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報告書&レポート

2008年11月27日 リマ事務所 西川信康報告
2008年80号

活発化の兆しを見せるコロンビア鉱業


1. はじめに
 コロンビアでは、親米・保守派のUribe大統領の下、2007年のGDP成長率7.5%を記録するなど順調な経済発展を続けている。また、同国の最大の投資阻害要因である治安状況も、著しい改善が見られている。こうした中、2008年は、日本・コロンビア修好100周年に当ることから、両国の友好、経済協力関係強化を目指した両国の要人の往来も相次いでいる。
 鉱業分野では、安定した投資環境の下、従来のニッケルや金に加え、ポーフィリーカッパー鉱床などベースメタルを対象とした探鉱活動が活発化する兆しにある。このような中、今般、同国を訪問し、鉱業関連情報を入手したので、同国の最新の鉱業事情を報告する。

2. 鉱産物生産・輸出
 コロンビアの金属鉱物資源は、主にニッケルと金で、特にニッケルは、ワールドクラスのCerro Matoso鉱山(BHP Billiton操業)があり、年間49.4千t(2007年Ni純分)のニッケルを生産している。我が国にもフェロニッケルとして供給されている。年間15.5t(2007年)を生産している金については、主に、同国北西部のAntioquia地域で砂金を対象とした小規模事業者による採掘に留まっている。
 その他、同国は、世界有数の石炭産出国・輸出国でもあり、世界最大の露天掘炭鉱であるCerrejon鉱山(BHP Billiton、Xstrata、Anglo American各々33%)など、石炭鉱山が6か所あり、2007年の石炭生産量は、70百万tとなっている。
 一方、2007年における同国の鉱産物資源(石炭を含む)の輸出額は前年比21.7%増の6,339百万US$で、全体の輸出額の21.2%に相当する。そのうち、石炭が3,300百万US$と半分以上を占め、以下、フェロニッケル1,470百万US$、金350百万US$などとなっている(図1)。なお、同国最大の輸出品目は石油であり、2007年の輸出額は7,318百万US$であった。

図1. コロンビアの鉱産物輸出額の推移(エネルギー鉱山省)
図1. コロンビアの鉱産物輸出額の推移(エネルギー鉱山省)

3. 鉱業政策
 コロンビアでは、2001年の鉱業法改正により、積極的な外資導入政策を打出し、国内と海外投資家は同レベルの権利及び義務を負うことが認められるようになった。また、2006年には、20年間にわたる税の安定化契約の導入、税制改革の一環として、所得税の減税措置(38.5%⇒33%)などが講じられた。現在も、一層の投資促進に向けて、探鉱期限の延長、探鉱開発許可の簡素化、窓口一本化、環境対策や住民対策などのCSRの徹底等を図るべく鉱業法の一部改定が検討されている。現在の鉱業政策のポイントは以下のとおり。

  • 鉱業権は、単一ライセンシング方式で探鉱期限5年(延長2年含む)、開発期限4年、採掘期限30年。外資100%の開発が認められている。原則、先願方式で決定されるが、過去に国が調査を実施した地域に限り国際入札を実施。
  • 採掘段階では、環境影響評価調査を環境当局に提出し、承認を受ける必要がある。(探鉱段階では必要なし)
  • 鉱業税制とは、所得税33%、ロイヤルティは金・銀:4%、その他金属:5%、石炭:10%(但し、年間生産量300万t以下は5%)。ちなみに、2007年のロイヤルティ徴収額は468.5百万US$であった。
  • 国(INGEOMINAS:鉱山地質研究所)の活動は、地質図幅の作成、基礎情報の整備、データベース化と鉱区管理、鉱業権の許認可に限定。
  • 先住民居住区での鉱業活動に対しては、マイノリティに対する権利を十分に考慮するべく企業の社会的責任を求めている。

4. 最近の探鉱開発動向
 エネルギー鉱山省によると、金やベースメタルなどについて、7か所の金属資源ポテンシャル地域を抽出しており(図2)、これら地域における金属鉱物資源探査に対する2008年の投資額は約182百万US$と推計されている。国別では、カナダが全体の45%、南アが24%、スイス9.8%などとなっている(図3)。コロンビア鉱業協会によると、現在、50以上のメジャー企業やジュニア企業による探鉱開発投資が計画、実行されており、2007年の鉱業投資額(石炭を含む)は1,047百万US$(コロンビアの直接投資総額の11.6%)に達している。昨今、ポーフィリーカッパー鉱床を対象とした探鉱活動が活発化する兆しにあり、Anglo American、Glencore、Vale、Rio Tintoなど大手非鉄企業の進出が相次いでいる。以下に主な非鉄金属の探鉱開発動向を紹介する。

(注:BMはベースメタル)
図2. コロンビアの金属資源ポテンシャル地域
図2. コロンビアの金属資源ポテンシャル地域
図3. 2008年コロンビア・金属鉱物資源投資額の国別シェア
(単位:百万US$)
図3. 2008年コロンビア・金属鉱物資源投資額の国別シェア

