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報告書&レポート

2008年2月14日 ジャカルタ事務所 池田 肇 Tel:+62-21-522-6640 e-mail:jogmec2@cbn.net.id
2008年15号

インドネシア鉱業法改正の行方 その10-『12月上旬までの審議状況:長引く移行期間規定等をめぐる攻防』-

はじめに
 2007年10月11日付けカレントトッピクス「インドネシア鉱業法改正の行方-その9『8月9日発行の議会雑誌Parlementariaから見る新鉱業法案成立の見通し』」で予想したとおり、エネルギー鉱物資源省(ESDM)高官が様々な鉱業大会、セミナーなどの機会を通じ、また新聞のインタビューに応えて鉱業法案は2007年内に成立するとした発言はまたもや空振りに終わった。
 ユドヨノ政権は、2007年4月に新投資法を施行し、マクロ経済の好転により一部の産業分野で好調な投資を呼び起こしているが、鉱業投資は依然低迷している。鉱業法案は、森林法をはじめとする関連法規との整合性、地方分権化の明記、鉱業許認可の透明性確保、環境保護の実践、そして鉱業投資の促進を趣旨とする。しかし、最近の非鉄金属価格の高騰を受けた世界的な資源獲得競争の中で、一次原料の輸出依存体制から高付加価値製品の輸出体制へシフトしようとする鉱業政策の大転換を掲げ資源ナショナリズムを意識したものとなっている。
 JOGMECジャカルタ事務所は、このほどインドネシア鉱業協会関係者から2007年10月4日付け鉱物資源石炭鉱業法案草稿(最新草稿)を非公式に入手し、併せてエネルギー鉱物資源省Mr. R. Sukhyar大臣顧問(Expert Staff Minister of Energy and Mineral Resources for Information and Communication)が、11月13日、Bandungで講演を行った「鉱業法改正シンポジウム」資料を同氏より直接入手したので、これら資料を基に、最新草稿の概要、インドネシア政府、議会が描く鉱物資源開発の基本的な枠組み及び鉱業法案審議の本質的問題を紹介する。

1. 鉱業法案改正趣旨
 最新草稿の冒頭、次の改正趣旨が記載されている。
 憲法第3条33節は、インドネシアの土、水、自然資源は国家が管理し、国民の幸福のために利用しなければならないと規定している。インドネシアの大地に含まれる自然資源である鉱物・石炭が非再生資源であることを考えると、それらの利用は、継続して国民の最大の利益になるように、最適性、効率性、透明性、継続性及び環境に配慮して行わなければならない。
 前述の憲法の規定に従い、1967年、鉱業の基本原則に関する法律No. 11が発布された。本法律は制定後40年間にわたり、国の発展に大いに貢献してきた。
 しかし、国が発展するにつれ、本法律は内容が中央集権的なため、もはや現在の状況や未来の課題に十分に対応できなくなった。さらに、鉱山開発は、国内外の戦略的変化に応じて調整しなければならない。鉱物・石炭開発が直面する主要な課題は、民主化、地方自治、公民権、環境への配慮、技術情報の発展、知的所有権、官民の躍進的参加を促すグローバル化の影響である。
 1967年法律No. 11では、社会問題、環境問題、一般の人々への権限付与、土地を巡る紛争、国家の収入、現地調達、国内労働力、現地雇用などの鉱物・石炭開発に関する問題を最適に管理できなかった。
 これらの問題に対処し、戦略的に環境問題に取り組むためには、鉱物・石炭開発に関する新しい規程を制定し、鉱物・石炭開発の新しい手法、管理の再編及び事業に法的基盤を与えなければならない。
 1967年法律No. 11を改正し、完璧なものにすることによって、重要な外国取引商品である鉱物・石炭の開発管理が整備され、国の主要生産物である原材料やエネルギーの需要、収入源や外国為替、事業機会の確立、雇用の機会及び地域の発展や国民生活の向上が満たされ、国民の最大の利益に資することができる。
 本法律は次の原則の上に成り立っている。

