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報告書&レポート

2008年12月18日 ロンドン事務所 フレンチ香織報告
2008年85号

第11回EHSセミナー参加報告

本報告書は、2008年10月8~9日にブラッセルにて開催された欧州非鉄金属ロビー団体のEurometaux主催の『第11回EHS(=Environment, Health, and Safety、環境・健康・安全)セミナー』で取り上げた課題の3項目([1]REACH&GHS、[2]リサイクルとSCP政策、[3]大気中の微粒子)について報告する。なお、本セミナーは、Eurometauxの会員企業(Rio Tinto、KGHM、Boliden社、Norilsk Nickel Finland Oy社等)や、金属関連協会 (欧州ニッケル協会ENIA、欧州貴金属連盟EPMF、国際モリブデン協会IMOA等)、政府機関(欧州委員会、欧州化学物質庁ECHA等)から約60名が参加した。

1. はじめに:「Eurometaux」とは?
 Eurometauxは、欧州非鉄金属ロビー団体で、1957年に結成されてから、1988年に現行名へ変更し、現在は、ブラッセルを拠点として活動している。同団体は、欧州非鉄金属産業界と、欧州及び国際政府機関の架け橋となる役割を担い、非鉄金属産業界に影響を及ぼすEU政策及び規制における全ての面で、初期のコンサルテーションを積極的に行い、欧州における同産業会の「持続可能な開発(=SD、Sustainable Development)」を促進している。最近では、同団体は欧州REACH規制の適用により、『REACH Metals Gateway』の公開ウェブサイト(http://www.reach-metals.eu/)を設け、金属の特異性及び化学的論拠の研究進捗を公開している。また、本セミナーでは、Eurometauxの包括的な目標/課題は以下の2点を掲げ、同団体ではこれらの目標を実践するために、ICMM(国際金属鉱業評議会)及びEUROFER(欧州金属連盟)をはじめ、各金属産業協会及び関連企業等とのパートナーシップの重要性を強調した。

  • 鉱業-鉱物資源-金属の供給連鎖を、世界的な持続可能な開発の柱として位置付け
  • 非鉄金属産業及びその商品が、持続可能な生産及び消費に寄与することの実証

2. 欧州REACH規制&GHS ~次のステップは何?~
[1]『REACH 1: 予備登録の現状と、本登録へ移行する際の課題』
(ECHA、Petteri Makela氏)

【予備登録の概要】
 ECHA(欧州化学物質庁)は、2008年6月1日~12月1日までREACHの予備登録を開設した。予備登録の利点は、登録対象企業の化学物質の生産量により異なるが、本登録までに猶予期間が与えられることである。なお、予備登録によって、企業は、物質情報交換フォーラム(SIEF=Substance Information Exchange Forum)への参加が義務付けられ、自動的に参加することになる。SIEFの目的は、各企業がそれぞれの化学物質の登録及び認可に対して協力し、データを共有することにある。

【予備登録の現況】
 2008年10月1日現在、全27EU加盟国及びEAA諸国(アイスランド、ノルウェー等)の約1万社が予備登録を完了し、企業の予備登録数は、ドイツ、英国、オランダ、フランス、イタリア、アイルランドの順で多い(図1を参照)。また、約40万種の化学物質が予備登録され、「有効」とされる予備登録化学物質は約15万種以上、また、EINECS番号2を含まない異種の化学物質は約4万種と認識されている。なお、予備登録された化学物質の中間報告は下記のHPに公表され、予備登録された化学物質の最終リストは2009年1月1日に公開される予定である。
(予備登録の中間報告:
http://apps.echa.europa.eu/preregistered/pre-registered-sub.aspx)

図1. REACH予備登録の完了状況(2008年10月1日現在)
(出典:ECHA、第11回EHSセミナー資料より)
図1. REACH予備登録の完了状況(2008年10月1日現在)
(注:淡色(黄色)はユーロ圏のEA 15か国、濃色(緑色)はEU 27か国での追加国を示します。)

 SIEFの会員状況は、鉄と銅で約300社、ニッケルで約200社、チタン・亜鉛・鉛で約150社が存在する。但し、今後はSIEF内で化学物質の同類性を議論し、SIEFをどのようにグループ分けするのかを決定する。

