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報告書&レポート

2009年1月15日 リマ事務所 西川信康報告
2009年02号

ペルー鉱業を巡る2008年の10大ニュース

1. はじめに
 2008年のペルー鉱業界は、大きく揺れ動いた。米国発の金融危機に端を発した世界経済の減速、金属価格の急落は、好調な発展を遂げてきた同国の鉱産物生産・輸出、企業業績、直接投資などに影を落とし始めている。加えて、鉱山現場では、地域住民との衝突や対立の激化、労働ストの多発など社会問題も激しさを見せており、ペルー鉱業は大きな曲がり角に差し掛かっている。本稿では、JOGMECリマ事務所が選んだ10大ニュースで2008年を振り返る。

2. 鉱山生産、鉱産物輸出が減少傾向に
 ペルーの2008年1~11月の鉱石生産量は、銅が前年同期比6.6%増の1,151千t、金が同8.0%増の165t、亜鉛が同9.7%増の1,457千tなど依然増大を続けている。しかしながら、Q3(第3四半期)に入り、亜鉛は7月に前年比1.3%減、銅は8月同0.85%減、10月同5.8%減等前年比マイナスに転じるなど、その成長に陰りが見え始めている。
 また、鉱産物輸出額については、2008年1~10月では表1に示すとおり、14.3%増の159.6億US$と高い伸びを示しているが、下期に入り急激に伸び率が鈍化し、10月には19.7%の大幅減に転じるなど、2002年より拡大を続けてきた鉱産物輸出に急ブレーキが掛かった状況に陥っている。当面、金属価格の大幅下落・低迷に伴い、減少傾向が続くものと見られる。

表1. 2008年1~10月輸出額
(単位:百万US$)
鉱種 10月 1~10月
2007 2008 伸び率 2007 2008 伸び率
767 509 -33.6% 5,814 6,851 17.8%
332 457 37.6% 3,218 4,660 44.8%
亜鉛 268 90 -66.5% 2,249 1,315 -41.5%
51 33 -34.5% 445 529 19.0%
58 83 43.7% 832 1,019 22.5%
鉄鉱石 31 39 24.0% 242 331 36.9%
39 4 -89.7% 334 224 -33.0%
その他 85 94 11.1% 831 1,033 24.3%
鉱産物合計 1,630 1,309 -19.7% 13,964 15,961 14.3%
輸出額総計 2,646 2,363 -10.7% 22,618 27,049 19.6%
出典:SUNAT

3. 鉱山企業の業績悪化

 世界経済の減速に伴う金属価格急落による減収に加え、人件費や燃料費、資材費などの高騰による操業コストの上昇が、各鉱山の業績に深刻なダメージを与えた。
 表2は、ペルーの主要鉱山会社の2008年Q3業績を示したものであるが、鉱種によって明暗が分かれている。YanacochaやBuenaventuraなど金山を保有している鉱山会社は、金価格が高水準を維持していることもあり増収増益を保っているが、銅山や亜鉛鉱山などは、落込みが顕著で、特に、中小の亜鉛鉱山は深刻な事態となっている。金属価格低迷は、欧米経済の後退、中国の経済成長の減速により、2009年中も続くとし、経営環境は更に悪化していくとの悲観的な見方が拡がっている。
 また、鉱山労働者の解雇も相次ぎ、鉱山冶金鉄鋼業労働者連盟によると、2008年10月以降、鉱山で働く労働者の内、派遣労働者を中心に約4,670人が失業し、大きな社会問題に発展しつつある。

表2. ペルーの主要鉱山会社の2008年Q3業績
企業名 2008年Q3業績 (単位:百万US$)
総売上高 前年比 純利益 前年比
Southern Copper 1,440 -10.4% 41.08 -33.5%
Cerro Verde 411.3 -31.6% 165.4 -37.4%
Yanacocha 407.0 60.9% 103.0 124.0%
Buenaventura 208.0 6.0% 101.0 1.0%
Volcan 102.0 -49.0% 103.0 -66.0%
Milpo 55.9 -16.1% 8.89 -67.9%
Atacocha 24.8 -41.8% -5.75

