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報告書&レポート

2007年11月8日 企画調査部 神谷夏実 Tel:044-520-8590 e-mail:kamiya-natsumi@jogmec.go.jp
2007年101号

国際銅研究会(2007年秋:定期会合)概要報告

 2007年10月1日~10月5日の間、リスボンに於いて国際非鉄金属研究会(銅、ニッケル、鉛亜鉛)の各定期会合、ニッケル及び鉛亜鉛研究会については総会が開催された。
 以下、本稿では10月1日~2日にリスボンの国際非鉄金属研究会本部で開催された国際銅研究会第17回総会の概要について報告する。今回の会合は、国際銅研究会加盟20か国、オブザーバー1か国、EU本部、その他民間団体関係者、合計約40名が参加して開催された。2日間の会合において、産業アドバイザリーパネル、統計委員会、経済環境委員会等に分けて開催された。以下に、主要な報告、討議内容について報告する。なお、次回会合は、2008年4月21日(月)から25日(金)にリスボンにて開催される予定となった。
 参考:国際銅研究会ウエブサイト http://www.icsg.org/

1. 産業・アドバイザリー・パネル(IAP)
 今回は、銅スクラップ調査、銅価格と価格変動(Volatility)調査等についての議論が行われた。
 
(1)銅スクラップ調査
 前回会合〈2007年5月〉にて、国際銅研究会が、銅スクラップ市場について調査を行うことが決定され、事務局にて素案を作成した。素案には、銅スクラップの単純モデル、二次銅地金生産の予測が含まれる。事務局案では、1990年から2006年までの期間について電子機器に使われる銅のスクラップにフォーカスして単純化モデルを構築することが提案されたが、産業界関係者からは、スクラップの種類が多いので、まずはスクラップ発生の全体像を把握し、重要性に応じて調査対象を絞るべきとの意見が出された。計画では、最終報告を、次回2008年4月開催の会合にて報告する予定である。
 
(2)銅価格と価格変動(Volatility)調査
 昨今、銅市場に、投機的資金(ヘッジファンド、年金ファンド等)が介入し、銅価格の高騰とともに価格変動(Volatility)が増加している。こうした状況に鑑み、銅研究会ではこの問題を経済環境委員会にて議論する予定であるが、IAPにて関係者の意見を求めた。
 
2. 統計委員会
 銅の需給動向の最新データをもとに、2007年の需給見込みの修正、2008年及び2009年需給見込みが報告された。また、2006年需給予測の精度についての検証結果が報告された。この他、モンゴルの経済と資源開発、グローバリゼーションと銅需給についてプレゼンテーションが行われた。
 
(1)2007年需給見込みの修正
(a)世界の銅供給量は生産障害から、5月予測を下方修正
 2007年の鉱山生産は、2007年5月時点の見込みから下方修正され、2006年の15百万tから15.8百万tに増加し、地金生産は、17.3百万tから18.2百万tに増加すると見込まれる。増加率では、鉱山生産が6.3%増から5%増、地金生産が8.4%増から6.6%増に下方修正された。2007年第一四半期の鉱山、製錬所稼働率は前年を下回る低い率で推移した。インド、中国の経済成長、チリ、メキシコの生産回復が、増産を牽引している。
(b)主要な供給障害として以下のものがある。

  (ⅰ) 労使紛争・ストライキ:チリCODELCO下請け労働者ストライキ(6~7月)、チリCollahuasi鉱山ストライキ(7月)、メキシコGrupo Mexicoストライキ(Cananea、San Martin鉱山)、ペルーSouthern Copper社紛争(Cuajone鉱山、Toquepala鉱山、Ilo製錬所)、カナダCCR Refineryストライキ、ザンビア・ストライキ(Mopani、Konkola、Kansannshi鉱山)
  (ⅱ) 天候不順:コンゴ(DRC)の降雨による生産障害
  (ⅲ) 事故、生産障害:チリAndina鉱山、インドネシア鉱山生産減(Grasberg、Batu Hijau鉱山)、PNG・Ok Tedi鉱山生産障害(鉱石中のフッ素増加)、豪州Olympic Dam鉱山製錬所事故

