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報告書&レポート

2007年10月18日 シドニー事務所 久保田博志 Tel:+61-2-9264-2493 e-mail:kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp
2007年97号

セミナー報告「Excellence in Exploration & Mining 2007」

 9月9日~11日の3日間、シドニー市内でMining Journal誌、オーストラリア証券取引所(ASX)などの後援による探査鉱業投資セミナー「Excellence in Exploration & Mining 2007」が開催された。
 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)シドニー事務所は、オーストラリア国内及び同国企業とのJV探鉱プロジェクト形成の機会創出、探鉱等鉱業関連情報収集のため、2006年に続き、ブース出展を行うとともに、銅セッションのスポンサーとなり、日本の銅鉱業の歴史とオーストラリアにおけるJV探査事業の概要等を紹介した。
 本稿では、「Excellence in Exploration & Mining 2007」の概要を報告する。

1. はじめに
 「Excellence in Exploration & Mining」は、オーストラリア国内外の鉱山会社、探鉱ジュニア企業、投資銀行等が参加して例年10月上旬に開催されているが、2007年は、シドニーにおいてアジア太平洋経済協力会議(APEC)が9月2日~9日の期間開催されたことから、本セミナーもAPECにあわせて9月開催となった。
 セミナー初日には、一般投資家向けのプログラムが組まれ、最近の資源ブームやウラン資源探査への関心の高まりから例年になく多くの個人投資家が来場していた。

2.探査鉱業投資セミナー「Excellence in Exploration & Mining 2007」の概要
 2007年の「Excellence in Exploration & Mining 2007」は、参加企業・団体等約80社、展示ブース約60件、参加者600名以上に達した。例年、参加者は400~500名であることから、2007年のセミナーが盛況であったことが分かる。*1
 参加企業・団体等の業種別の割合は、探鉱ジュニア企業(生産準備段階の企業含む)が全体の41%(33社)、証券・銀行・リスク保険等の投資金融関係17%(14社)、鉱山企業(生産のある企業)12%(10件)、政府機関7%(6機関)、出版・マスコミ7%(6社)、鉱業関係サービス7%(6社)、調査・コンサルタントが7%(6社)、大学が2%(2大学)であった。
 参加企業のプロジェクト対象国の割合(重複あり)は、オーストラリア国内64%(31件)、アジア地域14%(7件)、大洋州地域(オーストラリアを除く)8%(4件)、欧州・アフリカ地域6%(3件)、北米4%(2件)、中南米4%(2件)であった。*1
 参加企業のプロジェクト対象鉱種の割合(重複あり)は、金25%(28件)、銅19%(21件)、ウラン16%(18件)、ニッケル・モリブデン13%(14件)、亜鉛・鉛9%(10件)、銀8%(9件)、レアアース・タングステン・錫・レアメタルなどその他12%(12件)であった。*1
 本セミナーから最近のオーストラリア企業の探鉱傾向は、(1)オーストラリア国内や近隣のアジア・大洋州地域に加え、北米(ウラン探鉱)や欧州(アイルランドなどでの亜鉛・鉛探鉱)などが新たに加わり対象地域が全世界にわたっている、(2)金属価格高騰の影響から、金に加え、銅、ニッケル、亜鉛・鉛などのベースメタル探鉱の割合が高くなっている、(3)労働党が「新規ウラン鉱山開発禁止政策」から新規ウラン鉱山開発容認へ方針転換したことも影響してウラン探鉱の割合が大きくなっている、(4)中国の輸出制限等の影響から、タングステン、レアアース等のレアメタルの探鉱が多くなっていることがあげられる。

図1.参加企業の国別プロジェクト割合
図1.参加企業の国別プロジェクト割合

図2.参加企業のプロジェクト対象国の割合
図2.参加企業のプロジェクト対象国の割合

図3.参加企業のプロジェクト対象鉱種の割合
図3.参加企業のプロジェクト対象鉱種の割合

3.2007年の「鉱業オブ・ザ・イヤー」
 「鉱業オブ・ザ・イヤー(The National Mining Awards)」は、シドニー鉱業クラブ(Sydney Mining Club)が中心となって、2007年のオーストラリア鉱業各分野において最も印象に残った企業に対して与えられ、毎年、セミナーの最終日の夕食会において発表されている。
 2007年は、「発見(Discovery of the year)」、「フロンティア探鉱(Frontier Explorer of the year)」、「生産者(Producer of the year)」、「成長オブ・ザ・イヤー(Growth Story of the year)」、「技術(Applied Technology of the year)」、「取引(Deal of the year)」、「マネジャー・オブ・ザ・イヤー」(Manager of the year)」の各分野の受賞者の発表があった。
 
