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報告書&レポート

2007年10月11日 ロンドン事務所 高橋健一報告 Tel:+44-20-7287-7915 e-mail:takahashi@jogmec.org.uk
2007年95号

Mining Journal社「Zinc Day」セミナー参加報告

 Mining Journal誌が主催する「20:20 Investor Series」と称されるセミナー・シリーズの一環として、「Zinc Day」が9月4日にロンドンで開催された。同シリーズでは、主に欧州の投資家向けに、各金属、あるいは国ごとのテーマにより年間4、5回程度開催されている。個々のセミナーの共通テーマは、金属の需給・価格動向、各国の鉱業法規、採鉱・生産動向、そして関連企業の事業内容・展望・投資ポテンシャルなどである。今回のセミナーでは、亜鉛にスポットを当て、需給・価格動向に関する講演が1件、探鉱企業による自社プロジェクトの概況についての講演が9件行われた。以下、需給・価格動向と、欧州関連企業のプロジェクトの概要を報告する。

1. 需給・価格動向に関する講演 

-CHR Metals社(英)、Ms. Claire Hassall,co-founder-


 世界のベースメタル、特に鉛と亜鉛の市場動向に関する調査、コンサルティングなどを行うCHR Metals社(英)による亜鉛産業、市場展望に関する講演。
 
(1)需要

 
過去数年は中国、インドが牽引力となり世界の亜鉛需要が大きく伸びてきたが、2007年の伸率は4~4.5%と、2006年の7.4%より鈍化すると予測される。
 
中国は2007年の需要伸びがほぼ11%と引き続き堅調と予想されるが、2006年より鈍化の見通し。
 
中国以外の地域別の動きを見ると、北米が回復の兆しがあるも需要が弱く、アジアは依然堅調、欧州は軟化基調となっている。
 
中・長期的には、2000~2010年の世界の亜鉛需要の年平均伸び率は3.8%、2010~2020年の年平均伸び率2.8%と予測される。消費量でみると2000~2010年の10年間の総消費伸び量は400万t、2020年までの次の10年間の総消費伸び量は410万t、との見通し。引続き中国・インド需要は堅調と予測されるが、両国を除いた世界の亜鉛需要は、2000~2010年の年平均伸び率0.9%、総消費伸び量70万t、2010~2020年の年平均伸び率1.2%、総消費量伸び量120万t、と僅かな伸びに留まる見込み。
 
高コストの理由により、亜鉛の代替品へのシフトはまだ具体化していないが、亜鉛の高価格が今後も持続するようであれば代替品へのシフトは現実的なものになり得る。

(2)供給

 
1980年代から1990年代において亜鉛産業が低収益産業であったこと、加えて2001年から2003年の価格低迷を背景とし、2000年以降、新規鉱山開発への投資が見送られていた。
 
その後の記録的な高値により、現在、亜鉛鉱山は高収益性を持つに至ったが、過去の開発投資の低迷が影響し、新規供給のための鉱山開発はキャッチアップするには至っていなかった。
 
2006年に入り、一時的な操業中止鉱山の再開(Balmatt, Tennessee, Langlos, Lennard Shelfなど)も含め、一連の開発プロジェクトが開始され、供給不足にあった需給関係は改善されつつあり、Balmatt,Tennessee,Langlos,LennardShelf2007年の供給増に寄与するものと見られる。
 
FS、開発資金調達、鉱山建設の完了までに、まだしばらく時間はかかるものの、2008年以降採掘が開始される準備期間中のプロジェクトが多数あり、数年後には亜鉛の生産が需要を上回るまでに至るものと予測される。

 

亜鉛の需給ギャップ見通し

(3)亜鉛価格動向・見通し

 
亜鉛平均価格は2006年に$3,275/tとなったが、2007年はそれを上回る$3,400/tと予想される。
 
亜鉛価格は2007年最高値をつけたが、今後は中期的調整局面に入ると予測される。
 
現価格レベルは長期に維持出来る価格レベルでは無く、市況・需要サイクルの自然な動きとして価格は下降に向かうと見られ、2007年をターニングポイントとし、価格は今後下降基調をたどり、数年後には2000~2003年の価格レベルまで下降すると予測される。
 
この価格下降基調は、急激に高騰した亜鉛価格に対し投機資金による“利食い”が入るなどの要因で上下幅のある価格変動が予測される事に加え、今まで供給不足によりタイトであった需給関係が、供給の増加により2008年以降緩和される事、需要の伸びの鈍化(亜鉛の高値が需要鈍化の一要因でもある)、などが今後予想される価格下降の主因。

 

