閉じる

報告書&レポート

2008年3月6日 北京事務所 土屋春明 Tel:+86-10-6590-9520 e-mail:tsuchiya@jogmec.cn
2008年21号

2007年中国希土十大ニュース

 2007年に中国政府は、希土類の輸出割当数量の削減、輸出関税率の切り上げなどの輸出抑制策や希土類採掘総量の規制などの国内資源保護策を次々と発表した。これらの諸政策から、1992年の南方講和で鄧小平が「中東に石油があるように中国には希土類資源がある」と語ったように、世界希土類生産量の90%以上を占める中国は、ハイテク産業にとっては欠かせない原材料である希土類を国家戦略物資と位置づけ、外交カードに使う意向すら感じられる。
 本稿では国家発展改革委員会希土弁公室が発行している雑誌「希土信息」が発表した2007年中国希土十大ニュースを紹介し、2007年の中国政府の希土政策等を振り返ってみる。

1. 国務院の指導者、希土事業に対し重要な指示
 2007年、温家宝総理及び曽培炎副総理は、人民銀行が『専報信息』の中で提起した「希土製品の大量かつ低価格の輸出が中国資源の優位性を急速に弱体化させる」という問題提起及び包頭鋼鉄公司党委員会李光前書記等が書簡で胡錦濤と温家宝同志に上申した鉱産資源の節約利用に関する提案に対し重要な指示を行い、希土の過度の採掘、生産能力の過剰、無秩序な競争、大量かつ廉価で輸出している状況を解決する政策措置を検討するように要求した。
 国家発展改革委員会馬凱主任及び張国宝副主任はこれらを非常に重視し、国家発展改革委員会希土弁公室に対し関係各方面と合同で調査研究を強化し、現在の主な問題点を中心に中国の希土資源・科学技術・生産・応用・輸出入及び持続可能な発展に有利な戦略計画を提出するよう明確な指示を出した。
 目下、特に解決しなければならないものにバイヤン・オボ(白雲鄂博)鉱山の資源総合利用問題がある。2007年9月28日、国家発展改革委員会希土弁公室は長春に職員を派遣して李光等とこの問題について話し合い、包頭鋼鉄(集団)公司及びその中核総公司とも意思疎通を図り、白雲鄂博の資源をいかに総合利用し、トリウムの回収利用を強化するか等の問題について検討した。

2. 「希土工業中長期発展計画」、専門家委員会で承認
 2007年1月16日、国家発展改革委員会希土弁公室が北京で「希土工業中長期発展計画(2006-2020年)」(草案)検討委員会を開催した。李東英・徐光憲・王震西・張国成の4名のアカデミー会員と関連する部/委員会・科学研究所・企業の専門家20名に「計画」の分析が依頼され、専門家たちは真剣かつ責任ある態度で「計画」の検討を行った。
 熊必琳副司長からは産業政策及び「計画」策定の背景についての説明があり、「全体に目を向け、未来を志向し、より高いレベル、より多くの分野、より広い視野から統一的に考え、科学的に政策決定を行い、全力で『計画』と産業政策の策定を行う」ようにとの要請があった。
 また、国家発展改革委員会希土弁公室からは「計画」策定についての説明報告があり、中国の希土の戦略的な位置付け、希土資源の埋蔵量及びその特徴、党及び国家指導者が希土事業を非常に重視していること、中国希土工業の主な成果と希土工業に見られる主な課題といった五つの観点から「計画」策定の必要性についての説明があった。また、中国希土工業の現状、直面している情勢、指導思想、発展目標と主要任務、政策措置等の四つの観点から「計画」の主な内容と「産業政策」との関係が明らかにされた。なお、「希土工業産業の発展政策」と「希土工業中長期発展計画」は既に委員会の承認を得ている。

