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報告書&レポート

2007年7月5日 企画調査部 植松和彦報告 Tel:044-520-8590 e-mail:uematsu-kazuhiko@jogmec.go.jp
2007年60号

ASEAN+3鉱物協力協議会合について

はじめに

 2007年6月8日、ミャンマーの新首都であるネーピードーにおいて第1回ASEAN+3鉱物協力協議会合が開催され、ASEANと日本、韓国及び中国との間で鉱業分野における協力関係を強化する新しい枠組みが設立され、その活動がスタートした。会合では、ASEAN側から日本、韓国及び中国の3か国に対し鉱業分野の協力プロジェクト提案があり、今後日本を含む3か国で具体化に向け検討することとなった。本稿では本会合の結果概要を紹介する。
【ASEAN加盟国及び日中韓3か国代表者】
 
【ASEAN加盟国及び日中韓3か国代表者】

1. ASEAN+3鉱物協力協議会合開催に至る経緯
  ASEAN+3鉱物協力協議会合の設立に関しては、2005年8月2日、マレーシアのクチンで開催された第7回ASEAN鉱物高級事務レベル会合(ASEAN Senior Officials Meeting on Minerals: ASOMM)でASEAN+3の枠組での協力を推進するための組織として日本、韓国、中国の3か国との協議の場を設けると決議がなされた。
 更に2005年8月4日マレーシアのクアラルンプールで開催された第1回ASEAN鉱物閣僚会合(ASEAN Ministerial Meeting on Minerals: AMMin)において、鉱物分野におけるASEAN対話パートナーとASEANとの協力が重要であるとの認識から、本組織の設置が認められたことを受けて今回の会合開催に至ったものである。

2. ASEAN+3鉱物協力協議会合
  2007年6月8日、ミャンマーの新首都であるネーピードーのRoyal Kumudra Hotelにおいてミャンマー鉱山省(Ministry of Mines, Myanmar)のホストにより第1回ASEAN+3鉱物協力協議会合が開催された。
 この会合は、ASEAN鉱物高級事務レベル会合であるASOMMと日本、韓国及び中国の3か国(+3)により開催される初めての会合であることから、正式名称はASOMM+3 Consultationsとなっている。
 会合は、ミャンマー鉱山省のThan Myint鉱山局長の議長の下、ASEAN加盟のインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ・ダルサラーム、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアの10か国に加え日本、韓国及び中国の3か国を加えた13か国が参加し、各国の鉱業を所管する省庁高官及びASEAN事務局関係者が出席した。

表1.ASEAN+3鉱物協力協議会合に参加する鉱業所管省庁

国  名

省 庁 名

国  名

省 庁 名

インドネシア

エネルギー鉱物資源省

ラオス

エネルギー鉱山省鉱山局

マレーシア

天然資源・環境省
鉱物地球科学局

ミャンマー

鉱山省 鉱山局
地質鉱物資源探査局

フィリピン

環境・天然資源省
地球科学鉱山局

カンボジア

産業・鉱山・エネルギー省
鉱物資源局

シンガポール

国家開発省

 

 

タイ

工業省
一次産業鉱山局

日本

経済産業省
鉱物資源課

ブルネイ・ダルサラーム

開発省

韓国

産業資源部 鉱物資源課

ベトナム

工業省 国際協力局、
天然資源環境省 地質鉱物局、科学技術局

中国

国土資源部
国際科学技術協力局
中国地質調査局

 会合の冒頭、我が国は本会合の設立提案を歓迎するともに、鉱物資源の探査開発の促進に向け、ASEAN各国との協力関係を積極的に構築していきいとの意向を表明した。
 議事では、ASOMM側から本枠組みであるASOMM+3の設置規程(Terms of Reference)が提案され、全参加国により承認された。
 続いて、ASEAN側提案プロジェクトに関しては、ASOMMで承認が得られた提案プロジェクトに関し、主提案国関係者がその概要を紹介し、日本、韓国及び中国の関係者との意見交換を通じこれら3か国が本国での検討のために持ち帰る案件を決定した。
 我が国は、支援要請があったプロジェクトのうち、ASEAN加盟国の鉱物及び金属の回収及びリサイクル研修プログラム(マレーシア提案)など3つのプロジェクトに対し、我が国による支援の可能性につき、持ち帰り検討することとなった。
 各プロジェクトは、例えば、研修やセミナーなどが特定国で実施あるいは開催される内容になっているが、その研修やセミナーには加盟国関係者の一定の人数が参加できるための旅費や滞在費が見積もられており、ASEAN加盟国関係者に情報共有が図れ、共通に裨益する形態をとっている。
 会合で提案されたプロジェクト名と主提案国は以下のとおりである。