4. 相次ぐ探鉱開発案件の見直し
 鉱業分野への直接投資の影響については、次のような見方がある。
1)一般的に、初期ステージの案件に関しては、金融機関による融資の滞りでマイナスの影響を受ける一方、ステージの進んだ案件には影響が少ない。
2)今後の鉱業活動動向は、資金がどの国に由来するかに左右。中国が資金源である場合は大きな問題とはならない(大きな変更の可能性が小さい)。
3)一方で、ペルーで活動している150社に上るジュニア企業の資金繰りが困難な状況になっており、全てのジュニア企業が予算削減、プロジェクト停止等存亡の危機に直面している。2009年の探鉱投資額は2008年の550百万US$の30%減となる見通し。

 現在のところ、明らかになっている主要鉱山・主要プロジェクトの動向は以下のとおりで、少なからず影響が及んでいる。

(1)Southern Copper
 2008年Q3の業績悪化や今後の金属価格予測等を踏まえて、Los Chancas銅開発プロジェクトの実施を見直すと発表。なお、Tia Maria銅開発プロジェクトやToquepala銅山拡張プロジェクトに関しては予定どおり推進の方向。

(2)Antamina鉱山
 埋蔵量が77%増の7.45億tに拡大したことを受け、25%の増産を柱とした鉱山拡張計画を発表。マインライフも23年から34年に延長する見通しで、2009年に建設開始を予定。但し、金融危機によって資金調達が難航する可能性もある。

(3)FCX(Freeport McMoran Copper&Gold)
 2008年Q3の業績結果や金属価格下落等を受けて、同社の全体の投資予算を20億US$削減する計画を発表。これに伴い、ペルーではCerro Verde銅山拡張投資計画が延期される。

(4)Yanacocha
 筆頭株主であるNewmont Miningは、Minas Conga銅・金プロジェクトの開発方法や操業開始時期等について2008年末に決定する予定だったが、2009年Q1に延期。

(5)Xstrata
 Las Bambas及びAntapaccayの両銅開発プロジェクトについて、金融危機によって市場における資金調達に大きな影響を受けているとしながらも、プロジェクト継続の方向。

(6)Chinalco
 Toromocho銅プロジェクトについて、金融危機の影響による資金調達に困難は生じていないとし、2011年の生産開始に向けて、今後22億US$を投資する計画を発表。

(7)Anglo American
 2009年の探鉱開発額を45億US$に半減することにより、南ア及びブラジルにおける拡張計画を中止するが、ペルーにおけるMichiquillay及びQuellaveco両銅開発プロジェクトは、予定どおり進行させる方針。

5. 拡大を続ける社会争議-カノン税を巡る既得権抗争が激化
 ペルーでは、環境汚染の懸念や地元への利益還元を求めた地元住民による反鉱山運動が後を絶たず、オンブズマンによると2008年12月末時点における社会争議は197件(内、鉱業関連78件)で、2007年の同時期の社会争議78件(内、鉱業関連37件)を大きく上回っている。最近の争議は、地元住民による反鉱山運動や労使対立に留まらず、カノン税や利益配当の配分など限られたパイを巡っての地方対地方、住民対鉱山労働者といったペルー人同士の内部抗争的な複雑な様相に発展しつつあるのが特徴的である。
 2008年、最大の地域住民による争議は、ペルー南部Moquegua、Tacna両県において、6月以降、断続的に発生したカノン税の配分を巡る抗議行動である。
 抗議行動は、先ず、Moquegua県で発生した。事の発端は、Southern Copper社が操業しているMoquegua県のCuajone銅山とその南に隣接するTacna(タクナ)県のToquepara鉱山における2007年の銅鉱石生産量がほぼ同量であったにも拘わらず、政府が示した2008年のカノン税の交付額が、Moquegua県:225百万N.Soles(約80百万US$)、Tacna県:715百万N.Soles(約255百万US$)と3倍以上の開きがあるとして、Moquegua県政府が適正な配分を要求、これが引金となり、2万人規模の暴動に発展した。デモ隊は、幹線道路パン・アメリカン・ハイウェイの封鎖や投石、車両放火を繰返し、デモ鎮圧に出動した警察との衝突で約80名の負傷者が出たほか、Southern Copper社の鉱山施設の一部襲撃や鉱山アクセス道路の封鎖などを行ったため、一時的に供給不安が拡がり、銅価にも影響した。
 その後、政府は、複数県で鉱山操業を行う企業は鉱山毎に会計処理を行い、これを基にカノン税を配分する内容の“カノン税改正法案”を国会に提出し、11月、成立した。
 これに対し、Moquegua県は歓迎の意向を示したが、Tacna県は、自分達への配布額が減らされるとして、同改正法案の撤回を求めて大規模な抗議行動を実施、暴徒化した人々がTacna県庁に放火したほか国税庁事務所、Apra党事務所、複数の商店の襲撃、更には、Moquegua県への上水路を破壊するなどエスカレートし、45人の負傷者と64人の逮捕者が出た。このため、政府は、11月5日、Tacna県に30日間の非常事態宣言を発するに至った(現在は沈静化)。
 国会では両県のカノン税を巡る争議は多大な財源を持つ豊かな県同士の争いであるとし、両県とも、配布されたカノン税の利用率は共に20%に満たないという現実を直視すべきであるとの批判の声が上っている。

