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報告書&レポート

2009年4月16日 ロンドン事務所  フレンチ 香織
2009年20号

欧州化学物質規制(REACH)の動向- 鉱石・精鉱の定義改訂草案と中間産物について -

 

 REACHとは、欧州域内で化学物質を製造・輸入している企業あるいは非欧州加盟国が指定した”唯一の代理人(Only Representative)”に対して、化学物質を登録する義務を課し、その登録によって収集されたデータを、欧州議会が設置したECHA(欧州化学品庁)が管理・評価することによって、人の健康または環境に悪影響を及ぼす危険物質の使用を警告・制限する規則である。REACHは2007年6月1日に施行され、金属及び金属化合物にも適用されることから、JOGMECは、これまでREACHに関する動向を文末の参考資料のとおり報告している。
  2008年から2009年現在までのECHAの主な出来事は、REACH予備登録の開設(2008年6月1日~12月1日)、Annex V(登録義務の免除)及び、廃棄物ガイダンスの改訂草案の公表(2008年11月)、高懸念物質(SVHC)に関する認可リストの化学物質候補7種の公表(2009年1月)であった。なお、2009年に最も注目されているECHAの動向は、最初の認可リストの決定(2009年6月1日予定)と、REACH規制に含まれる危険物質のC&P (分類・ラベル表示)の進展である。
  本レポートでは、上記のAnnex V改訂草案に注目して、REACH登録対象外となる鉱石・精鉱の定義改訂草案と、それに対するコンソーシアムの見解、企業及び産業の動向について紹介する。


1. 背景 :REACH規制での鉱石・精鉱の条件付き免除

 「なぜ金属産業界がREACH規制の登録を受入れたのかは、無論義務化されたので強制的に従うしかなかったが、EUでは、人の健康及び環境に悪影響を与えるものを規制する方針が優勢となったからである」と鉛コンソーシアムのWilson博士は述べる。鉱石・精鉱は、化学組成が自然状態のまま、形態のみ変化した物質であり、欧州議会も当初、金属を考慮していなかったが、他の産業界との平等性を保つため、及び、欧州の確固たる基本方針である『全ての危険有害物から、人の健康と環境を保護する』ためにも、金属もREACH規制に適用するよう判断されたと考えられる。しかしながら、精鉱の多くは欧州域外から輸入されるため、国際的にも影響力が大きい。また、鉱石・精鉱は、種類が多く、生産鉱山毎に化学組成が異なることから、登録手続きの負担が大きい。よって、欧州非鉄金属協会(Eurometaux)、欧州鉄鋼連盟(EUROFER)、合金産業(EIMAC)を含む非鉄金属団体は、激しいロビー活動を行い、社会・経済的(Socio-Economical)な側面から断固と反論した。その結果、欧州議会は加盟国、欧州委員会との集中的な会議後、2005年12月に作成したREACH規制の付属書Annex Vには、『”Not Chemically Modified(物質の化学構造が変化しない)”であれば、鉱石・精鉱はREACHの登録を免除する』と定められた。結論、経済的な便益により、鉱石・精鉱はREACH登録義務の対象外となったが、全ての鉱石・精鉱が対象外とされなかった理由は、欧州議会には『全ての危険有害物から人の健康と環境を保護する』という確固たる基本方針があったからである。

2. REACHでの鉱石・精鉱の定義改訂:改訂草案には、処理方法の例を記載
 2006年12月30日に発行されたREACH規制の原文のAnnex Vでは、鉱物・鉱石・精鉱は『自然界に存在する物質』と定義され、危険物質指令(67/548/EEC)に該当せず、物質の化学構造が変化しない(Not chemically modified)場合には、REACH登録義務は免除される。しかしながら、“Not chemically modified”は、広範囲な定義であったため、Annex V改訂草案には、その処理方法の具体例が追記された。以下、2008年11月7日に公表された改訂草案から、重要な追記部を紹介する。なお、欧州議会は本草案をECHAに提出し、ECHAはEU加盟国及びステークホルダーと共に審査することになっている。

