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報告書&レポート

2008年2月14日 金属調査部 白鳥智裕 Tel:044-520-8590 e-mail:shiratori-tomohiro@jogmec.go.jp
2008年16号

金属資源開発本部企画調査部が選ぶ2007年10大ニュース

 JOGMEC金属資源開発本部企画調査部では、金属鉱業分野における情報収集、分析、発信業務を行っているが、それらの2007年の情報収集業務の成果から、2007年の10大ニュースを以下のとおり選定した。

1. 非鉄金属価格の高騰が続く
2. 進む鉱業界の寡占化
3. レアメタル確保の危機感
4. ウラン争奪戦の激化
5. リサイクル技術による非鉄金属資源確保
6. 拡大する中国の存在感
7. 日本の資源外交
8. 世界の注目が集まるアフリカ
9. 欧州新化学物質規制「REACH」の施行
10. 深刻な人材確保

1. 非鉄金属価格の高騰が続く
<銅価格>
 1年を通して、高値を維持した。最初の3か月を5,000$/t台で推移したものの、その後、投機資金の流入、LME在庫の減少、供給障害の頻発、中国などの需要の期待から、価格が上昇し、7,000$/tを中心に価格が推移した。2007年の平均価格は、7,127.99$/tであった。
<亜鉛価格>
 1年を通して下がり続けた。年初は、投機資金の撤退等で一度は下がったものの、その後、上昇した。6月頃以降は、供給増大に対する懸念、米国のサブプライム・ローン問題による金融不安の影響等から、価格が減少の方向だった。2007年の平均価格は、3,523.74$/tであった。
<鉛価格>
 10月まで価格が上昇、3,980$/tの最高値を付けたものの、その後下降している。上昇の主な原因は、各種の供給障害、中国の輸出税導入等により、価格が上昇した。2007年の平均価格は、2,595.14$/tであった。
<ニッケル価格>
 ニッケルの好調な需要、低水準のLME在庫、供給不足が長期化されると予想したことから、前半は価格が上昇、5月に最高値の54,200$/tに達した。しかし、6月にLMEがニッケルのレンディング規制を強化した結果、価格が急落した。2007年の平均価格は、37,223.96$/tであった。
 上記4鉱種とも、今後高値が続くも緩やかに下落していくといくつかの調査会社は予測している。
 ウランやレアメタル(クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、マンガン)なども中国などの需要増大を背景に価格が高騰若しくは高値を維持した。

銅地金価格の推移
亜鉛地金価格の推移

鉛地金価格の推移
ニッケル地金価格の推移

2. 進む鉱業界の寡占化
 Rio Tintoは、2007年7月12日、アルミニウム大手のAlcan(カナダ)を381億US$相当で買収すると発表した。Rio Tintoは、Alcanを買収することによって、BHP Billitonに迫る世界第2位の鉱山会社の地位を確固たるものにするとともに、ボーキサイト・アルミナ・アルミニウムとアルミニウム・ビジネスの上流から下流に至るまでの全てにおいて世界トップクラスの生産規模となる。
 一方、11月に突如BHP BillitonがRio Tintoに対して総額1,400億US$に及ぶ合併提案を行った。合併が成立した場合、非鉄金属 だけではなく、鉄鉱石、石炭、ウランと資源産業で圧倒的な影響力を持つ超巨大鉱山会社が誕生することになる。これに対して、Rio Tinto側は条件が悪いとして、この提案を拒否した。また、国際鉄鋼協会会長Ian Christmas事務局長が「鉄鋼産業にとって公共の不利益となるなどから、買収を認めるべきではない」とコメントするなど、鉄鋼や銅を始めとする鉱業関係者はBHP Billitonの鉱業界での支配力が高まることを危惧した。また、日本の公正取引委員会が欧州、豪州などの当局と協議に乗り出すなど、多くの関係者は、この合併に反対若しくは否定的な態度をとっている。
 非鉄メジャー企業の寡占化が進むと日本の非鉄金属製錬会社やメーカー等にとって価格交渉力がさらに低下することにも繋がる。

3. レアメタル確保の危機感
 世界規模でレアメタル争奪戦が激化している。携帯電話やパソコン、ハイブリッド車などのハイテク製品はレアメタルの供給が止まれば、たちどころに生産できなくなる。特に、レアメタルの我国への供給は中国等の特定国への依存していることが問題である。
 政府は積極的な資源外交を展開するとともに、経済産業省と文部科学省が連携シンポジウムを2月に開催、鉱業関係者が新聞等のメディアでレアメタルの供給体制の強化を訴えたり、総合資源エネルギー調査会(経済産業省の諮問機関)のレアメタル対策部会が「今後のレアメタルの安定供給対策について」と題して報告書をまとめ、「昨今の鉱物資源を取り巻く各種情勢の変化を踏まえ、今後のレアメタルの安定供給対策はいかにあるべきか。」について政策提言を行った。

