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報告書&レポート

2008年6月19日 北京事務所  土屋春明報告
2008年47号

中国タングステン産業の現状


 タングステンは、粉末冶金や超硬工具、電子部品といったハイテク製品の原材料となる重要な金属である。中国はタングステンの埋蔵量及び精鉱生産量において、いずれも世界の90%以上を占め、レアアースと同様、資源的に圧倒的優位性を占めている。本稿では、最近、中国有色金属工業協会が報告した2007年の中国タングステン産業の動向について紹介する。

1. 中国国内のタングステン供給量と輸出量
1-1. 国内タングステン精鉱生産量、前年同期比0.72%増
中国有色金属工業協会の統計によると、2007年の国内タングステン精鉱の生産量が2006年同期比で0.72%増加し、全国タングステン精鉱の換算量(65%W03)は80438tであった。そのうち江西省の生産量は37,250tで同期比7.2%の減少、湖南省の生産量は30,952tで2007年同期比14.63%増であった。江西省の生産量が全国総生産量に占める割合は46.31%、湖南省は38.48%で、江西と湖南で全国総生産量の84.79%を占めている。
国土資源部からの2007年タングステン鉱山及びレアアース鉱山の採掘総量規制指標の通知によると、2007年の全国タングステン精鉱(65%W03)の採掘総量規制指標は59,270t、そのうち総合回収量は4,460tとなっているが、毎年の実質採掘量は8万t前後あり、割当額の水準をはるかに上回っている。企業によっては罰金を払いながらも増産を続けているところもあり、今後、関連部門はこの方面の監督を強化していく必要がある。

表1. 2007年中国省別タングステン精鉱生産量(65%WO3換算量)

No.

省・自治区名称

生産量(t)

2007年割合

2007/’06増減

2006年

2007年

1

江 西

40,140

37,250

46.3%

-7.20%

2

湖 南

27,002

30,952

38.5%

14.63%

3

広 西

2,167

3,754

4.7%

73.25%

4

河 南

737

2,964

3.7%

302.17%

5

広 東

7,656

2,741

3.4%

-64.20%

6

内蒙古

1,022

1,191

1.5%

16.52%

7

雲 南

1,086

1,086

1.4%

0.01%

8

浙 江

117

188

0.2%

60.68%

9

福 建

53

179

0.2%

239.56%

10

湖 北

125

132

0.2%

5.85%

 

合 計

79,863

80,438

100.0%

0.72%

図1. 中国のタングステン鉱産図(2007年)

1-2. タングステン輸出量、前年比7.96%減
中国税関の統計資料によれば、2007年タングステン製品の輸入額は155.19百万US$で前年同期比8.54%減、輸出額は926.15百万US$で前年同期比1.65%増であった。
2007年の中国タングステン製品輸出量は26,111t(W純分)で2006年同期の28369.3tと比べ7.96%下回った。同期の輸入量は5,467.8t(W純分)で2006年同期比24.16%減であった。2007年のタングステン純輸出量は20643.2t(W純分)で2006年同期比2.44%減であった。4~12月の輸出量からみると、6月のタングステン輸出量は増値税の還付があり、大幅に増加したが、7月、8月及び9月に再び大幅に減少し、10月、11月、12月に多少増加した。表2は2005~2007年のタングステン純輸出量を示したものである。

表2. 2005~2007年のタングステン輸出量 (t:W純分)

 

2005年

2006年

2007年

2007/’06
増減

輸出量

31,150.2

28,369.3

26,111.0

-7.96%

輸入量

4,600.4

7,209.5

5,467.8

-24.16%

純輸出量

26,549.8

21,159.8

20,643.2

-2.44%

 2007年のタングステン輸出量は7.96%減少しているが、同期輸入量が24.16%減少しているため、純輸出量の減少は2.44%と少ない。中国のタングステン輸出量が減少し、2007年のタングステン輸出割当量は1.54万tで2006年よりも400t減少、2008年は更に1.49万tまで削減される。