LME亜鉛価格の推移

(4)中国の動向

 
中国の輸出額は2006年実績で約1兆US$に達し、前年比27%の伸び、貿易黒字1,800億US$に達するに至った。
 
中国全工業生産高の半分以上が輸出向けとなる。委託加工貿易は輸出の53%、輸入の41%を占める。
 
中国は、亜鉛の輸入が輸出を上回るようになった2004年以来、亜鉛の生産国から消費国として認識され始めた。
 
中国政府は、加熱気味の経済成長を抑制する策の一環として、委託加工貿易の範囲を縮小しており、今後、更なる抑制政策を取ることも考えられる。また中国元の切り上げによる輸出の減少も考えられ、引き続き中国の亜鉛需要は堅調と見るも、こうした政治的要因の動きを注視していく必要があると言える。

 
2. Anglesey Mining(英国、AIM上場)

-Mr. Bill Hooley, Executive Director-


 英国ウェールズ北部のParys Mountain地域において、銅、鉛、亜鉛の鉱山開発プロジェクトを実施するAnglesey Mining社の講演。
 同地域は1990年以降、金属価格の低迷により開発計画が約15年間凍結され、昨今の金属価格上昇に伴い、2005年に入って再開された。2006、2007年には同地域内西部にあるWhite Rock鉱床を、当初の開発ターゲットとして、鉱床評価のためのボーリング調査が進められた。2007年2月の鉱床評価では、以下のような結果が得られた。

White Rock 鉱床の資源量
  Indicatted Inferred
Resources
(百万t)
1.75 0.40
亜鉛(%) 4.27 3.54
銅(%) 0.36 0.32
鉛(%) 2.22 1.63
銀(g/t) 39.0 45.0
金(g/t) 0.43 0.38
JORC基準による。(亜鉛カットオフ品位:3.3%)

 
 さらに、この結果を前提とし、Scoping Studyを実施し、2007年7月に完了している。その結果では、

 
バンカブルFSを含めた開発費用は£15百万
 
操業コストは£30.25/t(亜鉛換算量)
 
同鉱床の採掘期間は5年超
 
プロジェクト全期間における余剰操業キャッシュフローは£21百万超
 
年間生産量は、亜鉛精鉱6千t、鉛精鉱3千t(共に金属量)
    当初の採掘深度は-175mまで、鉱石処理規模は500t/日

 などが得られ、採算性が確認された。
 また、同社では、White Rockの開発を足がかりに、下表のとおり1990年に確認されている、Parys Mountainプロジェクト全体の鉱床開発戦略を、次のように描いている。

 
White Rockのプロジェクトは、White Rock西部に隣接するより大規模で将来的に長期にわたり生産が可能と見られる“Engine Zone”地区への足がかりとして取り組まれるもの。
 
White Rockの開発をベースに、Parys Mountain全体の開発を目指しており、White Rockで得られるキャッシュを利用して、地下450mまで立坑を掘削し、年間の亜鉛精鉱生産を19,000tにまで上げる予定。
 
東部域の予測鉱物資源量の増量やGarth Daniel地区までの開発区域の拡大。
 
Parys Mountain地域の全鉱山寿命は20年以上と見積もられる。

White Rock 鉱床以外のプロジェクト全体の資源量
  Indicatted Inferred
Resources
(百万t)
1.41 4.20
亜鉛(%) 6.65 4.62
銅(%) 1.99 2.83
鉛(%) 3.42 2.16
銀(g/t) 99.0 18.0
金(g/t) 0.79 0.13
1990年Robertson Groupによる。

3. ZincOx Resources社(英国、AIM上場) 

-Mr. Michael Fostter,Managing Director-


 鉱山開発プロジェクトに加え、亜鉛リサイクル・プロジェクトを実施するZincOx Resources社の講演。今回の講演は進行中の鉱山プロジェクトであるイエメンのJabaliプロジェクト、売却が完了したカザフスタンのShamerdenプロジェクトに加え、同社のリサイクル・プロジェクトの近況報告がなされた。
 
(1)イエメンJabaliプロジェクト
 Jabaliプロジェクトは現在までFSが完了、概測+精測資源量10.8百万t、亜鉛品位8.7%、鉛品位1.2%(JORC基準による)が確認されており、開発資本コスト176百万US$、酸化亜鉛年産7万t規模のプロジェクトである。プロジェクト権益は同社52%、イエメン企業 Ansan Wikfs社が48%。当初計画より遅れたが、2007年8月にイエメン政府よりライセンスが許可され、2009年前半に生産開始を予定。同プロジェクトは、亜鉛価格を1,500US$/tと想定すると、NPVが8,500万US$、内部収益率は21%にのぼる。
 
(2)カザフスタンShamerdenプロジェクト
 Shamerdenプロジェクトは予定どおり、スイスGlencore社に売却。2007年1月に9百万US$の第一回目の支払いがなされた。今後4回に分けて支払いがなされるが、支払額は、Shamerdenからの亜鉛生産量、その間の亜鉛平均価格を基に決定される。同社では、2007年中に更に総額2,500万~3,700万US$の支払いがなされると試算している。
 
