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報告書&レポート

2009年6月11日 ロンドン事務所 フレンチ 香織
2009年28号

ILZSG(2009年春季:定期会合)及び3研究会合同セミナー参加報告

 2009年4月22日午前、リスボンにてILZSG(国際鉛亜鉛研究会)の総会及び定期会合が開催された。以下、本稿ではその会合の概要について報告する。本研究会の会合には、ILZSG加盟18か国、EU本部、オブザーバー2か国(メキシコ、トルコ)、企業関係者で合計57名が参加した。本会合は、常任委員会、統計予測委員会、産業・アドバイザリー・パネル、環境経済委員会によって構成され、同日22日午後には3研究会合同の気候変動セミナーも開催された。なお、本会合での講演資料は、ILZSGの公式HPから入手可能である。
(http://www.ilzsg.org/generic/pages/list.aspx?table=document&ff_aa_document_type=P&from=1)

1. 鉛の需給予測(ILZSG統計予測担当官、Paul White氏)
1-1.鉛:2009年における需給予想の概要
(1)深刻な経済不況により増産計画は停滞し、2009年の世界鉱石生産は前年比6.3%減を予想。しかし、2009年の世界の地金供給は前年比約1%の微減地金需要も、自動車SLI (Starting Lightuing and Ignition)用鉛蓄電池の前年比約1%の微減を予想。
(2)2009年の需給バランスは2年連続で供給過剰で、37千tの供給過剰を予想。中国の貿易バランスは、2年連続で純輸入量となった。
(3)現時点での鉛のLME在庫は74千tと増加基調。LME価格も1,500US$/t台まで回復。

1-2. 鉛鉱石生産量
〔2009年はカナダ、豪州、ペルーの増産が停滞、全体的に前年比6.3%減〕
 世界の鉛鉱石生産量は2009年、前年比6.3%減の3,660千tと微減が予想された。これは、2008年後半からの経済不況による金属価格の低下が原因で、昨年10月の本会合で増産が注目されていた豪州、カナダ、ペルー等の鉱山増産の停滞によるものである(下記参照)。また、世界最大の鉛鉱石生産国である中国では、複数の小規模な鉛・亜鉛鉱山が閉鎖され、2009年は前年比8%減の1,420千tが予想されている。

※[2009年の生産損失(概算)]:
Hellyer(豪)7千t減、
McArthur River(豪)7千t減、
Rasp(豪)15千t減、
Potosi(豪)9千t減、
Handlebar Hill(豪)15千t減、
Caribou/ Restigouche(加) 20千t減、
Black Angel(グリーンランド)6千t減、
Galmoy(アイルランド)9千t減、
Rosaura(ペルー)20千t減、
Paragsha(ペルー)18千t減、
Iscaycruz(ペルー)10千t減、
Aljustrel(ポルトガル)17千t減、
Missouri鉱山(米)40千t減。

図1.鉛:鉱石生産(2008年、2009年予測)

1-3. 鉛地金生産量
〔2009年は世界全体で約1%の微減〕

2009年の世界鉛地金生産量は、前年比0.9%減の8,596千tと2001年以来初の減少が予想された。2009 年、欧州全体は同比4%減、米国は同比3.3%減、豪州は同比5%減、カナダは同比5%減、さらに日本は同比12.5%減が予測される。一方、世界第一位の中国は2009年、3,310千tと前年比3.2%の増加が予想され、その他、インドは同比4.3%増、カザフスタンは同比5.5%増、韓国は同比7.4%増と発表された。
図2.鉛:地金生産(2008年、2009年予測)

 
1-4. 鉛地金消費量
〔SLI用鉛蓄電池の交換による需要継続で、世界全体は約1%の微減〕

 2009年の世界鉛地金消費量は、前年比約1.1%減の8,559千tが予想された。鉛は、他の金属に比べて、経済不況の影響による需要の減少幅が小さいと考えられる。これは、鉛用途の約50%を占める自動車SLI用の鉛蓄電池の交換コストが比較的安価であるため、本用途の鉛需要は景気に関係なく、横ばいに
推移し得るからである。しかし、
2009年における欧州全体の需要は、
ILZSGが1960年に設立して以来の激減(2008年比10.2%減)が予想され、日本も同比16.9%の大幅減が予想される。一方、中国では景気刺激策、地方政府の備蓄買いにより、見掛け需要は同比5.9%増が予想された。