2. 2007年中国タングステン産業の注目点
2-1. タングステン資源税の調整
財政部国家税務総局の鉛・亜鉛鉱石等の税目に関する資源税適用税額基準調整に関する通知に基づき、2007年8月1日よりタングステン鉱石単位の税額基準が次のように調整された。即ち、“三等鉱山※1”はt(トン)当り9元、“四等鉱山※2”は同8元、“五等鉱山※3”は同7元である。1993年に制定された資源税基準と比較すると、現在の税率は以前の15~17倍で、実際の運用ではタングステン精鉱の生産量によって課税され、2,000~2,400元/tとなっている。
中国の現行資源税は従量課税法が採られており、課税対象にはそれぞれ、t(トン)または、m3(立法メートル)を単位として固定税額が課税されているが、こうした税制には幾つかの不合理な点がある。現行資源税は鉱物資源と塩のみを課税対象としていが、資源の合理的な開発利用の促進に不利なことから、今後、課税範囲が拡大される。また、税率が低過ぎるために資源価格の市場参入コストが過度に低くなり、企業と国家経済の成長方式の転換が難しくなる。「2007年中国国際鉱業大会」の席上で、国土資源部副部長民から中国は目下、資源税の課税方式を「従量課税」から「従価課税」方式に変更する改革案を検討中で、ほぼその作業が終了していると発言した。
改革後に従価課税制度が実施された場合、製品金額を単位として一定の税率をかけて税額が計算されることになるが、これにより税収と資源市場の価格を直接関連付けることができるようになる。

2-2. 中国タングステン産業100周年記念式典が江西省で開催
タングステン産業100年の変遷を回顧し、100年の輝かしい業績を讃え、科学技術の成果を交流し合い、発展のための青写真を描くことを目的に、11月8日、中国タングステン産業100周年記念式典が江西省州市で開催された。式典に際し、国務院総理温家宝は挨拶の中で「保護及び合理的な開発利用を進める方針を堅持し、タングステン産業の持続可能な発展を実現する」と明言した。
1907年に江西省州市大余県西華山でタングステン鉱山が発見されて以来、中国のタングステン業界は100年の歴史を有する。州市は中国タングステン発祥の地であり、その歴史は長く、豊かな資源を有し「世界のタングステン都市」とも呼ばれている。州はこの100年間で全世界に対し累計120万t弱のタングステンを供給し、中国ひいては世界のタングステン産業の発展に大きな貢献を果たしてきた。民間による手掘りから自動化採掘・製錬、高付加価値加工等の発展段階を経て、州は今や万全なタングステン産業体系を形成するまでになった。統合及び規範化の統一、資源と加工の結合をその方向性とした発展が推し進められ、タングステン精鉱の高付加価値加工が力強い成長を遂げ、タングステン産業の全体的水準が向上した。

2-3. タングステン輸出関税の引上げ
国務院関税税則委員会の「2008年関税実施方案」によりタングステンの輸出関税が更に引上げられた。2008年のタングステン製品の暫定関税率は表3のとおりである。

表3. 2008年タングステン製品暫定関税率

No.

税則番号

商品名

暫定税率(%)

2007年

2008年

1

26209910

主にタングステンを含む鉱灰及び残渣

10

10

2

28259011

タングステン酸

0

10

3

28259012

三酸化タングステン

5

10

4

28259019

その他タングステンの酸化物及び窒素酸化物

0

10

5

28418010

パラタングステン酸アンモニウム

5

10

6

28418020

タングステン酸ナトリウム

0

10

7

28418030

タングステン酸カルシウム

0

10

8

28418040

メタタングステン酸アンモニウム

5

10

9

28418090

その他のタングスタン塩

0

10

10

28499020

炭化タングスタン

5

5

11

72028010

タングスタン鉄

10

20

12

72028020

珪タングスタン鉄

15

20

13

81011000

タングステン粉

5

5

14

81019400

未鍛造タングステン

5

5

15

81019700

タングステン滓

15

15

2-4. タングステンを外資禁止産業目録に登録
国家発展改革委員会、商務部令第57号により「外商投資産業指導目録(2007年改訂)が公布され、2007年12月1日から施行されている。タングステン・モリブデン・錫・アンチモン・蛍石の探査と採掘が外商投資禁止産業目録に入れられた。