【ECHAの課題】
 予備登録から本登録へ移行する際のECHAの課題として、[1]REACHの登録に使用する無償ソフトウェア(名称:REACH-IT)に関する技術的問題、[2]REACH実施期限に沿った膨大な情報処理及び情報提供の実効性(ワーカビリティ)が挙げられた。また、本セミナー参加者からは、急増する登録に対し、REACH-ITソフトの処理能力を懸念する声も上がった。

[2]『REACH:モリブデン産業への課題 ~予備登録から本登録へ~』
(IMOAのモリブデンコンソーシアム事務局員、Sandra Carey氏)

【既に直面した課題】
 REACHは、実行しながら学ぶもの(learning by doing)で、前に道はない(No path to follow)。同コンソーシアムは以下の課題等に既に直面し、現在は研究・開発を進めている(So far so good!)。

  • MERAG(金属環境リスクアセスメントガイダンス)、HERAG(金属健康リスクアセスメントガイダンス)
  • REACH登録に向けた作業段階計画
  • 金属コンソーシアムの形成と参加者の募集
  • RIP(=REACH施行プロジェクト)ガイダンスの開発に向けた「外延的な」参加
  • REACH規制の解釈の問題(例えば、登録が必要な鉱石・精鉱の判断3 、中間生産物の定義、入手データの内容、「輸入者」の定義など)
  • コンソーシアム会員企業への予備登録ガイダンスパッケージ
  • コンソーシアム間のデータ共有に関する法的規則の制定

 なお、モリブデンコンソーシアムが対象とする化学物質は、以下のウェブサイトに公開されている。フェロモリブデンに関しては、合金で『Preparation』調剤物として扱われるため、『モリブデン金属』と『金属鉄』の2つの物質で予備登録しなければならない。
(詳細:
http://www.molybdenumconsortium.org/FileLib/MoCon%20Substance_Portfolio_EINECs_CAS_Nov08F.pdf)

【新しい未知なる課題(コンソーシアム4 とSIEF)】
 2008年10月現在、モリブデンのPre-SIEF会員は164企業(下流ユーザーが多い)で、コンソーシアム会員企業には53企業が存在する。今後のSIEFの課題は、[1]『競争企業にどのようにアプローチするのか』、[2]『CSR(化学物質安全性報告書)の作成に向けて、コンソーシアム会員と非コンソーシアム会員がどのように協力体制を築き上げていくか』である。[1]に関しては、REACHの登録は、化学物質の使用量(Tonnage)によって登録時期が変わってくるため、最初のデータ共有者は、生産量域(Tonnage Band)に基づいて、アプローチすると良い。[2]に関しては、多くの場合、コンソーシアムの情報は参加企業のみの機密となるので、非会員企業との情報格差は避けられない。よって、SIEFの良い協力体制を築くためには、SIEF全員がコンソーシアムに参加することが望ましい。なお、コンソーシアムでは、構造的枠組み及び物質データの法的保護強化に対しても積極的に取り組んでいる。
 しかしながら、SIEF参加料は1企業につき300€で、モリブデンコンソーシアムへの参加料は、2007~2010年の間は減額料金で15~25千US$(企業の年産量によって異なる)とされており、本セミナー参加者からは、「REACHは、欧州域内の産業界における競争力を強化することを目標に挙げているが、SIEF及びコンソーシアムの参加料、そして、REACHの登録料も必要なため、逆に中小企業の経済競争力を削いでいるのではないか。」と非難する者もいた。

[3]『GHS(化学品の分類及び表示に関する世界調和システム)』
 本セミナーでは、欧州委員会の企業・産業総局Uta Jensen-Korte博士及び、Rio Tintoの化学物質総合安全管理部門Sue Hubbard博士よって、欧州のGHS対策が説明された。なお、後者はEurometauxのRIP3.6ガイダンス5に関する化学物質の分類及び表示(ヒトの健康への分類)を担当している。