6. 全国鉱山労働者ストの発生
 2008年も、Cerro Verde銅山、Shougang鉄鉱石鉱山、Oroya銅・鉛・亜鉛製錬所などで断続的に労働者ストが発生したが、最大の労働争議は、6月に発生した利益配当を巡る全国規模の鉱山労働者ストであった。
 これは、利益配当金上限の撤廃、早期退職制度や年金制度の確立など、労働環境や労務制度の改善を求めたストで、2007年も、5月及び11月に全国規模の鉱山労働者ストが発生した。2008年に入ってからも、鉱業労働者連盟は、国会内での法案審議が一向に進展しないことに業を煮やし、法案の早期成立を求めて6月30日、無期限ストを強行し1週間続いた。参加労働者数の比率について、エネルギー鉱山省は、Shougang 70%、Antamina 60%、Southern Copper社90%であったが、Cerro Verde、Tintaya両銅山及びYanacocha金山ではストは実施されず、生産への影響は限定的と発表した。
 本法案のポイントは、利益配当対象を正社員だけでなく派遣労働者に拡大すること、労働者1人当りの年間利益配当上限を現在の18か月分から80か月分に引上げることなどである。現行法においては、鉱山の利益の内、8%を労働者に配当することが規定されているが、労働者への配当後の余剰額については、鉱山が立地する地方政府に配当し、当該県内のインフラ事業に充当することになっている。
 これに対し、鉱山が立地する地方の県知事や地方出身の国会議員らは、県に対する余剰利益の配当機会が失われることを理由に本法案に対して強く反対している。6月には、Ancash(アンカッシュ)県知事の呼掛けで、本法案反対の意思表示をするために、同県のパン・アメリカン・ハイウェイの一部区間において道路封鎖を強行するなどの抗議行動が行われた。
 このように、本法案を巡っては、単に労働者対企業、労働者対国といった対立だけでなく、鉱山労働者と地方政府・地域住民との新たな対立を生む問題もはらんでいる。法案成立までには、なお、紆余曲折が予想され、その審議の進展状況によっては、再び、全国規模の鉱山労働者ストが再発する可能性がある。

7. 電力供給不足問題が顕在化
 ペルーでは、昨今の経済発展に伴い、国内の電力需要が予想以上に増加(2007年10%増、2008年12%増の見通し)しており、供給設備増強が追い付かないため、深刻な電力不足に陥る懸念が拡がっている。加えて、電力供給の約半分を占める水力発電は、降雨量の減少で発電量が低下傾向にあり、天然ガス発電も頭打ちの状況にある。このような中、8月に一時的ではあるが、鉱山地帯への電力供給が停止し、鉱山生産に少なからず影響を与えた。
 エネルギー鉱山省は、今後7年間に亘る鉱山開発プロジェクトで、2,600MWの追加的電力が必要であるとの見解を示している。また、ペルー中銀によると、2008年から10年間に予測されるペルーの経済成長を支えるには、2018年までに新たに5,500MWの電力が必要になるとの見通しであるが、既存の電力拡張計画では2008~2010年間までの発電増量は826MWに過ぎないと警告している。このため、Southern CopperやBuenaventura等鉱山会社による発電事業への投資計画が相次いでいる。

