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報告書&レポート

2010年1月7日 企画調査部
2010年01号

2009年金属部門の十大ニュース

 JOGMEC企画調査部は、2009年の世界の金属鉱業情勢を概観し、JOGMECの観点から金属分野における十大ニュースを次のとおり選定し、以下に、それらについて解説する。

   No.1 金属価格の高騰~急落後の回復(在庫増との同時進行)
   No.2 日本企業による原料確保の進展
   No.3 JOGMECによる探鉱支援制度拡充と探鉱成果の民間への引継ぎ
   No.4 非鉄各社等によるリサイクル事業の強化
   No.5 資源ナショナリズムの一方で外資規制緩和の動き
   No.6 スーパーメジャー誕生の兆し
   No.7  中国企業のプレゼンス急拡大
   No.8  中国の資源囲い込みの懸念
   No.9  中国による金属備蓄
   No.10 中国による金属市場の牽引

No.1 金属価格の高騰~急落後の回復(在庫増との同時進行)

・金属価格は中国需要の急増を受け、2006~2008年上期に軒並み高騰したが、2008年9月15日のリーマンブラザーズの経営破綻を端緒として、金属価格は一斉に急落。
・ LME取扱金属である銅、アルミ、亜鉛、鉛といったベースメタル及び、ニッケル、錫の底値は2008年10月~2009年3月と比較的長期に亘る。

《LME取扱金属の底値期間》
ニッケル :2008年10月下旬~2009年3月
亜鉛 :2008年10月半ば~2009年2月
銅・鉛 :2008年12月~2009年2月
アルミ :2008年12月~2009年3月半ば
:2009年1月~2009年3月

・ 亜鉛、鉛は8月上旬に基点(2008年9月15日)水準超え、銅は11月下旬に超えて2009年12月末まで上昇基調にある。ニッケルは8月上旬に基点水準に達したがそれ以降はその基準線に絡んで上下している状況。アルミと錫は回復の足が鈍く、12月末時点で基点水準のほぼ9割水準にある。

図1.ベースメタルの価格推移(2008年9月15日基準)

・ 貴金属ロンドン市場の底値期間は、ベースメタルとは異なり、早くかつ短く、2008年10月半ば~11月間にあった。その後、回復に転じて金、銀、プラチナ、パラジウムは上昇基調にある。金は12月3日に史上最高価格を付け、銀の2008年9月15日以降の価格上昇率は上記のベースメタル等主要金属を含め最高の上昇率を示す。2009年における景気先行き不透明感、米ドル安から『代替通貨/無国籍通貨/第二の通貨』としての金を買う動きが高まり、2009年11~12月において連日の様に過去最高値を更新し続けた。G20財務相・中央銀行総裁会議で景気刺激策の継続が確認され、米国での低金利政策が続くとの見方が広がり対主要通貨でドル安が加速したことより、金に買いが集中している。
・2009年に入り、中国の4兆元(56兆円相当)に上る景気対策、世界各国の自動車や家電製品販売促進による景気刺激策もあって、まだら模様ながら経済指標に景気回復の兆しが見え始め、金属価格の上昇を下支えしていると見られる。特に、2009年2月以降、中国の自動車月間生産・販売量は急増し、3月以降は120万台弱の水準、9月には140万台に迫る勢いとなっている。
・中国の金属需要増は、引続き世界の金属需要を牽引しているが、2009年7月頃からのLME在庫増と金属価格上昇が同時進行している状況は、投機資金の流入と余剰在庫の存在を示すもので実需を反映していない局面として留意が必要である。
・中国の金属消費量は、見掛消費量(地金生産量+輸入量-輸出量)であり、実需(実際の消費量)はそれ以下の数量である筈である。実需の把握(推定)は課題であるが、見掛消費量と実需の差異は国家備蓄量、民間備蓄量、生産者・消費者在庫、及び投機目的の在庫等からなると考えられ、2009年初に実施された備蓄調達と平行してLME価格に比較して割高であったSHFE(上海期貨交易所)価格を利用したアービトラージ(裁定取引)貿易による地金輸入も増加したことから、在庫量は相当量に達しており、2009年後半から余剰玉がLME倉庫に持ち込まれ積み上がっている理由と報じられている。