(1) 非再生資源である鉱物・石炭は、国家が管理し、その開発と実践は政府と地方自治体が事業体と協力して行う。
(2) その後、中央政府は事業機会をインドネシアの法人、個人、地元の人々の事業所に提供し、それらの人々が、中央政府、地元行政機関の自治権に従って発行されたライセンスに基づき、鉱物・石炭分野で業務遂行できるようにする。
(3) 自治権は、鉱物・石炭開発の管理が、政府及び地方の行政など、地方分権の原則に基づいていなければならない。
(4) 鉱山開発は、インドネシア国民の繁栄に資するように、経済的・社会的に最大の恩恵を与えるものでなければならない。
(5) 鉱山事業は、その地域の発展を加速させ、個人・中小規模事業者の経済活動及び鉱山を支える産業の発展を推し進めるものでなければならない。

2. 最新草稿
 1967年法律No. 11は12章69条からなる法律であったが、最新草稿は23章176条1で構成される法律となっている。2005年5月20日の初稿に比べ、8章、101条項が2007年3月下旬以降に追加された。JOGMECジャカルタ事務所がこれまで入手できた草稿を参考までに紹介する。

  (i) 2005 年 5 月 20 日付け草稿 ( 初稿 ) 第 15 章第 75 条
  (ii) 2006 年 8 月 30 日付け草稿 第 15 章第 75 条
  (iii) 2007 年 3 月 22 日付け草稿 第 15 章第 75 条
  (iv) 2007 年 10 月 4 日付け草稿 第 23 章第 176 条

3. 中央・地方政府の役割
 最新草稿には、鉱物資源石炭開発分野における中央・州・地方政府の役割を次のとおり定義している。
(1)中央政府(Government)(第6条):

  (i) 国家鉱業政策 ( 生産、販売、利用、保全、非課税歳入、高付加価値化 ) の策定。 法律・規則の制定。国家標準、ガイドライン、基準の作成、指定。
  (ii) 鉱業許認可制度の構築、中央政府所管ライセンスの発行、管理、監督。
  (iii) 鉱業地域 (WP) 、鉱業区 (WUP) 、国家保留鉱区 (WPN) 情報の管理 ( 登録簿の作成 ) 。 (WP & WUP の概念は詳述する。 )
  (iv) 地方政府による鉱業管理の監督及び指導。
  (v) 州、地方政府の能力強化。

(2)州政府(Province)(第7条)

  (i) 法律・規則の制定。
  (ii) 州政府所管ライセンスの発行、管理、監督。
  (iii) 州レベルの地質情報、鉱物・石炭ポテンシャルデータの管理。
  (iv) 州、地方政府の人材育成。
  (v) 中央政府への報告。

(3)地方政府(Regency/City)(第8条)

  (i) 法律・規則の制定。
  (ii) 地方政府所管ライセンスの発行、管理、監督。
  (iii) 県 / 市レベルの地質情報、鉱物・石炭ポテンシャルデータの管理。
  (iv) 地域開発の促進と地域社会の鉱業管理への参画。

4. 鉱業事業許可の発給権限
 改正趣旨の柱の一つである地方分権化(鉱業許認可権の移譲)は、次のとおり整理されている。
(1)中央政府(鉱物資源石炭地熱総局長):

  (i) 鉱業活動の現場 ( 鉱山、選鉱場、製錬所 ) が 2 つ以上の州にまたがる場合。
  (ii) 鉱業活動による環境への影響が 2 つ以上の州にまたがる場合。
  (iii) 沿岸から 12 マイル以上の海域。

(2)州政府(州知事):

  (i) 鉱業活動の現場が 2 つ以上の県 / 市にまたがる場合。
  (ii) 沿岸から 4 マイル以上 12 マイル未満の海域。

(3)地方政府(県知事):

  (i) 鉱業活動の現場が単独の県/市内に位置する場合。
  (ii) 沿岸から4マイル未満の海域。

5. 鉱業地域(第1図参照)

