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報告書&レポート

2009年10月9日 バンクーバー事務所  下田仁  副所長 村上尚義 資源探査部 探査第3課長 升田健蔵
2009年49号

カナダBC州現地調査報告

 カナダにおける銅生産を先導するBC(British Colombia)州。現在BC州には、金属8鉱山が稼働中であり、その内6鉱山において銅生産が行われ、カナダにおける銅鉱の半分近くを産出し、多くが日本をはじめアジア諸国に輸出されている。
 BC州エネルギー・鉱山・石油資源省及び中小企業・技術・経済開発省の協力の下、9月14日~17日の日程で、銅を中心とするBC州内の稼働鉱山とこれから開発される予定の銅鉱床開発プロジェクトについて調査を行った。資源の供給ソースの多様化に大きな役割が期待されるカナダ・BC州。本報告はそこで躍動する鉱業の現状の一端を紹介する。

図1. 調査対象銅鉱山・鉱床位置図
図1. 調査対象銅鉱山・鉱床位置図

1. はじめに
 本調査は昨年11月、エネルギー・鉱山・石油資源省のGordon Hogg (ゴードン・ホッグ)鉱業担当大臣(当時)が来日した際に、JOGMEC本部を訪問し提案されたものである。世界的にも卓越した鉱業地域と自負するBC州にとって、外国企業からの投資に大きな期待を抱いており、我が国企業のビジネスチャンスを積極的に広げる機会にしたいとの強い思いからの提案であった。
 今回の調査団は、我が国企業(鉱山会社、商社)のほかにBC州政府職員及び地質調査所の地質専門家、そしてJOGMEC職員3名と、総勢16名の多彩なメンバーからなる調査団であった。訪問先はHuckleberry鉱山、New Afton・Afton-Ajax両銅山開発プロジェクト、及びMyra Falls鉱山である。移動はチャーター機を使い、訪問先に関する基礎的知識を得るためのミーティングを調査前日に行い、地質調査所の地質鉱床専門家から一通りレクチャーを受けた。かなりの過密スケジュールではあったが、関係者のインタビュー等を通じて、鉱山の生産現場の実態や課題、適用技術や探鉱活動の現状等について、効率的に調査を実施できた。
 

写真1.調査前日のミーティング〔Huckleberry鉱山(左)〕 写真1.調査前日のミーティング〔Myra Falls鉱山(右)〕

写真1.調査前日のミーティング〔Huckleberry鉱山(左)、Myra Falls鉱山(右)〕

2. Huckleberry鉱山
 Huckleberry鉱山は、Vancouverの北約600km、BC州の中西部に位置し、最寄りの空港があるSmithersからは車で約3時間を要する。
同鉱山は日本グループ(三菱マテリアル(株)、DOWAメタルマイン(株)、古河機械金属(株)、丸紅(株))が50%、Imperial Metals社が残り50%権益を有するHuckleberry Mines Ltd.が操業を行っている。
 鉱床は銅・モリブデン斑岩型鉱床であり、1997年に露天掘で生産を開始した。開発当初と現状の埋蔵量は次のとおりである。
  埋蔵量(百万t)     品 位(%)        マインライフ(年)     
当初:90.4         Cu:0.513、Mo:0.014     16
2008年末時点:8.37   Cu:0.362、Mo:0.005     -
 
 現在、拡張Main Zone Pitから年間約600万tの鉱石が採掘されているが、今後は徐々にMain Zone Pitと拡張Main Zone Pitの中間に位置するSaddle Zone Pitへと採掘が移行していく計画であり、このため、西側にある尾鉱堆積場の水抜き等の準備が進められている。