図2. 貴金属の価格推移(2009年9月15日基準)
図3. LME銅価とLME在庫の推移(2006年1月1日~2009年12月31日)

No.2 日本企業による原料確保の進展

 金属価格高騰期における買鉱条件の悪化・精鉱の調達難、急速な中国の金属需要量の拡大に対処した、ハイテク産業用原料・素材の確保上の懸念の高まりにより、日本企業は原料確保策を積極的に打ち出している。(※以下、桁表示は次とする:百万⇒“m”、千⇒“k”)
《上流部門への積極投資》
Caserones銅鉱床開発プロジェクト〔PPC(パンパシフィック・カッパー㈱、100%)〕
 2009年9月9日、PPCは、2008年9月からFSを実施していたチリⅢ州Caserones銅鉱床の開発決定を発表した。CAPEX 1,860 mUS$、生産開始は2013年で当初5年間の平均生産量はSxEwカソード(年産30 kt)、同年半ばから銅精鉱(含有量ベースCu 150 kt)、モリブデン精鉱(同Mo 3kt)、マインライフ30年間の平均生産量はSxEwカソード(10kt)、銅精鉱(含有量ベースCu 110 kt)、モリブデン精鉱(同Mo 3kt)。埋蔵量は、精鉱生産用一次・二次硫化鉱1,070 mt、品位Cu 0.34%、Mo 125ppm、SxEw対象の酸化鉱・二次硫化鉱280 mt、品位Cu 0.30%。粗鉱処理量105 kt/日。
Quechua銅鉱床探鉱開発プロジェクト〔PPC(パンパシフィック・カッパー㈱、100%)〕
 2009年11月30日、ペルーQuechua銅鉱山開発プロジェクトのFS(30億円、2011年1月まで14か月間)開始を発表。2011年5月までにEIS(環境影響評価)承認取得、同6月~2014年7月間に鉱山開発、操業開始は2014年8月の予定でマインライフ30年間の銅生産量は1.3mtの計画。銅精鉱年産量270kt(銅量ベース76kt)。CAPEX 850mUS$。埋蔵量680mt、品位Cu0.38%(カットオフ品位Cu0.25%)
BioSigma(銅硫化鉱バイオリーチング技術研究)
 日鉱金属㈱ 33.3%とCODELCO 66.7%の共同出資によるバイオリーチング技術研究会社BioSigmaは、CODELCO発表によれば成果を挙げており、Andinaでのプロトタイプ試験が実施中でRadomiro Tomicで実用化の準備中。2009年6月、CODELCOと日鉱金属㈱の合弁会社BioSigmaが特許申請していた”Wenelen”と呼ばれるバクテリアについて、INAPI(チリ知的財産協会)が承認し、低品位銅鉱石からのバクテリア・リーチングに関するチリ初の知的所有権となった。
Similco銅山生産再開の権益25%取得〔三菱マテリアル㈱、25%〕
 2009年7月31日、三菱マテリアル㈱は、Copper Mountain Mining Corp(本社:Vancouver)とSimilco(加BC州南端部、標高1,050~1,300m)の25%権益買収で合意。生産開始計画は2011年Q2、年産計画量は銅精鉱150kt(Cu39kt、Au0.8t、Ag8.2t)、日粗鉱処理量35kt。埋蔵量211mt、品位Cu0.36%、Au0.099g/t、Ag1.378g/t。CAPEX460mC$。2010~2012年に終掘予定のHuckeberry銅山(年産能力:Cu32kt、Mo140t、Au0.2t)の後継銅山となる。
Coral Bayの生産能力倍増とTaganito HPAL事業化決定〔住友金属鉱山㈱、54%、100%〕
 2009年4月、住友金属鉱山㈱は、フィリピン・パラワン島で2005年4月より生産を開始したCoral BayのHPALプラント(Ni換算年産量10kt)の第2プラント建設を完了しNi換算年産能力量を22ktに倍増した。
2009年9月14日、住友金属鉱山㈱は、100%子会社のTHPAL社(Taganito HPAL Nickel Corp.、本社:マニラ)を介して、フィリピンの最大手のニッケル鉱山会社NAC社(2009年8月に16.5%の資本参加済み)と共同でTaganito鉱山で産出する低品位ニッケル硫化鉱を原料としてHPALプラントを建設しNi-Co混合硫化物(Ni換算年産量30kt)の生産計画決定を発表した。CAPEX1,300mUS$、建設工事2010年3月~2013年3月、試運転開始2013年4月、商業生産開始2013年8月、ライフ30年。
El Tesoro銅山(SxEw)、Esperanza銅山開発プロジェクト(チリⅡ州)の30%権益取得
 2008年4月24日、丸紅㈱は、Antofagastaとの間で、Esperanza銅山開発プロジェクト(2010年Q4生産開始予定)及びEl Tesoro銅山の30%権益を1,310mUS$により取得合意。EsperanzaのCAPEX 1,900mUS$の内、権益分の600mUS$を拠出でも合意し、総額1,910mUS$の投資額となる。年産量はEsperanzaが銅精鉱700kt(含有量:Cu200kt,Au7.2t,Ag50t)、El TesoroがSxEwカソード90ktであるが、丸紅㈱は210ktの銅精鉱を引き取る権利を有する。
《企業合併》
JXホールディングス:新日石と新日鉱ホールディングスは統合持株会社設立で合意
 2009年10月30日、新日本石油㈱と新日鉱ホールディングス㈱は、2010年4月に統合持株会社『JXホールディングス』設立を発表。石油精製、石油開発、金属の中核企業と東邦チタニウムといった上場子会社を傘下に置く売上高10兆円規模の総合エネルギー・資源・素材企業のJXグループが2010年7月に誕生する。
伸銅部門の合併:住友金属鉱山㈱と三井金属鉱業㈱の両部門が2010年4月に対等合併予定
 2009年5月29日、両社は、伸銅事業の統合を目的とした統合会社発足に向け詳細検討に入ることで基本合意に達したことを発表した。
《低品位鉱処理技術》
日鉱式塩化法(N-Chlo Process)
 日鉱金属㈱は、2008年6月24日、低品位銅精鉱から銅・金などを回収する方法開発を発表した。Newcrest Miningの協力を得て、豪Perthにパイロットプラント(湿式浸出、溶媒抽出、電解採取)を建設し実証化試験に入る。建設費28億円、操業費年間8億円、計36億円。生産規模は年100t。操業期間は2009年9月~2010年8月。貴金属を含有するが不純物を多く含み、低品位であるため乾式製錬に適さなかった銅精鉱を対象とし、銅だけでなく金・銀等の貴金属も効率的に回収する。
《資源確保への協同》
ボリビアでのリチウム資源
 2009年6月、ボリビア多民族国の首都ラパスにおいて、JOGMEC理事長を団長とする官民合同調査団は、エチャス鉱山冶金大臣と面談し、世界最大級の資源量を誇るUyuni(ウユニ)塩湖のリチウム資源開発をJOGMECはじめ日本の関係企業と共同で行い、これに対して関連する政府関係機関が様々な支援を行うことの重要性と、その具体的進め方につき日本側の考え方の説明を行った。この結果、現在、ボリビア側としては国家事業として自ら炭酸リチウムの生産を行う考えであるとしつつも、日本からの技術的・資金的協力につき強い期待が表明された。また、今後、開発に必要となるインフラ、技術データ等に関する情報交換及び将来の開発体制につき定期的に協議を行っていくことに合意した。〔JOGMECニュースリリース(2009年6月8日付)〕