第1図 鉱業地域説明図
第1図 鉱業地域説明図

(1)鉱業地域(WP:Wilayah Pertambangan)(第9条):

  (i) WP とは、地質、資源ポテンシャル情報など利用可能なデータに基づき、鉱業 ( 鉱物鉱業・石炭鉱業 ) 活動の可能性がある地域として指定される。
  (ii) WP は、国家空間利用計画の一部として、中央政府が地方政府及び議会と 調整 した後に定められる。
  (iii) WP は、鉱業区 (WUP : Wilayah Usaha Pertambangan) 、市民鉱区 (WPR : Wilayah Pertambangan Rakyat) 、国家保留鉱区 (WPN : Wilayah Pencadangan Negara) の 3 鉱区から構成される。
  (iv) WP の境界、面積、決定方法は、政府規定で詳細を定める。
  (v) WP は、地質図 (1:250,000) に明記される。
  (vi) WP は、既存の鉱業事業契約 (KK(COW)) 、石炭鉱業事業契約 (KPK2B(CCOW)) 鉱区などを包括する地域となる。石炭鉱業、非金属鉱業、砕石鉱業などすべての鉱業活動が含まれる。
  (vii) WP の決定は、経済、生態系、社会的・文化的・環境的被害を考慮して、総合的に行う。地方政府の希望を考慮する。

(2)鉱業区(WUP:Wilayah Usaha Pertambangan)(第13条):

  (i) WUP は、中央政府及び州政府が地質データ、鉱物資源ポテンシャル、地質データなどに基づき決定される。
  (ii) WUP は、中央政府が地方行政当局と調整し、議会に書面にて 報告 した後に定められる。
  (iii) 上記調整は、中央政府と地方政府が保有するデータと情報に基づき実施される。
  (iv) 中央政府は、現行の規定のもとで、 WUP 制定の権限の一部を州政府に与えることがある。

(3)鉱業事業許可鉱区(WIUP:Wilayah Izin Usaha Pertambangan)(第16・17条)

  (i) WIUP とは、鉱業事業許可 (IUP) により定められる地域を言う。
  (ii) 金属鉱業・石炭鉱業の採掘は、 WIUP の中で行わなければならない。
  (iii) 金属鉱業・石炭の WIUP の境界及び範囲は、中央政府が、中央政府と地方政府が決めた規定に基づき、地方政府と調整の上、決定される。
  (iv) 石炭鉱業、金属鉱業の WIUP は、鉱業許認可機関 ( 大臣、州知事、県知事 ) による入札 (Bidding & Tender) により決定される。 ( プロポーザル方式が導入されるかは不明 )
  (v) 非金属鉱業、砕石業の WIUP は、投資家からの申請手続きにより地方政府によって決定される。

(4)市民鉱区(WPR:Wilayah Pertambangan Rakyat)(第20条):

  (i) 市民の鉱業活動は、 WPR の中で行われる。
  (ii) WPR とは、 WP で一般の人々が採鉱活動を行う地区のことである。
  (iii) WPR は、県知事が地方の立法議会の助言を得た後に定める。
  (iv) WPR の対象事業は次のとおり。 ( 第 23 条 )
・川岸及び河床の二次堆積鉱物
・深度 25m までの初成鉱床
・段丘堆積物、河川堆積物、古河川堆積物 (ancient river precipitation)
・最大面積は 25ha
・最大 15 年間

(5)国家保留鉱区(WPN:Wilayah Pencadangan Negara)(第28条):

  (i) WPN とは、政府の利益、立法議会の提案及び地元の要望を考慮して、生態系と環境の均衡を維持する保護区として定める。
  (ii) 国民の戦略的利益のために保留される鉱区である。 ( 第 1 条第 32 項 )
  (iii) WPN の留意事項は次のとおり。 ( 第 29 条 )
・国内産業における原材料の需要
・国のエネルギー需要
・外国為替財源
・施設、インフラに基づく地域の状況
・経済発展の中心地としての開発の可能性
・環境を支える能力
  (iv) WPN は議会の承認を得た場合は WUP として変更できる。

