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報告書&レポート

2008年8月28日 鉱害防止支援部 橋本晃一、北京事務所 土屋春明報告
2008年61号

日中環境情報交換会の開催報告


 JOGMECと中国有色金属工業協会は、平成20年6月3日(火)~5日(木)、中国広東省韶関市(韶関製錬所会議室)において、両国の鉱害防止に係る取組みについて相互理解を促進するための日中環境情報交換会を開催した。初日に行われたセミナー形式の情報交換会には、中国側が中国有色金属工業協会、深中金南有色金属股有限公司(以下「中金南」という)、深業有色金属有限公司等から計32名、日本側は計8名(うち日本企業3名)の参加があった。2日目、3日目には、中金南の直属企業である凡口(鉛・亜鉛)鉱山、韶関製錬所、丹霞製錬所(建設中)の見学会が行われた。
 今回の情報交換会における中国側の環境問題への関心は、本来重点的に対応する必要のある廃水や排煙の処理に関することよりも、“資源の総合利用(回収)”をキーワードとした精鉱中の微量元素の回収や水資源の循環・再利用に向けられており、加えて今後の課題として尾鉱やスラグに残された有価物の回収が挙げられた。本稿では中国側講演の内容を中心に紹介する。

開会挨拶   中金南 副社長 劉 偵徳
開会挨拶   JOGMEC鉱害防止支援部 担当審議役(当時 企画課長)納 篤
講演[1]   「日本の鉱害防止の取組みについて」
JOGMEC鉱害防止支援部企画課 課長代理 大和久雅弘
講演[2]   「チリ銅製錬所から発生する煙灰中の砒素の無害化及び有価金属の回収」
JOGMEC鉱害防止支援部調査技術課 課長代理 橋本晃一
講演[3]   「韶関製錬所の生産と総合回収」
韶関製錬所 副工場長 劉 明海
講演[4]   「凡口鉱山の選鉱と資源総合回収利用」
凡口鉱山 鉱山長 張 木毅

1. 開会挨拶

写真1. 情報交換会(韶関製錬所会議室)

 冒頭、日中両国の代表者から開会の挨拶があった。 
 まず、中金南の劉副社長から、近年環境対策に力を入れて取組んでいること、今後更に高い環境水準を達成するためには水資源の再利用や廃棄物からの有価物回収を進めることが必要であることが言及され、特に資源回収の分野で日本の優れた技術、ノウハウを取入れたい旨、表明があった。 
 JOGMEC納課長からは、胡錦濤・国家主席の日本訪問に触れ、今回の環境情報交換会が日中共同声明にある「戦略的互恵関係の全面的推進」に通じるものであり、日本の鉱害の歴史や鉱害対策等の事例紹介、日本の環境対策の取組み等を通じ、今後の中国の鉱害対策に資することを期待する旨、挨拶した。

2. 講演[1]「日本の鉱害防止の取組みについて」
JOGMEC鉱害防止支援部企画課 課長代理 大和久雅弘
 日本の鉱害問題の歴史及び法制度・監督体制の整備等の経緯を紹介した後、鉱害の分類と鉱害対策技術、さらには鉱害防止事業に対する国の支援制度の体系とJOGMECの役割を説明した。

3. 講演[2]「チリ銅製錬所から発生する煙灰中の砒素の無害化及び有価金属の回収」
JOGMEC鉱害防止支援部調査技術課 課長代理 橋本晃一
 環境分野での日本の二国間協力の実績として、2001~06年度にJOGMECが行ったチリとの共同研究について紹介した。
 銅製錬の煙灰には銅、亜鉛、鉛、砒素等が含まれる。このうち有価物である銅、亜鉛を回収し、砒素を安定的に固定するのが本研究の目的であった。基本フローは硫酸による銅、亜鉛の浸出、浸出液中の砒素の結晶質砒酸鉄としての固定で、本共同研究では基礎試験の結果から各プロセスの最適条件を求めて、パイロットプラント試験によりその有効性を実証した。

4. 講演[3]「韶関製錬所の生産と総合回収」
韶関製錬所 副工場長 劉 明海
 韶関製錬所の概要と主な生産工程が紹介された後、資源の総合回収として、水銀、カドミウム、ゲルマニウム、インジウム、金、銀の回収工程及び烟化炉による鉛・亜鉛の回収、亜鉛残渣からの硫酸亜鉛の回収について説明が行われた。

【概要】
 韶関製錬所は、中国で最初にISP(Imperial Smelting Process:英国ISP社が開発した亜鉛と鉛を同時に回収する乾式製錬プロセス)を導入した製錬所で、2系列の設備があり、第1系列は1976年、第2系列は1996年に操業を開始した。生産能力は、亜鉛と鉛で年間約30万t。製品は金属、合金、化学製品、炭化ケイ素製品の4シリーズ30品目近くにのぼり、主に鉛インゴット、亜鉛インゴット、硫酸、銀インゴット、カドミウムインゴット、亜鉛末、酸化亜鉛、インジウムインゴット、二酸化ゲルマニウム、硫酸亜鉛、鉛・亜鉛合金等を生産している。

