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報告書&レポート

2008年10月9日 ボツワナ・地質リモートセンシングセンター 鈴木哲夫、資源探査部 宮田初穂、久谷公一報告
2008年69号

ナミビアのウラン鉱業政策の動向について


 2008年9月16日(火)にナミビア・Shivolo(シボロ)鉱山局長(Mr.Erasmus I. Shivolo, Director of Mines, Ministry of Mines and Energy)及びSchneider(シュナイダー)地質調査局長(Ms、Dr.G.I.C.Schneider‚Director of Geological Survey‚Ministry of Mines and Energy)と面談する機会があり、最近のナミビアのウラン鉱業政策の動向につきヒヤリングを行った。
 ナミビアには、現在、Rossing(ロッシング)鉱山(Rio Tinto 69%、1976年操業開始)とLanger Heinrich(ランガー・ハインリッヒ)鉱山(Paladin Resources社(本社:豪WA州Subiaco)100%、2007年3月操業開始)のウラン2鉱山が操業中である。このほかValencia(バレンシア)鉱床(Forsys Metal社(本社:トロント)、すでに採掘ライセンスを取得済み)、Trekkopje(テッコピエ)鉱床(Areva社(本社:パリ)が英・UraMin社から買収、今後2年以内にFSを実施予定)、Marenica(マレニカ)鉱床(West Australian Metals(本社:豪パース)、多くのボーリング探鉱を実施中)など探鉱が進んでいるプロジェクトがある。ナミビアのウラン鉱床は一般に低品位(U3O8ベースで0.0n%オーダー)であるが、ウラン価格の高騰を受け外資を中心に多くの探鉱プロジェクトが活発に実施されている。
 我が国の2005年ウラン(U3O8)輸入量8,618tの内、ナミビアは11%(948t)を占め、カナダ、豪州、ニジェールに次いで第4位となっている。(日本のエネルギー2007(資源エネルギー庁、2007年3月)による。ショートトンをトンに換算。)

1. 新ウラン鉱業法の制定
 ウラン価格が高騰し(2004年の20US$/lbから、2007年5月の120US$/lb)、多くの企業がウランの探鉱ライセンスを申請してきた。これらの企業の中には真面目に探鉱せず投機目的の企業も多くあると思われ、[1]国際的な枠組みの中での原子力エネルギーの安全性、環境問題等のコンプライアンスの重視、[2]戦略的な鉱物資源としての位置付けから、ウランについては個別の鉱業制度の下で探鉱・開発を進めていく方針が打出され、2007年より新ウラン鉱業法の制定が検討されている。
 しかし、新ウラン鉱業法はまだ制定されていない。Shivolo鉱山局長によれば、法案は作成され、中間報告として鉱山エネルギー大臣には提出したとのことであるが、その内容等については不明である。

2. ウラン探鉱に対する新規探鉱ライセンス付与
 新規ウラン探鉱に関する探鉱ライセンスに関して、いまだライセンスは付与されておらず、モラトリアムのままである。新ウラン鉱業法が制定されてから、このモラトリアムは解除されると言われている。モラトリアムが解除された場合、鉱山エネルギー省から正式にアナウンスされるとともに公的なGazette(官報)にその旨公告される。
 また、すでにEL(探鉱権)が与えられているプロジェクトについては、現在も従来どおり探鉱活動を実施しており、もし、現在のモラトリアム中にライセンスの更新時期になった場合、鉱山エネルギー省が政府に提出された探鉱レポートの内容を審査し計画どおり探鉱活動を行っていると判断された企業には更新許可を与えるとのこと。この場合、Mining Commissioner(現在はShivolo鉱山局長)が技術的な見地からリコメンデーションレターを添え鉱山エネルギー大臣に上申し、最終判断は大臣が行う。

3. 鉱物資源の探鉱と採掘に関する国営機関(いわゆる“鉱山公社”)の設置
 2008年7月にEpangelo Mining(Pty)Ltd.という名称の鉱物資源に関する探鉱・開発の企業が登記された。但し、法的な措置や予算措置がまだなされておらず、Epangelo社は活動していない。Shivolo鉱山局長によれば、100%政府出資の鉱物資源に関する探鉱及び採掘を行う国営企業であり、石油・ガス部門のNAMCOをイメージし設立された。(“Epangelo”とはナミビアの言葉で“政府の”という意味がある。)Epangelo社独自で探鉱や採掘もできるが、民間企業や他国の政府関係機関と契約を結び活動を展開していきたいとのこと。当面、ベースメタル、レアメタル、レアアースを対象とする。ウランに関しては、現在モラトリアムにあるので対象鉱種にはならないが、モラトリアムが解除されれば対象鉱種となるであろう。一般の民間企業と対等な関係にあるので、Epangelo社だけを特別扱いすることはなく、民間とフェアな条件で活動していく方針としている。

4. ナミビア地質調査局でのウラン調査
 ナミビア地質調査局には、現在、ウラン調査に特化している地質技師はいない。また、ナミビア地質調査局はウランに限らず広く鉱業活動をサポートする基本的な調査・情報提供の役割を担うため、ウラン調査を目的とした調査プログラムもない。ウラン関係の地質・鉱床に関しては、鉱床地質グループがカバーしている。なお、地質調査局にはよく整備された地質情報センター(鉱山エネルギー省1階)があり、ここで地質図、過去の調査レポート類などを購入することができる。

5. ナミビアでのウラン探鉱に及ぼす豪WA州の州政府選挙の影響
 この9月6日豪WA州で州政府選挙が実施され、従来の与党である労働党が後退し、選挙結果では労働党(ウラン反対派)、自由党(ウラン開発推進派)とも過半数には届かなかった。しかし、自由党は第3政党と無所属らと連立を組み、過半数を得る模様。自由党は選挙公約にウラン開発を掲げていることから、今までウラン開発が進まなかった労働党の政策から、連立後はウラン開発に向け政策変更があるものと考えられる。
 この政策変更により豪WA州でのウラン探査が活発化すると、[1]ナミビアや南部アフリカでのウラン鉱床の品位は元々低いこと、[2]ウラン価格が下降傾向にあること、[3]2008年に入り、ジュニア企業は市場から自由に探鉱資金を集めることが困難になってきており、プロジェクトの選択と集中が予想されることなどから、今までナミビアやアフリカを含む外国に逃げていた豪州企業が再び豪州内に戻ってくる可能性が高い。
 このため、より魅力のある鉱業政策を採用し外資を引き付けるために、例えば、ナミビアにおいては、新ウラン鉱業法の策定を急ぐ、もしくはモラトリアム解除を早めるなどの措置が取られることが考えられる。

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