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報告書&レポート

2007年11月22日 シドニー事務所 久保田博志 Tel:+61-2-9264-2493 e-mail:kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp
2007年103号

BHP BillitonによるRio Tintoの合併は成功するのか-世界最大の鉱山会社による合併提案、その効果と影響-

 世界最大の鉱山会社BHP Billiton(本社メルボルン/ロンドン)がRio Tinto(本社メルボルン/ロンドン)に対して総額1,400億US$に及ぶ合併提案を行った。BHP Billitonの株式3株に対してRio Tintoの株式1株を交換すると言うものであったが、Rio Tintoの役員は、全会一致で条件が低すぎるとしてただちにこの提案を拒否している。しかし、世界最大と世界第3位の鉱山会社の合併は、非鉄金属だけではなく、鉄鉱石、石炭、ウランと資源産業で圧倒的な影響力を持つ超巨大鉱山会社が誕生することになる。
 本稿では、BHP BillitonとRio Tintoとの合併の影響とその可能性について考える。

1. はじめに
 BHP BillitonとRio Tintoの合併が成功すると、株式時価総額3,500億US$以上、売上は546億US$(2006年の両者の実績から推定)に達し、CVRD(ブラジル資本)の280億US$、Anglo American(南アフリカ系)の38億US$など他の非鉄メジャーを大きく上回る従業員数10万人以上の超巨大鉱山会社の誕生となる。
 BHP Billitonがこの合併提案を行った要因として、中国やインドなどの需要増加によって高騰する金属価格をしっかりと捉え利益を上げること、相乗効果によりコスト削減が可能となること(西オーストラリア州Pilbara地域の鉄鉱山に関わる鉄道や港湾の利用・整備など)があげられている。
 

表1.世界の大型合併・買収
順位 時期 対象企業 合併・買収提案企業 規模
(10億US$)
1. 1999 Mannesmann Vodafone 172
2. 2007 Rio Tinto BHP Billiton 149
3. 2000 Time Warner America Online 112
4. 1999 Warner-Lambert Pfizer 112
5. 2006 Bell South AT&T 102
6. 2007 ABN Amro Consortium 96
7. 1998 Mobil Exxon 86
出典)Australian Financial Review (2007/11/11)

2. 合併提案
 経済専門紙Australian Financial Review(AFR)は、BHP Billitonは、Rio Tintoとの合併に関して1年以内に何らかの結果を出すのではないかと指摘している。その根拠として、合併に関わる諸規制をクリアするのに1年程度の時間が必要となること、金属価格の変動を考えれば高騰しているこの時期に合併を完成させることが有利であることなどをあげている。また、BHP Billitonが短期間に合併を成功させるためには、Rio Tintoの株主に対して相当額の金額を提示する必要があると指摘している。
 BHP Billitonが、11月11日、12日に発表した最初の合併提案の概要は、次のとおりである。

BHP Billitonの株式3株に対してRio Tintoの株式1株を交換する
Rio Tinto(オーストラリア上場)の株主は、BHP Billiton(オーストラリア上場)の株式を取得できる。
Rio Tinto Plc(ロンドン上場)の株主は、BHP Billiton Plc社(ロンドン上場)の株式の80%とBHP Billitonの株式の20%を取得できる。
合併後新会社の資産のRio Tinto持分比率は41%。
合併の1か月以上前の両社のロンドン上場株式とオーストラリア上場株式の株式時価総額の加重平均に対するプレミアム(割増)を28%とする。
BHP Billitonの2007年11月9日の株価終値とBHP BillitonがRio Tinto買収の噂に対して11月8日に行った発表直前のRio Tintoの株式時価総額を基準にプレミアム(割増)を15%とする。

 出典)*2 BHP Billiton Press Release (12/11/07)

3. BHP BillitonとRio Tintoの合併・買収の歴史
 BHP BillitonとRio Tintoは100年以上にわたるその歴史のなかで、合併・買収を繰返して今日の「巨大資源企業」に成長してきた。両社の買収・合併の歴史をその設立から振り返る。
 

