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報告書&レポート

2008年10月23日 ジャカルタ事務所 小岩孝二報告
2008年71号

ラオス鉱業法改正の動向


1. はじめに
 ラオスは、2020年までにLDC(後発開発途上国)から脱却して国民生活を向上させることを目標とし、外資導入によるエネルギー(水力発電)開発、鉱物資源開発、農工業開発、観光開発に特に力を入れている。鉱物資源開発分野では、1997年に現行鉱業法が公布され、Sepon(セポン)銅・金山、Phu Kham(プーカム)銅・金山の開発に結び付け、鉱工業生産額の増大に寄与してきた。しかし、この鉱業法の改正の動きがあり、同法改正案第4版を入手したのでその概要を紹介する。


出典:OZ Minerals International Roadshow Investor Presentation Sep.2008
図1. ラオス主要鉱山位置図

表1. ラオス基礎データ
国名 ラオス人民民主共和国
Lao People’s Democratic Republic
面積 24万km2
人口 585万人(2007年)
首都 ビエンチャン
最大民族 低地ラオ族(60%)
宗教 仏教
政治体制 人民民主共和制
一院制の国民会議
国民会議議員任期は5年
議員数115名(公選)
通貨 kip(キープ)
出典:日本外務省各国・地域情勢
アジア開発銀行 Lao PDR Fact Sheet 2008

表2. ラオス経済データ
  2005 2006 2007
GDP(百万US$) 2,887 3,455 4,053
 うち鉱工業分野寄与率(%) 30.0 32.5 34.1
GDP実質成長率(%) 7.1 8.1 7.5
消費者物価上昇率(%) 7.2 6.8 4.5
輸出額(百万US$) 648 1,029 1,053
 うち鉱産物(百万US$) 203 527 536
 構成比(%) 31.3 51.2 50.9
輸入額(百万US$) 1,059 1,397 1,969
為替レート(年間平均)(kip/US$) 10,636 10,061 9,622
出典:世界銀行 Lao PDR Economic Monitor,April 2008

表3. Sepon銅・金山概要
位置:Savannakhet県Vilabouly郡
権益:OZ Minerals Ltd.(90%)、ラオス政府(10%)
資源量・埋蔵鉱量:
銅鉱床 資源量:51.3百万t・品位Cu 2.7%
埋蔵量:14.8百万t・品位Cu 4.9%
金鉱床 資源量:60.2百万t・品位Au 1.8g/t
埋蔵量:3.9百万t・品位Au 1.6g/t
生産実績:金は2003年、銅は2005年に生産開始(SxEwによるカソード)
  2003 2004 2005 2006 2007
金(純分t) 5.1 4.4 6.2 5.4 3.1
銅(純分t) 30,480 60,803 62,541
生産計画:
2010年までに銅生産能力を60千tから80千tに引上げる計画が進行中
金は、リーチング鉱の枯渇により2010年以降は今後の探鉱次第
出典:OZ Minerals Annual Report,Oxiana Annual Report
   Quartary Report
   International Roadshow Investor Presentation Sep.2008

表4. Phu Kham銅・金山概要
位置:Vientiane県
権益:PanAust Ltd.(90%)、ラオス政府(10%)
資源量・埋蔵鉱量:
銅・金鉱床 資源量:199百万t・品位Cu 0.65%、Au 0.25g/t
埋蔵量:160百万t・品位Cu 0.64%、Au 0.26g/t
金鉱床 資源量:16.6百万t・品位Au 1.02g/t
埋蔵量:1.78百万t・品位Au 0.97g/t
生産実績:(※金は2005年、銅は2008年に生産開始(精鉱))
  2003 2004 2005 2006 2007
金(純分t) 0.1 0.7 1
銅(純分t) (鉱山開発・生産準備中)
生産計画:
2008 銅30千t、金1.8t
2009 銅60千t、金2.5t
2010 銅75千t、金2.0t
出典:PanAuat Annual Report,Annual Review
   Quartary Report

