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報告書&レポート

2007年7月19日 シドニー事務所 久保田博志 Tel:+61-2-9264-2493 e-mail:kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp
2007年65号

オーストラリアのウラン資源(2)-「現場報告」北部準州ウラン探鉱(Australia’s Uranium Conference 2007現地見学会より)-

 2007年5月15日、16日の両日、北部準州ダーウィンにおいて大洋州採鉱冶金学会(Australasian Institute of Mining & Metallurgy:AusIMM)主催のウラン鉱業会議「Australia’s Uranium Conference 2007」が開催され、会議の前後には、北部準州内のウラン探鉱現場・鉱山等の現地見学会が行われた。
 本稿では、この現地見学会から旧Ram Jungleウラン鉱山及びその周辺で現在探鉱が行われているMt. Fitch地区について紹介する。

1. はじめに -現地見学会の概要-
  ウラン現地見学会「Darwin Exploration Tour」は、ウラン鉱業会議「Australia’s Uranium Conference 2007」の後、2007年5月17日(木)に行われ、鉱山・探鉱会社、連邦及び州政府・準州政府関係者など約20名が参加した。  見学先は、Cameco Resources Australia Pty Ltd.(カナダのウラン企業Cameco Corporationの子会社)、Compass Resources NL社(本社シドニー、以下Compass社)Bachelor探鉱事務所、Ram Jungleウラン鉱山跡、Mt. Fitchウラン・ベースメタル鉱床、Ram Jungle Creek Southウラン鉱床などであった。

図1. 見学会位置図

2. Cameco社ダーウィン事務所(コア観察)
  Cameco社が保管しているKing River地区等のボーリングコアを観察した。鉱床は、鉱脈タイプ/不整合タイプ。周辺地質は、角閃岩・せん断された片麻岩にドレライトが貫入し、これらを不整合に白亜紀の堆積岩が覆っている。ウラン鉱化作用は、角閃岩・せん断された片麻岩中で強く、石英脈部分での鉱化が強い。ウラン鉱化の程度は、放射線測定器で針の振れが大きいことで確認できる。

写真1.石英脈に伴うウラン鉱石化(Cameco社コア)

3. Ram Jungleウラン鉱山跡
 旧Ram Jungleウラン鉱山は、ダーウィンの南約50kmのLitchfield国立公園に隣接するBachelor町にある(車で約1時間)。
 鉱床は不整合タイプ、周辺地質は花崗岩の基盤を不整合に頁岩が覆い、ウラン鉱化作用が頁岩に見られるほか、銅・鉛などの硫化物の鉱化(含銅頁岩)も強い。
 Ram Jungleウラン鉱山は、連邦政府がAustralian Atomic Energy Commission(AAEC)社を通じて開発、契約ベースでConsolidated Zinc Pty Ltd.(後のCRA社、現Rio Tinto社)の子会社Territory Enterprises Pty Limitedが管理・運営を行っていた。*1
 ウラン鉱石863,000t・品位0.27~O.43% U3O8からイエローケーキ(U3O8)3,530tが生産されたほか、銅鉱石約360,000t・銅品位2%以上が処理され、銅精鉱20,000t(金属純分量)も生産されていた。更に、1965年から、銅鉱石370,000t(硫化鉱260 000t・銅品位1.7%及び酸化鉱110,000t銅品位2.0%)からヒープリーチングにより銅が回収された。*1
 ウラン採掘の環境への影響は認識されていたが、当時、連邦政府は、環境修復のための費用の積立てを行わず、1971年の閉山時には特段の環境修復は行われなかった。モンスーン気候帯にあり年間1,500mm以上の降雨のある同地域では、バクテリアによって酸化された硫化物が原因となってEast Finniss Riverで鉱害が発生した。
 1977年に環境修復作業が開始され、1983~1988年には連邦政府によって16.2百万A$の基金(fund)プログラムが実施され、1990~1991年には、Rum Jungle Creek Southの堆積場の整備に18百万A$が費やされた。*1
 現在は、堆積場は整形・覆土・植栽などの修復が施され、旧露天採掘ピットに出来た池では、モニタリングが行われている。

表1.旧Ram Jungleウラン鉱山開発の経緯 *2

時期

概 要

1949年

鉱床発見

1952年~

連邦政府の資金提供により開発が始まる。

1953年

White’s露天採掘開始(~1958年)

1954年

鉱石処理プラント操業開始

1957年

Dyson’s露天採掘開始(~1958年)

1971年

閉山

表2.Ram Jungle鉱床の資源量 *3

鉱床

鉱石(t)

U3O8(t)

銅(t)

White’s

698 000

1088

17 000

Dyson’s

157 000

534

Intermediate

360 000

10 000

Rum Jungle Creek South

665 000

2860

Mt Burton

6 000

13

White’s

698 000

1088

17 000

出典)

*1 Uranium Information Centre Webサイトより一部抜粋
*2 Uranium Information Centre Webサイトを元に作表
*3 Uranium Information Centre Webサイトより