(3)リサイクル・プロジェクト(トルコ、米国)
 同社のリサイクル・プロジェクトは鉄くずから鉄を再生する際、電気アーク炉内に蓄積される「電気アーク炉ダスト」(EAFD: Electric Arc Furnace Dust)を対象とし、亜鉛や酸化亜鉛を抽出するものである。亜鉛メッキされた鉄くずを電気炉で溶解し、鉄を分離した後のEAFDには、15~25%の亜鉛が含まれる。これは平均的な亜鉛鉱石の3~5倍の含有量となる。世界規模では年間530万tのEAFDが排出されるが、そこには106万tの亜鉛が含まれると推定され、潜在的な需要が期待されている。
 同社のリサイクル関連プロジェクトは、トルコのAliagaプロジェクト, 米国のBig River Zincプロジェクト、Ohioプロジェクトの3プロジェクト。Aliagaプロジェクト, Big River Zincプロジェクトは現在操業中。Ohioプロジェクトでは「回転炉床炉」(RHF: Rotary hearth furnace)を使用し、EAFDを処理する計画が進行中。RHFの使用により、廃棄物を出さずに酸化鉛・亜鉛をハロゲン化物として、鉄を直接還元物(DRI: Direct Reduced Iron product)として分離する。さらにDRIを電気炉で溶解すると、銑鉄とスラグに分離される。スラグは建設用材に適しており、鉄鋼とともにそれぞれ、関連業界に販売が可能となる。Ohioプロジェクトは2008年第3四半期に稼動予定である。
 Big River Zincプロジェクトでは、Ohioプロジェクト及びAliagaプロジェクトのRHFから生産される酸化亜鉛を、スコーピオン鉱山(ナミビア)方式での湿式製錬法により処理し、亜鉛地金を生産する計画である。このため、既存の製錬プラント設備を、溶媒抽出サーキットを含んだリーチング・プラントに更新することとし、同社の建設計画では、投資額約90百万US$、建設期間約16か月により、亜鉛地金年産9万t規模のプラントが建設される予定である。生産開始は2008年半ばを予定している。
 BigRiverZincリサイクル・プロジェクト全体のNPVは(亜鉛価格を1,500~1,900US$レベルに想定して)251百万US$、内部収益率はプロジェクトにより異なるが、20%~35%のレンジと試算される。
 
4. Connemara Mining 社(アイルランド社、AIM上場) 

-Mr. John Teeling, Chairman-


 アイルランドの亜鉛をターゲットとした探鉱会社、Connemara Mining社による講演。
 アイルランドは、2006年に全西ヨーロッパの亜鉛生産量の40%を占め、その世界的な亜鉛資源ポテンシャルに加え、低税率、歴史的に繁栄した産業基盤を背景に、関連サービス企業、人材なども豊富。
 アイルランドでは1960年代初めに亜鉛が発見されて以来、探鉱・鉱山生産が活況となったものの、2002年頃までには亜鉛価格の低迷、鉱床発見の停滞等により、探鉱事業自体が低迷した。
 2002年にアイルランド南部Limerick近郊にて、Xstrata Minco社が高品位の亜鉛を発見した事に加え、その後の亜鉛価格が上昇基調となったことから、アイルランドにおける亜鉛探鉱・鉱山生産が再活性化。こうした環境を背景に、同社はアイランドにて既に23件の探鉱ライセンス(亜鉛22件、金1件)を取得し、更に6件の認可を受け、現在その発効待ちである。
 取得済の23ライセンスの内、16ライセンスはLimerick近郊、Pallas Greenにおけるもので、更にその内15ライセンスは、カナダTeck ComincoとのJV。MonasterONASTTER地域では、ボーリング調査を2007年5月に開始し、現在進行中である。尚JVパートナーのTeck Comincoは、2010年末までに3百万US$の探鉱投資を行い、Monaster地域と Nescastle West地域 (同じくLimerck近郊)のプロジェクト権益を75%に引き上げる予定。
 同社のその他の亜鉛探鉱ライセンス所有地域は、欧州最大、世界第5番目のBoiden/Tara亜鉛鉱山のあるNavanの西20kmに位置する、Lough Sheelin地域(アイルランド中部)に5ライセンス、アイルランド南西部にあるCasttlemaine区域に1ライセンスとなっている。現在までの調査の結果、前者 Lough Sheelin地域の地質環境はTara鉱山に極めて類似したものであることが示されている。過去の探鉱では同地域のDrumlerryで小規模の鉱床(資源量170万t、鉛・亜鉛合計品位4.9%)が発見されている。当初のターゲットとして、この鉱床付近におけるボーリング調査を、2007年第4四半期から開始する予定。

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