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報告書&レポート

2009年10月1日 ロンドン事務所  フレンチ 香織
2009年47号

『ジンバブエ共和国鉱業投資セミナー』の分析

 Omega社(Investment Mining Partner)、Deloitte共同主催の第6回アフリカ鉱業投資年次会議が6月23日にロンドンにて開催された。本会議では先ず、MDC(民主改革運動)主導者であるMorgan Richard Tsvangirai(モーガン・リチャード・ツァンギライ)首相が鉱業政策に於ける同氏の見解を示し、その後はファイナンス及びコンサル会社のアナリストが、ジンバブエの現在の鉱業政策及び、経済状況について簡単に解説した。参加者は英国ベースのコンサルタント、報道関係者、法律家等90 名ほどが集まった。
 以下、本報告書では、首相の講演を紹介し、本会議で得た情報をもとにジンバブエの鉱業投資環境に関する重要な事項を分析する。

『急速な経済活性化のためにも、政策を革新する姿勢』

 2008年3月、ジンバブエ総選挙では、独裁政権として波紋を広げていたMugabe大統領が再就任した。これによって、欧米諸国による資産凍結等の経済制裁は依然として続き、同国の歳入不足からのハイパー・インフレによって経済破綻に直面していた。同国は2009年2月、米ドル等の外貨の国内流入を解禁、そして旧与党ZANU-PF(ジンバブエ・アフリカ民族連盟愛国戦線)と旧野党MDC(民主改革運動)が連立政権を樹立。現在は外国投資を大いに受け入れる姿勢へと急変している。ジンバブエには、金、ダイアモンド、フェロクロム、PGMのほかに、リチウム、石炭、ニッケル、ウラン、タンタル等の40種以上の鉱種が賦存していると言われており、現在の外資導入そして民主化の動きから、同国鉱業への投資機会は一層注目されつつある。

1. Tsvangirai首相の講演録(2009年6月23日9:30~)
ポイント[1]:同首相の鉱業に対する強い思い入れ~ Mining is dear to my heart. ~
 私は、学校を卒業してから直ぐに鉱業界へ入り、1975~1985年の10年間、Anglo Americanで勤務した。鉱業は、わが国の経済発展に多く貢献してきた。個人的な経験からも活性化を強く促進したい。ジンバブエは資源が豊富で、鉱業がわが国の経済発展に大きく寄与すると確信している。しかし、その貴重な天然資源を上手く活用するためには、今直ぐ鉱業に係る法令を改革する必要があることを強調したい。
ポイント[2]:今すぐ改革 ~ Changing the laws is now an urgent matter. ~
 わが国には、長年適用され続けた鉱業法(1961年制定、最新改訂:Mines and Mineral Acts 1996)が存在するが、政府は果たして本法律を遵守してきたのだろうか。また、2007年9月26日に議会で調印された”Indigenisation and Empowerment Act(地域に企業株51%を譲渡する義務)*1”は、投資家に大きな不信感を与えている。従って、わが国は、外国投資家に対して安定した実行可能な投資環境の土台を迅速に形成する必要があると判断し、鉱業政策を含めたSTERP(Short-Term Emergency Recovery Programme) *2 を2009年3月に公表した。米ドルでの投資が増加するためにも、以下の対策を進める必要があると考えている。

[1]鉱業法の遵守、そして、厳正に遵守されているかの監視
[2]現鉱業法の下で承認している鉱業権の尊重
[3]健全なロイヤルティ率及び法人税の制定
[4]鉱業法におけるロイヤルティ率の遵守
[5]鉱物の販売方法及び販売場所に係る制限の緩和 (※1)
[6]企業の配当金や収益などの海外送金の保証
[7]現実的で公平な地元住民への収益還元制度の制定
[8]鉱業投資家を正当に保護するためにも、独立した司法組織の設立 
(※1:従来、MMCZ(鉱物販売公社)が、金・銀を除く全ての鉱産物の金属価格決定及び市場販売を請け負い、金・銀はReserve Bank(ジンバブエ中央銀行)がそれを行っていた *3 。しかし、金に関しては、中央銀行が企業に対して収益供与を長期的に渋っていたため、2009年2月に自由市場での金販売を解禁。STERP *2では、鉄鋼を含む全ての鉱物の市場自由化もアジェンダに含まれている。)