図3.鉛:地金消費(2008年、2009年予測)

1-5. 世界の鉛地金需給バランス
〔37千tと2年連続の供給過剰〕
 下表のとおり、2009年は37千tの供給過剰と予想されている。なお、本予想は同研究会が2008年10月に予想した数値に近似している。

表1. 世界の鉛需給バランス (単位:千t)
区分 2006 2007 2008
見込値
2009
予想値
増減
08/07
増減
09/08
鉛供給合計 7,925 8,122 8,674 8,596 6.80% -0.90%
鉛消費合計 8,071 8,189 8,650 8,559 5.63% -1.05%
需給バランス -127 -67 24 37    

 中国に関しては、過去3か月の鉛輸入の急増により、2年連続の純輸入の増加が予想されている。1990年代は、年間の純輸出が平均400千tを記録していたため、近年の輸入急増により、中国の鉛の輸出入は大きく逆転している。


図4. 中国における鉛精鉱輸入と地金輸出 (出典:ILZSG)

1-6.鉛のLME在庫と価格
〔2009年1月からLME在庫増、価格も上昇基調〕

 鉛のLME在庫は、2009年1月からの短期間で18千tが積み上げられ、63千tまで達した(2009年5月20日現在は約74千tとさらに増加)。LME価格に関しては、2007年後半はLME在庫が逼迫し、鉛価格は4千US$/t近くまで高騰したが、その後、価格は下降基調となり、2008年12月下旬には一時1千US$を割っていた。現在は1,500US$/t台まで回復し、亜鉛価格に近似している。


図5. 鉛:LME価格の推移 (2007年1月1日~2009年5月31日、出典:LME)

2. 亜鉛の需給予測
2-1.亜鉛:2009年における需給予想の概要
(1)鉛と同様、深刻な経済不況により増産計画は停滞し、2009年の世界亜鉛鉱石生産量は前年比6.0%減と予想。2009年の世界亜鉛地金生産量は、世界全体では約4%減と予測されるが、インドは前年比16.3%の顕著な増加が見込まれる。また、経済不況によるインフラ設備需要の減少に影響を受けて、2009年の世界の地金需要は、前年比4.9%と1975年以来の最大減少が予想された。
(2)需給バランスは3年連続の供給過剰で、2009年は261千tの超過を予測。また、中国の貿易バランスは、インフラ投資の増加及び国内の亜鉛価格の上昇により、純輸入の増加基調を予想。
 2008年9月末~2009年2月末の短期間で、約200千t以上のLME在庫に積上げられたが、過去2か月間は32万t台で安定。現在は、亜鉛LMEセツルメント価格も1,519.50US$/tまで回復。

2-2. 亜鉛鉱石生産量
〔2009年はカナダ、豪州、ペルーの増産が停滞、全体的に前年比6.0%減 〕 
2009年の世界亜鉛鉱石生産量は、前年比6.0%減の1,1078千tと予想されている。この減産は、経済不況の影響により、過去6か月の短期間で大規模な生産削減や閉鎖、プロジェクトの延期が発表されたことが原因である。なお、おもな生産削減は、豪州、カナダ、中国、ペルー、米国に見られるが、フィンランド(Talvivaara鉱山)、パキスタン(Duddar鉱山)、スペイン(Aguas Tenidas鉱山)の新規稼働、そして、ボリビア、インド、イラン、パキスタンの高水準の増産が、ある程度相殺すると予想される。

※[2009年における50千t以上の生産損失(概算)]:
Potosi(豪)55千t減、
Myra Falls(加)50千t減、
Langlois(加)54千t減、Caribou/Restigouche(加)50千t減、Iscaycruz(ペルー)145千t減、
Aljustrel(ポルトガル)80千t減、Gordonsville(米国)54千t減。
 
図6.亜鉛:鉱石生産(2008年、2009年予測)