写真2.Ram Jungleウラン鉱山露天採掘跡写真3.Ram Jungleウラン鉱山堆積場跡

4. Compass Resources NL社Bachelor探鉱事務所(コア観察)
 Compass社が探鉱中のMt. Fitchウラン鉱床とそれに隣接する亜鉛・鉛・銅・ニッケル鉱床のボーリングコアを観察した。
 Mt. Fitchウラン鉱床は、頁岩中に鉱化のある近接するRum Jungle鉱床などとは異なり、せん断・角礫化されたドロマイト-マグネサイト層を中心にウラン鉱化がある。ボーリングコア観察では、ウラン鉱化の強い角礫化したドロマイトとウラン鉱化のない頁岩との境界部を見ることができ、両岩相でのウラン鉱化の強弱を放射線測定器で確認することがきる。
 また、隣接する亜鉛・鉛・銅・ニッケル鉱床のボーリングコア観察では、頁岩中に堆積構造と調和的に胚胎する硫化物(黄銅鉱等)が確認できた。この鉱化はいわゆる含銅頁岩(Kupferschiefer)と考えられる。

写真4.Mt. Fitchウラン鉱床写真5.Mt. Fitchウラン・ベースメタル鉱床 角礫部ウラン鉱化写真6.Mt. Fitchウラン・ベースメタル鉱床 含銅頁岩

5. Mt.Fitchウラン・ベースメタル鉱床
  Mt.Fitchウラン・ベースメタル鉱床は、旧Rum Jungleウラン鉱床の北西約15kmに位置する。
  鉱床は不整合タイプ、周辺地質は始生代の花崗岩類を不整合に原生代後期の粗粒砂岩・礫岩からなる基底部(Crater Formation)、炭酸塩質岩石・ドロマイト、灰黒色頁岩(Whites Formation)の順で覆っている。ウラン鉱化作用は、始生代の花崗岩類及び原生代後期堆積岩からウラン鉱液がもたらされ、原生代中期の不整合面にウラン鉱床として堆積している。同様のタイプにRanger、Jabiluka、Ram Jungle、East Alligatorウラン鉱床がある。

写真7.Mt. Fitchウラン鉱床鉱床露頭図2.Mt. Fitchウラン鉱床断面図図3.Ram JungleCreek地区のウラン鉱床とベースメタル鉱床

6. Ram Jungle Creek Southウラン鉱床(Compass Resources NL社)
  Ram Jungle Creek Southウラン鉱床は、Bachelorの西約3.2kmに位置している。鉱床は不整合タイプ、周辺地質は、基盤の花崗岩の上を不整合に、頁岩・片岩(Whites Formation)とドロマイト(Coomalie Formation)が、北側は角礫岩(Geolsec Formation)が覆っている。ウラン鉱化作用は花崗岩の基盤を不整合に覆う頁岩層中に見られる。
  ウラン鉱物の初生鉱物であるPitchblendが黄鉄鉱を含む緑泥石片岩(Whites Formation)に含まれ、ベースメタルの硫化物はほとんど含まれていない。1950年に地表付近の放射能異常から鉱床が発見されている。

7. その他
  Compass Resources NL社(以下Compass社)は中国最大の亜鉛企業であるHunan Nonferrous Metals Corp Ltd.(以下Hunan社)とMt. Fitchウラン探鉱JV(50/50%)を形成している。
  Hunan社は、Compass社の株式9.58%を保有するほか、Ram Jungle Creek Southウラン鉱床に隣接する地区でCompass社が建設中のBrown銅鉱床(SX-EW法/精鉱生産、資源量9.4百万t・銅品位0.82%・コバルト品位0.14%・ニッケル品位0.15%)への投資も行っている*
* Compass Resources NL アニュアルレポート2006年

8. おわりに
  オーストラリアは世界でも有数のウラン資源ポテンシャル国である。鉱床タイプ(操業中の鉱山)も酸化鉄銅・金・ウランタイプ(Olympic Dam鉱山)・ロールフロント/砂岩/古河川タイプ(Beverley鉱山、Honeymoon鉱山(建設中))・不整合タイプ(Ranger鉱山)と様々である。
  今回の現地見学会は、主に不整合タイプのウラン鉱床を対象としていたが、不整合に伴うウラン鉱化作用にも、基盤側の裂罅や石英脈付近、不整合面の上側の泥質岩中、礫岩中の鉱化など様々な形態があること、また、ウラン鉱化だけではなく泥質岩中に銅・鉛などの鉱化が伴われることなどを再認識した。
  2006年度の同セミナーの現地見学会では、ロールフロント/砂岩/古河川タイプのBeverley鉱山の見学会が行われているが、次回はIOCGタイプのウラン鉱床見学の機会を期待したい。

参考文献

 

Compass Resources NL, Darwin Exploration Tours資料: Compass Resources NL Sites,
      17th May, 2007, Australian Uranium Conference2007
Compass Resources NL アニュアルレポート2006年
Compass Resources NL社Webサイト
Uranium Information Centre Webサイト

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