2-5. 「タングステン業界参入条件」の公布
国家発展改革委員会第94号「タングステン業界参入条件」により、2007年1月1日からタングステン製品生産企業の設立、配置、生産規模、資源の回収利用及びエネルギー消費、環境保護、製品品質、安全生産及び職業病の防止、労働保険の7方面について規定されている。

2-6. タングステン製品を加工貿易禁止目録に登録
2007年第1回加工貿易禁止目録は、2007年4月26日より施行され、第2回加工貿易禁止目録は2008年1月21日から施行される。禁止品目は表4のとおりである。

表4. タングステン製品加工貿易禁止品目

商品コード

商品名

禁止方式

第1回加工貿易禁止目録

2611000000

タングステン鉱砂及びその精鉱

輸入

2825901200

三酸化タングステン

輸出

2849902000

炭化タングステン

輸出

7202801000

タングステン鉄

輸出

7202802000

珪タングステン鉄

輸出

8101100010

顆粒<500μmのタングステン及びその合金

輸出

8101940000

未鍛造タングステン、簡単な焼成により形成された棒

輸出

8101970000

タングステン滓

輸出

8101991000

鍛造タングステン棒、型材及び異型材、板、片、帯、箔

輸出

第2回加工貿易禁止目録

2825901100

タングステン酸

輸出

2825901910

青色酸化タングステン

輸出

2825901990

その他タングステンの酸化物及び窒素酸化物

輸出

2841802000

タングスタン酸ナトリウム

輸出

2841803000

タングスタン酸カルシウム

輸出

2841804000

メタタングスタン酸アンモニウム

輸出

2841809000

その他タングスタン酸塩

輸出

3824300010

混合の未焼結金属炭化タングステン

輸出

 

2-7. 湖南有色金属集団公司、豪州キング島のタングステン採掘を決定
湖南有色金属集団公司(HNMC)の計画では、キング島のタングステン(灰重石)鉱山King Island scheelite mineの操業を2009年の第4四半期に開始する。キング島のタングステン鉱山は豪州南部のタスマニア州に位置する。HNMC社は既にKIS社(King Island scheelite Ltd.)と一連の契約を締結しており、今後は豪州外資管理局、中国政府、KIS株主の承認を受ける。
契約によれば、双方はそれぞれ50%づつ出資して合弁会社を設立する。湖南有色金属集団公司がKISの10%の株式を購入してキング島プロジェクトの50%の株式を占め、KISが本工事の基礎建設と管理を担当する。予定工期は約21か月で、計画では2009年の第4四半期に最初のタングステン精鉱を生産する。

2-8. タングステン上場企業に新メンバー
現在、江西崇義章源タングステン製品有限公司は制度改革を進め、2008年年初の上海への上場の準備をしている。崇義章源タングステン製品有限公司は民営企業で、主にタングステンのシリーズ製品を取扱っている。現在、既に上場しているタングステン会社には“アモイタングステン業”、“中タングステン高新”、“安泰科技”、“辰州鉱業”がある他、香港で上場している多角経営の湖南有色集団公司がある。