(1) 「発見オブ・ザ・イヤー」には、Carrapateena銅・金鉱床(南オーストラリア州)を発見した個人探鉱家Rudy Gomez氏が選ばれた。フィリピン生まれの同氏は、南オーストラリア州内で10数年間にわたり探鉱を続け、1995年には友人らから資金を募りCarrapateena鉱区を取得、2005年に南オーストラリア州政府のボーリング補助制度PACE(The Plan for Accelerating Exploration)を利用して実施したボーリングでCarrapateena銅・金鉱床を発見した(469~543m@Cu 3.03%・Au 0.4g/t、Cu 0.7%Cut off)。この発見はPACE制度を利用した探鉱で最初の大規模鉱床発見となった。現在はTeck Cominco(カナダ資本)がオペレーターとなっている。*1
 同賞には、Tropicana地域(西オーストラリア州)で風成砂層下の潜頭鉱床の探査に成功しているIndependence Group NL(本社パース)、原位置回収法(In-situ Leaching)で生産しているBeverlyウラン鉱山(南オーストラリア州)の北に位置するFour Mileウラン鉱床(南オーストラリア州)を発見したHeathgate Resources(米国資本)もノミネートされた。
 
*2 AusIMM,The AusIMM Adelade Newsletter,No.07/2005-August,p4
 
(2) 「フロンティア探鉱オブ・ザ・イヤー」には、南オーストラリア州(Bulyeroo、Innamincka、Moomba、Mootanna鉱区)やニューサウスウェルズ州(Muswellbrook、Bulga、Hunter Valley鉱区)において高温岩体(Hot Fractured Rock)の探査・地熱開発を進めるGeodynamics Limited(本社ブリスベン)が選ばれた。
 同賞には、世界初の商業目的の海底熱水鉱床探査をPNG沖で実施するNautilus Minerals Inc(本社トロント)とカントリーリスクの高いコンゴ共和国で探査を実施するAnvil Mining(本社パース)もノミネートされた。
 
(3) 「生産者オブ・ザ・イヤー」には、西オーストラリア州Kambalda地域でニッケル鉱山を操業するMincor Resources NL(本社パース)が選出された。同社は、同地域でMittel、Mariners、Redross、Wannawayの各ニッケル鉱山を操業するほか、Carnilya Hill、North
 Dordieなどの新規鉱山を開発、更に、Otter Juan鉱山の買収による生産増加を見込んでいる。
 同賞には、Mt. Garnet鉱山(クィーンズランド州)など生産好調のKagara Zinc Limited(本社パース)、探鉱活動の結果、Rosebery亜鉛・鉛鉱山(タスマニア州)の資源量を65%拡大し、鉱山寿命を2012年から2020年に延ばしたZinifex Limited(本社メルボルン)がノミネートされた。
 
(4) 「成長オブ・ザ・イヤー」には、2006/07年度の税引き後利益が前年度比152%増加の90百万A$に達し、Mt. Garnet、Balcooma、Dry River South鉱山(クィーンズランド州)の操業に加え、Adnural Bay鉱床、Lounge Lizard鉱床(共に西オーストラリア州)など新たなプロジェクトを立ち上げたKagara Zinc Limited社が選出された。
 同賞には、Sepon金・銅鉱山(ラオス)、Golden Grove亜鉛・銅鉱山(西オーストラリア州)、Prominent Hill銅・金鉱山(南オーストラリア州)のほかに探鉱・買収で事業を拡大しているOxiana LimitedとMincor Resources NLがノミネートされた。
 
(5) 「技術オブ・ザ・イヤー」には、坑内ボーリングの自動化により掘削効率と安全性を大きく向上させたMatt Thruston氏(National Operations Manager, Major Pontil Pty Limited(本社ブリスベン、カナダ系ボーリング企業Major Drilling Group Internationalのオーストラリア法人))が選ばれた。
 同賞には、物理探査技術の適用で探鉱に成果をあげているIndependence Group NL(本社パース)、海面下1,700mの深海底での熱水鉱床探鉱開発に遠隔操作車両(ROV:Remote Operated Vehicle)搭載のボーリング機を探鉱に使用したNautilus Minerals Inc.がノミネートされた。
 