(1)Angostura金探鉱プロジェクト
 Greystar Resources(カナダ)がコロンビア東北部のSandander地域で進める同国初の本格的な金山開発プロジェクトになり得る可能性が注目されている。本鉱床は大型の鉱脈型金鉱床で、1995年の調査開始以来、2007年までの総ボーリング長は約24.4万mに達し、現在、金量(inferred)3.43百万oz(107t)(平均品位Au 1.37g/t)を把握している。現在、FS実施中で、生産規模は、年産金量10tクラスになると期待されている。

(2)Gramlote金探鉱プロジェクト
 コロンビア北部Antioquia州にある探鉱プロジェクトで、現在、AngloGold Ashanti(南ア)が、プレFSを実施中。2007年までのボーリング43孔、総延長13,060mにより、鉱量(Inferred)は57.8百万t、品位Au 1.14g/t、金量2.12百万oz(66t)と見積もられている。2008年入り、カナダジュニア企業のB2Goldが参入し、現在、両社によるJV調査が進められている。

(3)Mocoa銅探鉱プロジェクト
 コロンビア南部Putumayo県に位置し、B2GoldがAngloGold Ashantiより取得。2か所の鉱区(7,831ha、3,953ha)からなる。鉱床は、モリブデンリッチのポーフィリーカッパー鉱床で、1970年代後半から1980年代前半にかけてINGEOMINASが31孔18,321mのボーリング調査を実施し、鉱量306百万t、品位Cu 0.37%、Mo 0.061%を把握している。B2Goldは、その鉱量確認と、鉱床の広がりを確認するため、現在、3,800mのボーリングを実施中。

(4)Colosa銅探鉱プロジェクト
 Tolima州にあるポーフィリー金鉱床で、AngloGold Ashanti社(南ア)により、2007年までにボーリング12,000m(42孔)が実施された。現在、追加ボーリングと経済評価を行っており、2008年中にも、鉱量が発表される予定。

(5)その他
 INGEOMINASは、2007年7月、金、銅、モリブデン鉱床の賦存が期待される3つの有望鉱区の入札を行った。結果は以下のとおり。

  1. 銅・モリブデン鉱床が期待されるPantanos-Pegadorcito鉱区(Antioquia県、2,800ha)を、Glencoreが1.14百万US$で落札。
  2. 銅・モリブデン・亜鉛鉱床が期待されるAcandi鉱区(Choco県、1,651ha)を、Anglo Americanが323千US$で落札。
  3. Vaupes県にあるTataira金鉱区を、Cosigo-Frontierが90千US$で落札。

 その他、Newmont、Barrick Gold、Vale、Rio Tinto等、世界的に著名な非鉄企業が次々と探鉱案件の発掘に乗出していると言われている。

図4. コロンビア・主な鉱山と探鉱プロジェクト
図4. コロンビア・主な鉱山と探鉱プロジェクト

5. 治安状況
 Uribe大統領は、2002年の就任以降、FARC(コロンビア革命軍)やELN(国民解放軍)等の非合法武装勢力に対し討伐作戦や取締り強化などの強硬政策を取り治安回復に努めた結果、治安情勢は大幅に改善している(例えば、テロ件数は2002年:1,526件→2007年:387件、誘拐件数は2002年:2,986件→2007年:521件など)。
 しかしながら、未だ山岳地帯では、石油パイプラインや送電設備等への爆弾テロや誘拐事件などが、散発的に発生している。これに対処するため、政府は、外資の活動地域に、国家警察・軍の配備サービスを積極的に提供し、安全確保に努めている。一般に、爆弾テロは、監視の行き届かない地域を狙い打ちされている傾向があり、また、誘拐事件は、警護を付けていない無防備な状況下で発生しているケースが大半で、国家警察や軍が警護することで、安全上のリスクは相当量、軽減するとされる。今回、コロンビア鉱業会議所より、会員企業へのアンケートの結果、安全問題が同国の投資阻害要因となっていると回答した企業は1%に満たなかったとの報告があったが、これは、政府による警護の支援体制がうまく機能している結果と評価できる。また、鉱業会議所からは、地元住民との良好な関係構築も治安対策上、重要なポイントであるとの指摘もあった。

6. おわりに
 今回、筆者は、日本コロンビア経済視察団のメンバーとして、投資セミナーや企業視察等に参加する機会が与えられたが、一連のイベントを通じ、コロンビア人の会議運営能力の高さやきめ細かな受入態勢など、同国民の民度の高さ、日本人に通じるメンタリティに大いに感銘を受けた。
 今回、面談したMartinezエネルギー鉱山大臣からは、「コロンビアは、未調査地域が数多く残されており、組織的な調査が進んでいない。治安が著しく改善している中、この国の天然資源ポテンシャルに、世界中が注目している。政府も、一層のビジネス環境の整備を進めており、日本の協力や投資拡大を期待している。」との熱いラブコールもあった。
 このような良好なビジネス環境の下、治安問題の懸念から、二の足を踏んでいた日本勢も、同国の豊富な天然資源開発に向けて本腰を入れた取組みを検討する時期が来ているものと考える。

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