2-9. 国内企業が積極的に資源埋蔵量を拡大
湖南有色集団公司は2007年4月に現金3.54億元で“衡陽遠景タングステン業”の98.33%の株式を買収した。その湖南省衡南県にある川口タングステン鉱山の埋蔵量は30万tで、世界五大タングステン鉱山の一つである。また、湖南有色集団公司は豪州キング島のタングステン鉱山の開発も手掛けている。
2007年12月20日、湖南有色集団公司は、湖南省州に登録資本金5億元にて“湖南有色新田嶺タングステン業有限公司”を設立し、資産買収を進める計画について発表した。湖南有色集団公司によれば、湖南有色新田嶺タングステン業は新田嶺鉱区14か所の資産買収を行い、現地の資源の統合をさらに進めていく方針である。
アモイタングステン業公司は積極的に上下流製品の充実に取組んでいる。2007年11月1日、同社は2007年の重点投資プロジェクトである“福建寧化行洛坑タングステン鉱山プロジェクト”がほぼ竣工し、近々試験生産に入るという発表を行った。行洛坑タングステン鉱山の採掘・選鉱プロジェクトの投資総額は3.8億元、建設規模は鉱石処理量2,500t/日、タングステン精鉱の年間生産量2,400t、副産物のモリブデン精鉱の年間生産量は200tで、これまでに3.2億元の投資が完了している。プロジェクトの竣工後は国内最大の重力選鉱工場、最大の生産量を誇るタングステン鉱山となり、年間生産額2億元超と納税額3,000万元が実現されることになる。アモイタングステン業公司は福建寧化行洛坑タングステン鉱山の98.95%の株式を保有している。
また、アモイタングステン業公司は洛陽鉱業有限責任公司に対し60%の株式参加を果たした後の12月20日、洛陽市人民政府とタングステン高付加価値加工製品プロジェクト、鄭西鉄道旅客専門線洛陽南駅周辺地区開発への参画、洛陽市商業銀行の株式制改革への参画について投資合作意向書を締結すると発表した。

3. 2007年中国のタングステン消費量は前年同期比7.66%増
2007年の超硬合金の生産量は15,333tで、9,775tのタングステン原鉱が消費され、2006年同期比10.44%増となる。フェロタングステン生産量は12,980tである。そのうち輸出が5,633t、国内消費が7,347tで5,510tのタングステン原鉱が消費された。
2007年の中国の粗タングステンワイヤとバーの年間生産量は2,215tであった。また、タングステン合金電極等の新材料の国内使用量は714tに高比重タングステン合金のタングステン使用量約915tを加えると、中国タングステン加工材のタングステン使用量は3,844tである。化学工業及びその他の製品に使われたタングステンは約920tである。
上記のタングステンの主要消費分野を見ると、2007年の中国のタングステン総消費量は20,049tで2006年同期比7.66%増、タングステンの消費構造は硬質合金49%、タングステン特殊鋼27%、タングステン材19%、化学工業5%となっている。
「2004年超硬合金市場」報告によれば、1999年から中国のタングステン消費量は1万tを突破するようになり、2007年のタングステン消費量は20,049tに達し、1999~2007年は年間平均8.53%の伸び率を示している。

4. おわりに
第11次5か年(2006~2010年)計画以降、生産量・埋蔵量で圧倒的優位性を占めるレアアース、レアメタルについて中国政府は、輸出抑制策、国内資源保護政策を次々と講じ、タングステンの約85%を中国からの輸入に頼る日本にとって憂慮すべき問題となっている。これらの政策の結果、2007年の中国国内タングステン精鉱生産量は対前年比0.72%の微増、タングステン製品の輸出量は対前年比7.96%の減となった。
2008年も輸出抑制策面では、タングステンの輸出割当数量は、14,900tで2007年の15,400tから500t減少している。また、タングステン製品に対する輸出税は5~20%と2007年に比べ、ほとんどの製品が引上げられた。国内資源保護政策面では2006年から、レアアース、タングステンについては資源の乱掘・不法採掘防止、環境汚染対策の観点から年間採掘総量を政府(国土資源部)自らがコントロールするガイドラインを設けている。2008年の採掘総量は、対前年比13%増の66,850tであるが、資源の乱掘・不法採掘については一段と厳しく管理されるものと予想される。2008年1月の雪害により、2008年1~4月期のタングステン精鉱生産量は21,238tで2007年同期比の12%減となっており、今後とも中国国内のタングステン生産量の動向及び政府の政策を注視する必要がある。


鉱山の採掘規模による分類(粗鉱生産量≧3万t)は、国土資源部 通達208号(2004年)による。
※1 三等鉱山:(年間粗鉱生産量)≧100万t/年
※2 四等鉱山:100万t>(年間粗鉱生産量)≧30万t
※3 五等鉱山: 30万t>(年間粗鉱生産量)

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