写真1. 拡張Main Zone Pit〔Huckleberry〕
写真1. 拡張Main Zone Pit〔Huckleberry〕

写真2.選鉱場〔Huckleberry〕

写真2.選鉱場〔Huckleberry〕

 採掘された鉱石は選鉱場で処理されて金・銀を含有する銅精鉱とモリブデン精鉱に選別され、銅精鉱はトラックで輸送して米国AK(Alaska)州に隣接するStewart港から全量が日本に輸出される(モリブデン精鉱はVancouver港からヨーロッパへ輸出)。
 計画では閉山は2012年であるが、これを延長するためには新たな埋蔵鉱量の確保と尾鉱堆積場の建設が必要になる。
 酸性水が周辺環境に悪影響を及ぼすことがないよう、採掘に伴う捨石と選鉱場から排出される尾鉱については、全てNAG (Non Acid Generating)とPAG (Potentially Acid Generating)に区分して処理する。NAGは尾鉱ダム等の建設資材として使うが、PAGについては閉山後であっても永久に空気と接触することがないような方策、例えば水を溜めたEast Pitに沈める方法で処分することになっている(現在ダムを嵩上げ中)。

写真3. East Pit〔Hackleberry〕、写真4. 尾鉱堆積場(水抜中)〔Huckleberry〕

3. New Afton 銅山開発プロジェクト
 同プロジェクトはTeck Cominco社(現Teck)によって1990年代まで露天掘で操業されたAfton鉱山の露天掘跡地の下部を坑内掘で再開発するものである。Vancouverの北東約250km、BC州南部Kamloopsの西南西10kmに位置する。Trans-Canada Highwayに隣接するため交通の便は非常に良い。
 New Gold Inc.(本社:Vancouver)が100%所有する銅・金斑岩型鉱床の開発プロジェクトであり、2012年下期に生産開始の予定で年産計画量は銅75百万lb(34,019t)、金85千oz(2.6t)、銀214千oz(6.7t)、マインライフ12年間の計画となっている。
 旧Aftonピット跡には現在、水が溜まっており、氷河湖を思わせるコバルトブルーの美しい水を湛えた人造湖になっているが、この水深34mの湖のほぼ真下に残存鉱床が胚胎している。埋蔵鉱量は44.4百万t、品位はCu0.98%、Au0.72g/t、Ag2.27g/tとなっており、最も経済性が高く、技術的にも保安面でのリスクの小さいブロックケービング法によって採掘される。

             

写真5. 旧Afton鉱山ピット跡 写真6. 旧Afton鉱山ピット前にて
写真5. 旧Afton鉱山ピット跡 写真6. 旧Afton鉱山ピット前にて

写真6. コア置場〔New Afton〕
写真6. コア置場〔New Afton〕

4. Ajax銅山開発プロジェクト
 同プロジェクトは、Kamloopsの南西約10kmに位置する。  
 1989年にTeck Cominco(現“Teck”)が露天掘にて開発したが、1997年、銅価低迷により操業を中止し、Abacus Mining and Exploration Corp.(本社:Vancouver、以下“Abacus社”)が2002年に鉱業権を取得した。 
その後の調査によって銅・金のポテンシャルの確認がなされ、2007年、New Gold 社との間でJV契約を締結した。
 2つの旧露天掘ピット“Ajax West”、“Ajax East”が約1km離れてあるが、それらを再度採掘して、最終的には統合し同一ピットとして採掘を進める計画である。銅・金ポーフィリー型鉱床であり、可採鉱量は502百万t、品位 Cu0.268%、Au0.171g/tとされている。採掘に伴い842百万tの捨石(ずり)が排出されるが、その堆積場用地は十分ある。なお、前述のAfton Pitと同様、West Pitには水が溜まっているがその水の色は写真7に見るとおり、コバルト・ブルーではない。
 今後プレFS及びFSを行い、その結果次第で早ければ2012年より開発開始の計画となっているが、関係者の説明から開発に向けた熱意が充分に伝わってきた。
              

写真7. West Pit跡〔Ajax〕 写真8. West Pit前にて
写真7. West Pit跡〔Ajax〕 写真8. West Pit前にて

写真9. コア置場〔Ajax〕
写真9. コア置場〔Ajax〕

5. Myra Falls鉱山
 バンクーバー島のほぼ中央、入江のように細長いButtle湖の南端にMyra Falls鉱山はある。Strathcona-Westmin Provincial Parkの中に開発された珍しい(BC州では唯一の)鉱山である。最寄りの町はCampbell Riverで、車で約2時間の距離であるが、公園内ということもあり、その間に町らしきものはない。職員はCampbell RiverまたはComoxから鉱山が借上げたバスで通勤している。また、精鉱もこのルートを使ってトラック輸送され、Campbell Riverの積出港“Discovery Terminal”からアジアに向けて輸出される。
      

