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報告書&レポート

2009年3月19日 リマ事務所 西川信康報告
2009年14号

ペルー:2008年の鉱産物生産・輸出動向-生産は堅調、輸出はQ4に失速-

 2月、ペルー・エネルギー鉱山省から、2008年の鉱産物生産量の速報値が発表された。これによると、2008年9月の金融危機に端を発した世界経済の悪化にも拘わらず、鉱山生産量は、堅調に伸び、銅、亜鉛などは過去最高を記録したほか、金も、主力のYanacocha金山の生産能力拡大により、3年振りに増加した。一方、2008年の鉱産物輸出額は、7.7%増と高い成長を持続したものの、2008年9月以降の金属価格急落の影響で、Q4は、大幅なマイナスに転じた。本稿では、ペルーにおける2008年の鉱産物生産・輸出動向及び今後の生産見通しについて報告する。

1. 2008年の鉱産物生産量
(1)鉱石生産量
 エネルギー鉱山省によると、ペルーの2008年の鉱石生産量(表1参照)は、銅が対前年比6.5%増の1,268千t、亜鉛が同11.0%増の1,603千t、鉛が同4.8%増の345千tに拡大し、いずれも過去最高を更新した(図1)。また、2008年大きく落ち込んだ金生産量も、主力のYanacocha金山の生産能力拡大等により、同5.7%増の179.9tと3年振りに増加に転じた。その他の金属では、銀が前年比5.3%増の3,686t、錫は同0.05%増の39千t、モリブデンが同0.4%減の17千tであった。
 また、月別の銅、亜鉛、金生産量を前年同月比で見ると(図2参照)、銅は8月に前年同月比0.85%減、10月に同5.8%減、亜鉛は7月に同1.3%減、金は、3月に同13.9%減、12月に同14.9%減等、一時的に前年同月を下回る月はあったものの、総じて堅調で、特に亜鉛は、8月以降は、二桁成長を続けているのが特筆される。
 なお、2008年世界ランキングでは、銅が前年の第2位から米国に抜かれ、第3位に下がったが、その他の金属は前年順位をキープした。

表1. ペルー:鉱石生産量(2008年)
 鉱種 2008年ペルー生産量 2007年ペルー生産量 増減 2008年世界生産量 2008年ペルー世界シェア 2008年世界順位(07年順位)
 銅(千t) 1,267.9 1,190.3 6.5% 15,531.9 8.2% 3(2)
 亜鉛(千t) 1,602.6 1,444.4 11.0% 12,069.3 13.3% 2(2)
 鉛(千t) 345.1 329.2 4.8% 3,884.3 8.9% 4(4)
 金(t) 179.9 170.2 5.7% 2,203.7 8.2% 5(5)
 銀(t) 3,685.9 3,501.5 5.3% 19,396.8 19.0% 1(1)
 錫(千t) 39.0 39.0 0.05% 330.5 11.8% 3(3)
 モリブデン(千t) 16.7 16.8 -0.4% 214.9 7.8% 3(3)
〔出典:エネルギー鉱山省〕

図1. ペルー:銅、亜鉛、金山生産量の推移
図1. ペルー:銅、亜鉛、金山生産量の推移

図2. ペルー:2008年銅・亜鉛・金の月別生産量の前年同月比
図2. ペルー:2008年銅・亜鉛・金の月別生産量の前年同月比

銅(表2参照)
 ペルー最大のAntamina鉱山で前年比4.9%増の358千tに達した他、2006年11月から精鉱生産を開始したCerro Verde鉱山が前年比18.3%増の324千tと大きく生産を伸ばし、ペルー銅生産拡大の大きな原動力となった。一方、ペルー産銅大手のSouthern Copper(Grupo Mexico系)のCuajone鉱山は前年比7.3%増と初の20万t台を記録したものの、同社Toquepara鉱山は前年比16%減、さらに、XstrataのTintaya鉱山も同7.3%減と大きく落込み、主要5鉱山の中で、明暗を分けた。

亜鉛(表3参照)
 ペルー最大のAntamina鉱山で、前年比18.8%増の383千tと過去最高を記録した他、2007年に操業を開始したCerro Lindo鉱山が、生産を大きく伸ばし、これら2鉱山が亜鉛生産拡大の牽引役となった。一方、ペルー第2位のIscaycruz、第3位のCerro de Pasco、第4位のColquijircaといった大手鉱山は、いずれも、前年割れし、振るわなかった。なお、我が国企業(三井金属鉱業、三井物産)によって40年間操業を続けているHuanzala鉱山の亜鉛生産量は30,050t(前年比4.5%増)、また、同鉱山近傍にあり、2006年3月に誕生したPallca鉱山は11,655t(同23.7%減)であった。

