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報告書&レポート

2007年11月29日 バンクーバー事務所 武富義和 Tel:+1-604-685-1282 e-mail:takedomi@jogmec.ca
2007年105号

ウラン開発のメッカ、カナダ・サスカチュワン州北部を訪れて

 1. はじめに
 今や、世界中でウラン探鉱が活発化している。カナダにおいてもサスカチュワン州のみならずほとんどの州・準州にあたる7州、23準州において、ウラン探鉱が盛んに行われている。
 サスカツーンから北方700kmの探鉱拠点Points Northに降り立つと、空中物理探査用の飛行機、地質調査のための水上飛行艇が離着陸していた。このPoints Northは数年前には不景気で閉鎖状態であったというから、最近の活況は様変わりである。
 著者は、JOGMECの地質専門家共々、この度、海外ウラン資源開発(株)浜井氏、Areva Canada社のご好意により、ウラン銀座に世界最新鋭のJEB Mill(粉砕、U3O8製錬工場)を持つMcClean Lake鉱山を訪問したのでカナダのウラン事情も含め概況を報告する。

2. 世界の中のカナダ
 カナダは、埋蔵量では豪州、カザフスタンに後れをとるも、生産量では引き続き世界トップクラス、また、SMDC(サスカチュワン州政府出資の会社)とエルドラード・ニュークリア社(連邦政府出資の会社)の合併によって発足したCameco社は、世界第一のウラン生産を誇っている。探鉱活動について、1986年から1997年までのカナダでの探鉱費累計額は539百万$と豪州の2倍以上。探鉱は2004年以降、年々活発化してきており、直近の2006年には、サスカチュワン州のみで100百万$を支出。カナダ全体で100以上の探鉱プロジェクトがひしめいている。
 

主要国のウラン鉱石生産の推移
主要国のウラン鉱石生産の推移

(出典) WNA Market Report Data

 
 

ウラン鉱石生産量(企業別)
ウラン鉱石生産量(企業別)

(出典) WNA Market Report Data

3. サスカチュワン州におけるウラン開発環境

(北部サスカチュワンのウラン鉱山、Mill位置図)
(北部サスカチュワンのウラン鉱山、Mill位置図)

 北部サスカチュワンにウラン開発のメッカである広大なアサバスカ盆地が広がっている。この地域のウラン鉱床は15億年前の砂岩層からなるアサバスカ盆地とその下部にある17~27億年前の基盤岩との不整合面付近に多く賦存している。
 2006年には、ここアサバスカ盆地において、世界全体の25%に当たる26.1百万lbのウランが生産されている(サスカチュワン州政府発表)。特に、アサバスカ盆地の東部には世界一の高品位かつ生産量を誇るMcArthur River鉱山(生産中)の他、建設段階のCigar Lake鉱山(昨年10月に起こった水没事故の復旧中)、Midwest鉱山(開発許可申請中)、McClean Lake鉱山(生産中、Mill能力12百万lb・U3O8/年)、Key Lake鉱山(鉱山生産なし、Mill能力18百万lb・U3O8/年)、Rabbit Lake鉱山(生産中、Mill能力12百万lb・U3O8/年)の各プロジェクトが点在している。
 採掘されたウラン鉱石は、U3O8に製錬する必要があるが、同州の政策方針により、現在、鉱山毎のMillは併設しておらず、既存の3つのMillにおいて、粉砕、U3O8製錬を行うよう指導されている。これから操業段階に入るCigar Lake鉱山は、McClean Lake鉱山及びRabbit Lake鉱山、Midwest鉱山はMcClean Lake鉱山のMillにてU3O8の生産を行うことになる。
 北部サスカチュワンには約10万の氷河湖があり、やせた土地にバンクス松(Jack Pine)が生えているが、地盤条件はよくない。そのため、現場へのアクセスは専ら水上飛行艇、ヘリコプターを使い、探鉱は気候の安定した夏、及び湖面が凍結する冬に集中的に行われる。ウラン探査の手法としては、踏査、放射線、重力、磁力、電磁、比抵抗等種々の物理探査、ボーリングを組み合わせ実施されている。
 

サスカチュワン州ウランの探鉱投資額

(出典) サスカチュワン州政府

 
4. McClean Lake鉱山概況
(1)開発経緯
 1979年にMcClean Lake鉱体が発見されて以来、1982年にJEB鉱体、1985~1990年にはSueA、B、C鉱体が相次いで発見される。1991年に連邦・州による合同環境評価が始まり、1995年にまずJEBでの露天掘り採掘が開始された。併行して1995~1998年にかけてJEB Millの建設が行われ、1999年にはMill操業を開始している。今まで、JEB鉱体及びSue C鉱体から40百万lb以上のU3O8を生産。2005年にはSue A、E両鉱体での採掘を開始したが、Sue A鉱体は既に終堀、現在Sue E鉱体を採掘している。
 

(McClean Lake鉱山の全景)
(McClean Lake鉱山の全景)

(2)株主構成

  Areva Resources Canada社 70%(オペレーター)
  Denison Mines社 22.5%
  OURD Canada社 7.5%
Areva Resources Canada社は、フランスAreva NP(旧Cogema)のカナダ子会社であり、McClean Lake鉱山を操業。McArthur River、Key Lake mill、Cigar Lake各プロジェクトにも資本参加。Areva NPのウラン生産量は世界第3位。
OURD Canada社は海外ウラン資源開発(株)(OURD)の子会社。OURD社は、日本の電力会社、鉱山会社等29社を株主に持ち、McClean Lake鉱山の他、ニジェールのAkouta鉱山を操業するCOMINAK社への出資25%、次期開発プロジェクトであるカナダ・Midwestプロジェクトの権益5.67%を保有。Midwestプロジェクトについては1991年に旧動力炉核燃料開発事業団から権益を購入。