表1. REACH規制、Annex V(登録義務の免除)の改訂草案 (要旨の仮訳、順不同)
 REACH登録義務免除となる『自然界に存在する物質』とは、未加工の天然物質、または手動的、機械的もしくは重力的方法(例:破砕、篩分け、遠心分離、浮遊選鉱)によって加工された物質を意味し、化学構造が変化しない条件の下、水溶解、浮揚、水を利用した抽出、蒸留もしくは水分除去のための加熱による処理がなされた場合、またはあらゆる手段により大気中から抽出された物質を対象とする。

  “Not chemically modified”の物質とは、例えば不純物の除去など、たとえ化学的な加工、処理または物理的鉱物学変換を受けたとしても、物質の化学構造が変化しない物質をいう。 自然界に存在する物質が処理され、単離した加工物質の構造要素の1つでも化学反応が起これば、その単離物質はREACH登録の対象となる。よって、合成鉱物(Synthetic Minerals)は化学反応を起こすため、本免除に該当しない

  鉱石が、『自然界に存在する物質』の定義に記載されていない方法で処理された、または、処理後に物質の化学組成が変化する加工がなされた場合は、処理後の物質は、『自然界に存在する物質』と判断されず、登録が必要となる※1

  精鉱は、原則として破砕工程に始まり浮遊選鉱等により生産される。その工程は、選別(sorting); 磁力選鉱(magnetic separation); 静電選鉱(electrostatic separation); 破砕・磨鉱工程(preferential crushing, grinding and milling); 篩分け及び分級(sieving and screening); 高速水洗(hydrocycloning), ろ過(filtration), 浮遊選鉱(flotation)などからなる。機械工程及び/または浮遊選鉱(例:破砕、篩分け、遠心分離等)、または、不純物を取り除くためのその他の工程(例えば、リーチングまたは洗浄)で処理された後に、最終的に仕上がった物質の化学組成が変化しない場合は、原則としてREACH対象外とされる。

(出典:Annex V改定草案、p.12~p.17 http://ec.europa.eu/environment/chemicals/reach/pdf/com_rev_anx_V_guidance_en.pdf)

※1補足説明:『単離した物質の構成要素に化学反応が起こる例』

 例えば、鉄鉱石の縞状鉄鉱層(Banded Iron Formation(BIF))』は、磁鉄鉱(Fe2+Fe3+2O4)が主成分である。製鉄工程は、①フラックスが添加されて破砕・分級、更に②磨鉱処理を行う。ここまではREACH登録免除となる『自然に存在する物質』の定義に当てはまる。しかし、磁鉄鉱を金属鉄に製錬するためには、溶融還元製鉄法が利用され、磁鉄鉱(またはその他の鉄鉱石)に更にコークスが添加され、高炉内においては、以下の還元または酸化反応が生じることで金属鉄(Fe)となる。

圧縮空気を噴射、コークス投入:2C + O2→2CO
一酸化炭素(CO)は還元剤となる。
第一段階:3Fe2O3 + CO → 2Fe3O4 + CO2
第二段階:Fe3O4 + CO → 3FeO + CO2
第三段階:FeO + CO → Fe + CO2

  以上、加熱処理が水分を除去するためだけでなく、還元作用/酸反応によって、元の磁鉄鉱とは違う化学組成に変化したため、精製された金属鉄(Fe)は、『自然界に存在する物質』ではなくなり、REACH登録対象となる。