金(表4参照)
 主力のYanacochaが生産能力の拡大により、前年比15.5%増の56.2tと大きく回復したことに加え、2005年に誕生したペルー第2位のAlto Chicamaも8.2%増の36.5tと順調に生産を伸ばした。一方、第4位のPierinaは、鉱量枯渇に近いこともあり、23%減の12.5tと大幅に落込んだ。

(2)地金生産量
 2008年のペルーの地金生産量は、Oroya製錬所を除き、いずれも好調であった(表5)。銅については、ペルー最大のIlo製錬所で、前年比40.5%増の248千tに回復した他、亜鉛についても、Cajamarquilla製錬所で同22.5%増の147千tと過去最高を記録した。また、錫は、Funsur製錬所で同7.9%増の39千tであった。これに対し、Oroya製錬所では、銅が同9.3%減、亜鉛が2.2%増、鉛が2.2%減に留まった。

表2. ペルー:上位10銅山生産量(2008年)
順位 鉱山名 操業企業 2008年生産量(t) 2007年生産量(t) 増減
合計  
精鉱 SxEw
1  ANTAMINA BHPBilliton 33.75%、Xstrata 33.75%、Teck Cominco 22.5%、三菱商事10% 358,180 358,180 0 341,324 4.9%
2  CERRO VERDE Freeport 53.6%、Buenaventura 18.2%、住友金属鉱山16.6%、住友商事4.2% 324,172 235,943 88,229 273,960 18.3%
3  CUAJONE Southern Copper 200,782 196,130 4,652 187,090 7.3%
4  TOQUEPALA Southern Copper 144,995 114,148 30,847 172,570 -16.0%
5  TINTAYA Xstrata 110,770 83,506 27,264 119,540 -7.3%
6  COBRIZA DOE RUN 20,685 20,685 0 18,772 10.2%
7  CONDESTABLE CONDESTABLE 20,663 20,663 0 15,592 32.5%
8  CERRO LINDO MILPO 9,731 9,731   2,682 262.8%
9  COLQUIJIRCA BROCAL 8,984 8,984 0 3,385 165.4%
10  CERRO CORONA GOLD FIELD 7,675 7,675 0 0
  小計   1,206,637 1,055,645 150,992 980,800 23.0%
   その他   61,230 55,445 5,785 209,474 -70.8%
  総計   1,267,867 1,111,090 156,777 1,190,274 6.5%
〔出典:エネルギー鉱山省〕

表3. ペルー:上位10亜鉛鉱山生産量(2008年)
順位 鉱山名 操業企業 2008年生産量(t) 2007年生産量(t) 増減
1  ANTAMINA BHP Billiton 33.75%、Xstrata 33.75%、Teck Cominco 22.5%、三菱商事10% 382,842 322,367 18.8%
2  ISCAYCRUZ .LOS QUENUALES(Glencore) 175,184 175,620 -0.2%
3  CERRO DE PASCO VOLCAN 136,104 149,821 -9.2%
4  COLQUIJIRCA EL BROCAL 85,111 91,264 -6.7%
5  ANIMON CHUNGAR 84,986 69,070 23.0%
6  CERRO LINDO MILPO 78,272 23,851 228.2%
7  SAN CRISTOBAL VOLCAN 77,883 70,083 11.1%
8  ATACOCHA ATACOCHA 61,716 59,375 3.9%
9  EL PORVENIR MILPO 54,495 66,233 -17.7%
10  SAN VICENTE MOROCOCHA 39,222 37,954 3.3%
  上記計   1,175,815 1,065,638 10.3%
   その他   426,782 378,723 12.7%
  総計   1,602,597 1,444,361 11.0%
〔出典:エネルギー鉱山省〕

表4. ペルー:上位10金山生産量(2008年)
順位 鉱山名 操業企業 2008年生産量(kg) 2007年生産量(kg) 増減
1  YANACOCHA Newmont 51.35%、Buenaventura 43.65%、IFC 5% 56,196 48,634 15.5%
2  ALTO CHICAMA BARRICK MISQUICHILCA 36,546 33,774 8.2%
3  M.D.D MADRE DE DIOS 16,708 16,373 2.0%
4  PIERINA BARRICK MISQUICHILCA 12,450 16,176 -23.0%
5  ORCOPAMPA BUENAVENTURA 8,274 8,292 -0.2%
6  SANTA ROSA-COMARSA SANTA ROSA 5,237 5,511 -5.0%
7  HORIZONTE HORIZONTE 5,162 4,838 6.7%
8  ACUMULATION TUCARI ARUNTANI 4,601 1,405 227.5%
9  RETAMAS AURIF.RETAMAS 4,323 4,053 6.7%
10  LA PODEROSA DE
 TORJILLO
PEDPROSA 2,810 2,154 30.5%
  小計   152,307 141,210 7.9%
   その他   27,563 29,026 -5.0%
  総計   179,870 170,236 5.7%
〔出典:エネルギー鉱山省〕