表2. BHP BillitonとRio Tintoの合併・買収の歴史
西暦 BHP Billiton Rio Tinto
1885 Broken Hill Proprietary (BHP) 設立    
1860   Billiton設立  
1873     Rio Tinto Company設立
1891 BHP、鉛を中国へ初輸出    
1905     Consolidated Zinc Corporation設立
1923 The Australian Wire Rope Works Limited incorporatedの権益22%を取得    
1929 Lysaght Bros &Co Pty limitedの権益75%、VickersCommonwealthSteel社の権益6%を取得    
1935 Bullivant’s Australian Co Pty社の権益98%、Australian Iron & Steel Pty Limitedの権益100%を取得 最初のボーキサイト鉱山をBintan島(インドネシア)に建設  
1939 Wiltshire File Company Pty Limitedの権益48%、Rheen Australia Limitedの権益50%を取得 Surinameでボーキサイト探査を開始  
1941   Surinameでボーキサイトの採掘を開始  
1946 Tubemakers of Australia Pty Limitedの権益49%を取得    
1954     スペインでの事業の3分の2を売却
1958 Australian Wire Industries Limitedを取得    
1962     Rio Tinto Company(英)とConsolidated Zinc Corporation(オーストラリア)が合併してRio Tinto-Zinc (RTZ)(英)とConzinc Riotinto of Australia(豪)が設立
※両社は後に、それぞれRTZ Corporation及びCRA Ltd.と改称
1964 Corrimal Coal Pty Limitedを取得    
1968     Borax Group社を取得
1970 John Lysaght Limitedの権益50%を取得 BillitonがRoyal/Dutch Shell Groupに買収される  
1974 Australian Industrial Refractories社を取得    
1975 The Orbital Engine Company Pty Limitedを取得    
1978   Morris Ashby Limitedを取得  
1979 John Lysaghtの残りの権益50%を取得    
1984 International Inc社とUtah Marcona Corp.を取得    
1985 US Energy Reserves Group、US Monsanto Oil Company、Canadian Monsanto Oil Limitedを取得     
1986   KBM Aluminiumを取得  
1987 Hamilton Oil Corpの権益49.9%を取得    
1989 New Zealand Steel Holdings Limitedの権益31%を取得   BP社の海外鉱物資源事業を取得、Coal & Allied Industries社(NSW)の権益70.7%を取得
1991 Supracoteを取得    
1992   Selbaie Canadaを取得  
1993     NercoとCorderoの石炭事業を取得
1995      
1996 Magma Copper Companyを取得 Alusa社を取得
(次の資産を含む)
-100% Hillside Aluminium
-100% Bayside Aluminium
-42.5% Alustang
RTZ Corporation PLCと
CRA Limitedは二重上場企業(Dual Listed Company:DLC)として統合、Rio Tintoが設立
1998   Groote Eylandt Mining Co Pty Limitedを取得
Acquires Ingwe 
 
2000     North Limitedを取得
2001 Billitonと合併、
BHP Billiton設立
BHPと合併、
BHP Billiton設立
Peabody Groupの石炭事業を取得
2002 BHP Steelを分離    
2004     非中核事業を売却
2005 WMC Resourcesを取得    
2007     Alcan社を取得
出典) BHP Billiton Webサイトwww.bhpbilliton.com
  Webサイトwww.riotinto.com