(6) 他には、「取引オブ・ザ・イヤー」に、Peabody Energy(米国資本)による買収を高値(15.3億US$)で応じた石炭企業のExcel Coal Limited(本社シドニー)と同社CEOのTony Haggarty氏が、「マネジャー・オブ・ザ・イヤー」には、高温硫酸浸出プラントのトラブルが続いたMurrin Murrinニッケル鉱山(西オーストラリア州)を計画生産レベルに導いたNeil Meadows氏(Minera Resources Limited)が選ばれた。

4.「オーストラリア鉱業の伝説(Legends in Mining Awards)」
 本セミナーでは、長年オーストラリア鉱業の発展に貢献した探鉱・鉱山関係者を「Legends in Mining Awards(オーストラリア鉱業の伝説)」として表彰している。2007年は、元WMC社の地質技術者Roy Woodall氏とMelbourne大学教授で歴史学者のGeoffrey Blainey氏の二人が表彰された。
(1)Roy Woodall氏(地質技術者)
 Roy Woodall氏は、1930年生まれ。1953年にWestern Australia大学を卒業(理学)、1957年にはCalifornia大学で修士を取得している。
 Woodall氏は、1953年にWestern Mining Corporation社(後のWMC Resources社)に入社、1967年に首席地質技術者(Chief Geologist)、1968年からは探鉱責任者(Exploration Manager)となる。1978年から2000年までWMC社の役員を務め、現在は、Bendigo Mining社など多数の企業の役員となっている。
 Woodall氏は、1966年のKambalda地域のニッケル鉱床(西オーストラリア州)や、1975年のOlympic Dam銅・金・ウラン鉱床(南オーストラリア州)など、オーストラリアを代表する大鉱床の発見に貢献している。同氏は、WMC社に勤務した約30年間に122鉱床を発見、その内の90鉱床は現在も操業中である。
 Woodall氏は、地元業界紙のインタビューで、「西オーストラリア州の地質は、北米のそれに似ているが、カナダで発見されているような銅、銅・亜鉛、ニッケルの大規模鉱床は、まだ、発見されていない。西オーストラリア州は、まだ、金探鉱しか行われていない」との同州におけるベースメタル探鉱の可能性を示唆する意見を述べている。
 
(2)Geoffrey Blainey氏(歴史学者)
 Geoffrey Blainey氏は、1930年メルボルン生まれ。Ballaratの鉱山町などビクトリア州内で育ったことから、鉱山の歴史に関心を抱くようになる。1954年に「The Peak of Leyll」を出版(2000年に第6版が出版されるベストセラー)、その他にも鉱山史関係の著作を多数発表、その中には、「A Rush That Never Ended – History of Australian Mining」、「The Golden Mile」、「The Rise of Broken Hill」、「Mines in Spinifex-The Story of Mt.Isa」などが含まれている。
 Blainey氏は、1993~1998年の間、Ballarat大学の学長を務め、同大学から文学博士号を授与される。21年間にわたってMelbourne大学で歴史学の教鞭と取り、その間、多くの賞を受賞している。

5.おわりに
 資源ブームの影響から、2007年の「Excellence in Exploration & Mining 2007」は、2006年以上に多くの参加者があった。特に、ウラン関係の企業の参加と金属価格の高騰からベースメタル探鉱を全面に出すジュニア探査企業の講演やブース展示が目を惹く投資セミナーとなった。

写真1.石油天然ガス・金属鉱物資源機構の展示ブース
 
写真2.石油天然ガス・金属鉱物資源機構のスポンサー・プレゼンテーション(永井所長)

写真1.
石油天然ガス・金属鉱物資源機構の
展示ブース

 

写真2.
石油天然ガス・金属鉱物資源機構の
スポンサー・プレゼンテーション(永井所長)

参考文献等
*1 Excellence in Exploration & Mining 2007プログラム
*2 AusIMM,The AusIMM Adelade Newsletter,No.07/2005-August,p4

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