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報告書&レポート

2008年1月10日 金属資源開発調査企画部担当審議役 澤田 賢治 Tel:044-520-8590 e-mail:sawada-kenji@jogmec.go.jp
2008年01号

世界鉱業における2007年の回顧

はじめに
 2007年の世界鉱業は、2006年に高騰した金属価格の水準が維持され、非鉄メジャーを代表する、BHP Billiton・Anglo American・CVRD・Xstrata・Rio Tintoの5社における2007年上期売上高や当期利益は増加傾向にある。2006年にみられた大型の企業買収の動きは、2007年にはRio TintoによるAlcanの買収(買収金額 380億$)が見られだけである。ただし、2007年11月、世界最大の非鉄メジャーBHP BillitonがRio Tintoに対して総額1,400億$に及ぶ合併提案を行った。この買収提案に対して、Rio Tintoは条件が低すぎるとして拒否した。しかし、世界最大と第3位の非鉄メジャーの合併は、鉄鉱石(世界シェア36%)、石炭(21%)、ウラン(25%)と世界的な影響力のあるスーパーメジャーの誕生となり、各国からも警戒の声も聞かれる。買収を拒否されたBHP Billitonは、金額を上積みした新提案を示すとの報道もある。その一方、企業買収により最近急激に大型化したXstrataがCVRDやAnglo Americanと経営統合を目指した予備交渉に入ったとの情報もあり、大手非鉄メジャーを巡る世界規模の再編が予感される。利益の適正配分を巡って、国家の管理・権限の強化や税制強化を柱とした鉱業税制改正等の資源ナショナリズムの台頭も中南米やアジアにおいてみられた。鉱山労働組合による労働改善を求める鉱山ストが相次ぐとともに、鉱山側と地域住民との紛争も2006年に続き、顕在化している。また、カスタムスメルターである日本側製錬企業とGrasbergやEscondidaのような世界的規模の鉱山を有する非鉄メジャーとの銅買鉱交渉も2006年に続き難航しており、銅買鉱交渉は越年が決定した。
 経済の台頭めざましい中国は、拡大するベースメタル国内需要の資源確保のために、中国企業による海外における資源開発投資の積極的展開を行うとともに、国内資源に富むレアメタルに対しては国内需要を優先とする輸出入統制もみられた。2006年同様、日本企業による海外鉱山開発の進展もあった。新年にあたり、2008年を予測するためにも、2007年における世界鉱業について総括してみたい。

1. 金属価格の推移
 銅・亜鉛・ニッケル・アルミ・金等の価格が2003年以降高騰している。2003年5月をベース(1.0)として、2007年までの推移を概観すると、銅・亜鉛・ニッケルが3~6倍、アルミと金が2倍前後となっている。多くの金属は2006年になって急激に高騰し、2007年始めは需給が緩和し、LME在庫も増加するなか、投機資金の流出等により安値の急落からスタートしたが、2月下旬以降に急騰し、乱高下を繰り返した後、サブプライムローン問題や米国経済の減速懸念から10月以降下落した。例えば、銅価格は、1月2日に6,201$/tでスタートし、2月8日に5,226$/tまで下落した後、上昇に転じ5月4日に8,225$/tに回復した。その後は乱高下を繰り返し、10月15日の8,285$/tから下落し、12月18日には6,272$/tとなった。亜鉛価格は、1月2日に4,259$/tで始まり、2月8日に3,050$/tまで下落した後、上昇に転じ5月9日に4,120$/tに回復した。その後は乱高下を繰り返したが、8月23日の3,200$/tから一転下落し、12月19日の2,265$/tの底をついた。ニッケル価格は、1月2日の33,550$/tから上昇を続け、5月16日には、54,200$/tと史上最高値を記録した。その後、需給が緩和したこと、LMEが大口保有者の取引制限をしたため、下落傾向に転じて、8月16日に25,055$/tまで下落した。その後は回復傾向にあるものの、25,000~33,000$/t台で推移している。
 2006年平均価格と比較して、2007年価格(暫定値)は、銅が6,722$/tから7,149$/tと6.4%増、亜鉛が3,259$/tから3,221$/tと1.2%減、ニッケルが24,254$/tから37,265$/tと53.6%増、アルミが2,533$/tから2,398$/tと5.3%減、金が605$/ozから696$/ozと15%増となっている(図 1)。
 これら銅・亜鉛・ニッケルの金属価格の高騰には中国の影響が大である。中国は飛躍的な経済発展を展開しており、国内総生産(GDP)は1980年代以降10%前後の高い実質成長率を記録している。社会資本整備も強力に推進されており、国家発展のための基礎産業として重要な地位を占めている鉄鋼・非鉄金属産業の拡大が顕著である。中国における2000~2006年の銅地金消費量の増加は、1,681千tと世界増加量の90%、亜鉛の増加量は183千tと世界増加量の88%、ニッケルの増加は1,713千tと世界増加量の82%を占めている。
 World Bureau of Metal Statistics(2007年12月号)による2007年1~10月までの地金消費量は前年同期比で、銅が36.8%増、亜鉛が12.2%増、ニッケルが58.0%増と依然として高い伸びを示している。
 