           
2-3. 亜鉛地金生産量
〔2009年は世界全体で約4%減、中国とインドは増産〕

 2009年の世界亜鉛地金生産量は、前年比4.0%減の11,179千tが予想された。おもな減産が見られるのは、ベルギー(Nyrstar社のBalen製錬所:170千t)、ドイツ(Ruhr Zinc社のDatteln製錬所:140千t減)、中国(Huludao製錬所:100千t減)、カザフスタン(Kazakhmys社のBalkhash製錬所:48千t減)、ルーマニア(Copsa Mica製錬所:60千t減)で、また、カナダ、韓国、ロシアでも大幅な生産損失が発表されている。一方、中国は、2009年は前年比2.2増の4,000千tが予想され
ている。また、インドのHindustan Zinc社のChanderiya製錬所における生産能力の増強などが原因で、インドは前年比16.3%増、705千tと顕著な増加が見込まれている。
 
図7.亜鉛:地金生産(2008年、2009年予測)

2-4. 亜鉛地金消費量〔2009年世界計は前年比4.9%減、中国は4.6%増と予想〕

 2009年の世界亜鉛消費量は、前年比4.9%減の10,923千tが予想された。これは1975年以来の落ち込みで、欧州全体は12%、米国9.2%、日本12.9%の大幅な減少が見込まれている。需要減の原因は、主な用途が亜鉛めっき、ダイカスト合金、ブラス、亜鉛シートであるため、交通インフラ部門や建設部門の成長に大きく影響され、不況によりインフラ投資が激減し、よって、亜鉛の需要も減少へと導かれたためである。一方、中国の消費量は、インフラ設備に重点投資する景気刺激策や、地方政府の買増しによって、消費量は前年比4.6%増加するとの見通しである。  
図8.亜鉛:地金消費(2008年、2009年予測)

※ [補足説明]:
ILZSG事務局の消費量の計算は、『見掛け消費量(Apparent Consumption) = 国内の生産量 + 輸入量 - 輸出量 +/- 正式に報告されている在庫減増(例:上海先物取引、中国のLME倉庫)』である。今回、亜鉛の国家備蓄量(SRB)は下表の通りに公表されているため、SRBの積上げ量を、見かけ消費量から差し引いて、国内で実際に消費される数量により近づけるよう試みている。なお、亜鉛のSRB備蓄制度に関しては、SRBは1月14日に国内の製錬所から59千tを購入し、4月30日までには100千tを追加、2009年Q1で合計159千tの買いが生じた。追加の100千tは、上海長江非鉄金属市場のスポット価格が10,450~11,450元/tの際に、11,500元/tと高値で購入されており、ある亜鉛アナリストは『地元の製錬所への経営援助策の一環ではないか。』とも言われている。なお、その他の正式に報告されている在庫増減として、米国の国家防衛備蓄の放出も計算されている。

表2.中国のSRB亜鉛備蓄量 (単位:千t)
製錬会社 購入量
Huludao Zinc 16
Gansu Balyin Nonferrous 34
Zhuzhou Smelter Group 31
Shenzhen Zhongjin Lingnan Nonfemet 21
Henan Yuguang Gold & Lead 20
Yunnan Chihong Zinc 15
Hanzhong Bayi Zinc 15
Chifeng NFC Kumba Hongye Zinc 7
合 計 159
(出典:ILZSGのプレゼンテーション資料[情報源:Antaike])

2-5. 世界の亜鉛地金の需給バランス
〔261千tと供給超過を予想〕

 下表のとおり、2009年は261千tの供給超過が予想されている。これは、鉛とは違って、不況による亜鉛の需要減が主な原因と考えられる。また、ILZSGは中国の政府備蓄の買増しと、予想されている米国の国家防衛備蓄の放出も考慮して、この予想結果に至っているとしている。

表3. 世界の亜鉛需給バランス (単位:千t)
区分 2006 2007 2008
見込値
2009
予想値
増減08/07 増減09/08
亜鉛供給合計 10,655 11,360 11,649 11,179 2.54% -4.03%
亜鉛消費合計 11,013 11,275 11,485 10,923 1.86% -4.89%
需給バランス -330 92 164 261    

 中国の亜鉛輸出入に関しては、2009年も前年同様、純輸入の増加基調が予想されている。これは、過去数か月間は上海先物取引の引合い価格がLME価格より高い状態が続いていることと、今後の国内インフラ設備投資の増加への期待によるものである。(※注:なお、Metal Bulletinによれば、5月下旬以降の現時点では、LMEの亜鉛価格と上海取引所の亜鉛価格差は縮小している。)