【生産工程】
 精鉱、リサイクル原料を乾燥・破砕し、溶剤、煙灰、返し鉱を加えて混合、造粒する。これを焼結機で焼結し、破砕・ふるい分けして焼結鉱を得る。焼結鉱と予熱したコークスを密閉式溶鉱炉(ISF)に投入して還元溶融し、脈石、不純物をスラグとして分離する。鉛は溶融状態で溶鉱炉底部から抜出され、不純物を含むドロスを分離して粗鉛が回収される。一方、亜鉛は亜鉛蒸気として炉ガスとともに鉛スプラッシュコンデンサーに送られ、鉛・亜鉛分離工程を経て粗亜鉛が回収される。
 粗鉛は電解精製工程を経て電気鉛とし、粗亜鉛は精留工程を経て精留亜鉛とする。

【資源の総合回収】
(水銀の回収)
 韶関製錬所では精鉱の約1/3を凡口鉱山から調達しているが、その精鉱には水銀が多く含まれる。水銀は、精鉱の焼結工程で水銀蒸気として排煙とともに硫酸工場に送られ、水銀吸収塔でヨウ化水銀として吸収される。ヨウ化水銀を工程内で循環して高濃度化し、電解によって粗水銀を回収する。

(カドミウムの回収)
 カドミウムの回収経路は、焼結工程における揮発、精留工程における分離の2系統がある。焼結工程で揮発するカドミウムは排煙ダストに存在するので電気集塵機で集塵し、集塵ダスト(含有率Cd 5~12%)から浸出-亜鉛末置換法で粒状スポンジカドミウム(含有率Cd 90%以上)を得る。精留工程では高カドミウム含有亜鉛(含有率Cd 50~80%)が生成するので、これを繰返し還流して亜鉛と分離し、粗カドミウムとカドミウム含有亜鉛を得る。
 粒状スポンジカドミウムと粗カドミウムを精錬釜で亜鉛を除去し、カドミウムインゴットを生産する。

(ゲルマニウムの回収)
 ダスト処理後の残渣から、ボールミルによる破砕→中性浸出→酸化焙焼→塩素化蒸溜→加水分解の各工程を経て二酸化ゲルマニウムを生産する。

(インジウムの回収)
 ゲルマニウム回収後の塩素化蒸留残液から、pH調整→抽出→不純物除去→濃縮→アルミニウム置換の各工程を経て粗インジウムを得る。さらに、粗インジウムを電解精製してインジウムインゴットを生産する。

(銀、金の回収)
 粗鉛の電解精製時に発生する鉛陽極泥に水酸化ナトリウム、微粉炭を加えて揮発炉で還元溶融し、貴鉛を得る。次に、貴鉛を灰吹炉で酸化溶融して金銀合金を得る。さらに、金銀合金を電解精製する等して金、銀インゴットを生産する。

(スラグからの鉛・亜鉛の回収)
 溶鉱炉スラグは亜鉛を6~10%を含むので、烟化炉によってスラグ中の鉛・亜鉛を回収している。烟化炉スラグの鉛と亜鉛の含有量は、それぞれ1%以下、3%以下となる。

(亜鉛残渣から硫酸亜鉛を精製)
 亜鉛の精留工程で生じる残渣には亜鉛が70~85%程度含まれるので、これをペースト化し、中和→置換・圧縮ろ過→蒸発・結晶化の各工程を経て硫酸亜鉛を生産する。

5. 講演[4]「凡口鉱山の選鉱と資源総合回収利用」
凡口鉱山 鉱山長 張 木毅
 凡口鉱山の概要と選鉱工場、尾鉱の処理・処分について紹介された後、尾鉱からの有価物回収を検討するため尾鉱成分について説明がなされた。

【概要】
 凡口鉱山は韶関市街から約48 km北東に位置する。鉱区面積は約2.15km2。1968年に鉱石生産を開始し、残存可採鉱量は約40年分が確認されている。
 2007年の精鉱年産量は、鉛・亜鉛金属換算量で約14.5万t、鉱石中の鉛・亜鉛の平均品位は約12%(最高品位約15%)。鉱石は坑内破砕後、選鉱工場まで約1.4kmを索道運搬している。

【選鉱工場】
 選鉱工場には3系列の浮選設備があり、鉱石処理能力は5,500t/日である。精鉱は、亜鉛精鉱(品位Zn約55%)、鉛精鉱(品位Pb約60%)、混合精鉱(品位Pb+Zn約47%)及び硫化精鉱(硫化鉄)に分類される。混合精鉱の亜鉛と鉛の比率はおよそ2対1である。採収率は、亜鉛が約95%、鉛が約85%とされる。

表1. 凡口鉱山の精鉱生産量(2007年)
精鉱 数量(万t)
原鉱処理量 122.6

(金属量換算)
鉛精鉱 3.348
混合精鉱 1.204
亜鉛
(金属量換算)
亜鉛精鉱 7.622
混合精鉱 2.364
硫化精鉱 57.9
出所:凡口鉱山


写真2. 選鉱工場(浮選設備)