6. 鉱業事業の区分(第32条)
 最新草稿による鉱業事業の区分は次のとおり。
(1)鉱物鉱業(Mineral Mining)

  (i) 放射性鉱物鉱業 * :ウラン、トリウムなど。
  (ii) 金属鉱業 :ニッケル、銅、鉛、亜鉛、ボーキサイトなど。
  (iii) 非金属鉱業 :大理石、石灰石、岩塩
  (iv) 砕石業 :岩

(2)石炭鉱業(Coal Mining)
 *放射性鉱物鉱業はIUPによる。ただし、原子力労働規則を遵守しなければならない。

7. 鉱業事業許可の種類(第33条)
(1)鉱業事業許可(IUP:Izin Usaha Pertambangan)(第34~39条)
(2)市民鉱業許可(IPR:Izin Pertambangan Rakyat)(第67~73条)
(3)特別鉱業許可(IKP:Izin Khusus Pertambangan)(第74~78条)

8. 鉱業事業許可と探鉱、開発ステージ
(1)探鉱鉱業事業許可(Exploration-IUP)(第40~43条)
  生産鉱業事業許可(Production-IUP)(第44~50条)
(2)特別鉱業許可(IKP:Izin Khusus Pertambangan)(第74~78条)(第2図参照)

  (i) 国営鉱山企業は、 WPN 内で鉱物・石炭資源を優先的に採掘する権利を持つ。
  (ii) WPN 内の採掘活動は、エネルギー鉱物資源省大臣が IKP を与えた採掘事業体が実施する。
  (iii) WPN では、銅、金、鉄、ニッケル、ボーキサイトの採掘及び石炭の深部採掘ができる。
  (iv) IKP とは、所定の WPN 内で概査、探鉱、環境影響評価調査及び FS 調査を実施することのできる権利許可である。
  (v) IKP の有効期限は、鉱物鉱業は 8 年間、石炭鉱業は 7 年間と定められている。

(3)鉱業事業協約(PUP:Perjanjian Usaha Pertambangan)(第79~98条)

  (i) 必要な要件を満足し鉱山開発へ移行しようとする IKP 保持者は、政府が設立した組織委員会と協約を締結することにより鉱山開発が可能となる。
  (ii) 組織委員会とは国立の事業体である。組織委員会は、議長 1 名と 6 名のメンバーから成る。
  (iii) 組織委員会の議長とメンバーは、エネルギー鉱物資源省大臣の推薦に基づき、大統領が任命及び解任を行う。
  (iv) PUP の前提条件は次のとおり。 ( 第 80 条 )
・WPN 内の事業であること。
・インフラが未整備な地域であること。
・該当地域が、新しい経済成長の中心地として発展の可能性をもっていること。
・最新技術と多額の投資を必要とすること。
・投資期間は 20 年とし、 10 年間、 2 回の延長を認める。
・契約地域の面積は、現行の生産 WIUP の必要要件に従い、鉱物・石炭の種類に基づき、決められる。

第2図 国家保留鉱区(WPN)における鉱業開発プロセス
<注>PMA:外資設立の現地法人(Penanaman Model Asing)

第2図 国家保留鉱区(WPN)における鉱業開発プロセス

9. 鉱業権の発給条件(最大面積、有効期間)
 最新草稿に規定される鉱業権の最大面積と鉱業事業許可の有効期間は第1表のとおり。

第1表 鉱業権の発給条件
第1表 鉱業権の発給条件
<注>WIKP:鉱業特別許可鉱区 WPUP:鉱業事業協約鉱区

10. 高付加価値化(間接的鉱石輸出禁止)
 最新草稿中2か所の記述が認められる。

  (i) 生産 IUP の保持者は、原料を国内で生産・精製しなければならない。 ( 第 46 条 )
  (ii) 鉱物、石炭資源の付加価値を拡大する。 ( 第 107 条 )