図9. 中国における亜鉛精鉱輸入と地金輸出 (出典:ILZSG)

2-6. 亜鉛のLME在庫と価格
〔現在は322千t台と安定、価格も1,430US$/tまで回復〕 

 2008年9月末~2009年2月末の間、LME在庫が急増し、約200千t以上の積上げが行われた。しかし、2009年2月末~5月現在まではLME在庫レベルが安定し、バランスの取れた市場が続いている。なお、2009年5月20日の時点では、LME在庫は320,150 t、亜鉛LMEセツルメント価格は1,519.50US$/tである。これは、2006年11月の4,620US$/tの最高記録値に比べて1/3であるが、2002~2003年に経験した800US$/tより高い水準となっている。


図10. 鉛:LME価格の推移 (2007年1月1日~2009年5月31日、出典:LME)

3. 産業・アドバイザリー・パネル(IAP)
 本委員会では、産業界関係者から、鉛亜鉛産業に影響する主な課題についての講演がなされた。今回は、『鉛亜鉛需給の回復時期』に焦点が当てられた。BNP Paribas社のMickael Widmer氏、そしてスウェーデンのBoliden AB社鉱石部門のLars-Goran Bjorkqvist部長の両氏が、鉛亜鉛の在庫レベルは他の金属に比べて低水準で推移しているため、需要が回復した際の供給不足を予想していた。また、Bjorkqvist部長の要点は以下のとおりである。

(1)米国の不況は現在、過去40年の中で5回目の周期で最大規模である。これによって、2009年上期に発表された世界全体における亜鉛の年間生産量は、前年比の約10%減が予想され、2009年における年間の亜鉛鉱石は1,114千tの生産削減、亜鉛地金は1,204千tの生産削減が見込まれている。

(2)現状、鉱山企業の採算性から考えても減産対策は適当と考えられる。Boliden(本社:Stockholm)は、12月9日、亜鉛需要の減少を受け、フィンランドのKokkola亜鉛製錬所及び、ノルウェーのOdda亜鉛製錬所から合計6万t/年の亜鉛を減産すると発表している。しかしながら、図11のとおり、過去の世界の亜鉛需要は、全体的には不況に影響されず、上昇基調にあったため、今後も需要の回復が期待できるのではないかと述べる。なお、各国が出している景気刺激策は効果を発揮し始め、多くのアナリストが2009年末に米国の景気が回復すると予想しているが、欧州に関しては、景気回復時期は2010年になると考えられる。

(出典:ILZSGでのBoliden社プレゼンテーション資料)
図11.世界の亜鉛消費量

4. 経済環境委員会(EEC)
 本委員会では、欧州を中心とした環境規制などの動向が報告された。

4-1.『鉛に関するREACH動向』― 国際鉛協会(ILA)代表、 David Wilson博士
 鉛コンソーシアム(Lead Consortium)は、2007年7月6日に公式に設立し、ILA(2008年12月23日からLDAIより改名)が、コンソーシアム運営の主な役割を担っている。コンソーシアムとは、REACH登録の手続きをサポートする組織で、登録を要する企業が自主的に参加している(有料)。本コンソーシアムの対象物質は現在、鉛地金1種、鉛化合物14種であるが、本講演では、今後、20種類の鉛中間生産物の対応も検討していると述べられた。また、Wilson博士は、下記の課題を説明した。

(1)予備登録リストでは、“Lead(鉛)”と言う文字を含む物質806件が検知された。このなかにはUVCB物質(組成が不明または不定の物質、複雑な反応生成物および生体物質)が多く含まれており、個々の物質の見定めは、非常に困難である。また、「鉛」に関する物質を予備登録した企業は、鉛金属で3200企業(うち57企業が鉛コンソーシアム会員)、酸化鉛で350企業(同38企業)、四酸化鉛が300企業(同8企業)、その他の10種の鉛化合物が600企業(同67企業)と予想を超える規模である。なお、鉛コンソーシアムは、物質情報交換フォーラム(SIEF)の運営もサポートする予定である。