写真1.Uyuni塩湖の様子

ベトナムでのレアアース資源探鉱・開発
『ベトナム:Dong Pao(ドンパオ)・レアアース鉱床開発に日本企業が参加へ』
 日本とベトナム間の石炭及びレアアースを含む鉱物資源分野の関係強化を図るため、第2回日越・石炭・鉱物資源政策対話が2009年1月15日にベトナムにおいて開催された(日本側代表:吉川経済産業副大臣、ベトナム側代表:Le Duong Quang商工副大臣)。この中で、VINACOMIN(Vietnam National Coal-Minerals Industries Group)のTran Xuan Hoa総裁は、Dong Pao(ドンパオ)レアアース鉱床について政府の承認を受け開発会社を設立済みで、日本企業と協力していくことについてVINACOMIN取締役会で承認済みであると発言した。また、日本企業を選定した理由として、開発資金及び技術を有することに加え、環境保護の実践を挙げた。〔ニュース・フラッシュNo.09-04(2009年1月28日付)2009.1.19ジャカルタ事務所次長小岩孝二 報告〕
 JOGMECは、Dong Paoレアアース鉱床の東側のLao Cai(ラオカイ)地域を対象とした共同資源開発基礎調査につき、平成19年10月25日付にて、ベトナム天然資源環境省地質鉱物資源局(DGMV:Department of Geology and Minerals of Vietnam)と覚書に署名し、日本が打上げた衛星だいちのデータによる衛星画像解析及びDGMVと共同で地質調査、物理探査等を実施し、基礎的な地質情報を入手することにより鉱床賦存の可能性を評価中であるがイオン吸着型に類似の鉱床を把握するなどの成果を上げつつある。