2. 現行鉱業法の問題点等
 現行鉱業法は、(財)国際鉱物資源開発協力協会が平成15年度に経済産業省からの受託事業で実施した「平成15年度アジア産業基盤強化等事業:ラオスにおける鉱業関連法制度整備支援調査報告書」において、「近年改訂された周辺国鉱業法を参考にして作成され、ほぼ世界標準的な法律となっており、持続的開発、環境・生態系保護、労働安全を強く意識した先進的な法律であることから、一部の例外を除き法律そのものに重大な問題があるとは考えられない」と評価されている。同報告書の指摘事項は、[1]鉱山に政府が共同出資する際の政府権益上限が定められていない、[2]鉱業権が消滅した際に、政府が拒否した場合を除き、鉱山機械、車両等の資産を政府に無償で譲渡しなければならない、という二点である。
 また、実際の運用面でライセンス発給の遅れや採掘権の段階でいきなり権利を認められる者がいることへの不満も地元鉱業会(外資企業を含む)から出ており、これに対し政府側は法に詳細が定められていないことから許可に時間を要しており、改善したいとしている(2008.5.20に開催されたビジネスフォーラムにて)。
 一方で、探鉱権の取得のみを行い所定の探鉱活動を行わない転売目的等の鉱業権者や環境や地域社会への影響を無視して鉱業活動を行う鉱業権者も多く現れ、鉱業開発を、環境、地域社会に配慮しつつ経済発展の原動力としたいラオス政府にとっては許容しがたい状況ともなってしまっていた。このため、ラオス政府は、2007年1月より新規のライセンス発給を停止するとともに、既存のライセンス保持者でも適正な鉱業活動を行っていない者に対してはライセンスを取消す措置を取っている。

3. 新鉱業法案の策定
 ライセンス発給停止、取消しと並行して、新鉱業法案の検討が進んでいる。新鉱業法案は世界銀行グループのIFC(International Finance Corporation)の専門家の助言を受けながら策定作業が続けられているが、この度、同法案の2008年7月時点の第4版を入手した。同法案では、[1]不適切な鉱業権者の出現を防ぎつつ迅速な鉱山開発を促すこと、[2]探鉱により鉱床を発見した者の権利を明確にすること、[3]ライセンス発給条件等を詳細に規定し、申請後の恣意が入るのを防ぐことを狙っており、13章210条からなり、現行法の8章63条より大幅に条文が増えている。その概要は次のとおりである。

(1)総則
地域の分類(8~10条)
 鉱業地域を鉱物資源賦存指定地域、保留地域、鉱業活動禁止地域に分類し、原則として鉱業活動を行える地域を鉱物資源賦存指定地域に限定。
鉱物の分類(11条)
 鉱物の種類を、金属鉱物、非金属鉱物、エネルギー鉱物(石炭、石油、天然ガス等)、液状鉱物(温泉水、鉱水等)に分類。ただし、石油、天然ガスは別の法律で管理。
鉱業活動の分類(12条)
 [1]国家単独事業、[2]国内企業単独事業、[3]海外企業単独または共同事業、[4]国家と国内または海外企業との共同事業、[5]国内企業共同事業、[6]国内企業と海外企業の共同事業が可能。海外企業には、国内事業所設置義務。
鉱業活動のステージ分類(13条)
 [1]予察調査、[2]探鉱・FS、[3]鉱山開発・操業・閉山・リハビリの各段階に分類。各段階でのライセンス取得が必要
鉱山開発・操業権(14条)
 探鉱権保有者は、鉱山開発へと進む優先権を保有。

(2)各論
ⅰ)探鉱
探鉱権の付与(21~23条)

  1. 探鉱権は、エネルギー鉱山省(以下「省」)に付与権限あり。
  2. 探鉱権申請者は、申請書に探鉱計画、予算・支出計画、環境影響ステートメント、環境管理計画を添付。探鉱計画、環境管理計画を実施していく上での財務負担力、スタッフの技術力、経験を立証。
  3. 申請から60日以内(さらなる調査が必要と判断されたときは90日以内)に、探鉱権付与の可否が決せられる。
  4. 省は探鉱権を付与するに当り、申請書、添付書類、申請者の各種能力を確認。
  5. 省は探鉱権付与の可否を文書で通知。探鉱権を付与しないときはその理由を付記。