3. 希土鉱産品と精錬分離製品の生産、指令性計画として管理
 希土資源を合理的に開発利用し保護するために、「国務院の2007年国民経済と社会の発展計画(草案)下達に関する通知」(国発[2007]1号)の要求に基づき、2007年から希土鉱産品と精錬分離製品の生産が国家指令性計画に組み入れられた。意思疎通と協議を強化し、適切な希土資源の開発と産業配置を行い、指令性計画を徹底させることを目的に、国家発展改革委員会は国土資源部及び商務部に対し、それぞれ希土鉱産品と精錬分離製品の指令性計画指標を伝えると同時に、関連する地方にも伝えた。

4. 全人大代表及び政治協商会議委員、希土事業に対し重要な提案
 2007年3月の第10回全国人民代表大会と政治協商会議第5回会議で、杜国盛ら11名の全人大代表及び朱樹豪・許柏年・陳瑞清・江東亮等の政治協商委員が、希土発展問題につき「戦略資源の統制強化に関する建議」、「戦略資源の備蓄を立法化し、戦略的安全保障の視点から希土資源の管理を強化することに関する提案」、「内蒙古の希土産業を強化することに関する提案」、「国がトリウム及び包頭希土尾鉱の開発利用を発展させることに関する提案」、「希少資源及び戦略資源に対する監督管理の強化に関する提案」を提出し、管理機構の整備、資源管理の強化、輸出統制の強化、産業の整理統合の強化、科学研究強化等の面から政策提案が行われた。

5. 国家発展改革委員会、国債を用い一連の希土ハイテク技術応用プロジェクトを支援
 国家発展改革委員会が国債を用い一連の希土ハイテク技術応用プロジェクトを支援した。「ハイブリッド車水素吸蔵合金粉プロジェクト(5,000t/年)」、「一汽遼源汽車電器製造有限公司の希土永久磁石起動機・発電機プロジェクト(100万台/年)」、「吉林臨江マグネシウム業集団東峰有色金属有限公司の自動車・オートバイ用希土マグネシウム合金プロジェクト(6,500t/年)」、「甘粛希土集団有限責任公司の硫酸システム不鹸化希土抽出分離生産ライン技術改造プロジェクト(4,000t/年)」、「吉林遼源博豊汽車電子製造有限公司の希土永久磁石式閉磁路高エネルギーイグニッションコイル・プロジェクト(300万個/年)」が既に国家発展改革委員会の承認を得ている。
 また、「鞍山市德康磁性材料有限公司の希土を高性能フェライト磁石に変性させるプロジェクト」、「巨然磁業股份有限公司の鉄基希土ナノメートル結晶永久磁石粉末及び粘結磁性体プロジェクト」、「州晶環希土新材料有限公司の希土ジルコニウム材料及び製品プロジェクト(1,000t/年)」、「包頭匯全希土実業有限公司の希土永久磁石モータープロジェクト」、「江西喜泰電機有限公司の希土永久磁石スロットなし直流モータープロジェクト」が国家予算からの資金支援を獲得した。以上のプロジェクトの総投資額は15.86億元で、資金支援額は1.32億元である。これらのプロジェクトは希土の産業応用化の推進に役立ち、モデル事業としての機能を備え、社会・経済的効果を発揮している。