No.3 JOGMECによる探鉱支援制度拡充と探鉱成果の民間への引継ぎ

《鉄鉱石探鉱開発支援制度の運用開始》
 JOGMEC は、2009年3 月30 日付けで、双日㈱及び伊藤忠商事㈱が、豪州において推進している鉄鉱石探鉱案件2 件に対し、合計10 億9 千万円の融資を実行し、鉄鉱石への事業拡大を実現した。今回の海外探鉱資金融資は、双日㈱の現地子会社であるSojitz Resources & Technology 社が西豪州で推進するサウスダウン鉄鉱石プロジェクトに対して9 億4 千万円、また、伊藤忠商事㈱の現地子会社ITOCHU Minerals & Energy of Australia 社が北部準州で推進するローパーバー鉄鉱石プロジェクトに対して1 億5 千万円からなる。〔JOGMECニュースリリース(2009年3月30日付)〕

《ペルーAtalaya地域で高品位の多金属鉱床を把握しSanta Luisa社へ引継ぎ》
 2009年度に実施したAT-34孔において、着鉱長18.95mで品位Zn12.7%、Pb4.1%、Ag111g/tを含む有望な多金属鉱床を把握した。非常に高品位かつ大規模な鉱床で、近傍にSanta Luisa社(Compania Minera Santa Luisa S.A.)が操業する同種鉱床の鉱山であるPallcaに匹敵するポテンシャルを有する鉱床に発展する可能性を有する。Santa Luisa社は、三井金属鉱業㈱(70%)及び、三井物産㈱(30%)が100%権益を有するペルーの鉱山会社である。1968年よりHuanzala(ワンサラ)鉱山の操業を開始し、2006年にはPallca鉱山(三井金属鉱業㈱100%)も操業を開始している。2008年の生産量はHuanzalaが亜鉛29千t、鉛11千t、Pallcaが亜鉛12千t、鉛1千tで、両鉱山計で我が国が輸入する亜鉛の6.6%に相当する。(※両鉱山の開発にはJOGMECの前身であるMMAJ(金属鉱業事業団)による海外地質構造調査が貢献した。)〔JOGMECニュースリリース(2009年12月11日付)〕

写真2. Atalaya地域のボーリング調査

No.4 非鉄各社等によるリサイクル事業の強化

日鉱金属㈱
《HMC(日立リサイクリング・コンプレックス)》
 日鉱金属㈱は、日立事業所内に金属リサイクルの新工場群を建設するHMCを竣工した。2009年8月に第一期(Sb,Bi,Sn,Ni)完成、12月第二期(Zn,In)、2010年3月末に第三期(Cu,Au,Ag,Pt,Pd)が完成する予定。投資額は100億円。年間生産計画量は、Au 500kg、Ag 50t、Pt 200kg、Pd 800kg、In 6t、Zn 700t、Cu 6,000t、Sb 1,500t、Bi 200t、Sn 500t、Ni 500t。“大都市隣接型セカンダリー・スメルター”として機能させ、従来の製錬工程の中間産物なども原料とし、その操業安定化と品質向上に寄与する。
《南アのPGM製錬廃棄物からの回収事業》
 日鉱金属㈱は、佐賀関製錬所に数億円によりPGM回収設備を設置した。南アのPGM製錬所の鉱さいを輸入し同製錬所及びHMCプラントで白金、パラジウムを回収する。鉱さいは、年2~3回、百数十tを輸入し、月産生産計画量はPt数kg、Pd数10kg。
《台湾のリサイクル設備設置》
 2009年6月、電子部品くずなどを集積・破砕等前処理設備を新設、試運転開始。
《廃リチウムイオン電池からのレアメタル回収》
 2009年9月3日、使用済みリチウムイオン電池とその正極材からのレアメタル回収実証試  験(投資額12億円)を発表した。2011年を目処に事業化の計画。ニッケルとマンガンの月産計画量6t、コバルトと炭酸リチウム10tの計画で、磯原工場で製造する車載用リチウムイオン電池の正極材に使用するほか他社にも供給の予定。