3. 金属産業団体の反応と対策:物質ID、C&Lに注目
 REACH規制の改訂草案には、産業界もコンサルテーションを受けていたためか、特に取り上げられておらず、大きな影響は無いと考えられている。Eurometauxは2008年4月、『化学物質構造の変化(Chemical Modification)が考えられる鉱石・精鉱の処理工程』の例を、以下のとおりに紹介している。このように、Eurometauxは、企業及び産業界に対して、『鉱石・精鉱がREACH対象かどうか不明な場合は、処理工程を段階毎に分けて、“case by case”でどの時点で化学反応が起こっているのかを確認すること』を勧めている。
 また、Eurometauxは、「鉱物の化学組成を明らかにすることは、現行の化学物質の分類(欧州のEINECS番号※2など)で定義されているよりも厳密である」と指摘する。よって、金属産業団体(Eurometaux、ICMM、Euromines等)は、2010年12月31日から欧州で適用されるGHS(化学品の分類及び表示に関する世界調和システム)のC&Lに向けても、有害な化学物質(鉱石・精鉱を含む)を優先的に、複雑な構造を有する化学物質の主成分、微量成分を把握し、物質ID(名前、ソース、処理法、成分、純度%、異性体または副産物を含む不純物の性質、主な不純物の成分%など)を明確化し、そしてC&Lも統一していくことを後押ししている。ただし、ICMMによれば、企業の期待度を上げ過ぎないようにするためと、より正確な情報を提供するために、現時点では、物質ID及びC&Lの研究成果に関する詳細情報を公開していない。
2 EINECS番号: 欧州共同体(EC)の委員会が定めたEINECS(European Inventory of Existing Commercial Chemical Substances)に記載された7桁の化学物質の固定番号である。この番号で、物質の一般情報(物質名、分子構造、詳述、C&L、リスクアセスメント等)が管理されており、物質の情報は、欧州委員会の共同研究センター(JRC)が公開している。

(JRC:http://ecb.jrc.ec.europa.eu/esis)

表2. 鉱石・精鉱の各処理工程における化学組成の変化 (推測)

鉱石・精鉱の処理工程

化学組成の変化

光学/機械選別(Optical/Mechanised Sorting)

 

なし

磁力/静電選鉱(Magnetic/Electrostatic Separation)

 

なし

重力または重選(Gravity or Dense Medium Separation)

 

なし

破砕、磨鉱、粉砕(Preferential Crushing, Grinding or Milling)

 

なし

分級、高速水洗または分級
(Screening、Hydrocycloning、Classification)

 

 

アグロメレーションまたはフロス浮選
(Agglomeration or Froth Flotation)

 

なし

乾燥または焼成工程(水分及び不純物を取り除くため)
(Drying [or calcination that results in removal of water & impurities only])

 

なし

造粒によるペレット化
(Pelletising by granulation only)

 

なし

不純物を取り除くためのリーチングまたは洗浄工程
(Leaching/Washing Processes to remove impurities)

 

なし

有価鉱物を抽出するためのリーチング工程
(Leaching Processes to extract the value-mineral)

あり

 

焼成によるペレタイジング(Pelletising with sintering)

あり

 

イオン交換、溶媒抽出または電解採取
(Ion Exchange, Solvent Extraction or Electro-winning)

あり

 

水性NaOHの加圧(Pressure Digestion in aqueous NaOH)

あり

 

焼成、焙焼、及び製錬
(Sintering, Roasting & Smelting)

あり

 

化学組成変化(例えばCO2排出など)を伴う焼鉱
(Calcination involving changes in the chemical structure(e.g. CO2 release))

あり

 

沈殿及び、ガス沈殿(Precipitation and gas precipitation)

あり

 

(出典:Eurometaux、2008年4月REACH Fact Sheet 『Not Chemically Modified』より)


4. コンソーシアムの反応と対策:変更無し、予備登録を薦める
 コンソーシアムも、改訂草案の公表後、何ら変化は見られない。ただし、コンソーシアムは金属産業団体と同様、会員企業に対して、”Not chemically modified”でない鉱石・精鉱を予備登録するよう薦めていた。これは、欧州での市場アクセスを保証するためである。また、コンソーシアムは、会員企業で構成されているため、大多数の会員企業の要請が無い限り、登録書類を準備する対象物質を増やすことは無い。たとえ変更があったとしても、会員企業の承諾及び、コンソーシアム内のTechnical Advisory Panelからの査定も必要となり、時間を多く要すると考えられる。
 例えば、亜鉛コンソーシアムは、欧州で製造または輸入される焼成(Sinter)/焼鉱(Calcine)で処理された精鉱(例えば、焼成された亜鉛精鉱[EINECS番号:273-776-3]、焼成された鉛亜鉛精鉱[305-411-1]、亜鉛製錬工程で発生する煙灰[273-760-6])の予備登録※3を薦めた。しかしながら、本会員企業のなかで、焼成(Sinter)/焼鉱(Calcine)手法で製錬された精鉱を、欧州域内で製造または輸入する企業は殆ど存在しないため、特別なケースと判断し、現時点では対象範囲(in scope)の物質と公表されているが、登録支援の対象としては、除外される可能性は高い。また、一般的な動向として、“Not chemically modified”と判断されない精鉱は、『中間産物※4』として、REACHの登録免除または軽減するケースが多く見られる。