(c)消費は中国が牽引、5月予測を上方修正
 2007年第一四半期の世界消費は前年比8.7%増であったが、中国を除くと1%増しかなかった。1~8月の中国の(見掛け)消費は、前年比37%増であったが、特に地金輸入は前年比208%増であった。これに対して先進国では消費減少傾向がみられた。(自動産業、建設産業の不振で米国では2.7%減、日本では1.9%減。欧州でも4%減) インド、ロシアでは銅消費産業の発展により消費増加傾向がみられる。
 したがって、2007年の消費見込みは、5月予測の前年比4.7%増を上方修正し、前年比5.3%増とする。このため、2007年の世界消費量は、2006年の17.1百万tから2007年は18.0百万tへと増加すると見込まれる。
(d)2007年の需給バランス
 2007年の鉱山生産は15.8百万t、地金生産は18.4百万t 、地金消費は18.0百万t、需給バランスは207千tの供給過剰と予測しているが、これに対して、2007年1~6月の需給バランスは354千tの供給不足となっている。今後、7~12月の需給バランスは465千tの供給過剰と予測しており、2007年全体では111千tの供給過剰となる。(図1)
 
(2)2008年の需給予測、需給バランスは供給過剰に
 鉱山生産は17.1百万t(前年比3.7%増)、地金生産は19.8百万t(7.9%増)、地金消費は18.7百万t(3.8%増)で、需給バランスは249千tの供給過剰と予測。なお、地金生産は19.8百万tと推定しているが、これまでの生産障害等から予測される供給障害の調整を行っており、調整後の地金生産は19.0百万t(調整量-895千t)である。
 
(3)2009年の需給予測、供給過剰により地金需給はさらに緩む
 鉱山生産は18.2百万t(前年比6.3%増)、地金生産は21.0百万t(5.8%増)、地金消費は19.5百万t(4.5%増)で、需給バランスは619千tの供給過剰と予測(2007年と同様に、調整量-838千t)。鉱山生産では、SX-EWによるのアフリカ、米国、豪州での新規プロジェクトのスタートで前年比14%とみている。また地金生産は、SX-EWの増産以外に、ブラジル、中国、インド等での精錬能力拡張が行われる見込みである。地金消費では、中国が引き続き牽引するが、中東、欧州、米国での消費増が期待される。日本の消費は横ばいとみている。消費の伸びが精錬能力拡張による増産をカバーできず、供給過剰がより進むものとみている。
 

図1 銅の需給バランスと在庫(2007年以降は予測を含む)

(4)統計の精度 - 2006年需給予測を検証
 これまで需給予測データと実際の結果の誤差について統計委員会で報告されていたが、2006年の需給予測からは、報告書として、予測精度の検証結果を報告することとなった。研究会の統計データは、基本的に、加盟国政府の報告(日本の場合は経済産業省が報告)、企業への直接聴取、コンサルタント企業のデータベース等によって統計資料、需給予測を作成している。データの入手が難しい場合、研究会が独自に推定を行っている。
(a)データ収集と供給障害、生産障害にかかる調整
 こうして集められ、推定された国毎のデータを積み上げて世界の需給データを算出するが、銅の場合は、通常、「供給調整」を行っている。供給調整には、一次供給障害調整(Primary feed shortage)、生産障害調整(Allowances for production disruptions)がある。一次供給障害調整は、鉱石調達状況と地金生産計画を考慮して調整量を推定するもので、2008年予測から導入。もし鉱石調達に問題があれば、その分を地金生産から差し引く。また、生産障害調整は、過去のプラント操業率、ストライキ、事故、操業障害等の発生率を指数化して調整を行う。
(b)2006年統計予測の精度
 今回は、2006年の需給データについて、最初の予測が行われた1年前(2005年3月)の予測値から、当該年度の2006年9月までの予測値を、最終的な2006年の数値と比較した。この結果、最初の予測(1年前)では、鉱山生産で5.2%、地金生産(調整前)で5.4%、地金消費で6.8%の差があった、つまり予測は結果を過大評価していたことになる。しかし、この差は、時間を追って減少し、年度半ばの2006年9月時点では、0.7%から1.0%の範囲に収まっている。(図2)
(c)調整後の誤差
 供給・生産調整を行った場合と行わない場合の比較を行う。事前の予測における誤差は、2005年5月が5.4%、2005年11月が3.1%、2006年4月が2.1%、2006年9月が1.0(表2の左側の数値)であったが、この予測に対して、生産調整量として、それぞれ、797千t(0.8%)、373千t(0.9%)、281千t(0.5%)、122千t(0.3%)を減じたため、地金生産予測(調整後)の誤差(表2の右側の数値)は、それぞれ、4.6%、2.2%、1.6%、0.7%となり、調整後の数値の誤差が小さくなっている。研究会における数値の調整により、誤差が小さくなっていることがわかる。

図2 予測値と実際の数値の誤差の推移(2006年予測) 鉱山生産
図2 予測値と実際の数値の誤差の推移(2006年予測) 地金生産(右は調整後)
図2 予測値と実際の数値の誤差の推移(2006年予測) 地金消費
鉱山生産
地金生産(右は調整後)
地金消費
図2 予測値と実際の数値の誤差の推移(2006年予測)