写真10. 精鉱積出港〔Campbell River〕 写真10. 精鉱積出港〔Campbell River〕
写真10. 精鉱積出港〔Campbell River〕 写真10. 精鉱積出港〔Campbell River〕

 Myra Falls鉱床はVMS(火山性塊状硫化物鉱床)であり、いわゆる日本の黒鉱に非常によく似た鉱床である。1966年、露天掘にて生産が開始された。現在はBreakwater Resource社(本社:Toronto)が操業し、週7日、24時間体制によって年産約60万tの鉱石の全量が坑内掘によって採掘されている。採掘方法は様々な方法を組合せて行われており、採掘に伴い発生する捨石は全て坑内採掘跡の充填材として使われ、坑外に捨石堆積場は無い。採掘された鉱石は立坑で上げた後、ベルトコンベアで選鉱場に運ばれ、銅、亜鉛の各精鉱として出荷される。2008年における粗鉱生産量は592,072t、精鉱中の金属含有量は亜鉛35,762t、銅5,024t、金13,994oz(0.4t)、銀661,228oz(20.6t)であった。

 調査団は坑内に入る前、保安に関するオリエンテーションを受けた。訪問者に対する説明はかなり熟れた様子で、通り一遍ではなく詳細で丁寧な説明に感服した。お世辞にも清潔とは言えないが上下繋ぎの作業服、JOGMEC側で用意した安全長靴、ヘルメットとキャップランプ、そして火災時用非常ガスマスク等々を着用して入坑した。立坑で-449mレベルまで降下し、まずは機械類を保管し、重機を修理する作業場(Shop)を見学した。その後、人車を使って切羽まで行った。坑道は充分な幅があるが、想像以上に坑内水が多く、歩くのに苦労した。深い箇所では膝まで届き、泥水に足を取られて転倒する者も一部あった。今回の現地調査の最後を飾るに相応しい貴重な体験となった。

写真12.坑内〔-449mL、Myra Falls〕 写真12.坑内〔-449mL、Myra Falls〕

写真12.坑内〔-449mL、Myra Falls〕

写真15.鉱石運搬ダンプトラック 写真16.岩盤変異測定〔Myra Falls〕
写真15.鉱石運搬ダンプトラック 写真16.岩盤変異測定〔Myra Falls〕
写真13.コア観察〔Myra Falls〕 写真13.コア観察〔Myra Falls〕

写真13.コア観察〔Myra Falls〕

写真14. 立坑前〔Myra Falls〕
写真14. 立坑前〔Myra Falls〕

5. おわりに
 カナダは隣国である米国と歴史的にも地理的にも強い関係にあるが、特に経済関係に関しては過度の米国依存から脱却すべく努力しているところである。
 2009年3月にはカナダ投資法が改正されて、審査を受ける外国からの投資基準が大幅に引き上げられた。審査対象基準額は段階的に引上げられ、5年後には10億C$以上の超大型案件のみが審査の対象になる予定である。この規制緩和は全ての外国企業が対象であるが、恩恵を最も享受するのが中国であるのは間違いない。昨年来の相次ぐ閣僚級の中国訪問でも明らかなように、連邦、州を問わず政府も中国からの投資に大きな期待を抱いている。BC州へ投資を呼び込むため、BC州政府は中国3か所に事務所を設けているが、日本や米国は1か所に過ぎない。
 このような中で日本としてもカナダの資源に対しては大いに関心を持ち、将来の投資につなげていく努力を維持することは極めて重要である。カナダとの関係をより強固にする上で、地政学的にも最も重要なBC州において今回の様な調査を実施できた意義は大きい。調査団に参加された企業の方々、調査団を快く受け入れていただき、また丁寧な対応をいただいた鉱山サイドの方々、実現に全面的な協力を頂いたBC州政府の方々に深く感謝を申し上げたい。

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