8. ペルー、石油鉱区入札を巡る汚職事件で、エネルギー鉱山大臣が辞任
 Perupetroが、9月に実施した石油鉱区入札において5鉱区を落札したDiscovery Petroleum(ノルウェー)が、PerupetroのQuimper理事に対して贈賄し落札の便宜を受けていたことを証拠付ける会話の録音が報道されたことを受け、Garcia大統領は10月5日、PerupetroのQuimper理事を更迭、Perupetro-Discovery間の契約を破棄した。また、Discovery Petroleum社のパートナーとして入札に参加したPetroperuのGutierrez総裁及びValdiviaエネルギー鉱山大臣も引責辞任した。
 Garcia大統領は一連の不正及び汚職を激しい調子で批判、役人の汚職は許されず法に従って断固とした措置を取るべきだとし責任者の逮捕投獄を訴えた。なお、Valdivia大臣は不正への関与を否定しつつ、Quimper元理事を、交友関係を理由にPerupetro理事として任命したことを認める発言を行った。
 一連の騒動は、これだけで収まらず、野党及び国会が、与党APRA党員が関与した汚職事件として政府への批判を高める中、Castillo首相の関与も指摘され、9日、内閣は総辞職する事態に発展した。
 なお、新エネルギー鉱山大臣は、元エネルギー鉱山大臣顧問(フジモリ政権時)で、世銀のエネルギー専門家であるPedro Sanchez Gamarra氏が就任した。同氏は、San Antonio de Abad大学出身の電気技師で、ペルー経営大学院MBA、ワシントン大学国際政治修士を取得。現在、ペルー国内では電力供給問題が大きな課題となっており、石油入札の不正防止と併せ、その手腕が期待される。

9. 鉱業政策面での変更点
 2008年は、鉱業政策を巡る大きな変更は少なく、[1]前述したカノン税配分に伴う法改正、[2]探鉱許認可に伴う環境規則の改正、[3]鉱区保有年数の制限等が主なものであった。
 エネルギー鉱山省は、4月、環境問題や地元住民とのトラブルを未然に回避するため、環境対策や地元住民との合意形成の徹底などを求めた探査許認可に伴う環境規則を改正した。同省によると、同時に、行政手続きの簡素化・迅速化を図ったものと説明しているが、実態は、省内の実施体制、人材不足により、審査が大幅に遅れ、運用面での問題が露呈している。
 6月には、鉱区の流動化を促すため、今まで無期限であった鉱区保有年数を最大20年に制限する内容の法令を発令した。これは、鉱区取得の翌年から起算して10年満了時までに最低生産を履行できない場合、11年目から15年目まで鉱区1haにつき350N.Soles(約120US$;最低生産額の1/10)に相当する罰金が課せられるもの。不可抗力による最低生産不履行が証明可能な場合は、5年間の延長が可能(再延長は不可)。なお、既に取得済鉱区に関しては、2009年1月1日から適用されることとなっている。
 8月、野党より、余剰利益税法案が提出された。内容は鉱山企業の所得20%を余剰利益税とし、地方の貧困地区を優先する投資プロジェクトを実施するもの。これについて、エネルギー鉱山省のIsasi鉱山次官は、一部の政党が支持しているだけで、仮に成立したとしても法的安定契約を締結している大企業は支払いの対象とはならず、中小企業に皺寄せが行くとして、合理性が無く、本法案が成立する可能性は低いと強調している。
 一方、カナダのシンクタンク・Fraser Institute社によると、2008年のペルーの鉱業政策指標ランキングは、68か国中、28位(54.1点)となり、2007年の52位から大きく上昇した。
 同レポートは、ペルーが政治的に安定し、より魅力的な投資対象国となったことがランキングの上昇に繋がったとしている。