  (1) ASEAN加盟国の鉱物及び金属の回収及びリサイクル研修プログラム(マレーシア提案)
  (2) ASEAN加盟国における休廃止鉱山の再生及び原状回復(坑廃水管理及び処理を含む)に関する研修及び能力開発プログラム(マレーシア提案)
  (3) 鉱業における企業の社会的責任(CSR)に関するワークショップ(インドネシア提案)
  (4) 鉱産物の埋蔵量及び資源量分類に関する国連国際枠組分類(UNFC)の利用のための研修(ミャンマー提案)
  (5) 地質図及び資源図マッピングにおける研修 (マレーシア提案)
  (6) 鉱山保安、鉱山環境及び評価に関する研修コース(インドネシア提案)
  (7) ASEANにおける鉱物資源開発の法規制に関するセミナー(インドネシア提案)
  (8) ASEAN地域の鉱物、金属の需要/供給に関する調査(フィリピン提案)
  (9) 世界貿易機関(WTO)協定及び鉱物の貿易の自由化に関するワークショップ(マレーシア提案)
  (10) 中国南部における鉱業投資機会調査 (タイ提案)
  (11) ASEAN鉱物情報及びデータベースシステムの開発(インドネシア提案)
  次回第2回会合は、2008年6月にフィリピン・マニラにて開催されることとなった。

3. ASEANについて
 ASEANとは、東南アジア諸国連合(Association of South East Asian Nations: ASEAN)のことで、1967年8月8日、タイのバンコクで設立された。
 当初の加盟国はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ の5か国であったが、その後、ブルネイ・ダルサラーム(1984年)、ベトナム(1995年)、ラオス及びミャンマー(1997年)、カンボジア(1999年)が順次加盟して現在10か国で構成されている。事務局はインドネシアのジャカルタに設置されている。
 組織の主要な目的は、(1)域内における経済成長、社会・文化的発展の促進、(2)地域における政治・経済的安定の確保、(3)域内諸問題の解決である。
 
 組織は、ASEAN首脳会議、ASEAN外相会議(ASEAN Ministerial Meeting:AMM)、ASEAN経済閣僚会議(ASEAN Economic Ministerial Meeting:AEM)の主要首脳・閣僚会議で構成され、この傘下にASEAN常任委員会(ASEAN Standing Committee:ASC)などが設置されているほか、産業別や分野別の閣僚会議がある。
 
 ASEANは域外の組織や諸国との協議の場を設けており、主要なものとしては、ASEAN拡大外相会議(ASEAN・PMC)、ASEAN地域フォーラム(ARF)、アジアと欧州の関係の強化を目的にアジアから、日本、中国、韓国、ASEAN7か国、欧州から、欧州委員会、EU(15か国)の計25か国及び1機関が参加するアジア欧州会議(ASEM)などの域外諸国や機関との協議の場が設けられている。
 
 我が国は、日・ASEAN首脳会議、閣僚レベルの日・ASEAN外相会議、日・ASEAN経済産業大臣会議(AEM-METI)、日・ASEAN財務相会議、日・ASEAN経済産業協力委員会(AMIEOC)などのASEANと日本との協議の場を持っている。最近、我が国はASEAN+3にインド、豪州、ニュージーランドを加えた16か国による『東アジアEPA』構想を打ち上げている。
 また、中国のASEANに対するアプローチが積極的で、中国・ASEAN自由貿易地域構想を進めている。中国は既にASEANとのFTAを締結しており、ASEAN+3による『東アジアFTA』構想を打ち出している。
 
4. ASEAN鉱業の特徴
 ASEANの鉱業は、金属・非金属鉱物資源に恵まれているが、未だ探査、開発が不十分な状況で、鉱物部門の地域経済発展への貢献度は比較的低い。域内で産出鉱物の種類と品位は極めて多様であり、域内の産業構造や経済の規模の違いから鉱業が経済、地域開発に及ぼす影響、貢献度もまた様々である。
 資源開発に係るリスク因子やリスクレベル、法制度や社会体制も異なる。非金属鉱物は量的に世界市場で大きなシェアを占め、金属鉱物は外貨獲得など価値的に重要性を持つ。ASEAN の主要金属鉱物には、ニッケル、銅、錫などがあり、一方、非金属鉱物には、宝石原石、石膏、石灰岩、カオリンなど、様々な工業鉱物がある。その主な取引相手は、日本、韓国、中国及び他のASEAN諸国である。