三菱マテリアル㈱
《廃家電リサイクル処理能力の増強》
 2009年9月、傘下の東日本リサイクルシステムズは、集荷エリア拡大と2011年の地デジ移行に向けたブラウン管TV入荷増に対処し処理設備や保管倉庫を増設し処理能力を55%増強したと発表。PC、携帯電話の廃基板などリサイクル原料の集荷強化のため、都内に破砕拠点を新設。
《廃家電のモーター用磁石からのレアアース回収・再利用事業》
 2009年10月、廃家電やハイブリッド車のモーター用磁石からレアアースを回収・再利用する事業開始を発表。エアコンを圧縮機を解体し400℃の熱で磁石を取出し、エアコン1台当りディスプロシウム6~7gを回収する。

三井金属鉱業㈱
《廃電子回路基板からの貴金属・レアメタルリサイクル強化》
 2007年、竹原製錬所に大型投資し、環境炉の処理能力を3倍とし、貴金属(Au,Ag,Pt,Pd)を含む廃基板の受入を拡大。2008年には数億円を投じ、レアメタル(Sn,Sb,In,Bi,Se,Cu等10数種)回収強化のため焼成炉を設置、2009年度中に稼働開始。
《廃ニッケル水素二次電池のリサイクル》
 2009年7月、正極材のニッケル酸化物、負極材(水素吸蔵合金)のニッケル・MM(REE4元素)回収再生事業を開始を発表。
《鉛含有ガラスのリサイクル》  
 2009年9月、廃ブラウン管TVの鉛含有ガラスのリサイクル年処理能力を2010年に現状の8倍の年1万tに増強を発表(神岡:現1,200→3,600→6,000t、竹原:4,000t新設:投資額1~2億円)

DOWAホールディングス㈱
《小坂製錬のリサイクル製錬設備の改善》
 2009年4月、小坂製錬のリサイクル製錬設備(投資額140億円、2008年4月稼動開始)においてリサイクル原料主体の銅系原料と、銀・鉛の含有が高い製錬残渣を分離して処理する方式に改善し稼働率を現状の6割から2010年3月末までにフル生産体制とする。
《RHF炉ダストからの亜鉛回収》
 DOWAメタルマイン㈱は、2009年9月、亜鉛リサイクル事業への参入を発表。秋田に飯島製錬所向け原料の前処理工場(10月着工、2010年11月完成、年間処理能力(Zn換算)20kt)を建設し、12月に事業開始の予定。原料は、高炉や電炉など鉄鋼メーカーが自社発生ダストから還元鉄を回収するためのRHF炉から発生する酸化亜鉛(品位Zn50~60%)で、同前処理工場では亜鉛清浄液(Zn≧100g/L)を生産し亜鉛電解工程に供給する。
《東南アジアでの廃家電からのリサイクル原料確保》
 2009年2月、東南アジアの廃棄物処理会社を買収し、廃家電のリサイクル原料確保体制整えた。

三井物産㈱
《東南アジアでのリサイクル事業展開》
 2009年3月、世界最大の総合リサイクル企業、豪州シムスグループ(三井物産が20%の筆頭株主)とアジア市場を開拓する。 2008年の韓国での委託実績を基に東南アジアに展開する。シムスグループは、欧米を中心に世界240箇所に拠点を有するがアジアはインドのみ。廃基板の米国や豪州からの輸入は2008年から試験的に開始し、日本の製錬事業者に販売、2009年度に本格始動の予定。累計投資額は950億円。シムスグループの鉄・非鉄スクラップ年取扱量16mt、廃家電・廃基板取扱量でも世界第1位。2008年売上高5,400億円。

