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報告書&レポート

2008年8月21日 サンティアゴ事務所  平井浩二、企画調査部  白鳥智裕報告
2008年60号

ブラジル鉱山現地調査 -ブラジルのニオブ事情とAraxá鉱山-


1. はじめに.
 2008年3月1日~9日に世界最大の鉄鉱生産会社Vale(Companhia Vale do Rio Doce S.A)の代表的な鉱山であるCarajás鉄鉱山及びSossego銅鉱山、CBMM社のAraxáニオブ鉱山にて、「ブラジル現地調査」を実施した。同調査には、JOGMEC3名(本部2名、サンティアゴ事務所1名)の他に日本の商社と鉱山会社から合計5名が参加した。Companhia Brasileira de Metalurgia e Mineração(CBMM)社のAraxá鉱山は、世界最大のニオブ鉱山でこれによって、CBMMは二オブ市場の約7割を占有しているといわれている。本稿では、Araxá二オブ鉱山について紹介する。なお、Carajás鉄鉱山とSossego銅鉱山についてはカレントトピックス2008年第45号「ブラジルCarajás鉄鉱山、Sossego銅鉱山現地調査報告」(平成20年6月12日付発行)にて紹介済みである。

写真1. フェロニオブ(標準グレード) 写真2. 金属二オブ(99.7%以上)

2. 生産・輸出入動向
 ニオブは、耐食性、耐酸性に優れ、延展性に富み加工しやすい。また、鋼材に添加されることにより耐熱性、耐衝撃性を発現するため、スペースシャトルや石油パイプライン等に使用されている。さらには、超電導材としても優れており、リニアモーターカーを浮上させるための電磁石コイルにニオブ・チタン線が使用されているほか、ガラスにニオブを混ぜると屈折率を向上できるので、ニオブ入りガラスによって眼鏡やカメラのレンズを薄くすることができる。
 USGSのMineral Commodity Summaries 2008によると、2007年の世界の二オブ可採埋蔵量は2,700,000t(金属純分)とされており、このうちブラジルが96.3%(2,600,000t)を占めており、続いてカナダ2.3%(62,000t)、豪州0.8%(21,000t)の順である。
 2007年の二オブの生産量は45,000tであり、そのうち、40,000tがブラジル生産である。 二オブの世界消費量データは見当たらないが、工業レアメタルにフェロニオブ需要量73,000tが推測されている。主要消費国は欧州諸国、米国、中国、日本等で近年は中国の消費量が増加傾向にある。
 二オブの約7割のマーケットシェアを有するCBMMの2007年のフェロニオブの販売量は、64,269tであり、販売先は欧州28%、北米19%、中国23%、日本及びその他アジア21%、南米7%であった。日本は2006年に9,419tの二オブをフェロニオブの形で輸入しており、このうち約95%をブラジルからの輸入に頼った。CBMMの供給管理により、二オブは需給バランスが長期的に安定しており、価格も他の非鉄金属に比べ、安定している。

図1. 二オブの国別埋蔵量(t)  図2. 二オブの国別生産量(t)
(出典:Mineral Commodity Summaries 2007, USGS)

3. 世界のニオブ鉱床
 現在世界で生産されている二オブの大部分は、カーボナタイト鉱床に伴うパイロクロア※1であり、主要鉱山はブラジルのAraxá、Catalao、カナダのSt.Honoreカーボナタイト複合岩体中の鉱山である
 ブラジルのカーボナタイト鉱床は主として同国北部の国境地帯と南西~南部地域に分布する。これらのカーボナタイト鉱床には、二オブのほか、チタン、リン、レアアース等を伴い、特にブラジル南西~南部地域には主要な鉱床が多く分布している。下表のとおり、Araxá鉱山が、埋蔵量、品位共に突出している。

表1. 世界のニオブ鉱山概要
  Araxá鉱山
(ブラジルMinas Gerais州)
Catalao鉱山
(ブラジルGoias州)
St.Honore鉱山
(カナダQuebec州)
パイロクロア鉱石 風化帯 初生帯 風化帯 初生帯
品位%(Nb2O5) 2.50 1.57 1.34 0.69
埋蔵量(百万t) 440 936 53 24
採掘方法 露天掘 露天掘 坑内掘
生産物 フェロニオブ
酸化二オブ
高純度二オブ合金
金属二オブ
フェロニオブ フェロニオブ
出典:CBMM資料

             

4. Araxá鉱山
(1)鉱山概要
 Araxá二オブ鉱山はMinas Gerais州西部、Sao Paulo市の北約400kmに位置する。同鉱山は原生代後期の珪岩及び雲母片岩中に貫入する白亜紀後期のアルカリ岩-カーボナタイト(直径約4.5kmの円形アルカリ岩体)に伴って産出するカーボナタイト鉱床である。
 同鉱床は1953年に発見され、その後1955年に二オブの専門生産会社としてCompanhia Brasileria de Metalurgia e Mineracao(CBMM)社が設立され、1961年から操業を開始した。2007年のフェロニオブ生産量は74,000tで、現在増産のための拡張工事を行っており、2008年には生産能力を110,000t/年にまで増強される見込みである。また、2013年には150,000t/年の生産能力とする計画である。操業は、7:00~16:00と16:00~24:00の2シフト制であるが、今後24時間操業になる予定である。