ポイント[3]:鉱業による経済発展で160億US$の国家歳入を期待
 2002~2007年のような鉱業及びコモディティ・ブームは、2010年末に再到来すると予想する。鉱業への投資促進政策を立てれば、ジンバブエの鉱業部門は、2011~18年の間に探鉱・採掘開発において60~160億US$の国益を得ることができるであろう。これによって、2019年までに国内の年間GDPを30億US$増大させたいと考えている。

ポイント[4]:会場でのQ&A抜粋

Q1: 「鉱業権の見直しが報じられているが、本当か?」
  A1:「持続可能な開発に繋がらない石炭採掘などは鉱業権の見直しを行う予定である。」
Q2: 「鉱業大臣が、国内でのBeneficiation(製錬事業)を促進するためにも、クロム鉱石の輸出を禁止しようとしていると報じられるが、どう思うのか?」
A2: 「知らない。但し、国内での製錬を促進することは悪いこととは思っていない。同国で精錬事業を促進することは、雇用の増加にも繋がると信じている。」
Q3: 「モザンビークや南アなどの隣国との関係は?」
A3: 「関係は良好である。今後も、自国と他のアフリカ諸国間で操業する企業が増えることを期待して、良い関係を続けていきたい。」
Q4: 「メディアではジンバブエの悪いニュースが報じられているが、どうやったら投資家の信用を回復できると思うか?」
A4: 「『Bad news proves good press.』無論、状況はバラ色天国ではない。また、(私と)Mugabe大統領との関係は、問題が全く無くなったとは言い切れない。しかし、現状は、外資導入姿勢により、インフレーションは徐々に改善しており、学校等も再開されて、現況はポジティブに受け取っている。Mugabe政権と戦う旧野党派のMDCは、いつか勝利を得ることを信じ、南アのネルソン・マンデラ氏のように民主化を広めることを強く願っている。我が国は『リスクフリー』とは言えないが、『リスクを勝ち取るのが、投資家だ』と私は信じている。」

 Q&Aの後、本会議に出席したAnglo AmericanのEdward Bickham氏(Vice President External Affairs)は首相の訪英に歓迎の意を示し、同社が2003年行っているPGMプロジェクトは順調に進んでおり、2011年には生産を開始する予定であると発表した。また、同氏は2週間前にジンバブエを訪ねたが、病院の衛生状況も改善されており、「今後もAnglo Americanは同国における復興活動に協力していきたい」とポジティブな言葉で首相の講演は幕を閉じた。

2.その他の講演内容と分析
2-1.ジンバブエにおけるPGM資源~高品位な鉱石が魅力、今後も増産を予想~
 PGM産出国は限られており、その60%弱(62.8t)が南アに賦存し、ロシア16%(17.8t)、フィンランド12%(13.8t)、ジンバブエ9%(10.0t)、カナダ6%(6.6t)と続いている *4 。本会議で発表したGFMSのWilliam Tankard氏(シニア・マイニング・アナリスト)によれば、ジンバブエで有望視されているGreat Dyke鉱脈体に存在するNgezi鉱床の4E(Pt + Pd + Rh + Au)品位は、南アBushveld Limb東部UG2と同等の高品位である(下図1を参照)ことに加え、Ngezi鉱床の4E含有比率は、Pt 50%、Pd 35%、Rh 10%、Au 5%の割合と、南アBushveld Limb東部UG2と同様、パラジウムの潜在性が大いに期待されている。

 GFMS *5 によると、同国では2008年の政治混乱や経済不況にも影響せず、プラチナ生産は5.6t(180千oz)で世界第4位、パラジウムは4.3t(140千oz)と、前年に比べて僅かに増加した。同国におけるPGM鉱山は、Zimplatsが操業するHartley鉱山、ZCE Platinum社が操業するMimosa鉱山の2鉱山のみである。しかし、Amplats(Anglo Platinum: Anglo Americanの子会社)が開発するUnki鉱床開発プロジェクトは、2009年内に生産を開始する予定で、ZimplatsのNgezi鉱床プロジェクトも同年後半に生産を開始する予定であるため、今後も同国におけるPGMの増産が期待されている。なお、ZimplatsはImplats(Impala Platinum)の子会社で、ZCE PlatinumはImplatsが同社株50%を有していることにより、今日の同国におけるプラチナ産業はImplats(南ア)が大いに貢献していると言える。