4. ウラン争奪戦の激化
 将来エネルギーの需要の大幅な増加、化石燃料以外のエネルギー源が地球の温暖化現象等の観点からも見直されたことから、ウランの需要が増加すると予測されている。そのような中、原子力発電の燃料となるウランの高騰が続き、最高値で2007年6月に136$/lbをつけた。2002年以前は年平均10$/lb程度であったのが、ここ数年で急激に高騰している。
 それに伴い、ファンドなどの投機資金の流入、ニューヨーク商業取引所(NYMEX)でウラン先物の取引開始、中国による戦略ウラン備蓄計画、ロシアでの原子力独占企業の設立、豪州での国内ウランを戦略資源と位置付けての3鉱山政策を撤廃、豪州から中国、インド、ロシア等へのウラン輸出の許可、30年ぶりに米国での原子力発電所の新規建設の申請など、世界各地でウランを取り巻く状況が変わりつつある。

5. リサイクルによる非鉄金属資源確保
 使用済みの携帯電話やパソコン基盤などの廃棄物から、銅や金、レアメタルを回収するリサイクル技術、事業が本格化してきた。日本はベースメタルやレアメタル資源を海外に依存してきたが、世界経済において存在感を増した中国が国家を挙げて資源確保に動き出しているため、ベースメタルやレアメタル資源を海外に依存してきた日本にとって原料の確保が困難になってきたためである。
 経済産業省は3Rシステム化可能性調査「伸銅品等のリサイクル実態調査と銅系資源リサイクル率向上策の調査研究事業」として「銅マテリアルフロー」を策定し、2007年には、その中で、銅リサイクルの課題抽出とリサイクル率向上に関する提言を行なった。民間では、DOWAホールディングスグループが小坂製錬所の建設中の新型リサイクル炉の性能を拡大させる(2008年3月に本格操業予定)、日鉱金属グループが金属リサイクル事業の強化策として「日立・メタル・リサイクル・コンプレックス計画」をスタートさせるなど、企業もリサイクル事業を本格化している。
 携帯電話やパソコン基盤などの廃棄物は「都市鉱山」として、注目を集めるが、中国などのリサイクルコストが安い海外へ廃棄物が流出する可能性もあるなど、リサイクル原料争奪戦も始まりそうである。

6. 拡大する中国の存在感
 各種非鉄金属高騰の要因のひとつに、中国の急速な経済拡大があるとされている。経済成長率9%を上回る高い経済成長を続け、あらゆる分野で中国への依存度が高まり、世界経済に影響力を持つ状況にある。中国政府は、増大する国内消費を支えるため、2006年から引き続き、資源外交の推進、海外資源権益獲得の加速、国内資源保護傾向の資源政策を実施した。
 更に、中国財務部が2008年1月から、フェロシリコン、シリコン-マンガン、フェロモリブデン、マンガン、フェロタングステン、チタン、シリコン等の輸出税を引き上げた。2008年も同様の資源政策の推進・強化が行なわれると思われる。

  中国の主な政策・動き等
1月 豪州と中国へのウラン輸出協定を締結
1月 タングステン・モリブデン・クロム・インジウムなどの非鉄金属産品の輸出税を5~15%引き上げ
2月 胡錦涛国家主席のアフリカ資源外交
3月 鉛・亜鉛鉱業セクターへの参入条件を発表(公告第13号)
4月 燃料高によるマグネシウムの生産コスト上昇
4月 ウランの戦略備蓄計画の発表
5月 2030年までに原子力発電所100基以上建設することを目標としていることを「エネルギー戦略フォーラム」(北京)で公表
6月 ネオジム、ディスプロジウム、テルビウムなどに輸出関税を導入
7月 レアメタル関連品目を含めた商品の増値税還付廃止若しくは引き下げ
8月 銅、鉛、亜鉛製品など、新たな加工貿易制限製品リストに追加
10月 レアメタルの輸出について、過去の実績に基づき輸出資格を与える認定制度の導入
12月 希少金属等の輸出関税を2008年1月から引き上げ