【GHSの概要】
 GHSとは、『化学品の分類及び表示に関する世界調和システム』で、1992年にリオデジャネイロで開催された国際連合会議の「持続可能な開発」に関する第一回地球サミットから始まった。国際連合は2002年12月、GHSを公式な提案モデルとして承認し、それ以降、多くの国々で、作業場または輸送中の化学物質に基づいた危険物質の分類に関する基準を開発している。ICMMによれば、ほとんどの国は2008年の中期までGHS分類を必要としないが、日本、南ア、ニュージーランド、豪州等は、輸入品に関するGHSラベル表示を既に受入れており、台湾は2008年12月31日までに、GHSのSDS(安全データシート)の必要条件を採用する計画である。なお、UNが適用しているGHSの分類カテゴリーは、ヒトの健康を考慮した内容が10項目(例:急性毒性、皮膚炎症性、眼に対する重篤な損傷性、CMR物質[発がん性、生殖細胞変異原性、生殖毒性]など)、環境に対する有害性(水生環境有害性)が2項目、そして、物理化学的危険性(可燃性、高圧ガス)が16項目の計28項目が存在する。

【GHSが与える金属産業への影響】
 鉱業・金属産業では、世界中に多様な供給チェーンまたは市場網を有することが多いため、それぞれの国で化学物質の分類及び表示(以下、C&L[=Classification&Labeling])の基準が違うと、混乱のもととなり、多様な対象者に適応できる共通基準の分類は、国際的な産業発展を促進すると考えられている。今後、GHSに基づいて、鉱物及び金属を含む全ての化学物質は統一して分類され、危険を警告する標識の統合、統一されたMSDS(化学物質等安全データシート)、統一された製品及び輸送のラベル表示を適用することが目標とされている。
 しかしながら、新しいC&L基準が考慮されるようになれば、企業は事実上、全ての製品、材料、不純物を再評価し、「それらが正確に分類され、ラベル表示されているか」を確認する必要がある。重要な点として、GHSが採用されれば、作業場で化学薬品を取り扱う従業員は、新しい危険警報に関する文書及び危険表示に精通し、場合によっては作業工程及び蓄積手順も変更しなければならない。
 加えて、REACH規制のC&Lは、GHSに基づいて考査される。REACHは『規制』であるため、『認可(Authorization)』の段階で、特定の化学物質の使用・販売を潜在的に制限または禁止することが可能となる。よって、金属産業は化学物質のGHS分類が、『化学的に正確であるかどうか』を証明することは、極めて重要なことであると言える。また、金属産業に対するGHS分類の重要なポイントは、次のとおりである。

  • 分類を目的とした入手データを解釈する専門家の判断を適用する
  • 生物学的な化学形態・化学種に基づいて、データの使用を分類する
  • 物理的状態を判断する(金属塩、酸化物、硫化物など)
  • 特性を見極める(重要な物理的・化学的パラメーターを利用:例えば、溶解性、吸着力、粒度、変化/分解など)
  • 『証拠の重さ』アプローチを利用(分類するために入手情報の全てを考査、データの質及び一貫性を考査、作用のメカニズムを考査[ポジティブ・ネガティブデータ:相乗効果、中毒作用、拮抗作用など])

【欧州の現行C&L方法とGHS適用対策】
 欧州は過去40年間、化学物質のC&Lを開発しており、現在では、以下の3つの指令が重要な基準となっている。なお、GHSは文字どおり、『世界調和システム』が最終目標であるが、C&Lは各国によって相違があるため、EUは、欧州の分類及び表示法を世界に広めることにより、欧州産業の負担を軽減することを目標としている。

  • 危険物質に関する指令—-Dangerous Substances Directive(67/548/EEC)
  • 危険な調剤に関する指令—-Dangerous Preparations Directive(1999/45/EC)
  • REACH AnnexⅡ((EC)1907/2006)[旧指令はSafety Data Sheet Directive(91/155/EEC)])

 現在のUNのGHSとEUのC&Lの共通点及び相違点は以下のとおりである。

GHSが、現行のEUシステムと共通する点 GHSが、現行のEUシステムと異なる点
  • GHSは唯一の危険有害性分類システムを提供
  • ほぼ同類の危険物を包括する
  • 多くの場合、同様または同等の分類基準を適用している
  • 危険有害性周知の同等なシステムを設置
  • 輸送及び供給・使用の両方の判断基準を設定
  • より詳細な危険分類及びカテゴリーを定義
  • 部分的に危険物質の判断基準や表示方法が違う
  • 混合物に対する違うアプローチ法を適用
  • 表示を変更