図1.Rustenburg鉱床(南ア)、Lebowa(南ア)、Ngezi鉱床(ジンバブエ)における
図1.Rustenburg鉱床(南ア)、Lebowa(南ア)、Ngezi鉱床(ジンバブエ)における
4E品位及び4E価値の比較
(出典:本会議におけるGFMSのプレゼンテーション資料)

2-2. 鉱業に係る法令~現状は『有言不実行』な状態であるが、ポジティブに期待~
 2009年2月に連立政権が樹立して以来、Tsvangirai首相、Tendai Biti財務大臣(MDC派) そしてObert Mpofu鉱業大臣(Zanu-PF派)の政府高官が、鉱業投資の促進に支障が生じている”Indigenisation and Empowerment Act(2007)”を改正し、鉱業法、ロイヤルティ率及び法人税を見直すと公に発表している。現状、展開はスローで『有言不実行』な状況であるが、本会議では投資セミナーということもあって、今後の改正をポジティブに予想する講演者が多かった。また、確かに、2009年12月までに実行予定のSTERP(Short-term Emergency Recovery Programme)にもこれらの内容が含まれており、政府はジンバブエ鉱業協会及び同国に投資するステークフォルダーにコンサルテーションを行っている動きは確認されている。

2-2-1.分析:『Indigenisation and Empowerment Act(2007)』*1の改正~慎重に~
 2007年9月26日にMugabe大統領によって調印された”Indigenisation and Empowerment Act”によって、鉱山企業は、地域社会に権益51%を譲渡する義務が課されることとなる。現状、本法律は非現実的であるために適用は見送られているが、本法は外資企業に対して大きな不信感を与えており、大きな課題として解されている。例えば、Amplats及びZimplatsがジンバブエのPGM鉱区を縮小した理由は、本法に対する懸念と推測されている *6
 本会議でもTsvangirai首相が発言するように、同国政府は本法を優先的に取り上げているが、首相は国家及び地域社会への利益還元を求めることは悪いことではないとし、また、COMZ(ジンバブエ鉱業協会)のVictor R Gapare所長は、南アと同様に株式譲渡だけでなく、雇用者スキルの向上や社会貢献などを含んだBEEスコアーカード制の取り入れを薦めている *7。このように、本法が完全に撤回されることは無いと予想されている。なお、本会議の参加者の間では、51%の還元は多過ぎるとして、25%程度が妥当という声も上がっていた。総じて、”Indigenisation and Empowerment Act”は現在も慎重にではあるが、見直しされる方向であると考えられる。

2-2-2.分析:鉱業法の改正~迅速に~
 Obert Mpofu鉱業大臣は2009年8月21日、鉱業法の改革を急ぐと発表。STERP *2 によれば、本草案は議会に提出する直前であり、[1]鉱業省の組織改革、[2]鉱業権に係る条件の見直し、[3]保留状態となっている鉱区申請数を減少させるためにも、鉱業権承認プロセスの改正などが含まれている。なお、2009年9月時点では改正したという発表は無い。

2-2-3.分析:ロイヤルティ率及び法人税の改正~来年に~
 現行のロイヤルティ率は、ダイアモンド10%、金等の貴金属3%、石炭1%とされている *3 (但し、2004年以来、金のロイヤルティは廃止されている)。そして、鉱業収益に対する法人税は現状、収益増加率などで企業によって異なるが、通常は30%で、鉱山企業に対しては15%としている *8。Tendai Biti経済大臣は、2009年7月の中間財政報告で、「ロイヤルティ率及び法人税に関しては、国際基準へ改正する予定であるが、投資家と相談して慎重に策定するためにも、2010年の予算案まで延期する」と発表している。

2-3.政治的リスク~改善を期待できる3つの要因~
 本会議で聞いた内容を整理すると、軍事政権から民主化への変革が期待できる要因は3つ挙げられる。[1]連立政権が成立したこと(特に、首相職にMDCのTsvangirai氏が就任したこと)、[2]隣接諸国が改革を推進していること、[3]次回総選挙(及び大統領選)が2013年と間近であることである。