3補足説明:『鉱石・精鉱に関する予備登録の結果』
  2008年12月19日にECHAから発表された予備登録リストは、今後ECHAによって見直しが継続され、リストは更新される予定である。よって、現時点では、予備登録リストに記載されているからと言って、REACHの登録が必要とは限らない。例えば、予備登録リストには、EurometauxがREACH登録免除として例示していた鉛鉱石・精鉱(EINECS番号:310-049-2)や、一般総称である『自然から生じる物質』(EINECS番号:310-127-6)』までもが含まれている。また逆に、Eurometauxが『Chemically Modified』と推測していた化学物質(例:鉄鉱石[焙焼&濃縮処理、EINECS番号:273-763-2])は、予備登録リストに記載されていなかった。

4補足説明:『中間産物』
  REACH原文Article3の(15)によれば、『中間産物』とは、別の物質(合成物)へ変換することを目的に、化学処理を行う際に使用または消費される物質である。よって、中間産物は原則として、最終的に仕上がった物質の中に含まれていない。例えば、次の図では、A、Bが『自然界に存在する物質』で、Cは、中間産物となる。(銅コンソーシアムでは、粗銅を『中間産物』として定義している。)

※表中の①:破砕~選鉱工程、表中の②:化学反応
5UVCB:組成が不明または不定の物質、複雑な反応生成物

中間産物には表3に示す三種がある。

表3.中間産物三種
①“Non-isolated intermediates(非単離中間産物)”
定義 『非単離中間産物』とは、合成工程において、反応槽またはその補助装置、次の化学反応工程へ送られるパイプなどの装置から、サンプリング以外の理由で意図的に取り除かれない中間産物である。
REACH義務 REACH登録は全免除とされている。
②“On-site isolated intermediates(現場で単離される中間産物)”
定義 『現場で単離される中間産物』とは、①の定義に該当せず、意図的に取り除かれた(単離した)物質で、同一の現場で、その中間産物の製造、または、その中間産物から他の物質への合成が行われる中間産物である。
REACH義務 「厳重に管理された環境」と証明した場合、REACHの登録が軽減され、また、認可、制限ともに対象外とされている。この軽減されたREACH登録に必要な内容は、利用可能な既存の情報(例えば、物質の定義、分類などの情報や、物理化学的性状/人の健康/環境に関する固有特性、使用法の概要及び、リスク管理の詳細など)の提示で、追加試験は要求されていない。
(詳細は付録Ⅰを参照)
③“Transported isolated intermediates(輸送される単離中間産物)”
定義 『輸送される単離中間産物』とは、①の定義に該当せず、意図的に取除かれた(単離した)物質で、他の現場との間で輸送または供給される中間産物である。
REACH義務 ②と同様、「厳重に管理された環境」と証明した場合、REACHの登録が軽減され、また、認可も対象外とされている。(本物質は、REACH『制限』の原文で、対象外の記載が無い。) ただし、1,000t以上の単離中間産物が輸送または他の現場へ供給される場合は、Annex Ⅶ(1t以上の量を製造または輸入する物質の標準情報要件)で必要とされている固有特性の全ての情報を追加する必要がある。 (詳細は付録Ⅰを参照)