(d)1年前予測の精度の推移
 鉱山生産、地金生産、地金消費について、2000年以降の予測値(前年の最初の予測及び当該年度春季の予測)における、実際の数値との差の推移を表3に示す。この結果、鉱山生産では+5.2%(2005年春)から-2.7%(2000年春)、地金生産では+5.4%から-0.6%、地金消費では+6.8%から-6.5%の範囲にそれぞれ入っていた。この結果、2000年から2006年の平均偏差値は、鉱山生産では±1.9%(誤差の大きい2006年を除くと1.4%)、地金生産では±3.5%、地金消費では±3.5%となった。この結果、鉱山生産では誤差が小さいものの、地金の生産、消費はより誤差が大きいことがわかった。(図3)
 

図3 予測値と実際の値の誤差の推移(2000年~2006年)(単位:%) 鉱山生産
図3 予測値と実際の値の誤差の推移(2000年~2006年)(単位:%) 地金生産
図3 予測値と実際の値の誤差の推移(2000年~2006年)(単位:%) 地金消費
鉱山生産
地金生産
地金消費
図3 予測値と実際の値の誤差の推移(2000年~2006年)(単位:%)

                     
(5)プレゼンテーション

  (ⅰ)  モンゴル政府産業貿易省経済分析モニタリング・情報技術課のBold Sandagdorj主席鉱業経済担当官より、モンゴルの経済と銅資源開発についてプレゼンテーションが行われた。モンゴル経済における資源産業は、GDPの約35%、輸出金額の77%を占める重要産業で、現在の銅生産量は約150千t/年である。2006年探鉱投資は約2.9億$あり、世界の約4%、第8位を占めている。政府予算は、資源産業からの税収依存率が高く、2006年の鉱業法改正による超過利得税導入後、さらにこの傾向が高まっており、税収における資源産業の影響を下げることが重要な政策課題である。政府税収に占める超過利得税の割合は、2006年が20%、2007年が35%とみられる。また、資源産業における外資直接投資の促進のために、環境調和型先進技術、高付加価値化のための資源加工技術、環境保護修復技術の導入による、政府、投資企業双方の利益確保が重要課題となっている。
  (ⅱ)  英国コンサルタント会社CRUのMr.Jone Barnesより、グローバリゼーションと銅産業についてプレゼンテーションが行われた。
 グローバリゼーションの進展は全世界的な傾向で、今後さらに加速的に進むと見られる。先進地域(欧州、米国、韓国、日本等)における消費の頭打ち、先進消費国からアジア新興市場国への生産拠点の移転、中国の消費の拡大等の現象により、銅産業もグローバリゼーションの影響を受けて変貌している。中国の銅製品の輸入は2004年をピークに減少に転じており、それ以降は、銅製品の輸出が大きく伸びている。こうした中国の影響が世界に広がっており、2004年が銅産業にとって大きな転換点となった。

   
3. 環境経済委員会
(1)銅・銅合金生産者ダイレクトリー
 銅研究会が作成し2007年10月発行予定。世界75カ国1600か所の生産施設に関する詳細な情報データベース。
 
(2)銅産業に影響を当てるEU環境規制の動向
 各国の規制動向を調査中であり、事務局としては、下記テーマについて引き続きモニタリングを行う。
 (a)中国の貿易関税政策動向
 (b)米国の銅製錬所(一次、二次)周辺での排出規制及び硬岩採掘埋め立て法の動向
 (c)インドネシア新鉱業法の審議動向
 (d)EU電池指令(有害物質含有電池、回収処理廃棄に関する規制の動向)
 (e)REACH関連の進展(2008年6月1日に欧州化学物質庁設立、化学物質登録及びREACH改正の動向)
 
(3)プレゼンテーション
(a)銅価格の変動(Volatility)の増大の影響
 最近の銅価格の高騰と同時に、ファンドの介入等によって価格変動(Volatility)も増加し、銅産業に大きな影響を与えている。今回、銅の価格変動に関し、Mr.Robin Bhar(UBS銀行)、Mr.AllanWilliamson(Trafigura社)、Mr.Eduardo Escobedo(チリ中央銀行)より、プレゼンテーションが行われた。チリ中央銀行の試算では、ファンドの介入により一時的に銅価格が40セント/lb程度上昇したと推定した。
(b)EU環境規制の動向
 Ms.Lene Madsen(欧州銅協会)より、EU環境規制に対する銅産業界の対応についてプレゼンテーションが行われた。主な環境規制項目は、化学物質規制(REACH)、廃棄物規制(熱効率戦略)、統合的汚染防止管理(IPPC)、その他(水質、土壌、大気に関する規制)について最近の動向が説明された。
 

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