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報告書&レポート

2007年11月1日 リマ事務所 西川信康 Tel:+51-1-221-5088 e-mail:ommjlima@chavin.rcp.net.pe
2007年100号

第28回ペルー鉱業大会報告

 2007年9月10日から14日にかけて、ペルー第2の都市アレキーパでペルー鉱業協会が主催する第28回ペルー鉱業大会(Convencion Minera)が開催された。この大会は2年に一度行われる鉱業分野ではペルー最大のイベントで、折からの好景気を反映し、国内外の鉱業関係者を中心に過去最大の15,000名を越える参加者と712社に及ぶブースが出展された。JOGMECリマ事務所も、本大会に参加したので、その概要と注目を浴びた講演内容について報告する。

1. ペルー鉱業大会の概要
 ペルー鉱業大会は、1954年にリマでスタートしたのを皮切りに、原則隔年で開かれ、1995年の22回大会以降は、ペルー南部の中心都市アレキーパでの開催となっている。
 ペルー鉱業大会の構成は、基調講演、技術報告などの講演会とブース展示会(EXTEMIN:Exhibicion Tecnologica Minera)から成る。
 講演会は、4会場に別れ、それぞれの会場で、地域住民との摩擦や企業の社会的責任などの社会問題や、地質鉱床、リーチング、選鉱、鉱害対策など関する鉱山技術、拡大を続ける中国市場の動向など100件を超える報告が行われ、活発な討議が繰り広げられた。特に、大会3日目にメイン会場で行われた中国セッションには、ほぼ満員となる聴衆が詰め掛け、中国への関心の高さが伺えた。
 ブース展示会(EXTEMIN)については、参加企業は鉱山機械メーカー、部品メーカー、エンジニアリングメーカー等のサプライヤーが大半で、鉱山会社、ジュニア企業など上流部門の会社の展示はわずかであった。国別では、ペルー企業547社の他、米国40社、チリ35社、カナダ32社、ドイツ17社、豪州12社、スペイン10社等で、JOGMECもブースを展示し、JV探査スキームや資源衛星・物理探査に関する技術開発、海外での鉱害防止の取り組みなどをアピールし、多くの参加者の訪問を受けた。
 今回の鉱業大会のテーマは、「鉱業:ペルーの発展に向けた力の結集:Mineria:Union de esfuerzos para el desarrollo del Peru」で、国、鉱山会社、地域住民の融和・共生への取り組みの必要性が強調された大会となった。
 大会冒頭の挨拶でペルー鉱業協会のYsaac Cruz会長は、「2007年から2011年までの5年間にペルーの鉱業分野への投資金額は116億$が予測される。主要なプロジェクトとしては、Toromocho(20億$)、Mina Conga(15億$)、Rio Blanco(14億$)、La Granja(7億$)、Las Chancas(6億$)Michiquillay(4.1億$)、Bayovar(3億$)、Las Bambas(2.4億$)である。」として、依然、好調な鉱業投資が継続するという期待感を示す一方、Juan Valdiviaエネルギー鉱山大臣は、「ペルー人の多くは、鉱業を、地域住民の生活や農業を脅かすPolluterと見ている。我々は、持続的開発に向けてこのような見方を変える努力を払うべきだ」と述べ、地域住民に対する鉱山開発への理解の啓蒙、一層の社会支援、経済支援の必要性を強調した。
 
2. 注目すべき講演内容
(1)IDB代表が、ペルー鉱業の付加価値化を提言
 IDBの地域開発経済顧問、Fidel Jaramillo氏は、初日の基調講演で、「ペルーでは鉱業が重要な収入源であるにも関わらず、ペルーにおける加工度は未だに低く、幾つかの一次産品の生産のみを集中的に行なっている。持続的成長を高め、国際市場の変動に対応するためには、生産の多様化、高付加価値化を図ることが肝要である。」と指摘するとともに、「鉱山生産に依存している国は国際価格の変動に対抗する力が弱く、それが国全体の経済に大きく影響する。安定的な経済成長を図るためには、付加価値の高い製品を生産するための政策を設けることが必要である」と述べ、政府に対し、ペルー鉱業の付加価値化を推進する政策を実行するよう提言した。
 一方、今後、国と企業側との契約に関しては、「国際金属価格の変動に対応できるフレキシブルな契約を結ぶためのメカニズムを設け、価格の変動と経済上のバランスを保証できるような契約を結ぶべきである」と主張した。
 同氏の提言は、ペルーの原料鉱石の多くを依存する我が国にとって、見過ごすことのできない問題であり、今後の資源政策の行方を注意深く見守る必要がある。
 
(2)Bear Creek 社の地域社会との友好関係構築に向けた取り組み
 ペルーの中・南部で5件の探鉱プロジェクトを実施しているBear Creek社のChadika Eidinne副社長は、同社のペルーでの探査活動を通じた地域社会との付き合い方について、いくつかの示唆に富んだノウハウを紹介した。

 
ボーリング機材が3か月もあると、地域住民は操業鉱山と見なしてしまう。探査であることを順序だてて丁寧に説明・理解を得る必要がある。
 
住民の最大の関心事は水資源への影響。水不足、水の汚染に対して細心の注意を払う。
 
事業に住民を参加させ、共同責任体制を作ることが肝要(例えば、住民らによる環境監視委員会を設置し、住民自らが水資源に対する環境汚染の監視を行う)
 
近傍住民だけでなく、周辺住民へのケアも必要(鉱山反対運動は、直接的な裨益を受けない周辺住民の嫉妬によるものが多い。周辺地域にも税金の還元など裨益があること等を正確に伝達)
 