2-3-1. 分析:政治的リスク~3つの要因で改善する兆し~
 [1]に関しては、Mugabe大統領とTsvangirai首相の関係が良好であるかどうかに拘らず、連立政権の成立によって、STERPなどの民主主義を基本とする政策が大々的に発表されている。この結果、欧米諸国は今後の民主変革を期待し、国際政府機関及び複数の国が非政府団体(NGO)を通じて人道支援を凍結解除している(2-4-2を参照)。[2]に関しては、2009年8月28日、Zuma南ア大統領がMugabe大統領を訪問し、欧米諸国が制裁措置を公式に解除するためにも改革が必要だと主張した。また、9月9日に閉幕したSADC15か国サミットでは、ジンバブエとマダガスカルの政治危機の改善が優先事項となり、「ジンバブエの現在の『Global Political Agreement』の施行は十分で、欧米諸国は制裁処置を撤回すべき」とZuma大統領は欧米諸国に呼び掛けていた *9。Mugabe大統領は根本的にアフリカ民族を重要視するため、今後もアフリカ周辺国等の仲介努力が注目されている。[3]に関しては、次回総選挙は、MDCが今日の経済発展に大きく貢献していることもあり、欧米諸国からはMDCの勝利が期待されている。なお、次回総選挙は2013年(予定)であるが、連立政権の動きによっては時期が早まると予想されており、また、アジェンダでは、2008年9月の合意で議会の空席を埋めるための補欠選挙が近日行われる予定である *10

2-3-2. 分析:政治的リスク~[3]は逆効果の危険性、欧米諸国の経済制裁は未だ解消せず~
 2-3-1の[1]、[2]はポジティブな要因のみであるが、[3]の次回総選挙には逆効果のファクターが潜んでおり、最大の政治リスクを生む可能性もある。報道によれば、現在は次選挙の話題が連立政権内の不和の種となっており、2009年8月時点ではMugabe大統領とTsvangirai首相の関係は、協力関係ではなく、次の選挙に挑むライバル関係である *11。よって、現状も政権は不安定と分析する者も多い。本会議でのIFC(国際金融公社)の講演によれば、国別治安リスクは2007/2008年はジンバブエが最下位であったのに関わらず、2008/2009は下位3位にランクアップしている。しかし、今もなお同国の主導権及びそれに伴う政権の方向性は未だ定かではない。

 加えて、過去にMugabe政権が引き起こした数々の問題(人権問題、総選挙の不正操作の疑い、そして何よりも白人大農場の強制収用等)の痛手はそう簡単には消えることはなく、欧米諸国政府の制裁措置は未だ解除される方向にはない。ジンバブエは、今後2、3年の緊急支援として、資金85億US$が必要と計上しているが、民主化改革の実現及び国際金融機関に対する債務12億US$を処理する姿勢を示さない限り、世銀も融資を開始しないとの意見を示しており *12、制裁措置も未だ完全に緩和されていない。

2-4.国内経済~破綻~
 本会議で講演したBanc ABC(汎アフリカのファイナンスサービス提供会社)のCEOによれば、2009年2月に米ドル等の外貨の国内流入を解禁して以来、経済は回復を見せているが、現在も経済破綻の後遺症は続く。1995~1999年の間、同国のGDPが総額8,678百万US$と好調であったが、1999年以降はDRCコンゴの内戦によりDRCコンゴに約1万人を派兵したり、2000年に白人大農場の強制収用を行ったことで、外資からのMugabe大統領への批判が相次ぎ、2007~2009年の間は急減して、3,180百万US$となった(下図2を参照)。また、経済低迷により、2009年初期には失業率は90%を記録している。

 これと同時に、ジンバブエの金融セクターは現在、他のアフリカ諸国に比べて、非常に小規模で(図3を参照)で、銀行の預金総額(Bank deposit)は400百万US$足らずに過ぎない。したがって、同国が経済再建に必要とする総額85億US$までには未だ程遠い(図4を参照)。この主な理由は、価格統制及び金融管理を実施しているジンバブエ中央銀行が、ハイパー・インフレにより、同国の経済・金融政策に失敗したためである。

図2.ジンバブエのGDP推移
図2.ジンバブエのGDP推移
(出典:本会議におけるABC Banc社のプレゼンテーション資料)

図3.ジンバブエの金融セクターの規模
図3.ジンバブエの金融セクターの規模
(出典:本会議におけるABC Banc社のプレゼンテーション資料)

図4.ジンバブエの金融セクター預金総額
図4.ジンバブエの金融セクター預金総額
(出典:本会議におけるABC Banc社のプレゼンテーション資料)