4. 合併提案への反応
 BHP BillitonによるRio Tintoの合併提案が明らかとなって、マスコミ・市場関係者の反応は、経済専門紙The Financial Review(2007/11/14記事)が、「市場は、合併によって株式時価総額4,000億US$規模の巨大企業の誕生には、明らかな企業戦略と操業上の利益がある」と報道。企業戦略とは、中国やインドの需要により鉱物資源価格が高騰している間に、生産増加を速やかに行うことの出来る体制を整えることであり、そのことは、「インドのGDPは中国に遅れること10~15年、BHP Billitonのインドに対する2007年の鉱物資源の売上高は2002年の同社の中国に対するそれを上回っている(今後、中国に加えインドにおける資源需要が期待される)」とするBHP Billitonが11月12日に発表したプレゼンテーション資料にも現れている。
 資源ブームにあって、アナリスト達は価格の当初予測を絶えず見直さなければならない状況下にあり、ある機関投資家は、「彼ら(合併、買収を行う鉱山会社)のここ最近の行動は、BHP BillitonやXstrataのような企業は投資家よりもより楽観的な市場予測をしていることは明らかである。」と評している。
 また、地方有力紙The Sydney Morning Herald(2007/11/13記事)は、今回の合併提案に対する市場の反応を、「BHP BillitonとRio Tintoの合併に市場が好意的なのは、BHP BillitonがRio Tinto以外の鉱山会社と合併するよりはより理にかなっていると考えているからだ」と分析している(オーストラリアを舞台に共に発展してきた経緯や西オーストラリア州の鉄鉱など隣接する生産拠点など)。
 

図1. 主要非鉄金属企業の株式市場価格
図1. 主要非鉄金属企業の株式市場価格
 出典)BHP Billiton, Reuter

5. 合併が鉱物資源市場に与える影響
 BHP BillitonとRio Tintoの合併が実現すると、世界最大のEscondida銅鉱山(チリ)をはじめ、Grasberg鉱山(インドネシア)やAntamina鉱山(ペルー)などの巨大鉱山を保有し、現在、世界最大の銅生産者Codelco Norte・El Teniente・Salvador・Andina鉱山を保有するCODELCO(チリ)を抜くことになる。

図2. 世界の銅市場シェア
図2. 世界の銅市場シェア
出典)Australian Financial Review (2007/11/11)

図3. BHP Billiton社とRio Tinto社合併後の世界主要銅鉱山の生産量
図3. BHP Billiton社とRio Tinto社合併後の世界主要銅鉱山の生産量
出典)BHP Billiton (2007/11/12)

 アルミア及びアルミニウムでは、Rio Tintoは、既に2007年7月12日に381億US$でAlcan社(カナダ資本)を買収し、アルミナ・アルミニウム市場での同社のシェアを大きく伸ばしている。更に、BHP BillitonとRio Tintoとが合併した場合、その割合は更に拡大し、アルミナ・アルミニウムの最大生産者が誕生する。

図4. 世界のアルミナ市場シェア
図4. 世界のアルミナ市場シェア
出典)Australian Financial Review (2007/11/11)

図5. 世界のアルミニウム市場シェア
図5. 世界のアルミニウム市場シェア
出典)Australian Financial Review (2007/11/11)

 鉄鉱石では、BHP Billitonは、CVRD、Rio Tintoに次いで、世界第3位であるが、毎年、鉄鉱石価格交渉では、オーストラリアに鉄鉱山を持つ同社は、輸送費等を理由にCVRDやRio Tinto以上の鉱石価格の値上げを製鉄会社側に要求している。2005年にはベンチマーク方式の値決めに対して、BHP Billitonは独自に値上げ率100%で交渉に臨むが、結果は横並びの値上げ率71.5%で妥結した経緯がある。
 しかし、BHP BillitonとRio Tintoとが合併した場合、合併後企業の市場シェアは40%近くに達し、特にアジア市場向け鉄鉱石輸出に関して価格交渉力を増すと見られている(AFR 2007/11/11)。このような市場の見方に対して、BHP BillitonのKlopper社長は、「鉄鉱石を求める製鉄所に対して優位に立とうなどとは考えていない。Rio Tintoとの合併はむしろ、より多くの鉄鉱石をより早く供給できる」とコメントしている(AFR 2007/11/13)。

図6. 世界の鉄鉱石市場シェア
図6. 世界の鉄鉱石市場シェア
出典)Australian Financial Review (2007/11/11) 