UNのGHS分類はより詳細であるため、EUがGHS対応で「含めない」カテゴリーは、以下のとおりである。

  • 可燃性液体(=Flammable liquids)カテゴリー4
  • 急性毒性(=Acute Toxicity)カテゴリー5
  • 皮膚炎症性/刺激性(=Skin corrosion/irritation)カテゴリー3
  • 吸引性呼吸器有害性(=Aspiration hazard)カテゴリー2
  • 急性水生毒性(=Acute aquatic toxicity)カテゴリー2
  • 急性水生毒性(=Acute aquatic toxicity)カテゴリー3

 また、REACH規制のもと、新しい義務を誘発しないために、以下のような下流の規制・分類別を維持する方針である。

  • 圧縮ガス(=Gases under pressure [AnnexⅠ、2.5])
  • 金属腐食性(=Corrosion to metals [AnnexⅠ、2.16])
  • 泌乳による生殖毒性及び影響(=Reproductive toxicity, effects on and via lactation (AnnexⅠ、3.7)
  • STOT(=Single exposure、1回暴露)、Narcotic effects(=麻薬作用)(AnnexⅠ、3.8)

 その他、GHSの影響によって、分類カテゴリーの記述を変える部分もある。例えば、目への刺激(Eye irritation)のカテゴリー1では、67/548/EECでは「Risk of serious damage to eyes」であるが、CLP(下記を参照)では、「Causes Serious Eye Damage」と、より警告する表現を適用する計画である。

【EUのGHS適用スケジュール】
 欧州委員会は2008年9月、『化学物質及び化合物の危険性に基づく分類・ラベル表示・梱包(CLP)に関する規則』の改正を巡るEU合意を、正式に承認した。現在は、現行のAnnex IをGHS分類法(Annex VI)へ移行する作業に取り組んでおり、2010年12月までには、欧州独自の分類方法及び通知書が求められている。なお、欧州委員会は、GHSの適用をREACH規制と同じタイミングで施行したい意向がある。

図2. REACH施行期限に沿ったGHSの移行期間
(出典:欧州委員会の企業・産業総局、第11回EHSセミナー資料より)
図2. REACH施行期限に沿ったGHSの移行期間

【GHSに関するガイダンス】
 ICMM、Eurometaux、EUROFER(欧州鉄鋼連盟)は、会員企業に対してGHS適用へのトレーニングを実施している。また、同団体等は関連する事業者団体及び産業専門家と意見交換を行い、科学的データを収集し、矛盾の無い分類を行うことに支援している。
(参考資料:http://www.icmm.com/document/18、
     http://ec.europa.eu/enterprise/reach/ghs_more_on_com_proposal_en.htm)

3. リサイクルとSCP指令 ~エコデザインへの政策とは?~
[1]『欧州のリサイクル目標』
(講演者:欧州委員会環境総局、Jakub Wejchert氏)

 欧州では金属製品のリサイクルを促進するために、下記の指令が制定されている。本内容は指令であるため、欧州委員会は、統一制度を企図しつつも、リサイクルの実際の回収、リサイクル目標の管理は各国に委ねられている。

  • WEEE(=Waste Electrical and Electronic Equipment、廃電気・電子製品)に関する指令:製品のカテゴリーによって異なるが、電力1,000AC~1,500DCの電気・電子製品75%、65%、50%のリサイクル化を目標(現在、見直し作業中である)
  • 廃車指令(End of Life Vehicle):2015年までに廃車85%をリサイクル化
  • 廃棄物枠組み指令(Waste Framework Directive):2020年までに家庭廃棄物50%を再利用化、また、建設及び建物の解体廃棄物の70%をリサイクル化することを目標

 欧州では、金属製品のリサイクル及び再利用を推進しながら、原料の消費を減らすことを目標としている。同氏によれば、欧州の資源生産性6 は年間2.2%の割合で増加しており、更なるリサイクルの推進によって、資源効率利用の向上を図っている。なお、2001~2002年のデータではあるが、欧州圏内の各国の資源生産性は、以下のとおりと紹介された。