 第46条項の説明書きには、国内で行われる加工・精製は、その製品の価値の拡大と最適化、原材料としての産業での利用価値増大、雇用機会の拡大、国の収入増加のために行うと記載されている。

11. 鉱業収益の利益配当
 最新草稿によれば、鉱山会社は鉱業活動によって得られた純利益の6%を中央政府に、4%を地方政府に寄付しなければならないと規定している。(第95条)
 2007年7月会社法が施行され、天然資源関連企業については企業の社会的責任(CSR)予算が義務化されたばかりであり新たな利益配分を課す形になっている。
 地方政府の配分は、州政府1%、鉱山が所在する県に2%、州内のその他の県に1%を配分することが明記されている。(第95条第2項)
 また、上記事項とは別に、PUPの協約事業体は資本市場を通して20%の株式売却を行う責任を持つ。本件は、何を意図したものかは不明である。

12. 罰則規定
 最新草稿に規定される処罰、罰金は第2表のとおり。

第2表 行政処分の内容
第2表 行政処分の内容

13. 暫定移行期間問題
 最新草稿には、新鉱業法律発効前の鉱業事業権(Kuasa Pertambangan)、鉱業事業契約(KK(COW))、石炭鉱業事業契約(PK2PB(CCOW))、地方鉱業許可書(Surat Izin Pertambangan Daerah)、住民鉱業事業許可書(Surat Izin Pertambangan Rakyat)は、本法律に従い変更されなければならないが、有効期間終了まで (最長2年間) は有効とする、と2つのオプションが併記されている。
 2007年5月16日付け作業委員会(PANJA)のメモとして、ゴルカル党は5年、国民信託党は3年、福祉正義党は4年、民族覚醒党は5年、闘争民主党は3年を主張している。
 2007年7月18日付けメモは、本法律発効前の鉱業に関する権利義務は、本法律の制定後2年以内に変更されなければならないとされている。
 2007年11月22日付けメモは、変更規定には、現在の加工・精製活動が含まれる。国の収入に関する規定も考慮される。規定変更の際には、現在起こっている問題について話し合われるとある。