2-4-1.今日における政府の金融対策
 本会議で講演したBanc ABCのCEO によれば、政府はSTERP *2 に則して、投資家の信用を取り戻すためにも、中央銀行の組織変革を先ず検討しており、また、SME(小規模企業)の 斡旋プログラムを通じて海外からの融資を増加や、他国からの政府援助の及び外部的な資金援助(AfDB、PTA、Afrexim bank、IDC-SA等)の呼び掛けを活発に行っている。また、地方銀行の資金余力が無いので、大規模な貸付については比較的に規模の大きい地域銀行の力を借りて、融資サービスを提供する働きもある。

2-4-2.分析:経済回復の兆し~経済底打ち~
 本会議で講演したBanc ABCのCEO は、「ジンバブエ経済は底打ちし、回復するに違いない」と予想する。2009年2月に連立政権が発足して以来、外資導入や2-4-1に紹介した対策によって、資金調達は徐々に上がってきおり、IMFも、ジンバブエの経済回復の兆しが見えたと報じている *13

 例えば、人道支援のみに限られた非政府団体を通じた救済基金であるが、連立政権後から2009年6月22日迄に、豪州は6.4百万US$、世銀は22百万US$、アフリカ諸国は650百万US$、ドイツは35百万US$、米国は73百万US$、英国は98百万US$を宣言している *14 。また、本会議で講演したIFC(国際金融公社)は、2009年1月より同国のBaobab金・銀・鉄鉱石プロジェクトへ出資を開始。IMF(国際通貨基金)も2009年7月の時点では、同国が有する国際金融機関に対する債務12億US$を処理しない限り融資を解禁しないとしていたが、同年9月4日には、世界不況による発展途上国の経済再建基金(IMF対象国186カ国に2500億US$注入)の一環として、10年来ぶりに510百万US$の融資を決定し、そのうちの400百万US$を既に送金したと発言している *15。このように、世界中からの支援が増加している。
 また、民間企業の投資意欲も回復しつつある。本会議で講演を行ったジンバブエ大手の産金会社Mwana Africa社(英)は、米ドル導入(Dollarisation:通貨安定のために自国の通貨を廃止して米ドルを使用)が同国のFreda Rebecca鉱山再開を決定した鍵と述べている。米ドル導入によって、経営利益を予測することができるようになり、南アで得られる物はすべて得られるようになったことは大きな利点であると言及した。また、他の講演者であるDeloitteのジンバブエ担当長は、米ドル化が進んでビジネス案件をまともに計算できるようになり、ジンバブエへの投資に対する相談はここ3ヶ月で急激に増えたと言う。言うまでも無く、投資家にとっては、投資による利益を生み出さないといけないため、ハイパー・インフレ等の為替リスクが何よりも大きな課題であった。しかし、現在はそれが解消され、投資は再開しつつあると本会議では発表されていた。

2-4-3.経済回復の兆し~同国経済での鉱業の重要性~
 Banc ABCによれば、ジンバブエの鉱業部門は、経済が発展していた頃、国内GDPの2.8%を占めており(下図5を参照)、最大55,000人の雇用機会を作っていた。そして、外貨益の35~45%が鉱業に寄与していた。このように、今後、鉱業投資が増加すれば、同国の経済発展に大きく繋がってくることが予想されている。

図5.ジンバブエGDPのセクター比率(経済破綻前の平均)
図5.ジンバブエGDPのセクター比率(経済破綻前の平均)
(出典:本会議におけるABC Banc社のプレゼンテーション資料)

2-5.インフラ状況~改善の余地あり~
 本会議で講演を行ったACR社(英、AIM(ロンドン証券取引所)上場)は、2004年にジンバブエの金・PGM探鉱案件に参入した。何故ジンバブエを選んだのかの質問に対して、[1]埋蔵されている鉱物種、[2]熟練及び読み書きの出来る労働者が多いこと、また、[3]交通道路などのインフラ設備が整っていることを挙げていた。その他の参加企業も、以前から金などの鉱物を生産している地域は、鉱山設備なども経済破綻前からそのまま放置されている状態であったため、インフラ設備は整っていると指摘している。

 他方、ジンバブエは現状、財政不足で、浄水処理、廃棄物処理や、公共交通機関等の安全管理が上手く機能していない *13 と一般的に言われている。また、SRKコンサルティングによれば、例えば、ジンバブエと南アの国境を結ぶBeitbridge Boarderやジンバブエとザンビア国境を結ぶLivingstone Boarderなどは、交通網が十分に整備されていないため、トラックでの鉱山設備の運送に1~5日ほどの遅れが生じるという。現状は、地域によって差が激しいと考えられるが、政府団や民間企業の支援などによって、道路網などの開発が進むことが期待されていた。