No.5 資源ナショナリズムの一方で外資規制緩和の動き

《インドネシアの新鉱業法の施行》
 2005 年5 月の法案上程以来3 年7 か月にわたって国会で審議されてきたインドネシア新鉱業法(鉱物石炭鉱業法)が2008 年12 月16 日に国会本会議で承認され、2009 年1 月12 日に大統領の署名を経て公布、施行された。主要な制定事項は次のとおり:
(1) 鉱業権は、国または地方政府から発給される鉱業事業許可制度に一本化され、これまで外国からの投資に活用されてきたCOW(鉱業事業契約:Contractof Work)制度は廃止された。
(2) 既存COW は契約期限内有効。ただし1 年以内に新法に適合させなければならない。
(3) インドネシア国内での生産物高付加価値化(製錬・精製)義務を新たに追加。既存COW により生産を行っている者も、5 年以内に国内での高付加価値化を実施しなければならない。
(4) IUPK による生産には、新たに10%のNet Profit Royalty を追加。
(5) 外資インドネシア法人による鉱山開発の場合、生産開始5 年後に国、地方政府、インドネシア民間企業等に一部資本委譲義務あり。
(6) 政府に生産量、輸出量をコントロールする権限を付与。
(7) 政省令は1 年以内に制定。それまでの間は旧政省令を矛盾しない範囲で適用。
 〔出典:金属資源レポート、2009年 3月号『インドネシア新鉱業法について』〕
《DRCコンゴ》
 DRCコンゴ政府は、1998~2003年間の内戦による混乱期に締結された鉱業契約が不平等であるとし、2007年から見直しを行っている。今回の鉱業契約見直しでは61件の鉱業契約が見直され、例えばTenke Fungurume銅プロジェクトについては、DRCコンゴ政府が権益比率を17.5%から45%に増率することを要求していた。当初の見直し期限とされた8月では決着せず一番最後まで残っていたが、交渉期限の10月11日までに決着しなかったためDRCコンゴ閣議に付されることとなった。同プロジェクトの現在の持分権益はFCX57.75%、Lundin Mining(本社:加Toronto)24.75%、Gecamin(DRCコンゴ政府)17.5%であり、FCXでは既に同プロジェクトに20億US$を投入していた。
 今回の見直しの内、鉱業権が取消されたプロジェクトとしてFirst Quantum Minerals Ltd.(本社:加Vancouver)のKolwezi Tailing銅・コバルト回収プロジェクトがあり、11月の報道によれば、DRCコンゴ最高裁は、鉱業権取消しを支持し6mUS$の罰金を課す判決を下した。今回更新された鉱業契約の内、25プロジェクトは、2009年12月末がFS終了期限となっており、FSが終了しない場合には鉱業権が取消される恐れがある。
  
《外資規制緩和の動き》
 一方で、外資規制緩和の動きも見られた。
 エクアドル:コレア政権の誕生で、資源の国家管理が強まる中、2008年4月に鉱業指令(Mondato Minero)が成立した。これは、休眠鉱区の権利取消しや鉱業権取得件数の制限、さらに、新鉱業法公布まで探鉱開発活動を凍結(零細鉱業を除く)することなど、鉱業活動を大きく制限するもので、鉱業界は当然これに反発したが、2009年に入り、Kinross、IamGoldといった産金企業の鉱区に関するは解除令が出され、鉱業活動を再開することができるようになった。しかし、現在、金属と非金属の26プロジェクトが指定されているが、今後各プロジェクトは、新設される鉱業公社の管理下に置かれ、探査の環境ライセンスの取得、FS作成などから新たに活動が開始されることが明らかにされた。

 モンゴル: 2009年10月6日、Oyu Tolgoi銅・金プロジェクト(銅 26.30mt、金 819t)に関する契約がIvanhoe、Rio Tintoと政府との間で署名された。その内容は、政府権益34%、超過利益税(Windfall Tax)の導入取止め、損金繰越期間(Loss rollover period)4~8年などとなっている。また、Tavan Tolgoi石炭プロジェクト(政府100%、64億t)の権益49%売却(2009年末決定)にBHP Billiton、Shenhua Energy社などが参加意思を示している。このような大型プロジェクトへの参入条件が外資にも受け入れられる内容であったことから、今後、モンゴル鉱業への外資による投資が加速することが期待される。