5. REACH対象企業の反応及び対策~製造チェーンの確認、C&Lの通知
 企業も同様に、金属産業団体及び、コンソーシアムの支援の下に対応しているケースが多いので、本改定草案に対して、大きな反応は無い。
ただし、鉱石・精鉱が“Chemically Modified”であるか、”Not Chemically Modified”かに関係なく、いずれの場合も上流から下流までの金属が精製されるまでの工程や、各物質の生産量、種類、カテゴリーの特定を把握することが薦められている。これは、[1]2010年12月1日から適用されるGHSのC&L(分類・ラベル表示)と、[2]2014年6月1日までのCMR物質に関するAnnexⅴの再評価によるものである。

【[1] 2010年12月1日までに、C&Lの情報をECHAに通知する義務】
  REACHでも、既存データに基づくC&Lの提示が義務化されている。REACH原文のTitle XI(分類・ラベル表示のインベントリー)では、「登録の対象となる物質、危険物質指令(Directive 67/548/EEC)または危険な調剤に関する指令(1999/45/EC)に規定する濃度限界値を超えて調剤に含まれる物質を欧州域内で製造または輸入する企業は、2010年12月1月までに、既存入手可能データに基づく共通的に合意された分類・ラベル表示の情報を、登録手続きの一部または別途で、ECHAへ通知しなければならない。」と定められている。例えば、スウェーデンの金属生産企業Boliden(本社:Stockholm)は、表4のとおり、2010年12月1日までに銅、鉛、亜鉛の精鉱に対するC&Lの情報を提示すると発表している。また、REACH原文のArticle 113の(2)に定められているとおり、同一物質に対するC&Lが、企業によって相異する場合は、製造業者及び輸入者が、C&Lを統一するように最善を尽くすことが求められている。よって、Bolidenも表4のとおり、共同で通知を行う予定である。なお、C&Lに関しては、ICMM及びコンソーシアム(特にニッケル)が積極的にサポートしている。

  表4. Boliden社の鉱石・精鉱に関するREACH対応(2008年11月6日)

(出典:”Boliden REACH Product Table” 2008年11月)
【[2] 2014年6月1日までのCMR物質に関するAnnex Vの再評価】
 REACH原文のAnnex VまたはIVに記載されている物質は、REACH登録免除物質であるが、評価、認可、制限の段階では対象とされる。よって、鉱物・鉱石・精鉱も、ECHAが要請する場合は、それに応じて適当な情報を提出しなければならない。なお、REACH原文のArticle138の(1)に定められているとおり、CMR物質(発ガン性、変異原性、生殖毒性のある物質)の区分1または 2に分類される条件を満たす化学物質においては、危険物質指令(Directive 67/548/EEC)に応じて、優先的に、2014年6月1日までにCSR(化学物質安全性報告書)の必要性が再評価されることとなっている。この再評価の基準は、(a) CSRを作成する製造業者及び輸入者のコスト負担、(b) 供給チェーンまたは下流ユーザーとのコスト分配、(c) 人体の健康及び環境に対する利益である。また、REACH規制は、危険物質から市民 / 従業員の健康または環境を保護する必要があるため、危険物質として分類される化学物質を使用している企業は、予防策として、より危険性が軽減される物質への代用が求められている。
 その他、2007年6月のREACH施行より、危険物質とされている鉱石・精鉱は、有害性を正しく評価し、下流ユーザーから健康と環境に及ぼすリスクを保護するためのアドバイスを提供するSDS(安全データシート)を添付しなければならない。
(例:Vale社のSDS:http://www.valeinco.com/products/msds/default.aspx)

※6 【補足説明:安全性データシート(SDS)】
 安全性データには、以下の情報が必要とされ、また、10t以上の場合には、ばく露シナリオを添付しなければならない。なお、ばく露シナリオとは、物質のライフサイクルにおいてどのように製造され、使用されるか、そして製造者または輸入者が人及び環境へのばく露をどのように管理するか、川下ユーザーにその管理をどのように推奨するかを記載した内容である。
安全性データシート(Safety Data Sheet: SDS)に必要な情報

