

●データ購入方法

購入者は E-mail もしくは FAX で購入希望範囲を CPRM 担当宛に示す。 CPRM は販売可能範囲か否かを判断。可能であれば購入者は注文書を CPRM に送信する。
CPRM 担当者 : Sr.Luis Marcelo Fontoura Mourao, Chefe de Divisao de Geofisica

CPRM の請求書に基づき、購入者は価格+ 5%( サービス料 ) をブラジル銀行に振込む。

購入者は FAX にて銀行振込み証明書を CPRM に送信。 CPRM は証明書受領後購入者に CD-R でデータを発送。

●問合せ先
  Sr.Luis Marcelo Fontoura Mourao
  Chefe de Divisao de Geofisica
  Servico Geologico do Brasil (CPRM)
  Tel:+55-21-2295-4097
  Fax:+55-21-2295-8991
  E-mail:moura@rj.com.gov.br

図5.2004-2007年空中磁気・放射能探査実施範囲(2007年は計画)
 図5.2004-2007年空中磁気・放射能探査実施範囲(2007年は計画)

おわりに
 国土面積が広く既存探査データの少ないブラジルでのグリーンフィールドの探査では、探査会社は、CPRM発行の地質図幅および空中磁気・放射能探査データを積極的に活用している。なかでも空中磁気・放射能探査データを評価指標としている。1例であるが、CODELCO(チリ銅公社)は、地表兆候のないアマゾンのBoa Esperanza地域で鉱床生成モデルと空中磁気・放射能探査データ解析から有望地区を選定し酸化鉄銅金鉱床を発見したと言われている(銅量100万t>)。CPRM担当者の話によると、先行する探査会社はCPRMの空中磁気・放射能探査実施予定地区が明らかになった段階でデータの取得前から競って鉱区の設定を行っているとのこと。
 鉱業権管理オンライン化により、これまで申請から認可までに年単位の時間を要していたものが、リアルタイム実行できるようになり、待機時間が大幅に短縮されることになり迅速な意思決定と探鉱活動が可能となる。
 このようなブラジル政府の積極的な鉱業投資環境整備が民間企業による探鉱投資を促進することになるものと期待される。

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