10. 中国、ブラジルなど新興国の鉱業投資が活発化
 2008年は、ペルー鉱業において中国、ブラジルといった新興国の存在感が一層強まった1年であった。
 5月、ペルー大統領府にて、Centromin(旧鉱山公社)からPeru Copperに対するToromocho銅プロジェクトの開発権移譲契約が、Garcia大統領と中国アルミ業公司(CHINALCO)のXiao Yaqing社長との間で取交わされた。本プロジェクトは、現在環境影響評価を実施中であり、2009年に鉱山建設を開始、2012年に操業開始の予定で、投資総額は2,152百万US$に昇る見込み。同鉱床の埋蔵量は1,526百万t、粗鉱日産量117,000t、マインライフ36年と発表。更に、11月のAPECでリマを訪問した胡錦濤国家主席は、同プロジェクトに対し、中国輸出入銀行から20億US$の融資決定を表明した。
 また、ペルー最大の亜鉛製錬所Cajamarquillaを保有するブラジルVotorantimは、2007年、1億US$が投じられた第1期拡張工事(生産量:130千t→160千t)に続き、4億US$を投じて年間320千tへ生産能力を倍増する第2期拡張工事に着手した。副産物として年産76tのインジウムが生産される予定で、2009年Q1から生産が開始される。同社は、また、亜鉛鉱石の安定確保に向け、Milpo社の株式を買増し、Atacocha鉱山の買収、亜鉛探鉱案件の参入等、ペルーでの鉱山開発活動を活発化させている。
 さらに、ブラジルValeが進めているBayovarリン開発プロジェクト(ペルー北西部Piura県)で、9月、Garcia大統領列席のもと、竣工式が行われた。今後479百万US$を投じ、2010年に、年間3.9百万tのリン生産を開始する予定。なお、本鉱床の周辺部にはウラン資源のポテンシャルも期待されており、Valeはウラン開発に向けた調査も実施中とされる。

11. 日本との資源外交が活発化
 2008年は、日本、ペルー両国間の首脳ベースの交流や、資源関係者の頻繁な往来など資源外交が活発に繰広げられた1年であった。
 3月、Garcia大統領が訪日し、福田前総理との経済や環境分野の協力を盛込んだ覚書の締結、更に、11月のAPECでは、両国首脳による投資保護協定が調印されるとともに、麻生総理から、日本・ペルー経済連携協定(EPA)についても、日本政府として前向きに検討する旨発言があるなど、今後、両国の経済関係が一層発展・緊密化する大きな足掛りができた年であった。
 また、資源関係では、2月にJOGMEC掛札前理事長のペルー訪問を皮切りに、Gamioエネルギー次官(2月)、Valdiviaエネルギー鉱山大臣(3月)、PerupetroのSaba総裁(6月)、Isasi鉱山次官(9月)と高官・要人の来日が相次ぎ、12月には、JOGMEC藤田副理事長がペルーを訪問し、Isasi鉱山次官との間で鉱害政策専門家派遣に関する協定書を締結するなど、両国資源関係者が頻繁に往来した。なお、本協定書の合意内容は2009年4月から2年間、JOGMECからエネルギー鉱山省に鉱害行政アドバイザーを派遣するというもので、同アドバイザーの主な任務は、鉱害関連法整備や鉱害防止戦略プラン作成に向けた助言、組織・人材の強化のほか、閉山計画書の審査への助言、JOGMEC・エネルギー鉱山省間のセミナーや研修等の実施である。日本にとって、銅・亜鉛などベースメタル資源供給国として重要なペルーにおいては、現在、休廃止鉱山等を発生源とする鉱害対策が急務となっており、今回の協力により、資源分野における両国関係が、より密接なものに発展することが期待される。

12. おわりに
 右肩上がりで推移してきたペルー鉱業も、世界経済の後退、金属価格の大幅下落により、暗転する兆しが見られる。当面、探鉱開発プロジェクトの淘汰、新たな参入・合併の動き、中小鉱山の休・閉山など、鉱業活動後退の流れは避けられそうにない。加えて、鉱山会社の大幅な収益減により、カノン税やロイヤルティなど地域に回る税収が大幅に縮小することが予想されるため(Sanchezエネルギー鉱山大臣は、2009年に還元される鉱業カノン税やロイヤルティは、前年比でおよそ50%の減少となる見通しを示している)、これが火種となって新たな反鉱山運動を誘発する可能性もあり、鉱山労働者の大量解雇問題と併せて、大きな社会問題に発展する懸念もある。
 一方で、新たな鉱山開発ビジネスに参入しようとする日本企業にとっては、探鉱開発の権益取得価格の下落や円高傾向を追風に、足元のピンチを新たな権益獲得のチャンスと捉える声も多く聞かれる。JOGMECとしては、こうした日本企業への技術的・資金的支援を強化していく方針であるが、いずれにしても、大きな転換期となるはずの2009年のペルー鉱業から目が離せない。

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