安全性データシート(Safety Data Sheet: SDS)に必要な情報

1.化学物質名及び会社情報
2.危険有害性の要約
3.組成・成分情報
4.応急措置
5.火災時の措置
6.漏出時の措置
7.取扱い及び保管上の注意
8.ばく露防止及び保護措置

 9.物理的及び化学的性質
10.安定性及び反応性
11.有害性情報
12.環境影響情報
13.廃棄上の注意
14.輸送上の注意
15.適用法令
16.その他の情報


6. さいごに:日本企業への影響

 日本企業では、欧州に鉱石・精鉱を年間1t以上直接輸出しているケースは殆ど無いと考えられるので、本Annex Vの改訂草案は、今のところ日本の金属産業界には直接的な影響はないと考えられる。ただし、成形品(Article)を製造するまでの製造チェーンの中に、日本の製錬金属が含まれている場合は、間接的な影響として、REACH登録技術書類の作成またはC&Lの提示のために、REACH対応企業から、化学物質の成分または使用法などが問われる可能性はある。

〔参考資料〕
・『鉱業界のCSRとEHS規制』(第3章、第4章:2007年6月発行)http://www.jogmec.go.jp/mric_web/report/restriction/restriction.html
・『欧州規制「REACH」と欧州金属産業界の動向』(JOGMEC金属資源レポート、2007年7月発行)http://www.jogmec.go.jp/mric_web/kogyojoho/2007-07/MRv37n2-08.pdf
・『欧州規制「REACH」と欧州金属産業界の動向2』(JOGMEC金属資源レポート、2007年9月発行)http://www.jogmec.go.jp/mric_web/kogyojoho/2007-09/MRv37n3-06.pdf
・『第11回EHSセミナー』(JOGMECカレントトピックス、2008年12月発行)
http://www.jogmec.go.jp/mric_web/current/08_85.html
・『欧州:ECHA(欧州化学物質庁)、REACH規制対象となる化学物質の予備登録リストを公開』
(JOGMECニュースフラッシュ2009年1月:http://www.jogmec.go.jp/mric_web/news_flash/09-03.html#22)
・『欧州:ECHA(欧州化学物質庁)、SVHC(高懸念物質)の使用認可リスト草案のパブリック・コンサルテーションを開設』
(JOGMECニュースフラッシュ2008年7月:http://www.jogmec.go.jp/mric_web/news_flash/08-27.html#35)
(JOGMECニュースフラッシュ2009年1月:http://www.jogmec.go.jp/mric_web/news_flash/09-03.html#23)
・REACH規制の原文p.305、Annex V (第2条(7)(a)に従う登録義務の免除) (欧州議会、2006年12月30日発行)
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/site/en/oj/2006/l_396/l_39620061230en00010849.pdf
・環境省REACH前文、本文、付随書仮訳
http://www.env.go.jp/chemi/reach/reach.html
・REACH規則の解説セミナー ~REACH規則の基礎~ (METIプレゼン資料、2008年5月)
http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/080612reach_kaisetu.pdf

・『GHS: Globally Harmonised System of Classification and Labelling of Chemicals』(ICMM、2008年6月発行)http://www.icmm.com/document/18
・『REACH pre-registration requirements』(ICMM、2008年6月発行)
http://www.icmm.com/document/286
・『Draft Guidance for Annex V And On Waste Published』(ECHA、2008年11月7日発行)
http://echa.europa.eu/doc/press/pr_08_41_guid_ann_v_waste_20081107.pdf
・『EM REACh Fact Sheets: Ore & Concentrate / Definition not chemically modified / Intermediates / Substance Identification』(Eurometaux,、2008年4月発行)
http://www.reach-metals.eu/index.php?option=com_content&task=view&id=45&Itemid=44
・『REACH-Timeline』(UK REACH Competent Authority、2009年1月発行)
http://www.hse.gov.uk/reach/resources/timeline.pdf
・『Guidance on Registration』(ECHA、2008年5月発行)
http://guidance.echa.europa.eu/docs/guidance_document/registration_en.htm?time=1237916315
・『Guidance for Intermediates』(ECHA、2008年2月発行)
http://guidance.echa.europa.eu/docs/guidance_document/intermediates_en.pdf
・『Boliden REACH product table』(Boliden、2008年11月6日発行)
http://www.boliden.com/www/en/bolidenen.nsf/(WebPagesByID)/
A5FFB7A0D730F100C125742B004F799E/$file/Boliden_REACH_product_table_(secured).pdf