地域社会の要求(教育、健康、インフラ整備等)をまず聞くこと(企業がその地域にとって重要だとみなす分野と、住民の要求のバランスをとることが大切、企業の一方的な押し付けはよくない)
 
常に聞く姿勢が大事(住民が何か言おうとしているときは、どんなに忙しい時でも1分でもいいから彼らの言い分に対し真剣に耳を傾けること。相手を「聞く」、すなわち「受け入れる」という姿勢を示すことが大切)
 
ケチュア語の通訳確保(アンデス農村部では、特に高齢者層はスペイン語を理解できない人々が多い。また、ケチョア語で説明することは、地域社会に対する敬意を示すことになり、地域住民との距離を縮めるという点で効果が大きい)
 
教会関係者との対話(地域では、特に、教会が大きな影響力をもっているため、教会との関係は重要なポイント)

 最後に、同副社長は、このように、こちらが最大限の配慮を払っているつもりでも、地域住民は、必ず文句を言うものである。地域住民とは、嫉妬深い恋人のようなもので、彼らとうまくやっていくためのポイントは「私たちは、正しいことを行っている。何も後ろめたいことはしていない」ということを、一人一人に繰り返し説明し、理解を得ることが必要であると述べた。
 
(3)Tintaya鉱山拡張計画は2008年までに完成の予定
 Xstrataのホセ・マリン副社長は、2006年BHP Billitonから買収したTintaya鉱山について、今後の生産計画を明らかにし、「現在当社は銅生産を現在の年間12万tから20万tに増産するための計画を検討中である。Tintaya鉱山の近傍にあるAntapaccay鉱床は現在F/Sの段階にあり、2008年第1四半期に完了の予定である。Titaya鉱山本体とこの衛星鉱床の開発と併せて年間20万tを上回る生産量が期待される。」と述べた。Antapaccay鉱床の埋蔵量は4億7千4百万t、銅の平均品位は0.74%。なお、2007年のTintaya鉱山の銅生産量は、精鉱品位の上昇で前年比3%増の12万4千tになる見込みであることを明らかにした。
 また、2004年に国際入札で落札したLas Bambas銅探鉱プロジェクトの進捗について、「現在、プレF/Sの段階にあり、これを2008年までに終了し、2009年にF/Sに移行したい」と述べ、順調に推移していることを強調した。同社は2007年の3月に、本鉱床の鉱量の前回の調査を69%上回る5億8百万t(銅品位 1.14%、モリブデン 0.022%、金 0.11g/t)と発表し、ワールドクラスの鉱山に向けて自信を覗かせている。
 Xstrataは、技術セッションに4件の報告を行った他、同社のブースには、地域住民の子供たちが招かれ、地元住民と良好な関係を築いていることをアピールするなど、同社のペルーでのプレゼンス向上に向けた意気込みが感じられた。
 
(4)中国によるペルー亜鉛鉱山投資の可能性
 Penfold社上海部長のJoe Singer氏は、現時点での中国企業のペルーでの活動の重点は銅資源確保に向けた鉱山開発投資であるが、近いうちに亜鉛もターゲットになると予測。その根拠は、現在、中国国内の鉱山・製錬所は、内陸部にシフトしつつあり、その結果、臨海地帯にある亜鉛製錬所の原料調達は海外に依存せざるをえなくなる。その際、ペルーは有力な供給国候補の一つとなる。というもの。但し、ペルーから中国への船舶輸送費が近年高騰しているため、モンゴル、インドネシア等の中国の近隣諸国との競争力が落ちており、今後の鉱物輸出や鉱山投資に歯止めがかかる可能性も同時に指摘した。
 
3. 地域住民問題解決に向けた取り組み
 鉱山反対派との和解を最大の目標に掲げられた鉱業大会であったが、閉会にあたって、Jaime Quijandria鉱業大会議長は、鉱山会社は地域社会との関係作りをより計画的に行うべきだとし、地域社会と鉱業の関係を再構築するため次のような提言を行った。

 
探査地域における最初のコンタクトは、地質的なものでなく社会的なものでなければならない。
 
地域住民問題の解決には、鉱山側・住民側の双方が多様な提案をすり合わせて合意への意欲を持つことが必要である。
 
企業は、社会の信頼を得るために率直かつ明確な説明、行動を行うべきである。
 
地元住民との土地利用に関する許可問題は、具体的な解決策が必要である。

  さらに、同議長は、鉱業に対する社会的信頼の回復が課題であるとしつつ、地域社会による不信感は鉱山会社だけでなくエネルギー鉱山省をはじめとする政府機関にも及んでいることに言及した。Quijandria議長は、これらの社会問題解決のための提言を首相府に提出するとともに、現在の増え続けている鉱業収益を社会対策面にどう生かすかを協議する委員会を設置することを明らかにした。

Valdiviaエネルギー鉱山大臣(右から2番目)とJOGMECブースにて
Valdiviaエネルギー鉱山大臣(右から2番目)とJOGMECブースにて

 大会の最後を締めくくったJorge del Castillo首相は、鉱業投資家の権利を遵守する国家の姿勢を強調しつつ、本大会で提案された要望を踏まえ、鉱業に対する投資の促進と社会的信用の回復を目的とした法律・規則の見直しを行うことを言明した。
 なお、本鉱業大会の内容は以下のホームページで閲覧可能。
 http://www.convencionminera.com/content/index.php?iID=1

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