(3)概要
(i)埋蔵量、生産量
 埋蔵量 26.2百万lb・U3O8  平均品位 1.52%
 (2007年8月1日現在/サスカチュワン州政府産業・資源省)
 生産量 1.8 百万lb・U3O8(2007年計画)
 
(ii)従業員
 鉱山及びMill労働者344名、セキュリティ関係23名、ケータリング関係47名の計414名で構成される。このうち、Northernerといわれる先住民の比率は全体の54%に上っている。
 
(iii)採掘
 Sue E鉱体は、高品位部分でウラン品位1.5%、脈幅30cm程度あり、露天掘りピットにより、既に地表から95mまでの採掘を終了、2007年12月から2008年1月までかけ、更に30m採掘し終堀予定である。その後2010年までSue B鉱体、カリブー地区の採掘を行う。この他にも鉱区内にはいくつかの既知鉱床があり、今後の採掘計画を策定中である。
 

(Sue E鉱体の採掘現場)
(Sue E鉱体の採掘現場)

(iv)ウラン製錬(JEB Mill)
 JEB Millは、250百万$をかけ建設され、1999年から運転開始された世界最新鋭のMill。当初、Sue A、B、C、McClean North各鉱体を対象としていたが、2006年に拡張し、現在は、Cigar Lake鉱山からの鉱石処理が可能となっている。
 2011年からCigar Lake鉱山からスラリー状鉱石を、2012年からMidwest鉱山からの鉱石を受け入れ開始する計画である。
 

  1999年許可能力 6百万lb U3O8/年
  2001年許可能力 8百万lb U3O8/年
  2005年許可能力 12百万lb U3O8/年
  2010年(計画) 16百万lb U3O8/年

  

(JEB Mill全景、我々の訪問を記念し日の丸を掲揚)
(JEB Mill全景、我々の訪問を記念し日の丸を掲揚)

(ウラン製錬工程)
 採掘されたウラン鉱石はボールミルで粉砕され、硫酸、過酸化水素水で浸出したのち、固液分離後、溶媒抽出し、アンモニア添加、加熱することにより、八酸化三ウラン(U3O8)が精製される。
 Cigar Lake鉱山からのスラリー鉱石の受け入れ時期は、2006年10月に発生した同鉱山の坑内出水により遅延している。一方、Cigar Lake鉱山からのスラリー鉱石処理設備は完成していることから、現場では受け入れに当たっての諸テストが行われている。

(Cigar Lake鉱山用スラリー鉱石運搬容器)
(Cigar Lake鉱山用スラリー鉱石運搬容器)

 

(JEB Mill拡張計画・現在ほぼ完了)
(JEB Mill拡張計画・現在ほぼ完了)

(重ウラン酸アンモン溶液)
(重ウラン酸アンモン溶液)

(U3O8製錬工程)
(U3O8製錬工程)

(v)ウラン廃さい処理
 ウラン鉱体幅は15m程度、そのうち高品位帯は5m以下であるため、ウラン鉱山を露天掘りで行う場合のズリ・鉱石比は100倍にも達し、広大な廃土廃石の捨て場が必要となる。また、ウラン鉱石にはニッケル、砒素等有害金属を含有している。このため、砒素、ニッケル等を含む廃さいの特別廃棄物の捨て場が必要であり、McClean Lake鉱山では、2002年2月に終堀したSue C鉱体(跡地の容量は約43百万m3)を0.085%以上のウラン、100ppm以上の砒素、ニッケル等を含む特別廃棄物捨て場として活用している。
 また、JEB Millサイトからのウラン製錬廃さい、廃水については、JEB TMF(ウラン廃さい管理施設)と呼ばれる廃さいダムに導入され処理される。この施設は、ダム周囲の水封用井戸によって地下水位を調整し、周辺からの水の流入を防止するとともに、スラリー状のウラン廃さい並びにウラン汚染水がダム外に流出しないよう設計されており、廃水は廃水処理後、Millにてリサイクルし、余剰分は分析にて廃水基準以下であることを確認後、放流している。
 

(JEB TMFの概要図)(JEB TMFの概要図)
(JEB TMFの概要図)

5. Midwest鉱山開発
 Midwestプロジェクトは、開発許可の手続き中。2008年には道路建設、2009年には露天掘り鉱山を建設開始する計画。Midwest鉱山の年間ウラン生産量は8.3百万lb・U3O8を予定。
 同鉱区には1978年に発見されたMidwest鉱体に加え、Mae鉱体が知られている。Mae鉱体では、2005年から探鉱をスタートし、高品位のウラン(U3O8換算20%以上)に着鉱しており、現在も探鉱中である。
 権益の構成は、Areva Resources Canada社 69.16%、Denison Mines社 25.17%、OURD Canada社 5.67%となっている。

6. おわりに
 世界有数のウラン鉱山の操業に日本企業が参加し、また、これからの探鉱プロジェクトにも多数日本企業が参加している事実をみると心強さを感じる。一方、これらの権益の多くは既に解体された旧動力炉核燃料開発事業団の忘れ形見であることが思い出される。ウラン開発を巡る昨今の状況を鑑みると、日本は核燃料サイクルを積極的に推進しているとはいえ、鉱山からの一次ウラン供給も重要であるのは言うまでもない。

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