〔付録〕『物質の一般登録と、中間産物の登録の比較』

 REACHでは、精鉱または金属製品が製造される工程で生成される物質の多くが『中間産物』と取り扱われている。よって、本付録では、中間産物の登録が、物質の一般登録と比べて、どれだけ軽減されているのかを下表に示す。なお、下表①、②、③は、METIのプレゼン資料『REACH規則の解説セミナー』(2008年5月)に基づいて、REACH規則を参照して、JOGMECロンドン事務所が中間産物の内容を追記したものである。なお、下表の空欄部に関しては、必須の情報提出ではないが、入手可能な既存の情報があれば提出することが薦められている。

先ず、一般登録に必須となる書類は、以下のとおりである。

[1] 第10条に示される技術一式文書(Technical Dossier)の項目
= 総合的な登録を目的とした情報
[2] 第12条に示される技術一式文書(Technical Dossier)の項目
= 生産量によって異なる登録内容
[3] 生産及び輸入量が10t以上の場合、化学品安全性報告書(Chemically Safety Report:CSR)の提出が求められている。

 上記[1]、[2]、[3]のなかで、中間産物の登録で必要な内容は以下のとおりである。

表[1]:第10条に示される技術一式文書(Technical Dossier)の項目
(総合的な登録を目的とした情報)

※1 『厳重に管理された環境と証明』できない場合、第10条の一般的な登録内容が必要である。
※2 使用方法の概要と、厳重に管理された環境で取り扱っている事を証明しなければならない。
※3 入手可能な既存データに基づく研究概要で、登録してから12年後以降に自由に利用されて良い
研究概要であれば、提出すべきとされている。

表[2]:第12条に示される技術一式文書(Technical Dossier)の項目
(生産量に応じて異なる登録内容で、製造/輸入量に応じた物理化学的性状、
人の健康への有害性及び環境影響情報)

※1 『厳重に管理された環境と証明』できない場合、第12条の一般登録の内容が必要である。

【表②の補足説明】:
・AnnexIX(100t以上の登録情報)~Annex X(1,000tの登録情報)は、登録時点で既存の情報があれば提出、無い場合は、試験計画を提出し、ECHAで試験実施の必要性を判断する。
・物理化学的性状については、その性状によって試験実施が不要な場合がある。また、有害性、生態毒性については、物質の用途、他の試験成果等によって試験実施が不要な場合もある。
・その他の関連情報も入手可能であれば提出する。

表[3]:化学品安全性報告書(CSR)
(テンプレート:http://guidance.echa.europa.eu/formats_en.htm

※1 『厳重に管理された環境と証明』できない場合、10t以上は一般登録の内容と同様となる。
※2 特にリスク管理の『取扱い及び保管上の注意』、『ばく露防止及び保護措置』情報が必要である。

【表[3]の補足説明】:
・化学品安全性報告書(CSR)は、CMRs、PBTs、vPvBsに関わらず、生産量10t以上の物質にのみ必要である。中間産物は、生産量・輸入量に関わらず、リスク管理の情報以外は不要である。

 以上、表[1]、[2]、[3]から一覧できるとおり、REACHで『中間産物』と定義されると、多くの登録項目が軽減されている。また、中間産物の登録は、1,000t以上の、輸送される単離中間産物でない限りは、入手可能な既存の情報に基づく情報提供となり、追加試験は必要とされていない。ただし、評価(Evaluation)段階において、情報が不足していると判断された場合は、必要に応じて、ECHAは企業に追加情報を要求する可能性があるので、全項目を理解しておくことが薦められる。

 
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