 選鉱工場では大量の選鉱廃水が発生する。選鉱廃水は、鉛、亜鉛、鉄等の金属イオンと大量の浮選用薬剤、固体粒子を含み、pH、CODが高いため、そのまま放流することはできない。凡口鉱山では、選鉱廃水の回収処理利用システムを導入して年間400~450万tの処理水(廃水量の約70%)を再利用しており、現在、さらに再利用率を向上するための方策が検討されている。なお、再利用できない廃水は尾鉱と一緒に尾鉱ダムに送られ、排水基準を満足した上で放流されている。

【尾鉱の処理・処分】

写真3. 第3尾鉱ダム

 φ19μm以上の粗粒尾鉱(全体の65~75%)は、脱水ろ過後、坑内充填に利用している。
 φ19μm未満の細粒尾鉱と選鉱廃水は、pH6~9に調整後、尾鉱ダムまで約12 kmをスラリー流送している。尾鉱ダムの放流水はpH7~8で管理されており、金属濃度、硫黄濃度、有機汚染を定期的に分析している。
 現在使用中の第3尾鉱ダムは1996年に貯泥が開始され、残余貯泥寿命は約10年と試算されているが、堤体をかさ上げすることでさらに約30年延長できる見込みである。使用済みの第1、第2尾鉱ダムは、堆積物の飛散防止のために植栽されている。

【尾鉱からの有価物回収の検討】
 尾鉱は、鉄、亜鉛、鉛のほか、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム等のレアメタルを含む。いずれも品位は低く、単独で回収できるほどの経済性はないが、硫黄を含めた有価物全体を対象にすることで経済的に回収できないか検討されている。

6. 見学会
 見学先のうち、韶関製錬所の新廃水処理設備と丹霞製錬所について紹介する。

【廃水処理】

写真4. 貯水池(新廃水処理設備)

 新廃水処理設備は工程水の再利用を目的に計画されたもので、2007年9月に運転を開始した。処理フローを図1に示す。
 低pHで高濃度の重金属等を含む廃酸は、重金属処理工程においてpH調整と硫酸鉄添加の2段階で処理される。重金属処理工程の処理水の一部と雑排水は、高度処理工程においてUF膜※1、NF膜※2で加圧ろ過される。膜処理後の処理水は工場用水として再利用しており、固液分離後の殿物は脱水後、亜鉛・鉛の焼結原料として生産工程に送られる。
 製錬所の放流水量は、新廃水処理設備の操業が始まる前は約2,000m3/hであったが、膜処理による処理水の用水化で、現在は約300m3/hにまで削減されている。将来的には工程水全量の再利用が目標に掲げられている。

【丹霞製錬所】
 凡口鉱山の約4km東に建設が進められている中国初の大型の鉛・亜鉛湿式製錬所で、2009年に第1期、2013年に第2期の工事が竣工する予定。レアメタル(特にガリウム、ゲルマニウム)の効率的回収と資源の総合利用、低い環境負荷を特徴としている。計画されている生産規模は、第1期工事の竣工時に亜鉛10万t/年、第2期工事の竣工時に亜鉛30万t/年、鉛10万t/年。計画どおり事業が進めば、中金?南の地金生産量は韶関製錬所と合わせて亜鉛約50万t、鉛約20万tとなり、世界最大級の亜鉛、鉛プロデューサーになる。


写真5. 丹霞製錬所模型

7. まとめ

 今回見学できた凡口鉱山、韶関製錬所における環境対策への取組みは、見学が許された部分については相当高い水準にあるように感じられ、現時点では周辺環境に直接影響を与えるような環境汚染問題は発生していないとされている。ただ凡口鉱山、韶関製錬所は操業中の鉱山・製錬所であること、また中国を代表する大手企業であること等から、当局の強い指導・監視の下で鉱害対策がなされているようである。
 また、凡口鉱山及び韶関製錬所関係者は、今後の技術テーマとして廃棄物からの有価物回収技術及び水の再利用率の向上について、更なる改善の余地があるとしている。特にスラグや尾鉱からの有価物の回収に関する技術に関心が強く、国内外を問わず技術の獲得に注力するとのコメントがあった。尾鉱やスラグからの有価物の回収については、今回提示されたスラグや尾鉱の有価物の品位はかなり低く、これを経済的に回収するのは容易ではないが環境対策を含めた総合対策として検討されているものと考えられる。今回情報交換会に同行した日本企業はこれに興味を示しているものの、提示された情報が極めて限られているため、引続き中金南と協議するとしている。
 なお、中国政府は2007年11月に「外商投資産業指導目録」を発表しており、その中で尾鉱やスラグからの有価金属の回収技術の開発と応用、鉱山生態系修復技術の開発と応用が「奨励」項目とされていることから、今後、これらの分野における中国での日本企業の環境ビジネスチャンスは増えるものと思われる。


※1 UF膜:Ultrafiltration Membraneの略、限外ろ過膜
※2 NF膜:Nanofiltration Membraneの略、逆浸透膜のうち比較的孔径が大きいもの

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