6. 中国政府、希土資源開発と輸出入管理を強化し、実質的効果
 国が希土輸出割当総量を継続的に削減したことに加え、6月1日には希土金属に10%の輸出暫定関税を追加徴収することを決めたが、昨今の希土製品の価格高騰で「輸出量は減少したが、輸出額は増える」という現象が生じた。税関の統計によると、2007年1-10月の各種希土製品に輸出量は4.3万tで前年比24.9%の減少、輸出額は6.2億$で前年比61%の増加であった。
 国家発展改革委員会及び商務部は2007年第57号令と「外商投資産業指導目録(2007年改定)」を国務院の承認を経て公布し、2007年12月1日より施行された。希土関連で外商投資を奨励するものとしては希土硫化セリウム赤色染料・高性能水素吸蔵材料・動力電池及び制御システム(合弁のみ)があり、外商投資を制限するものに希土精錬と分離(合弁・合作のみ)があり、外商投資を禁止するものには希土の探査・採掘・選鉱がある。
 11月2日、商務部は「中国輸入禁止輸入制限技術目録」を公布し、希土鉱精錬技術・単一希土分離精製技術・希土精鉱前処理技術は輸入禁止技術目録に入った。
 国土資源部は「タングステンと希土鉱の探査許可証採掘許可証登記権の調整問題に関する通知」(国土資発〔2007〕92号)を公布し、2007年4月12日からタングステンと希土探査許可証、採掘許可証の申請及び探査と採掘の範囲を拡大する申請は、一律に国土資源部が処理することとなった。
 旧省級人民政府国土資源管理部門が交付したタングステンと希土の探査許可証と採掘許可証の延長・譲渡・変更を申請する際は、「探査許可証採掘許可証権限の規範化問題に関する通知」(国土資発〔2005〕200号)の規定に基づき処理する。

7. 第5回国際希土開発・応用シンポジウム、包頭鉄鋼希土上場10周年記念行事開催
 8月7~11日、第5回国際希土開発・応用シンポジウムが包頭市で開かれた。本会議は中国希土学会、包頭市人民政府が共同で主催し、包頭市ハイテク技術産業開発区管理委員会と包頭市科学技術局が事務局を勤めた。中国工程院乾 勇教授がシンポジウムの議長を勤めた。
 本シンポジウムではヨーロッパ希土学会の会長であるスイスのJ.C.Bunzli教授、中国工程院の王 震院士、元国際科学技術データ管理委員会の委員長である日本の岩田修一教授と国家973希土触媒プロジェクトの首席科学者虜 冠忠教授が特別講演を行った。アメリカ、フランス、カナダ、ロシア、スイス、日本、オーストラリア、インド等20か国及び国内の389名の専門家が会議に参加し、400篇余りの論文が提出された。
 内モンゴル包頭鉄鋼希土ハイテク技術株式有限公司は上海取引市場上場10周年を迎え、9月20日に記念行事が行われた。国家発展改革委員会希土弁公室、中国証券監督管理委員会、内モンゴル自治区発展改革委員会、中国希土学会と重要企業からの代表が記念式典に出席した。内モンゴル包鋼希土ハイテク技術株式有限公司は、上場以来、管理・監督機構の要求を実行し、現代的な企業制度を確立した。包頭鉄鋼傘下の希土企業を国内最大の先導的希土企業に変え、以前の鉱産品・一次加工産品の生産を主とする事業から高純度分離産品・高度加工産品の生産を主とする事業に転換した。
 国家発展改革委員会希土弁公室などの機関が祝辞を述べ、内モンゴル包鋼希土ハイテク技術株式有限公司が、北方希土市場の発展を推進し、国内希土産業振興に積極的な役割を果し、包鋼希土のブランド強化に貢献したことを高く評価した。

8. 全国希土標準化業務、重要な成果
 国家発展改革委員会は8月1日に2007年第45号公告を発表し、127項目の業界基準を承認したが、そのうち希土業界基準は以下の12項目である。即ち、(1)バストネサイト・モナズ石混合精鉱、(2)プラセオジウム・ネオジウム酸化物、(3)サマリウム・ユーロピウム・ガドリニウム凝縮物、(4)金属セリウム、(5)金属イットリウム、(6)硝酸セリウム、(7)サマリウム・コバルト1:5型永久磁石合金粉末、(8)ディーゼル車排気浄化酸化触媒、(9)サマリウム・コバルト1:5型永久磁石合金粉末化学分析法-サマリウム量とコバルト量の測定、(10)サマリウム・コバルト1:5型永久磁石合金粉末化学分析法-カルシウム量と鉄量の測定、(11)サマリウム・コバルト1:5型永久磁石合金粉末化学分析法-酸素量の測定、(12)サマリウム・コバルト1:5型永久磁石合金粉末物理性能試験法及び平均粒度の測定(フィッシャー法)。
 2007年7月29日、国の「希土鉱業汚染物質排出標準」の改定作業が終了し、国家環境保護総局の審査許可を経て公布・実施された。