図3. 資源生産性vs経済競争指数
(出典:EHSセミナー、『Towards a resource efficient Economy』より)
図3. 資源生産性vs経済競争指数

[2]『SCP指令が非鉄金属産業へ与える影響及び課題』
(AGORIA社、Patrick Van den Bossche氏)

【SCP指令の概要】
 欧州委員会が発案したSCP(=Sustainable Consumption and Production、持続可能な消費と生産プロジェクト)とは、省エネで環境を配慮した製品や、環境技術の更なる開発を促進し、また、それらを市場へ導入することを推進するプロジェクトのことである。このSCPに関連する指令には、「エコデザイン指令」というものがある。エコデザイン指令は、EuP(=Energy using products、エネルギー使用製品指令)を含み、交通機関を除くエネルギーを利用する全ての商品が対象となり、省エネを目標とした環境パフォーマンスを向上するための指令である。また、提案段階ではあるが、エコデザインの促進のためにEU加盟国の企業には奨励金を与える制度も検討している。そして、製造業者が継続的に製品改良を従事するために、エコラベルのレベル指標を設け、A++、A+++に評価された製品にはエコラベルが付けられ、消費者の購買意欲を高める方針である。

【SCP指令が非鉄金属産業へ与える課題】
 家電製品などのエネルギーを消費する製品には、非鉄金属が多く使用されているため、非鉄金属はこのSCPの解決方法として重要な位置を示している。また、非鉄金属には長期寿命であるために、資源利用の効率化にも貢献し、エコデザインの対象物であると考えられる。しかしながら、非鉄金属はCO2フットプリントの概念により、金属の良い価値が無視されており、非鉄金属を含む製品には、エネルギー効率化と資源効率利用化の葛藤がある。例えば、寿命の長い商品(冷蔵庫や洗濯機などの大型家電製品)は、資源利用の効率化には貢献しているが、商品が古ければ古いほどエネルギー消費率が高くなる。よって、両目標を実現するためには、効率的な商品寿命を設定して、最良のリサイクル方法の施行が必要となり、正確な化学的アプローチで、適切なLCA(=Life Cycle Assessment、ライフサイクル評価)を実行し、金属の効率的な寿命サイクルに基づいて商品を製造することが重要な鍵となってくる。

4. 大気中の微粒子 ~脅威、それとも新たな機会?~
【概要】
 環境規制の向上として、微粒子(Particles)、超微粒子、粒状物質、ナノ粒子等への研究が高まっている。これは、多くの無機物質が、ヒトの呼吸活動によって人体に悪影響を及ぼすと分別される潜在性が潜んでいるからである。なお、欧州委員会共同研究センター(JRC)の講演によると、大気汚染を引き起こす可能性の高い粒子状物質(PM)の成分は、硫酸、硝酸、アンモニア、塩化ナトリウム、炭素、鉱物粉末及び水を含む。また、体に害を及ぼす微粒子が生じる場面は、自動車排気ガス、家庭内の固形燃料の燃焼、産業活動、舗装道路の陥没、洞窟や鉱山の中でのブレーキまたはタイヤの摩擦、喫煙と言う論がある。

【ナノパーティクルの機会?】
 本セミナーでは、Umicore社のEHS管理官であるBert Swennen博士よりナノパーティクルに関する講演が行われた。同社では、1997年よりナノ原料及び超微粒子原料の研究を実施している。今日では、新しいナノ原料の開発研究プログラムを継続しながら、数百tの複合生産とともにナノ酸化物(Nano Oxides)を商業特化として生産している。同社はナノテクノロジーの開発によって、以下の社会問題が解決できる可能性があると述べる。

  • エネルギー(太陽電池、充電用電池、燃料電池、排出ガス制御など)
  • 薬品(紫外線カット、抗バクテリア剤など)
  • 電子製品(小型化など)
  • 自動車触媒
  • フィルター(空気/水の浄化)

【ナノパーティクルに対する懸念】
 しかしながら、ナノパーティクルはEHSの面で、安全かどうかは未だ不明であるため、同社ではナノパーティクルに対して、以下のEHS対策を立てている。また、同社は2009年3月までの施行となるが、NanoSafe 2コンソーシアムへも参加し、ナノパーティクルの機会及びリスク評価を研究している。