(2)ILAは、自主的リスクアセスメントに3百万ャ 、3年間の運営費に3百万ャ と、REACHに対して合計6百万ャ の費用を計上している。鉛コンソーシアムには約90企業以上が参加しているが、現在の経済不況では企業に対する負担が大きい。また、報道ではREACH登録期日の延期が期待されていたが、Wilson博士は「可能性として非常に低い」と述べた。

4-2.『ICMMと企業の社会的責任(CSR)』― ICMM、John Atherton博士
 同氏は、ICMMの『持続可能な開発(SD:Sustainable Development)』の枠組みの中から、下記の3点を紹介した。なお、ICMM会員企業は、これらを実行することに誓約している。(参考資料:http://www.icmm.com/document/439)

・10基本原則:ビジネスを通じて、環境、地域社会への貢献、労働者の安全衛生などに関わるICMMのSD方針、10原則を実行。
・報告義務:GRI G3の枠組みに沿って、報告書を作成。
・第三者保証:ICMMの10原則の条件を満たす活動をしているか、第三者保証が必要。

 第三者保証に関しては、以下の内容を実行することが薦められた。これらによって、ICMM会員企業は、ICMM、ICMMの他の会員企業、そしてステーク・ホルダーにSDへの貢献をアピールできる。

企業の公開報告書または発表のなかに、ICMMのSD原則に対する活動内容を含める、または、誓約する姿勢を含める。
企業のSD報告書が、GRI G3ガイドラインのレベルA+によって保証されることを目標とする。
資格保有者・団体などの第三者から、SD報告書の保証を受ける。

 なお、ICMM会員企業である日鉱金属株式会社(Sustainability Report 2008)とNewmount社は、GRI G3のA+を獲得しているため、同氏はSD報告書の完成度の高さを賞賛していた。また、ICMMのSD活動を通じて、ステークホルダーや地域社会との信頼を深め、「長期的」な視野で行動することを薦めた。

4-3.『リサイクルプロジェクトの進捗報告』― 国際亜鉛協会(IZA)代表、

リサイクルプロジェクトチーム(RPT)代表者、R. Sampels氏

 RPTが提案している従来のリサイクル率計算のための3方式の定義に加えて、以下の2つの方式を検討している。
(RPTの沿革概要:http://www.jogmec.go.jp/mric_web/current/07_104.html)

○ 使用済み製品の回収率〔End of Life Collection Rate ( EOL / CR)〕

EOL/CR=   実際に回収された金属の重量)                    
(使用済み製品のスクラップから回収され得る)

○ 使用済み製品のリサイクル率〔End of Life Recycling Rate(EOL / RR)〕

EOL/CR= (リサイクルされた金属量)        
(回収された金属量)

 今後のRPTの目標は、[1]短期間で金属産業のリサイクル率を定義、[2]中期間で収集された統計データをリサイクル率に適用、[2]長期間でステーク・ホルダーへの適切なリサイクル情報の提供を図る。

5-3.研究会合同セミナー
 4月22日午後には、『非鉄金属産業を影響するエネルギー諸問題と気候変動策』と題した3研究会合同セミナーが開催され、下記の政府団体、産業団体、分析家が講演を行った。
(詳細:http://www.ilzsg.org/generic/pages/list.aspx?table=document&ff_aa_document_type=P&from=3)

(1) Eurometaux(欧州非鉄金属ロビー団体)、エネルギー&気候変動策部門部長、Robert J. Jeekel氏
(2) チリ銅委員会(COCHILCO)の研究&政策計画部門、Sara Pimentel女史
(3) 豪州資源エネルギー観光省、Helen Clarke女史
(4) カナダ天然資源省、Patrick Chevalier氏
(5) 英王立国際問題研究所(Chatam House)、桜井和人氏
(6) 欧州連合、企業・産業総局、Heli Kask女史
(7) Metalytics社の温暖化ガス(GHG)排出に関するアナリスト、John Barkas氏
(8) 国際亜鉛協会(IZA)、Johan Van Wesemael氏
(9) 国際銅協会(ICA)、Anthony Lea氏
(10) ニッケル協会(Nickel Institute)、Stephen Barnett
(11) 国際鉛協会(ILA)、David Wilson博士