2-6.中国の動向~China is definitely there.~
 本会議の参加者及び講演者に尋ねたところ、ジンバブエでの中国による投資の実例を話す者はおらず、商談ベースは多いとしても実際の投資決定は少ないとの印象を受けた。しかし、本会議ではキーワードかのように、「中国はアフリカでの資源確保を活発に行っている」との発言を聞く。

 その後、報道によれば、中国国家発展改革委員会は2009年8月7日、青海省青海金広ニッケルクロム材料公司がジンバブエでクロム鉱山を開発する申請を承認した。同プロジェクトの投資総額は約6百万US$とされている *16。また、ニッケル大手のJinchuan Nickel Mining Company(金川ニッケル集団公司)は同日、ニッケル、銅、コバルト鉱石の取引に関して鉱物販売公社(MMCZ)とMOUを締結している *17。このように、迅速とは言えないが、ジンバブエで中国の存在は確認されつつある。なお、Tsvangirai首相は7月上旬の報道に対して、中国から950百万US$のクレジットライン(融資限度)を取得したと発言していたが、Biti財務大臣はそれを否定しているため、実態は不鮮明である *18

さいごに~Timing is everything~
 首相が言う”Bad news proves good press.”のとおり、ジンバブエに関してはコレラ感染、Mugabe軍事政権の独裁主義などの不安を抱かせる内容が報道でよく取り上げられる。また、過去の同国の歴史から、欧米諸国が経済制裁を未だ撤回する姿勢を見せていない。しかし、ポジティブな事実として、米ドルが導入され、メジャー企業のAnglo AmericanやImplatsが投資を継続している。また、本会議では、政府は連立政権になり、民主主義に則した改革がゆっくりと動き始めているのは確実に読み取れた。現状、同国投資への良い点、悪い点が混在し、連立政権も先が見えない状況であるため、投資家の度量(Confidence)が上がらない時期であるが、この時期を好機と見る者が多く存在するということが実感できる会議であった。

参考文献等
*1 『Indigenisation and Empowerment Act』の原文
  http://www.kubatana.net/html/archive/legisl/080307ieeact.asp?orgcode=par001&year=0&range_start=1
*2  STERPの原文:http://www.savezimbabwenow.com/wp-content/uploads/2009/03/sterp.pdf
*3  JOGMEC(2005), ジンバブエ資源開発環境調査 p.7
  http://www.jogmec.go.jp/mric_web/development/africa/zimbabwe_05.pdf
*4  Roskill(2005), The Economics of Platinum Group Metals Seven Edition, p.11
*5  GFMS(2009), Platinum & Palladium Survey 2009
*6  Mining Journal(Publication:12 June, 2009), ‘Is Zimbabwe turning around?’ p.22-23
*7  COMZの講演:http://www.omegaminingpartners.com/5th-Annual-Overview.html
*8  Zimbabwe Journalists p.42,
  http://www.zimbabwejournalists.com/uploaddocs/Finance_Ministers_Mid-Year_Fiscal_Policy_Review.pdf
*9 Reuters, http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUSL4474955
   BBC, http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/africa/8245286.stm
*10 Control Risk, Country Report
*11 Reuters, http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUSLO465267
*12 World Bank : World Bank Still Has Not Resumed Lending to Zimbabwe
  http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/COUNTRIES/AFRICAEXT/ZIMBABWEEXTN/0
  ,,contentMDK:22189250~menuPK:375742~pagePK:2865066~piPK:2865079~theSitePK:375736,00.html

*13 Reuters, http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUSN02182511
*14 BBC, http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/africa/8112339.stm
*15 Guardian UK,
  http://www.guardian.co.uk/world/2009/sep/04/zimbabwe-imf-loan-mdc-mugabe
  Reuters, http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUSN04178448 
*16 日刊産業新聞 http://www.japanmetal.com/chaina/cmm.html
*17 All Africa.com, http://allafrica.com/stories/200908070833.html
*18 All Africa.com, http://allafrica.com/stories/200907060924.html
(*本会議のプレゼンテーション入手先:http://www.omegaminingpartners.com/6th-annual.html)
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