  • 職場での健康及び安全性を維持するために、ナノ原料の開発場所を密封し、従業員の入室を一切禁止している。(例、TiO2のビン詰め工場など)
  • Umicore社が取扱うナノ原料の危険性をより分析する。
  • 化学物質の総合安全管理に積極的に取り組む。
  • 政策及び規制活動の議論へ参加する。

5. さいごに
 本セミナーの最後に、「持続可能な非鉄金属産業の開発」と題した講演が、Rio Tinto化学物質の総合安全管理主席顧問のWilliam Adams氏によって行われた。同氏は、最近の非鉄産業の成功例として下記の4点を挙げている。

  • 金属及び金属化合物を分類するのに役立てるため、金属及び金属化合物の変化/分解に関するOECDプロトコルを完成
  • 優先的且つ自主的な金属リスクアセスメントを受け入れ
  • リスクアセスメントの処置:MERAG(Metal Environmental Risk Assessment Guide)や生物学的利用能の概念(特に水上及び陸上のBiotic Ligand Model)
  • RIP(REACH Implementation Project)の成果

 非鉄金属産業が上記を成功した理由は、[1]全ての部門を通じて産業が共同で作業に取り組んだこと、[2]多くのレベルで自主的なイニシアティブが見られたこと、[3]規制者と慎重に継続的に取組んだこと、[4]科学的論拠とデータに基づいて意見を述べたこと、([5]産業が3千万US$以上の資金を費やしたこと)である。これはEHSに対応する将来のレッスンとして重要なポイントであると同氏は強調した。

近い未来の非鉄金属産業に対する課題 遠い未来の非鉄金属産業に対する課題
  • REACHの完了
  • EUの水枠組指令と金属
  • 土壌枠組指令
  • 金属のための堆積物評価
  • 海洋リスクアセスメント
  • MERAGの完了
  • RIP 3.6及びRead-acrossの課題
  • GHS施行
  • 合金の分類
  • REACH概念の世界的普及化
  • バイオメーカーの研究:ゲノミクスとプロテオミスク
  • 生物の行動パターンの研究(例:慢性カドニウム汚染を受けたシーバスの行動パターン)
  • ナノ微粒子の研究
  • Metal Fingerprints(例:土壌のアイソトープの分析が、鉱石が発見されるポイントにまで急速に進行している等Stable isotope analysis in soils is rapidly progressing to the point that the source of metals can be identifided.)
  • UNEPのSAICM(国際的化学物質管理に関する戦略的アプローチ)
  • 米国のChAMP(化学物質アセスメント・管理計画)


1REACH規制の詳細については、ロンドン事務所から以下の金属資源レポートで報告している。
http://www.jogmec.go.jp/mric_web/kogyojoho/2007-07/MRv37n2-08.pdf
http://www.jogmec.go.jp/mric_web/kogyojoho/2007-09/MRv37n3-06.pdf
2EINECS番号とは、欧州共同体(EC)の委員会が定めたEINECS(European Inventory of Existing Commercial Chemical Substances)に記載された7桁の化合物の同定番号である。
3鉱石・精鉱に関しては、一般的に『not chemically modified』で化学的に合成されていなければ、登録除外となるが、それが不明確な場合は、上流産業から下流まで金属が製造されるまでの工程を分析することが求められている。
4コンソーシアムは、金属産業協会によって運営されており、主な目的は、REACH登録の技術書類(Registration dossier)に対する必要な関連情報を収集し、率先して金属リスク評価及びデータ共有などを行うことである。コンソーシアムは、SIEFとは違って、欧州委員会からのサポートは受けているが、参加は義務ではなく、化学物質の製造業者、輸入者及び、下流ユーザーが自主的に参加している。なお、会員企業は、コンソーシアムの規約(開発段階、各段階の施行時期、組織形成、専門委員会、コストシェアなど)に対する合意が求められる。
5 RIP3.6は、REACH施行プロジェクトのガイダンスで、一般的な課題として、ラベリング、化合物、危険物の分類カテゴリーなどについて記載される予定である。
6資源生産性とは、GDP/天然資源等投入量:如何により少ない資源で、より大きな価値を得るかを表す値である。
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