14. おわりに
 鉱業事業協約を提案したゴルカル党と異なり、他会派の場合は11月4日から始まった会期でも、「鉱業事業部門で国益及び国民の利益を守ることが新鉱業法の目的」というような資源ナショナリズム的な発言を続けている。
 民主党のスタン・バトゥガナ(Sutan Bhatoegana)議員は、「新鉱業法は、議会が本当に社会正義と国民の福祉を守れるかどうかを試すための正念場となる」と指摘。そして、「国家と国民の利益を守るための手立ては、外国投資家だけに利益をもたらしてきた従来の鉱業事業契約(KK(COW))を鉱業事業許可(IUP)に変えること」と主張している。
 他の議員からもこれと大同小異の発言が出ており、こうした発言だけを聞いていると、あたかも新鉱業法そのものが「資源ナショナリズムの権化」というような印象を与えるが、他方では同法が「停滞し続けるこの国の鉱業事業を活性化するための投資誘致の手立て」との発言も絶えない。
 福祉平和党のハスルンガン・シマモラ(Hasurungan Simamora)議員は、「新鉱業法は既存の鉱業事業の活性化のみならず、新規投資の誘致に役立たねばならず、鉱業事業の投資が増加することにより、地方財政及び住民の生活にも寄与することができる」と主張する。
 こうした相矛盾するような発言は2007年8月以降の議会でも続出している。第7委員会関係者の話では、「第7委員会及び鉱業法案特別委員会(PANSUS)のメンバーの中には、資源ナショナリズムと投資誘致のジレンマに悩んでいる議員が少なくない」という。
 これはつまり、それぞれの選挙区の地方政府や有権者の声には、外国投資家だけに利益をもたらすような鉱業制度は変えなければならないと言う要望があるものの、すでに停滞している鉱業部門での投資を新鉱業法で活性化できるかはきわめて心もとないというのが彼らの本音である。
 移行期間をめぐって政府と議会内各会派は対峙しているが、2009年に大統領選挙、国民議会選挙を控えゴルカル党は微妙な立場に立たされている。議会最大会派のゴルカル党は、民間及び外資の要望にもっとも理解を示してきた。そのため、政府がまとめた鉱業法案から鉱業事業契約(KK(COW))がなくなり、鉱業事業許可のみになったことを懸念し、同党は鉱業事業協約(PUP)という概念を提案した。移行期間についても、当初ゴルカル党は、「既存の事業契約の契約期間が終了するまで有効と見なさなければならない」との立場を取ってきたが、9月に入ってから、他会派に同調する傾向を見せている。
 ゴルカル党のアイルランガ・ハルタルト(Airlangga Hartarto)議員は9月5日、「税率などについては既存の事業契約に従うことも理解できるが、その他については一定の移行期間を経て鉱業法の規定に従うべき」との見解を明らかにしている。移行期間についてなぜゴルカル党が他会派に同調し始めたかは定かではないが、同党が提案した鉱業事業協約(PUP)に対する他会派の支持を得るための取引の可能性も否めない。
 また、鉱業事業協約が鉱業法に盛り込まれた場合、現行の鉱業事業契約(KK(COW))に近い協業形態が温存される可能性があるため移行期間を限定することを受け入れたとも解釈できる。
 しかし、これら問題に加え、最新草稿に盛り込まれた鉱物資源開発の枠組みを構成する鉱業地域(WP:Wilayah Pertambangan)、鉱業区(WUP:Wilayah Usaha Pertambangan)、市民鉱区(WPR:Wilayah Pertambangan Rakyat)、国家保留鉱区(WPN:Wilayah Pencadangan Negara)、鉱業事業許可鉱区(WIUP:Wilayah Izin Usaha Pertambangan)などの概念は、森林法による保護林問題を再燃させているほか、法律施行後、直ちに運輸通信省、環境省、労働移住省、国会、地方議会関係者との協議が不可欠になることから、更に審議を長引かせるものになると安易に想像することができる。
 新鉱業法案に関する報道が最近では極めて限られているため、こうした点について今後も調査を続行する必要がある。

1
第I章(一般規定[第1条])、第Ⅱ章(原則及び目的[第2~3条])、第Ⅲ章(鉱物・石炭の取得[第4~5条])、第Ⅳ章(鉱物・石炭管理の行政当局[第6~8条])、第Ⅴ章(鉱業地域(WP:Wilayah Pertambangan)[第9~31条])、第Ⅵ章(鉱業事業[第32~33条])、第Ⅶ章(鉱業事業許可(IUP:Izin Usaha Pertambangan)[第34~66条])、第Ⅷ章(市民鉱業事業許可(IPR:Izin Pertambangan Rakyat)[第67~73条])、第Ⅸ章(鉱業特別事業許可(IKP:Izin Khusus Pertambangan)[第74~98条])、第Ⅹ章(鉱業データ[第99~101条])、第ⅩⅠ章(権利と責任[第102~121条])、第ⅩⅡ章(採掘事業の一時的停止[第122~125条])、第ⅩⅢ章(許可の終了[第126~132条])、第ⅩⅣ章(鉱業サービス事業[第133~136条])、第ⅩⅤ章(国及び地元行政当局の収入[第137~141条])、第ⅩⅥ章(鉱業事業のための土地利用[第142~146条])、第ⅩⅦ章(公共の支援提供、監視、一般人の保護[第147~153条])、第ⅩⅧ章(研究開発、教育、研修[第154~156条])、第ⅩⅨ章(監督・調査[第157~158条])、第ⅩⅩ章(行政処分、犯罪規定[第159~171条])、第ⅩⅩⅠ章(暫定移行期間[第172条])、第ⅩⅩⅡ章(雑則[第173~174条])、第ⅩⅩⅢ章(終章[第175~176条])

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