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報告書&レポート

2008年3月19日 ジャカルタ事務所 池田 肇 Tel:+62-21-522-6640 e-mail:jogmec2@cbn.net.id
2008年26号

Newmont Nusa Tenggara社、内資本化問題

 1. はじめに
 インドネシアのBatu Hijau銅鉱山は、インドネシア法人PT Newmont Nusa Tenggara(PT-NNT)が操業を行っている。PT-NNTは、外資運営会社Nusa Tenggara Partnership(日系企業及び米系Newmont Miningの子会社)が権益80%を、インドネシア企業が権益20%を保有する。外資の参加は、鉱業事業契約(COW:Contract of Work)に基づいているが、この契約の中には、権益の一部を内資本化することが義務付けられており、NTPは、2006年から2010年にかけて、権益の一部をインドネシア側へ譲渡することとなっている。現在、PT-NNTは、地元の地方政府(1州、2県)と権益譲渡について交渉中であるが、交渉は難航し、スケジュールどおりに進んでいない。2008年2月11日、エネルギー鉱物資源省はPT-NNTに対し内資本化手続きの督促及びCOWの解消の可能性を示唆するレターを発出し、同社の内資本化問題が表面化した。
 以下に、権益内資本化の内容、交渉状況の諸事情について取りまとめて報告する。

2. 鉱業事業契約と内資本化
 西ヌサテンガラ州(Nusa Tenggara Barat Province)でBatu Hijau銅鉱山を運営するPT-NNTは、1986年、内資本化条項を有する第4次世代鉱業事業契約(COW)に基づき設立された鉱山会社である。
 PT-NNTは、外国法人である日本企業とNewmont Miningの子会社Newmont Indonesia社が、それぞれ権益35%、45%を所有するNusa Tenggara Partnership(NTP)が80%を、インドネシア法人PT Pukaufu Indahが20%を所有する。
 同社は、COW第24条(国家権益促進[Promotion of National Interest])に基づき、外国法人NTPが所有する権益80%のうち31%を、2005年から2010年末までに段階的にインドネシア法人(Indonesian Participants)へ権益をオファーすることが義務付けられている。内資本化のオファー義務の発生は、2006年3月からとなっている。PT-NNTの資本関係図を第1図、内資本化のタイムスケジュールを第1表に示す。


第1図 出資関係図

第1表 内資本化スケジュール

3. 内資本化契約交渉の経緯と現状
 2007年下期から2008年2月にかけて、地元紙に掲載された内資本化関連記事を包括的にまとめると次のとおりである。なお、本内容は、地元新聞に記載されるものをとりまとめたものなので実際の状況を正確に反映していない可能性もあることに留意をお願いしたい。
 PT-NNTは、2007年末までに権益10%を売却する義務を負う。内資本化の第一交渉権は、中央政府が有し、第2交渉権は地方政府にある。
Batu Hijau鉱山の資産価値は、2006年政府試算ベースで36億US$と見積もられ、権益の購入には多額の資金を必要とする。2006年分権益3%は1億900万US$、2007年分権益7%は2億8,200万US$と報告されている。
 中央政府は、購入を辞退。地方政府3者(西ヌサテンガラ州(Nusa Tenggara Barat[NTB])、西スンバワ県(Sumbawa Barat Regency[KSB])、スンバワ県(Sumbawa Regency[KS]))が購入の意思を表明。
 地方政府3者が譲渡資金の負担をできないとみられ、PT-NNTは、2007年8月上旬、地方政府3者に対しNone-Risk Loanを提案。
 スンバワ県(Sumbawa Regency「KS」)は、受け入れを表明。2008年1月28日に権益2%を7,300万US$で購入することで合意し、PT-NNTと覚書を調印。融資の返済金は、株主配当金により返済される。
 西スンバワ県(Sumbawa Barat Regency「KSB」)は、PT-NNTの提案を拒否。第3者の資金援助による権益取得を表明。Bumi Resources*1社の名前が紙面を飾る。Bumi Resources社は、Plattsが発表した2007年のアジアで最も成長率が高いエネルギー企業の2位にランクされる。2008年1月、北スマトラ島Dairiで亜鉛・鉛鉱開発を手掛ける豪系ジュニアHerald Resources社の買収を仕掛け、インドネシア初となる亜鉛・鉛鉱山の開発を計画。同社は、石炭鉱業分野から他の鉱物資源分野への多角化を推進中である。
 西ヌサテンガラ州(Nusa Tenggara Barat Province「NTB」)は、態度を保留。新聞報道では、Darma Henwa1社がアプローチしているとの記事がある。
 2008年2月11日、政府は、PT-NNTに対し、2月22日までにCOWに規定される10%の内資本化を完了できなければ、COWを解消する可能性があると通知。
 2008年2月13日、Prunomo Yusgiantoroエネルギー鉱物資源相もまた「内資本化プロセスを監視するチームを組織し、プロセスが今後どのように進むかを監視していく。」と表明。
 政府は、Batu Hijau銅鉱山のCOWを打ち切る可能性があると警告した期限を2月22日から3月3日まで猶予。
 政府は、3月3日、エネルギー鉱物資源省、投資調整庁、地方政府3者とPT-NNTとの会合において契約交渉の基本合意が得られなかったとして、商事仲裁(Arbitration)への申し立てを行う旨の書面をPT-NNTへ通知。PT-NNTは、同日、政府に対し、商事仲裁での紛争処理を受ける旨を書面で回答し、これにより、内資本化問題は、当事者間の契約交渉から仲裁委員会において審議されることになった。

4. おわりに
 PT-NNTの内資本化問題は、我が国銅鉱石の長期安定輸入に貢献してきたBatu Hijau銅鉱山の将来の開発計画に直結する問題である。仲裁手続きは、COWを締結したジャカルタで、国連国際取引委員会(UNCITRA:United National Commission on International Trade Law)のルールに基づいて行われる予定である。仲裁委員会の委員は3名で、双方がそれぞれ1名を選任し、双方合意の委員1名を選任する手続きが開始される。なお、調停期間中、政府は、鉱山の操業を認めており、銅精鉱生産に関し実質的な影響は出ないものと予想されている。

*1 Bumi Rsources 社、 Darma Henwa 社は、ともにユドヨノ政権の閣僚である Aburizal Bakrie 国民福祉担当調整大臣が実質支配する鉱業会社である。 Bumi Resources 社の Dileep Srivastava 投資家担当は、「 Bumi は PT-NNT 持分買収には関心はない。しかし、同社は、地元の経済成長を助け利益を提供するため、鉱山建設、販売代理店、資金提供などで地方政府を支援する」と述べている。

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