探鉱権の有効期間(24条、29条)
 当初に付与される探鉱権は3年間有効。以降2年毎の更新可能、ただし合計10年まで。毎年探鉱計画に従った探鉱を実施しているか省のレビューを受ける。
鉱区面積、鉱区料(25条、122条)

  1. 鉱区面積は最大1,000km2。更新の都度その鉱区面積の1/3以上を減ずる。
  2. 鉱区料は50US$/km2。ただし、毎年10US$/km2ずつ増額。

探鉱権の取消し・消滅(26条、33条、35条)

  1. 省の事前の承認無しに探鉱計画に沿った探鉱支出を行わなかった場合は義務不履行とみなされ、所要の手続を取らないときは、探鉱権は取消し。
  2. 探鉱権が消滅(有効期間満了を含む)したときは、それまでの探鉱活動で得た全てのデータの写しを鉱山局に提出。また、消滅の30日前までに建築物、機材等を撤去の上、原状回復を実施。

鉱床発見の報告(35条)
 探鉱権者は、鉱床を発見したときは、30日以内に鉱業登記所に報告義務。
譲渡(34条、136条)

  1. 探鉱権は、譲渡可能。
  2. 事前に省に通知するととともに、被譲渡者が探鉱を実施する能力があることを証明。
  3. 移転料として譲渡代金の10%を徴収。移転料が支払われるまでは移転登記は認められない。

ⅱ)FS(Feasibility Study)
FSの実施(36条)
 FSは探鉱により経済的であるとみなされる鉱床を確認した場合に行われる。FSは18か月以内に完成させなければならないが、鉱山局の承認を受ければその期間を延長可能。
FSの完成、承認(38条、39条)
 FSが完成したときは、鉱業登記所の承認を受ける。承認の可否は120日以内に決定し、否の場合は理由を付した文書により通知。

ⅲ)採掘
採掘の分類(42条)
 採掘は、投資額、想定マインライフにより大規模、中規模及び小規模に分類し、小規模の中に機械によらない個人採掘を分類。
包括的鉱山開発計画(43条)
 FSの結果に応じ、大規模鉱山に分類されたときは、政府と協議の上、包括的な鉱山開発協定を締結可能。
採掘権(44条、45条)

  1. 探鉱権を有し、FSの承認を受けたものは採掘権を取得する権利を有する。
  2. 採掘権を申請する者は、申請書に開発・採掘計画、環境対策、社会的影響対策、地域開発ファンド計画、環境修復ファンド計画を添付。また、財務負担力を証明。
  3. 鉱山局は採掘権を付与するに当り、申請書、添付書類、申請者の各種能力を確認。
  4. 鉱山局は採掘権付与の可否を申請から6か月以内に文書で通知。付与しないときはその理由を付記。

有効期間(46条)
 30年以内で採掘計画に即した期間付与。相応の理由があれば更新可能。
譲渡(52条、137条)
 譲渡可能。ただし事前に鉱山局に通知するととともに、被譲渡者が探鉱を実施する能力があることを証明。譲渡に伴う利益は法人所得税により課税。
取消し(54条)
 1年間以上にわたり操業計画、環境対策または社会的貢献が実行されない場合で、事前通知の通知から120日以内に対策が取られないときは、省は採掘権を取り消し得る。
消滅(54条、55条)
 採掘権が消滅したときは、鉱山会社は操業権、鉱業資産を無償で政府に供出。
 政府が受領を拒否した場合は、鉱業資産をラオス国外へ移動。採掘権の消滅後も(元)採掘権者はエリアの修復を行い、その完了について省の文書による承認を受けなければならない。