図3. Araxá鉱山位置図


写真3. Araxá鉱山採掘ピット全景


図4. Araxá鉱山全景と主要設備


写真4. 選鉱設備増設工事

Araxá鉱山のアルカリ岩体は主としてグリンメライト※2 (glimmerite)とカーボナタイト※3 (carbonatite)から構成され、フォスコライト※4 (phoscorite)、ランプロファイア(lamprophyre)等を伴う。カーボナタイト※5 は主としてドロマイトからなり、方解石、鉄白雲母、バライト、アパタイト、磁鉄鉱、Ba-パイロクロアを伴う。同岩体はラテライト風化作用を強く受けており、岩体中央部では230mの深さに達する場合もある。この風化帯に二オブ、リン、レアアースの風化残留鉱床が発達している。
 二オブ鉱床はアルカリ岩体中央部の直径約1.8kmの円筒状に胚胎している。可採埋蔵量は440百万t(グロス)、平均品位は(Nb2O5)2.5%である。また、現在採掘している風化帯下部の未風化カーボナタイト中にプライマリーの二オブ鉱体が確認されており、埋蔵量は936百万t、品位(Nb2O5)は1.57%である。現在の世界のニオブ需要に従えば、500年は採掘可能と単純計算される。採掘対象となっている風化帯中の二オブ鉱の鉱物構成は、表2のとおりである。特に、パイロクロア中には、65%程度の酸化二オブ(Nb2O5)が含まれており(CBMM社による調査)、二オブは鉱石の主体をなす。

表2. ニオブ鉱石の鉱物構成
鉱物名 重量%
Ba-パイロクロア 4.0
リモナイト、ゲーサイト 36.0
バライト 20.0
磁鉄鉱 16.0
ゴーセサイト(Gorceixite) 6.0
モナザイト 4.0
イルメナイト 5.0
石英 4.0
その他 5.0
出典:CBMM資料

             

(2)採掘及び選鉱方法
Araxá鉱山で採掘されているニオブ鉱は風化帯に相当し、鉱石及び母岩が軟岩であることから削岩・発破は不要で、ブルドーザーにより露天採掘されている。採掘にはCaterpillar D8R(2台)、Caterpillar D6R(1台)ブルドーザー、Volvo L120Cフロントエンドローダー(4台)及びMercedesの25tトラック(8台)が使用されており、採掘された鉱石はトラックで500m離れたFeed Stationに運ばれ、ここから3.2km離れた選鉱場までベルトコンベア輸送される。


写真5. Araxá鉱山での採掘風景

 前述のとおり、土砂状態で採掘されるAraxá鉱山のニオブ鉱は、大規模な破砕機は不要で、Impact crusher及びball Millにより破砕・磨鉱が行われている。同鉱石は15~30%の磁鉄鉱を含んでいるため、最初に磁選が行なわれ、磁鉄鉱を除去した後に浮遊選鉱工程に送られる。浮遊選鉱工程はRougher(11セル、8.5m3/セル)と4ステージのCleaner:1st Cleaner(7セル、8.5m3/セル)、2nd Cleaner(6セル、8.5m3/セル)、3rd Cleaner(6セル、1.7m3/セル)、4th Cleaner(6セル、1.7m3/セル)により構成される。浮遊選鉱後、鉱石は直径30mのシックナー及び2.4m×1.8mのフィルタープレスに送られ、水分約11% 、Nb2O5品位約65%のパイロクロア精鉱となる。
 パイロクロア精鉱はさらにペレタイジング、焙焼の工程を得てフェロニオブ、酸化ニオブが生産される。また、酸化ニオブを原料として、金属ニオブ(Nb99.9%以上)、高純度のニオブ合金等が生産される。これらの製品は約800km離れたリオデジャネイロ港へ20時間かけてトラック輸送され、約50か国、300社以上に輸出される。


写真6. 焙焼工程


写真7. 倉庫で出荷待機のフェロニオブ

(3)生産製品
 現在、Araxá鉱山で生産されている二オブ製品は、標準グレードのフェロニオブ、酸化ニオブ、高純度(バキュームグレート:VG)Fe-Nb合金・Ni-Nb合金及び金属ニオブである。