図 1 主要金属価格の推移(2003年~2007年)

2. 高水準にある非鉄メジャーの売上高と当期利益
 主要非鉄メジャーの2007年上期(1~6月)の財務レポートによると、売上高が多い順にBHP Billiton(254億$)・Anglo American(198億$)・CVRD(166億$)・Xstrata(142億$)・Rio Tinto(139億$)となっており、Inco買収のCVRDとFalconbridge買収のXstrataの躍進がめざましい。当期利益の高い非鉄メジャーはBHP Billiton(67億$)・CVRD(63億$)・Anglo American(34億$)・Rio Tinto(33億$)・Xstrata(30億$)となっており、利益率(当期利益/売上高)はCVRDとBHP Billitonが30%以上と極めて高く、Rio TintoとXstrataも20%以上を記録している。Anglo Americanのみが10%台である(図 2)。
 主要金属価格は2007年下期に下降しているため、2007年下期の売上高や当期利益は若干下がると思われるが、2006年同様、2007年も非鉄メジャーにとっては潤沢なキャッシュフローを得たと推定される。特に、非鉄メジャーの世界的再編の鍵を握るBHP BillitonやCVRDの2007年の当期利益は日本円で1兆円を越える水準であり、このキャッシュフローが企業買収に向けてどのような役割を果たすのかは2008年の展望を占う点で重要なことと思われる。

BHP Billiton

Anglo American

CVRD

Xstrata

Rio Tinto

図 2 主要非鉄メジャーの売上高・当期利益・利益率(2005年上期~2007年上期)

3. 世界の探鉱費(金、ベースメタル、ダイヤモンド、白金)
 Metal Economics Group(MEG)による世界の探鉱費は、1997年のピーク(46億$)から減少傾向にあったが、金属価格の高騰とともに2003年から増加に転じて、2007年には過去最高(100億$)に達した。増加の要因として、2004年から非鉄メジャーを越えたジュニアの探鉱費が大きく伸び、2007年のジュニアの探鉱費は全体の53%を占め、非鉄メジャー(31%)や中堅企業(15%)の探鉱費を大きく上回った(図 3)。
 2007年における探鉱費のうち、地域別には中南米が24%と高く、国別には従来通り、カナダ(19%)・豪州(12%)・米国(8%)といったカントリーリスクの低い3カ国に探鉱が集中されている。探鉱のターゲットとしては、金(41%)・ベースメタル(36%)・ダイヤモンド(10%)・白金(3%)・その他(10%)となっている。探鉱段階別には、グラスルーツ(39%)・レイトステージ(40%)・鉱山周辺(21%)となっている。
 化石燃料の高騰や地球温暖化に代表される環境問題の顕在化に伴い、原子力発電が再認識されるようになった。現在、世界では437基の原子力発電が稼動しているが、新たな30基が建設中であり、今後の新規原子力発電の建設は中国の30基を含めて150基以上が予定されている。2003年からのウラン価格の高騰に伴い、ウラン探鉱費は増加傾向にある。MEG社は、ウラン探鉱の増加に伴い、2007年より世界363社に対する探鉱予算のアンケート調査を行い、2007年におけるウラン探鉱予算は963百万$と推定した(図 4)。
 
 


図 3 世界の探鉱費(金、ベースメタル、ダイヤモンド、白金)の推移(1997~2007年)

図 4 世界のウラン探鉱費(2001~2007年)

4. 世界における非鉄メジャーの企業買収
 2005~2007年の3年間における企業買収件数は、2005年の25件から2007年の11件と減少傾向にある。しかしながら、企業買収額は2006年の1,008億$と突出している(図 5)。2006年には、日本円で2~3兆円規模の大型買収が見られた。
  7月:XstrataがFalconbridgeを買収(買収額 161億$)
 11月:CVRDがIncoを買収(買収額 170億$)
 11月:Freeport McMoranがPhelps Dodgeを買収提案(買収額 259億$)
 2007年には、Rio TintoがAlcanを買収(259億$)の大型買収が進められ、2007年11月2日現在、Alcanの株式90.2%を取得しているが、2007年の企業買収にはカウントされていない。2007年における1億$を越える企業買収は5件ある。
  Norilsk NickelによるLionore Miningの買収(買収額 63億$)
  Teck ComincoによるAur Resourcesの買収(買収額 38億$)
  Lundin MiningによるRio Narcea Gold Minesの買収(買収額 8億$)
  ZinifexによるWolfden Resourcesの買収(買収額 3億$)
  Hunan Nonferous MetalsによるCompass Resourcesの買収(買収額 1億$)
 カナダ企業が買収のターゲットになっているが、Teck ComincoやLundin Miningといったカナダ企業による買収もみられる。また、ロシアや中国企業による企業買収による大型化も特徴的である。