表5.ペルー地金生産量(2008年)
製錬所 操業企業 2008年生産量(t) 2007年生産量(t) 増減
 銅 ILO SOUTHERN COPPER 248,368 176,837 40.5%
OROYA DOE RUN 53,831 59,339 -9.3%
CAJAMARQUILLA VOTORANTIM 1,635 1,543 6.0%
合計   303,834 237,719 27.8%
 亜鉛 CAJAMARQUILLA VOTORANTIM 146,884 119,885 22.5%
OROYA DOE RUN 43,440 42,490 2.2%
合計   190,324 162,375 17.2%
 鉛 OROYA DOE RUN 114,259 116,774 -2.2%
 錫 FUNSUR MINSUR 38,865 36,004 7.9%
注)銅については、SxEw生産分を除く。
〔出典:エネルギー鉱山省〕

2. 鉱産物輸出
 エネルギー鉱山省によれば、ペルーの2008年の鉱産物輸出額は前年比7.7%増の186.6億US$に達し、鉱産物が占める割合は全輸出量の59.0%と前年とほぼ同様の比率を維持した(図4)。内訳は、最大の鉱産物輸出品目である銅が、前年比5.8%増の76.6億US$、次いで、金が同34.4%増の55.9億US$、亜鉛が同42.1%減の14.7億US$で、この3鉱種で鉱産物全体の約8割を占めた。
 しかしながら、月別で見ると、6月以降、急速に伸び率が鈍化し、特に金融危機による金属価格が急落した影響でQ4は連続して、大幅な前年比割れになり、2002年から拡大を続けてきた鉱産物輸出に急ブレーキがかかった状況に陥った。
 一方、2007年に飛躍的に拡大した我が国におけるペルーからの銅・亜鉛精鉱輸入量は、2008年も高水準を維持した。(図5、銅:前年比8.7%増の769,766t、亜鉛:同3.6%減の345,516t、いずれも精鉱量)。これにより、我が国精鉱輸入相手国として、ペルーは、銅は前年の第3位から、インドネシアを抜いて第2位へ、亜鉛はトップをキープし、ペルーのベースメタル供給国としてのポジションが一層向上した(図6)。

表6. 鉱産物輸出
鉱種 2007年輸出額 2008年輸出額 増減 2007年輸出量 2008年輸出額 増減
 銅 7,205 7,663 5.8% 1,121 1,243 10.9%
 金 4,181 5,588 34.4% 5,927 6,418 8.3%
 亜鉛 2,539 1,467 -42.1% 1,270 1,452 14.3%
 銀 538 595 10.7% 40.3 39.7 -1.5%
 鉛 1,033 1,136 9.9% 417 525 26.0%
 鉄鉱石 286 385 34.8% 7,170 6,840 -4.6%
 錫 507 695 36.9% 35.3 39.8 12.8%
 モリブデン 982 1,079 10.0% 16.1 18.3 13.6%
 その他 51 48 -5.1%      
 鉱産物合計 17,328 18,656 7.7%      
 輸出額総計 27,956 31,594 13.0%      
〔出典:エネルギー鉱山省〕
輸出額:百万US$ 輸出量:千t(但し、金、銀は千 oz)

図3. 2008年月別鉱産物輸出額と前年同月比率の推移
図3. 2008年月別鉱産物輸出額と前年同月比率の推移

図4. ペルーの輸出額推移
図4. ペルーの輸出額推移

図5. 日本向け銅精鉱及び亜鉛精鉱量の推移
出典:WBMS
図5. 日本向け銅精鉱及び亜鉛精鉱量の推移
図6. 我が国銅、亜鉛精鉱輸入相手国シェア(2008年)
出典:WBMS
図6. 我が国銅、亜鉛精鉱輸入相手国シェア(2008年)