7. 日本の資源外交
 世界的なレアメタル資源・ウランの資源確保が激化する中、甘利経済産業大臣が4月にカザフスタン、ウズベキスタン、11月に南アフリカとボツワナを訪問し、資源外交を展開した。
 カザフスタンはウランの埋蔵量で世界第2位で、同国のマシモフ首相との間で「原子力の平和的利用の分野における戦略的パートナーシップ強化に関する共同声明」を署名した。また、甘利大臣に同行したJOGMECを含む政府機関や原子力産業分野の民間企業の代表は、カザフスタン国営企業「カザトムプロム」社をはじめとするカザフ側機関との間で、ウラン共同開発をはじめとする契約や覚書等、24件の合意文書に署名した。これによって獲得した日本のカザフスタンでのウランの権益によって得られる輸入量は、日本の消費量の3~4割となる見込みである。
 また、甘利経済産業大臣は、11月にレアメタルの安定確保のために南アフリカとボツワナを訪問、南アフリカではソンジカ鉱物エネルギー大臣と、レアメタルの共同調査、バイオリーチング技術開発、プラチナ鉱山への共同投資等についての共同声明を発表し、ボツワナのモハエ大統領とは、衛星技術を使っての埋蔵資源調査等についての共同声明を発した。

8. 世界の注目が集まるアフリカ
 レアメタルやウランを含む非鉄金属の高騰から、資源ナショナリズムの台頭、住民運動やストライキ等による供給不安等から、非鉄金属の消費国がアフリカの資源ポテンシャルに注目している。
 米国地質調査所(USGS)のデータによれば、南アフリカは金、白金族、マンガンの埋蔵量で世界第1位、クロム、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、ルチルで世界第2位、コンゴ民主共和国はコバルトの埋蔵量世界第1位などレアメタルが多く埋蔵されている。
 アフリカでは鉱山開発や採掘技術が十分でない国が大半であるため、レアメタルをはじめとする資源については、未開発の部分も残っている。中国をはじめとして、ヨーロッパやインドなど各国の資源企業が権益確保を目指している。例えば、中国は2007年1月に胡錦涛国家主席がアフリカ資源外交を展開、台湾も外交関係を持つアフリカ5か国とサミットを開催した。米国によって10月に設置、運用が始まったアメリカアフリカ軍(United States Africa Command, AFRICOM)のの目的のひとつが天然資源の確保であった。
 日本も、アフリカに対する資源外交を展開しているが、旧宗主国を中心とした欧州系資源メジャー企業、積極的な海外進出を図る中国の競争が激化している。

9. 欧州新化学物質規制「REACH」の施行
 欧州新化学物質規制(Registration, Evaluation and Authorisation of Chemicals:REACH)が、2007年6月1日に施行された。REACH規制とは(1)Registration(登録)、(2)Evaluation(評価)、(3)Authorization(認可)、(4)Restriction(制限)の4 つの段階からなる化学物質規制で、これらの手続きを加盟国の所轄官庁と欧州化学物質庁(European Chemical Agency [ECHA],ヘルシンキ)が行なう。
 REACH 規制は金属及び金属化合物を含む化学的物質全体に適用されることから、金属産業界の受ける影響も大きい。そのため、これまで欧州の金属産業の業界団体や企業等が主体となり、生産者や輸入者によって、REACH規制導入の最初の段階である物質の登録作業(Registration)が行われており、施行後3年半以内に完了させ、化学物質安全性報告書(Chemical Safety Report:CSR)も作成する予定である。登録作業は、年間1t以上の新規化学物質、既存化学物質等を生産、輸入している企業による化学物質のデータ提出義務を意味する。鉱石(精鉱)は対象とならないものの、地金、合金は規制対象となる。欧州委員会は、REACH規制により、およそ3万物質に関する情報が、中央データベースに登録されると予測している。
 今後、制度的に、複雑で、課題が多いと予想されているREACH規制導入の現実面での問題が表面化することも懸念され、産業界と規制当局側による具体的な取り組みが注目される。

10. 深刻な人材確保
 世界的な金属市場の活況が続いている一方、地質、探鉱、採鉱等技能・熟練労働者、技術者の不足が深刻化している。今後もこの状況が続くと、コスト高や事業の遅れ、供給抑制が懸念される。
 このため、資源業界各社は(財)国際資源大学校の国内人材育成研修事業実施の機能強化、研修環境整備等のために、非鉄製錬大手8社が国際資源大学校に総額5億円の寄付を行った。
 海外でも、開発現場における人材不足は深刻化している。対策として、例えば、豪州では労働力不足の解決策のひとつに給与水準の引き上げがあるが、資源業界の労働者の給与水準は、資源ブームの影響からすでに他産業に比べ急速に上昇している。また、女性労働力の参加により労働力不足を解消しようとする動きがすでに始まっている。
 

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