出典:金属時評
図5. 二オブ製品の生産工程

 標準グレードのフェロニオブは同鉱山の主要生産物で、自動車用の鉄薄板、石油・ガスのパイプラインやプラットフォーム、船舶用の厚板等に使われるマイクロ合金スチール生産や自動車のマフラー、太陽熱利用加熱機、自転車に使用されるフィライト質ステンレス生産のため使用されている。
 同鉱山で生産される酸化ニオブは、Nb2O5の含有量により、[1]超純度酸化ニオブ(Nb2O5含有量99.7%)、[2]高グレード酸化ニオブ(Nb2O5含有量99.0%)、[3]フィルターグレード酸化ニオブ(Nb2O5含有量50%)、[4]ハイドログレード酸化ニオブ(Nb2O5含有量80%)の4つのグレードに分類されている。超純度酸化ニオブは光学レンズ用添加物(高屈折・低分散ガラス)、光変調素子結晶(光通信システム用結晶材料)、ガラスセラミック(強誘電性材料)に、高グレード酸化ニオブは金属ニオブ、バキュームグレード(VG)のニオブ合金用原料に、フィルターグレード・ハイドログレード酸化ニオブは触媒・セラミックスに使用に使用される。
 VG Fe-Nb合金(Nb含有量65%)、VG Ni-Nb合金(Nb含有量65%)は高グレード酸化ニオブを原料として生産される耐熱性の超合金で、主にジェット機エンジン、発電用タービンエンジン等に使用されている。
 金属ニオブは高グレード酸化ニオブをアルミニウムパウダーでテルミット還元しNb含有量90%程度のATR(Aluminothermic Reduced)ニオブを精製し、これを原料として電子ビーム炉により3回の溶融工程を経て生産される。金属ニオブのNb含有量は99.7%以上で、超電導線、航空宇宙産業用のNb-Ti超合金材として使用されている。
 Araxá鉱山で生産される二オブ精鉱の79%がマイクロ合金スティール、10%がフェライト系ステンレス、9%がVG Fe-Nb合金・VG Fe-Nb合金、2%が超純度酸化ニオブ・金属ニオブの生産に使用されている。
 フェロニオブの価格は長契価格が25~26US$/kg、スポット価格が30US$/kg、高グレード酸化ニオブの価格は60US$/kgである。CBMM社は世界のニオブ市場の70%を占めているにもかかわらず、価格操作が出来ない。なぜなら、ニオブはモリブデン、クロム、チタン、タンタル、バナジウム等の代替金属が多数存在するためである。そのため、二オブ価格は長期的に一定水準で安定している。価格は、2008年3月上旬時点で、フェロニオブ(65%-Nb)が概ね26US$/kg(長期契約)、30US$/kg(スポット価格)とのことであった。

5. おわりに
 今回の訪問で、CBMM社から採掘から、製錬、出荷直前までの様子と、CBMMが社会環境プログラムや従業員に対する福利厚生、地元住民との対話に積極的に取組んでいる旨の説明を得た。
 CBMMは、財務状況をホームページに掲載しておらず、また、二オブ生産コスト等も公表していないこともあり、CBMMの財務状況など詳細は明らかではない。しかし、CBMMは世界の二オブ市場の約70%を占めて独占的な地位にあり、二オブ生産を推定500年を維持できる埋蔵量を有していることもあり、二オブ生産企業として非常に安定している印象を受けた。また、BHP Billiton等の資源メジャーと世界的に競合しているValeを直前に訪問したが、同社と比較して、Araxá鉱山に集中して設備投資や周辺環境整備を充実させようとしている様子が感じられた。
 前述のとおり、二オブは多種の代替金属が存在するため、価格を吊上げるような操作などは難しい。世界のフェロ二オブ消費量は、2006年76,000t、2007年88,000tで、2008年は102,000tに達すると見込まれる(工業レアメタル)。一方、CBMM社は、生産能力を増強しつつあり、二オブの安定供給は続くと見られる。
最後に、CBMM社の好意により、ニオブのサンプル提供を得た。JOGMEC金属資源情報センター(図書館)の展示ケースで公開しているので閲覧されたい。


写真7. 金属資源情報センターで展示しているニオブ


※1 パイロクロア:(Ca,Na)2Nb2O6(O,OH,F)。NbがTa、Tiで置換されたものが存在する。(Ca,Na)の位置には、K、Sr、Y、Ba、Ce、Pb、Uが卓越するものがある。
※2 グリンメライト:黒雲母を主とする粒状の深成岩ないし半深成岩。
※3 カーボナイト:方解石・ドロマイトを主成分とし、かんらん石、憐灰石、磁鉄鉱、パイロクロアなどを少量含む火成起源の炭酸塩岸。
※4 フォスコライト:磁鉄鉱かんらん石燐灰岩で、南ア、東トランスヴァール地方のルーレコップでカーボナイトの中心を取り巻いて見い出された。
※5 ランプロファイア:濃色斑状の半深成岩、全自形粒状粒状組織を示す。黒雲母(金雲母)、角閃石、輝石、かんらん石などマフィック鉱物の斑晶の割合が高い。

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