表7. ペルー:主要鉱山会社2008年Q4業績 (金額単位:百万US$)
企業名 売上高 対前年比 純利益 対前年比 売上高利益率
 Southern Copper 449.7 -65.3% -124.7 -27.7%
 Yanacocha 339.0 -12.9% 78.7 -29.40% 23.2%
 Shougang 317.0 25.3% 29.2 86.30% 9.2%
 Buenaventura 165.2 -31.0% -6.1 -3.7%
 Minsur 120.3 -18.0% 26.4 -39.50% 21.9%
 Volcan 88.4 -64.0% 24.6 -69.30% 27.8%
 El Brocal 30.5 -55.4% -0.5 -1.6%
 Milpo 25.2 -56.3% -27.1 -5.30% -107.5%
 Atacocha 9.8 -74.3% -70.0 -715.7%

3. 今後の生産見通し
 世界的な景気後退が進む中、ペルーの鉱産物生産は、現在のところ、堅調に推移している。銅については、AntaminaやCerro Verdeなどの大型鉱山は、金融危機以降も、増産傾向を維持している。金についても、金価格が独歩高で推移していることもあり、順調に生産を伸ばしている。一方、亜鉛については、ペルー最大のAntamina鉱山では増産維持(当面、亜鉛品位の高い鉱床帯を採掘する計画)の方向ではあるものの、亜鉛生産の多くを占める中小鉱山の中には、労働者を解雇し、生産量を縮小している鉱山も出始めている。今後、価格低迷が長期化すれば、一層の生産縮小、操業休止に追い込まれる鉱山が相次ぐ可能性が懸念されている。さらに、モリブデンについては、Cerro Verde鉱山で、Q2以降、生産を一時停止する方針が明らかにされており、2009年の減産は避けれらない状況となっている。
 2009年のペルー鉱業の展望について、Sánchezエネルギー鉱山大臣は、「総じて、鉱山生産量は増加傾向を持続するものの金属価格の下落分を補うほどの規模にはならない。最大の金属需要国である中国経済は減速しているが、依然として金属需要は底堅い。また、金山がペルー鉱業を下支えしていくことになり、決して悲観すべきではない。」と述べている。
 また、今後の投資動向について、同大臣は3月、カナダのトロントで開催されたカナダ探鉱開発協会総会(PDAC)で、「国際的に経済が悪化する状況の中、ペルーに対する鉱業投資は今後も継続する見通しである。投資家はより慎重に投資先国を選んでおり、ペルーが絶好の投資先として捉えられている。ペルーの鉱業ポテンシャルは依然健在である。」とアピールした。
 エネルギー鉱山省の試算では、2009年の鉱業投資額は、2008年の2倍の27億8,000万US$、2010年は42億5,200万US$、2011年に30億1,300万US$となり、今後3年間で100億US$に達すると予想している。これらの投資額は、ToromochoやGalenoの銅開発プロジェクトのほか、Antamina(銅、亜鉛)、Shougang(鉄鉱石)、Toquepara(銅)、Cuajone(銅)等の鉱山拡張プロジェクト、また、Ilo(銅)やCajamarquilla(亜鉛)の製錬所拡張プロジェクトなどが対象となっている。
 一方で、鉱山会社の業績が軒並み急激に落込んでいるため(表7、なお、Fluryペルー鉱業協会会長は、金融危機の影響で、鉱山企業の売上高は約10億US$減少したと指摘)、投資を控える動きも顕在化している。具体的には、Southern CopperのTia Maria、Los Chanca銅開発プロジェクト、Cerro Verdeの第3次拡張事業、Magistral(Inca Pacific)、Canariaco(Candente Resources)などの大型銅山開発プロジェクトが、延期となる模様。さらに、グラスルーツ段階の探鉱プロジェクトへの打撃は深刻で、2008年9月時点ではジュニア企業を中心に約200件の探鉱プロジェクトが展開されていたが、現在その数は40~50件に減少していると言われている。
 また、企業業績の悪化は、地方財源の縮小に繋がり、Sánchezエネルギー鉱山大臣は、2009年に地方に還元される鉱業カノン税及びロイヤルティは、前年比でおよそ50%の減少となる見通しを示している。さらに、鉱山労働者の解雇も相次いでおり、鉱山冶金鉄鋼業労働者連盟によると、2008年10月以降、鉱山従業者のうち臨時雇用者を中心に約8,000人が失業し、正規従業員にも休暇を命じるケースが増加しているとされる。こうした社会不安が新たな反鉱山運動や労働争議を誘発するとの懸念も指摘されている。
 このように踊り場に差し掛かったペルー鉱業にとって、2009年は、まさに正念場の年と言え、その行方が大いに注目される。

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