 ザンビア: Mwale(ムワレ)鉱業産業大臣は、2009年8月25日、2008年銅価が高騰した際に導入した超過利潤税の再導入を見送る旨を表明した。これは、世界の金属価格が上昇基調ではあるものの、ザンビア鉱業分野への外資による投資を促進するためとし、外資系鉱山企業はこの決定を歓迎している。2008年、ザンビアでは、15%の利益複数税、鉱物資源向けの25%超過利潤税が導入され、更には法人税が25%から30%に、鉱物資源ロイヤルティが0.6%から3%に引き上げられ、外資系鉱山企業からは銅価により税制が変更されることは不公平であるとの意見が出ていた。

No.6 スーパーメジャー誕生の兆し

 2006年以降、中国が牽引する金属需要と当面予想される安定した成長見通し、それに伴う高騰した金属価格の状況に対応して、大型の鉱業M&Aが相次ぎ、いわば『スーパーメジャー』、つまり、事業寡占度と財務規模において、オイルメジャーに匹敵するようなメジャーの誕生が懸念されるような動きがあった。
【2006年以降の主な鉱業M&A】
・2006年10月、ValeによるInco買収。
・2007年3月、FCXによるPhelps Dodge吸収合併。
・2007年7月、RTによるAlcan買収。
<2007年8月、サブプライム問題>―――――――――――――――――――――――――
・2008年3月、XstrataのValeへの身売り検討(見送り)
・2008年6月、XstrataによるLonmin買収オファーが報じられたが、マイナーシェアの株式取得に落ち着いた。
<2008年9月、リーマン・ショック以降、年末に年明けに掛けて金属価格が急落>―――
・2008年12月、BHPBはRT買収断念を発表
・2009年2月、RTとChinalcoは戦略協定に合意。ChinalcoはRTが有する鉄・アルミ・銅の主要な鉱業資産の一部権益を取得する見返りに19.5bUS$の資金提供を行うという内容。
・2009年2月、MinmetalsはOZMに買収オファー。
・2009年6~8月、Xstrataは、6月にAnglo Americanへの買収オファーを行い、即座に拒否されると、8月にはLonminに対し再度買収オファーを行った(10月にAnglo American買収を撤回)。
・2009年6月、MinmetalsによるOZ Minerals買収成立(Prominent Hill、Martabe除く)
・2009年6月、Rio TintoはChinalcoとの戦略協定を破棄。
       Rio TintoはBHPBと豪WA州での鉄鉱石生産に係る新会社設立で合意。
       (12月、2010年H2に合弁会社設立、BHPBによる58億US$支払い合意を発表)

No.7 中国企業のプレゼンス急拡大

Chinalco(中国鋁業公司)
《Rio Tintoの9%株式取得、戦略協定の一旦合意と破談》
 2009年2月、RTとの戦略協定合意を電撃発表し、RTが所有する鉄・アルミ・銅の主要資産の権益を取得する公算であったが2009年6月、RTから合意破棄の申し入れがあり見送られた。その後もRTとの協議が継続されておりモンゴルOyu Tolgoi銅・金鉱山開発プロジェクトに関し、何らかの提携があるものと目されている。
《ペルー・Toromocho銅・モリブデン鉱山開発》
 ペルー・Junin県でToromocho銅・モリブデン鉱山開発中〔生産開始2012年Q4、CAPEX 1,390mUS$、埋蔵量1,260.7mt、品位Cu0.53%、Mo0.018%、Ag7.16g/t〕。

Minmetals(中国五鉱集団公司)
《OZ Mienrals(OZM)の主要鉱業資産の買収》
 2009年、OZMに買収オファーを行ったが、豪州政府はProminent Hill銅・亜鉛鉱床が軍事エリア内に位置することを指摘され、これを買収対象から除外、また、インドネシアのMartabe金鉱床も除外し、それら以外の豪州における鉛・亜鉛、銅・金鉱業資産を総額1,354mUS$(当初提示額1,814 mUS$)での買収が、現地法人を豪州に置き、適正な市場価格で売鉱することなどを条件に2009年6月、成立した。過去、Noranda、米国の石油会社、Disputada、Falconbridgeなど多くの大型買収案件に名乗りを挙げつつも実現きでなかったMinmetalsであるが、初のまとまった大型買収の成功となった。
《湖南有色金属控集団公司の51%買収》
 2009年12月28日、湖南有色金属控集団公司を51%株式買収で合意。Minmetalsは湖南の増資を引き受け49%株式を56億元(750億円相当)で取得し、2%を湖南省から無償での譲渡を受け51%とする。
《ペルー・El Galeno銅・モリブデン鉱床開発》
 ペルー・Cajamarca県でEl Galeno銅・モリブデン鉱床を開発中であるが、現地襲撃事件発生などで障害が発生している。
《Jiangxi、Zijing Mining、Jinchuan Groupなどその他の中国企業》
 ペルー、チリ、南アはじめアフリカ諸国などに鉱山の権益取得を活発化している。