ⅳ)生産物
販売(119条)
 登録され許可を受けている者以外は生産物を販売してはならない。
販売契約(94条)
 生産物の長期契約、先物契約は認められるが、価格移転的取引を行った場合はペナルティ。
処理(120条)
 登録され許可を受けている者以外は鉱石の選鉱その他の処理を禁止。
輸送(118条)
 鉱石その他の生産物の輸送には許可が必要。許可を得ない輸送は不法採掘として、鉱石、輸送機材その他の没収の対象。

ⅴ)環境・コミュニティ
地域開発ファンド(115条)

  1. 採掘者は、ロイヤルティ0.5%を地域開発ファンドとして拠出。
  2. ファンドは、学校建設、教育、病院建設、地域小規模事業の原資等に活用。
  3. ファンド運営委員会には地域代表者、中小企業庁代表者等も参加。
  4. ファンドへの毎年の拠出額は税務上の費用として認められる。

環境修復ファンド(116条)
 環境修復ファンドは、閉山後の鉱山地域修復のために活用される。

ⅵ)ロイヤルティ・税
生産ロイヤルティ(123条)

  1. ロイヤルティは、Net Smelter Returnの計算方式で徴収。
  2. 料率
    金:4%を最低とし、FSで採用した長期価格を市場価格がどれだけ上回ったかで4%から7%の料率が適用される変動制
    その他の鉱物:固定性。銀・銅・錫3%、鉛・亜鉛2.5%等。

法人所得税(125条)
 鉱業収入に係る法人所得税率は本法で規定し、その率は35%。
繰延資産(126条)
 探鉱費、FS費、インフラ整備費その他の探鉱開発費は、繰延べて控除可能。
利益送金(131条)
 利益の海外送金は可能。源泉徴収税10%。
輸出入税(134条)
 鉱山開発・操業に必要な品物の輸出入については税を免除。

ⅶ)政府による権益取得
最大取得率(141条)
 政府は、採掘プロジェクトの最大10%まで権益を獲得する権利保有。権益比率は、政府と採掘権者との協議の上締結される契約で決定。
権益オファー(142条)

  1. 探鉱権者はFSの承認を受ける手続を行う際に、政府に対して権益オファー通知を実施。
  2. 通知には、それまでの探鉱に要した経費の10%の額と、今後の開発に要する投資額の10%を記載。これらの金額は政府が権益を取得する際の価格となる。

政府決定(143条、144条、145条)

  1. 政府は提出されたFSを分析し、収益が費用を上回る場合にのみ権益を取得。
  2. その可否は権益オファー通知を受けたときから120日以内に決定の上、その取得する権益比率とともに通知。
  3. 企業側の採掘権取得後、協議の上120日以内に権益譲渡契約を締結。政府は、権益譲渡契約締結から120日以内に譲渡代金を支払い。

政府代表(147条)
 政府は開発操業会社に取締役を送ることができる。
操業費負担(149条)
 政府は、その権益比率に応じて操業費用を負担。
第1先買権(149条)
 採掘権者は、政府が保有する権益について第1先買権を保有。
政府による基金積立(150条)
 政府は、権益から得た収益のうち5%をラオス天然資源継承基金として積み立て、次世代の教育、国内産業育成等のために活用。

4. 終りに
 指摘されていた問題点のうち、[1]政府取得権益については、法案に上限10%とその譲渡代金計算方法が記載され、[2]鉱業権消滅の際の鉱業資産の取扱いについては、引続きラオス側に無償譲渡を求めている。また、[3]探鉱実施者の採掘への移行については、原則として認められることが明記され、[4]法律に手続的なことも細かく記載し、判断基準を明確にすることにより手続の迅速化を図っているといえる。
 一方で、外国投資奨励管理法の規定により外国からの投資の場合の法人所得税率は20%とされていたところ、新鉱業法案では、鉱業収入については他の法律によることなく鉱業法で35%と定める案としている。
 新鉱業法案の中にも要検討等のコメントも入っており、これからリバイスされていくものではあるが、外国投資奨励法自体も改正作業を行っているとの情報もあり注視が必要である。
 なお、新鉱業法及び新外国投資奨励法は2008年12月にも国会で審議され改正されると見込まれている。

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