9. 希土技術の進歩と技術革新、重要な進展
 希土関連プロジェクト4件が2006年度国家科学技術賞を受賞した。高松・厳純華・陳志達・王哲明・蘇剛による「磁性金属配合物の設計、構造と性質」(教育部推薦)及び劉維民・薛群基・王斉華・楊生栄・翁立軍による「先進潤滑材料の生成と性能」(甘粛省推薦)が2006年度国家自然科学二等賞を受賞し、肖志国・羅昔賢・于晶傑・夏威・侯占海・劉麗芳による「希土活性化新型ケイ酸塩発光材料とその応用」(大連市推薦)と張学義・任伝波・鄒黎・杜欽君・巴連良・史立偉による「ネオジウム・鉄・ホウ素永久磁石発電装置制御可能整流安定化技術とその応用」(山東省推薦)が2006年度国家科学技術発明賞を受賞した。
 ここ数年、中国の重要な軍需産業関連組織である包頭希土院・北京有色金属研究総院・鋼研院が次々に「神舟5号」と「神舟6号」に重要部品を提供し、中国の国防技術分野でのブレークスルーに成功し、大量の技術と製品によって中国の国防をサポートしている。また、2007年10月24日、包頭希土院が開発したナビゲーションシステムのキー部品が「長征3号甲」ロケットに使われ、「嫦娥1号」発射の成功にも大きく貢献している。

10. 包鋼希土が企業の整理統合、州市が資源管理を強化
 包鋼希土が企業の整理統合を加速させている。現在、包鋼集団保有の希土類資産や包鋼集団の包鋼サイエンスパーク421.13ムー(1ムー=6.667アール)の土地使用権、包鋼鉄総合企業集団のスチールボール加工工場の希土類資産、包鋼白雲鉄鉱博宇公司の希土類資産を買収することが整理統合プランとして挙がっている。資産の初期買収価格は約5.22億元になるが、包鋼希土は現金で包鋼集団の希土類資産を買収することを検討している。具体的には包頭希土研究院の100%の株式、包頭天驕清美希土抛光粉有限公司の60%の株式、中山市天驕希土材料有限公司の66.5%の株式、包頭瑞福鑫磁材有限責任公司の24.38%の株式、包鋼集団鉱山研究院選鉱試験分公司の資産が含まれる。
 贛州市は「国務院の『産業構造調整を促進する暫定規定』の公布実施に関する決定」、「産業調整指導目録」、「江西省環境保護建設禁止及び制限項目目録の配布に関する通知(第一次)」等の諸規定を徹底するため、従来のイオン型希土原鉱浸出法は生態環境を著しく破壊することから、贛州市政府は浸出法による希土原鉱の生産を改善余地のある場合を除いて全面的に禁止している。贛州市政府は市の関連部門を組織し、その執行状況について監督検査を行い、整理改善策合格後に生産を再開させるとしている。また、問題の深刻な希土鉱山については所在地政府にその責任を追及させる。

11. おわりに
 中国政府は2008年1月1日より、輸出税暫定率の引き上げを実施しており、希土類製品は従来の暫定率10%から一律15-25%に引き上げられ、一段と輸出抑制策が強化されている。また、2008年の希土類輸出割当数第1回分22,780t(REO換算)が発表されたが、年間の輸出割当数量は発表されておらず、2007年並の実績約40,000tが輸出されるかどうかについては不明であり、今後の中国政府の発表が注目される。
 軽希土鉱主要生産鉱山であるバイヤン・オボ(白雲鄂博)鉱山のトリウムの有効利用と環境対策、重希土鉱主要生産地である江西省贛州市が、浸出法による希土原鉱の生産を改善余地のある場合を除き全面的に禁止したことは、環境汚染の深刻さが伺え、今後の政府の対応が注目される。

ページトップへ