No.8 中国の資源囲い込みの懸念

・2004年、中国政府はEL(輸出許可枠)をREEに適用した。これにより中国国内のREE生産企業は自由に輸出することは出来ず、国の認可枠内に制限されることとなった。
 輸出増値税還付率(鉱種に応じて13~17%)は、2004年以降に縮小され、2005年5月1日付けで撤廃された。
 2006年以降、REEへの輸出税課税が開始された。

レアアースの輸出関税率(%)の推移
  2006年初 2006年11月 2007年6月 2008年初

希土類鉱石

0

10

15

15

金属Nd

0

0

10

15

金属Dy

0

10

10

25

金属Tb

   

10

25

電池用MM

0

0

10

25

Ce化合物

0

10

10

15

酸化Y・Eu

0

10

10

25

酸化La・Nd

0

10

10

15

酸化Dy・Tb

   

10

25

塩化Tb・Dy

     

25

混合塩化物

0

10

10

15

炭酸La

     

15

炭酸Tb・Dy

     

25

混合炭酸希土

0

10

10

15

その他化合物

0

10

10

25

(出典:レアメタル・ニュース No.2339(2008年2月8日))

・2008~2009年にレアアースのEL枠は、図4に示すとおり他の金属と比べて厳しく制限された。その根拠としては、図7に示すとおり、2006年以降の中国内需の急増にあるものと考えられる。

図4.輸出割当量の推移
図5.レアアース:中国内需と輸出の推移

No.9 中国による金属備蓄

・世界有数の資源保有・生産・消費国である中国は、急激な世界景気後退の端緒となった2008年9月15日のリーマンショック以降、それまでの“走出去 (中国企業の海外進出)”と並行して、資源政策の機軸の一つとして金属備蓄を強化・実施した。その金属備蓄が、2009年明け以降の金属価格回復の要因の一つと見られている。金属備蓄は中央政府のみならず地方政府も実施している。
・中央政府の所管機関は、国家発展改革委員会の下部機関であるSRB(国家物資備蓄局)であるが、その備蓄目的は、市場の安定及び戦略的備蓄である。
・地方政府による金属備蓄については、北から陜西省、河南省、湖南省及び州市、江西省及びc刻B市、雲南省、広西壮族自治区と報道されている。これらは、省内あるいは市内の地場産業支援や雇用の確保を目的としているとされる。湖南有色金属集団公司のように傘下の企業が生産した地金を買い付ける民間備蓄も報じられているが、このような企業による備蓄資金については銀行が備蓄金属を担保に融資し、地方政府は利子補填により支援している模様。
・国家発展改革委員会・産業協調司の責任者は、6月末、金属価格の上昇を受け、政府による備蓄は一応の成果を上げたとして国家備蓄を一時停止すると発表した。この時点での主要金属の備蓄量は次と報道された。
アルミ:690kt、銅:240kt、亜鉛:159kt、インジウム30t、チタン5kt等
その後に、それら備蓄金属の放出に関する報道はない。

図6.銅価格の推移(2008年7月~2009年6月)と中国における備蓄調達状況

No.10 中国による金属市場の牽引

 2008年9月のリーマンショック以後の世界的な景気減退期にあって、米国・日本・韓国・EU等主要金属需要国の金属消費量の減退を補ったのはやはり中国であった。図7に示すとおり、日本の銅消費量は2008年11月~2009年4月間に大きく落ち込んだが、中国は2008年9月以降、例年の1月の落込みを除いて上昇基調にあり、月間400 kt水準であったものが2009年6月には680 ktに達し、7~10月は520~630 kt(日本70~90 ktの7~10倍)で推移している。

図7.主要な銅消費国の月間消費量の推移

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