図 5 世界における鉱山会社の企業買収件数と金額(2005~2007年)

5. 世界における非鉄メジャーによるプロジェクト買収
 価格高騰による非鉄メジャーの利益拡大に伴い、ベースメタルや金のプロジェクト買収額が2005年から拡大している(図 6)。特に2006年のプロジェクト買収額は945億$に達した。2007年には351億$と減少したが、これは2006年の企業買収により主要非鉄メジャーが消滅したためと思われる。2007年における5千万$以上で金プロジェクトを除くプロジェクト買収は9件あった。
  Lundin MiningによるTenke Fungurume(Cu)の権益24.75%買収(買収額 13億$)
  Sherritt InternationalによるAmbatovy(Ni)の権益40%買収(買収額 13億$)
  ChinalcoによるToromocho(Cu)の権益100%買収(買収額 8億$)
  Impala PlatinumによるLeeuwkop 402jq(Pt)の権益100%買収(買収額 5億$)
  Teck ComincoによるGalore Creek(Cu)の権益50%買収(買収額 5億$)
  Anglo AmericanによるMichiquillay(Cu)の権益100%買収(買収額 4億$)
  中国企業グループによるRio Blanco(Cu)の権益89.9%買収(買収額 2億$)
  SK NetworksによるZhongtiaoshan(Cu)の権益45%買収(買収額 1億$)
  Rio TintoによるPebble(Cu)の権益10.3%買収(買収額 0.8億$)
 中国の鉱物資源政策として、西部地域大開発による国内資源確保と海外資源開発投資の積極的展開による海外資源確保をめざしている。この背景には、国内需要拡大に伴い、銅製錬所の拡張を計画しており、製錬原料の確保が急務である。大規模鉱山開発が予定されているペルーにおける中国企業の攻勢が注目されている。2007年4月には、Michiquillayプロジェクトの政府入札に金川集団有限公司と紫金鉱業が応札したが、Anglo Americanが最低入札価格の9倍以上の4億$という破格値の前に敗れた。しかし、2007年2月、中国企業グループ(紫金鉱業、銅陵有限公司等)はRio Blancoプロジェクトを買収したり、2007年6月には、中国のアルミ大手のChinalcoがToromochoプロジェクトを買収している。ペルーから中国向けの銅精鉱輸出はグロス量で2002年の304千tから2006年には588千tと全輸出量の33%を占めており、新たな新規銅鉱山開発によってその輸出量は拡大すると予想される。ただし、ペルーでは、環境汚染の懸念や地元への利益還元を求めた地域住民による反鉱山運動が後を絶たず、Rio Blancoの地域住民投票では90%以上が鉱山反対を表明しており、今後の展開が待たれる。


図 6 世界における探鉱費とプロジェクト買収額(2001~2007年)

6. その他の鉱業動向
 国民の共有財産である資源が外国資本に占有され、国民に還元されていないとの反省から、鉱物資源の国家管理・権限強化や税制強化の動きも依然として顕在化している。ボリビアでは、国営企業(COMIBOL)の再建と民間企業による鉱山開発の推進を行っている。さらに、金属価格高騰時における、納税義務の強化や追加納税が検討されている。インドネシアでは、従来行われていた事業契約(COW: Contract of Work)制度を廃止し、事業許可制度の採用、外国企業と国営企業との契約義務、鉱業権発給権限の地方分権化、地域住民のための地域開発と国内製錬義務化を謳った新鉱業法が議会に上程されている。新鉱業法は未だ成案に至っていないが、その動向は世界が注目するところである。
 また、2006年と同様に、利益配分を巡った会社側と労働組合間での交渉や鉱山スト、環境問題や利益還元を求める地域住民と鉱山の紛争、難航する銅買鉱交渉、等が見られた。そのような中にあって、わが国企業が35%の権益をもつボリビアのSan Cristobal亜鉛鉱山からの生産が開始され、亜鉛精鉱が供給された。この亜鉛鉱山はわが国亜鉛精鉱輸入量の10%強を供給することになっており、フル生産されると生産量で世界第10位の亜鉛鉱山となる。

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