 欧州に関しては、欧州閣僚理事会が2007年3月に『20/20/20目標』を承認しており、[1]2020年までに温室効果ガス排出を1990年比20%削減(30%に引き上げ検討中)、[2]2020年までにエネルギー効率化20%改善、[3]2020年までに再生可能なエネルギー利用率を20%増加することを目標に掲げている。その政策の柱となっているのが、欧州排出量取引制度(EU ETS)※1である。欧州委員会は2008年1月23日、欧州排出量取引制度に関する指令(2003/87/EC)の改正案を提出し、同年12月にはEU-ETSフェーズⅢ(Post-2012:2013年以降)の欧州における『気候変動パッケージ』が閣僚理事会で承認された。なお、その改正案は2009年3月26日に公表されており、これは、2009年12月、コペンハーゲンにて開催予定の国連気候変動枠組条約(UNFCC)の第15回締約国会議(COP15)に向けたものである。非鉄産業界として重要な点は、フェーズⅡ(2008~2012年)では鉄鋼産業が含まれていたが、フェーズⅢ(2013年以降)の本改定案によれば、ETSの対象となるプロセスは以下のとおりである。[1]硫化鉄を含む鉱石ばい焼(ペレット化も含む)プロセス[2]鉄鋼・銃鉄生産プロセス(2.5t/h以上)[3]総熱投入量(a total rated thermal Input)が20MWを超える、鉄鋼生産、アルミ生産、非鉄金属の生産・処理プロセスもETS(Emission Trading Scheme)が適用されることとなる。なお、本ETS政策には、CCS(二酸化炭素貯蓄技術、Carbon dioxide Capture and Storage)に関する提案が盛り込まれている。
(詳細について:http://ec.europa.eu/environment/climat/emission/ets_post2012_en.htm
http://register.consilium.europa.eu/pdf/en/08/st03/st03737.en08.pdf)
本会合で欧州連合Kask女史では、本表案はすでに欧州議会に承認されたので、現在は導入方法に集中していくと述べていた。しかしながら、欧州の産業界及びEurometauxは、ETSのコスト負担を低減するためにも、炭素リーケージ※2に曝される危険性を主張し、また、各金属団体からは、産業界で既に適用し始めているエネルギーの効率化・低炭素燃料への切り替え、各金属製造の社会経済便益等がアピールされ、今後も産業界が被るETSからのコスト負担を軽減するよう努力する姿勢が見られた。なお、Kask女史は、「炭素リーケージ問題に関しては、産業界及び各国の産業大臣からの情報提供が極めて重要で、今後もそれらの意見を参考にしながら、COP15の具体案を固めていく」とも言及していた。

※1:欧州のETSとは、国家単位での全体のCO2排出量を制限するもので、参加者はその範囲内で必要な排出枠(allowance)を売買する制度である。この排出枠は、取引される「通貨」と考えられ、1つの排出枠を保有することによって、1トンのCO2を排出することができる権利である。なお、排出枠の全体数が制限されていることで、カーボン市場において不足が生じる仕組みになっており、また、保有の排出枠内に収めた企業は、余剰排出枠を売ることができる。排出枠内で排出量を収めるのが難しい企業は、[1]より効率的な技術に投資をするか、[2]より温室効果ガス(GHG=Greenhouse Gas)排出量の少ないエネルギー源を利用することで排出量を減らすか、[3]カーボン市場で必要な余剰排出枠を買うかの3つの選択肢を有する。
※2:炭素リーケージとは、CO2排出削減義務がある国から、削減義務がない発展途上国へ生産が移転したり、途上国からの輸入に切り替わったりすることで、この場合、世界全体のCO2削減目標は削減されず、むしろ増加させる可能性があると懸念されている。

6. 2009年秋季会合の日程
 次回、ILZSGの2009年秋季会合は、2009年10月8、9日に、リスボン(ポルトガル:Altis Hotel)にて開催される予定である。また、10月7日午後には、『経済危機後の金属産業:今後の変化』と題した3研究会合同セミナーが設けられる予定である。

< 2009年秋季の国際非鉄金属3研究会の日程 >
・10月5日(月)~7日(火):INSG及びICSG (場所:事務局本拠地、リスボン)
・10月7日(水)午後   :3研究会合同セミナー
               『経済危機後の金属産業:今後の変化』
               (場所:Altis Hotel、リスボン)、レセプション
・10月8日(木)~9日(金):ILZSG (場所:Altis Hotel、リスボン)

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