図7. 世界主要鉱山の鉄鉱石生産量
図7. 世界主要鉱山の鉄鉱石生産量
出典)BHP Billiton (2007/11/12)

 
6. 合併効果
 「BHP BillitonとRio Tintoとの合併は、それ以外の組合せよりもより合理的である」(AFR 2007/11/14)との論評は、BHP BillitonKloppers社長は、両者が西オーストラリア州(Pilbara地区の鉄鉱石)、ニューサウスウェルズ州(Hunter Valley地区の石炭)、クィーンズランド州(石炭)、カナダ(ダイヤモンド)、米国(銅)、南米(銅)、南部アフリカ(ミネラルサンド)などにおける操業や探鉱・開発地域が隣接していることを上げ、「両者の地理的関係は独特であり、Rio Tinto以外の他社とのパートナーシップは考えられない」とコメントしている(SMH 2007/11/13)。

図8. BHP Billiton社、Rio Tinto社の主要生産拠点と合併による相乗効果
図8. BHP Billiton社、Rio Tinto社の主要生産拠点と合併による相乗効果
出典)BHP Billiton (2007/11/12)

 更に、BHP Billitonは、11月12日に発表したプレゼンテーション資料において、合併はコスト削減に大きく貢献すること、37億US$のコスト削減が期待できると指摘している。

図9. 合併の相乗効果によるコスト削減効果
図9. 合併の相乗効果によるコスト削減効果
出典)Australian Financial Review (2007/11/13)

 また、既に総合資源企業である両社の合併前後の売上の構成に大きな変化は見られないが、アルミナ・アルミニウムの全売上に占める割合が低いBHP Billitonに対して、Alcan社を買収して同分野の売上比率を上げたRio Tinto、2005年にWMC社を買収してニッケルの比率を上げたBHP Billitonに対して、ニッケルの売上のないRio Tintoなど、それぞれを補完してよりバランスの取れた、それ以上に各事業分野、特にベースメタル、鉄鉱石、アルミニウムの主要鉱種における売上額それ自体が倍増している。

図10. BHP Billiton社、Rio Tinto社と合併後の売上構成
図10. BHP Billiton社、Rio Tinto社と合併後の売上構成
出典)Australian Financial Review (2007/11/13)

7. おわりに
 BHP BillitonによるRio Tintoへの合併提案は始まったばかりであり、Rio Tintoは現段階では合併提案を拒否している。今後、Rio Tintoが態度を軟化させるのか、BHP Billitonが更に好条件を提示するのか、それ以外の展開があるのか、或いは、第三者の登場があるのかなど、両社の駆け引きだけではなく、両社を中心に非鉄メジャーの動向から目が離せない状況が続く。

参考・引用文献
‘BHP Billiton and Rio Tinto Unlocking Value’ BHP Billiton Presentation 12/11/07
‘BHP Billiton’s Proposed Combination’ Company Press Release, 12/11/07
‘Miner flags $33bn buyback’ AFR 13/11/07
‘China bristles at BHP – Rio’ AFR 11/11/07
‘BHP’s Dream Deal’ AFR 12/11/07
‘Merger Talk Gains Ground’ AFR 11/11/07
‘Plenty of Opportunities’ AFR 11/11/07
‘Synergies Just Tip of the Iceberg’ AFR 13/11/07
‘Rio Deal Irresistible, says Kloppers’ AUS 13/11/07
‘BHP think Rio is best partner’ SMH 13/11/07
‘Port Combination harbors big saving’ AFR 12/11/07
‘Pilbara Synergies key’ AFR 14/11/07
‘Rio Tinto planning case for defence’ AFR 14/11/07
BHP Billiton Webサイト www.bhpbilliton.com
Rio Tinto Webサイト www.riotinto.com
CODELCO Webサイト www.coldelco.com
Reuter社Webサイト www.investor.reuters.com

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