表2.ASEAN諸国の主要鉱産物生産量(2006年)
(単位:千t)

 

亜鉛


(トン)

ニッケル

ボーキサイト

インドネシア

816.6

 

 

79.8

182.3

140.3

1,501.6

117.5

ラオス

60.8

 

 

5.4

 

 

 

1.1

ミャンマー

19.5

2.0

0.1

 

 

 

 

1.0

フィリピン

17.7

 

 

36.1

23.5

70.8

 

 

ベトナム

11.4

 

32.0

 

 

 

20.0

5.4

タイ

 

 

27.2

3.5

11.4

 

 

0.2

マレーシア

 

 

 

3.5

0.3

 

4.8

2.4

世界

15,179.3

3,747.7

10,439.3

2,171.2

18,891.5

1,416.3

180,135.3

324.4

出典:World Metal Statistics May 2007

おわりに
 会合が開催されたネーピードー(Naw Piy Taw)は、ミャンマー政府が2005年11月7日、首都機能をヤンゴンからピンマナ県(ヤンゴン市の北方約300km)に移転する旨発表し、建設が進められていた首都である。ネーピードーまではFokker F27(フレンドシップ機)のプロペラ機で約1時間30分、Fokker 28のジェット機で50分程度である。会合が開かれたRoyal Kumudra Hotelは空港から30分程度のところにある田園と緑に囲まれたコテージスタイルのホテルである。

 今回はミャンマー政府のアレンジで市中心部にある鉱山省の建物を訪問する機会を得た。ホテルから鉱山省まではバスで30分程度、関係者の話しによると、現在同省本省には400名程度の職員が働いており、また、ヤンゴンにも400名程度の職員がいるとのこと。このほか、現在首都には37の政府省庁の施設、省庁で働く多くの幹部、職員のための宿舎、来客用のホテルがあり、ホテルに関しては現在10軒目を建設中とのとのことであった。
 会合ではASEAN加盟国の鉱業分野を所管する省庁高官が出席、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア等の関係者はAPEC鉱業大臣会合やAPEC/GEMEEDに出席している関係者であった。
 本会合は、ASOMMの第7回定期会合の一環として開催された関係から、本会合開催日の数日間ASOMMの各種ワーキンググループ会合や本会合が開催されていたが、関係者の話から、2007年2月豪州で開催されたAPEC鉱業大臣会合での結果も報告されたとのことで、鉱業分野でのASEAN域外での活動に関しても情報の共有が図られていることが判った。
 今回日本、韓国、中国に提案されたプロジェクトを見ると、探査・開発に重要
【ネーピードーのミャンマー鉱山省の建物】
【ネーピードーのミャンマー鉱山省の建物】

な役割を果たす、リーガルフレームワーク(法的枠組み)の整備や地質情報の整備など投資環境整備に関するもの、『持続可能な開発』に対応した鉱業の環境的、社会的側面への対応を考慮したものが中心であった。その中で、インドネシア政府が提案したセミナーのタイトルに企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility: CSR)を用いていたことから、CSRという用語が少しずつではあるが鉱業界にも浸透してきていることがうかがえた。タイ政府が提案した中国南部投資環境調査に関してはASEAN諸国も中国への鉱業分野への投資に関心を持っていることが判った。
 ASEAN諸国を一言で述べるならば、政治、経済、社会等その多様性に象徴されるが、鉱物資源分野においても同様のところ、未だ探査・開発が進んでいない地域が多く存在し、各国とも自国の経済発展の主要産業としての重要性を認識し、探査開発活動を積極的に進めようとしている。一方我が国も昨今の鉱物資源市場における急激な変化に対応して、特にレアメタル、レアアース等の資源確保が急務となってきたが、アセアン諸国にはこれらの資源の賦存が期待されている地域もあり、こうした地域での探査開発を促進して行くことが求められている。
 かかる状況において、我が国はASEAN加盟国との鉱業分野における関係を強化する上でも、本会合で提案されたプロジェクトの具体化に向けた努力が必要であり、これらプロジェクトの実現はASEAN諸国での探査開発の事業促進に寄与するものと考えられる。

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