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報告書&レポート

2010年4月8日 バンクーバー事務所  下田  仁
2010年16号

PDAC 2010報告

 2010年3月7日~10日、カナダのTorontoで世界最大の鉱業イベントPDAC 2010が開催された。会場のMetro Toronto Convention Centerには、世界中から多数の鉱業関係者が集まった。本来3月といえばTorontoはまだ厳しい寒さの中にあるはずであるが、2010年は暖冬の影響でうららかな春の日差しに包まれていた。オリンピックの興奮を残したカナダ最大の都市で開催された鉱業大会。会場の内外は2009年とは明らかに異なる雰囲気で満ちていた。
 JOGMECバンクーバー事務所は、2009年同様ブースにJOGMECパビリオンを設置した。ブースを使っての展示は2004年から毎年続いており、今回で7回目となる。2010年のJOGMECパビリオンはスペースを拡大して、JOGMECの事業に関するPRのみならず、新規案件に関してジュニアカンパニー等との意見交換も数多く行った。
 2009年のPDACは金属価格の下落と金融危機のために会場全体を重苦しい空気が支配していた。今回は大きく変わって活況を呈することとなったPDAC 2010、その様子と印象について報告する。

写真1. 会場のMetro Toronto Convention Center 写真2. 会場入口
写真1. 会場のMetro Toronto Convention Center 写真2. 会場入口

1. PDAC 2010の概要
 PDAC(the Prospectors & Developers Association of Canada)のInternational Convention, Trade Show & Investors Exchange は1932年にスタートして2010年で78回目となる伝統ある鉱業大会である。毎年3月Torontoで開催されるPDACは、世界中が最も注目している鉱業大会であり、そのことはMiningにかかわる者なら誰でも知っている。
 2009年のPDAC 2009は未曽有の経済危機のために、前年に比べて参加登録者や出展企業の数を大幅に減少させての開催となった。全ての鉱山会社や探鉱会社が生き残りをかけてあがいていた。しかし、中国の旺盛な鉱産物需要によって、価格は大会直後上昇に転じた。このため今回は登録ベースではあるが史上最高を記録して、参加者も大幅に増やした模様である。
 これまでの参加者数は、2006年:14,500人、2007年:17,600人、2008年:20,000人と着実に増やして、ついに2万人の大台に乗せたが、前回の2009年は18,000人程度の規模にとどまった。これが今回は2万人の大台に戻すのは確実と言われている(参加者数や参加国数、出展企業数等の正式な数字は4月にPDAC事務局が発表する予定)。会場を行き交う人々の数と明るい表情からも、鉱業を取り巻く状況が改善しているのは明らかだ。
 同じ鉱業大会でも毎年Vancouverで開催されるROUNDUPは、2010年(ROUNDUP 2010)はオリンピックのためか、1月下旬に1週間繰り上げて開催されたが、例年に比べてジュニアの出展が減少したような印象を持った。このためPDAC 2010についても影響を心配したが、やはり世界最大の鉱業大会であり、他の鉱業大会とは大きく違っていた。集う参加者数や各国政府及び海外企業からの出展数は桁違いに多いため、会場の中で伝わる熱気は、鉱業の再復活とカナダが世界の鉱業の中心に位置することを改めて強く印象付けるものであった。
 広大なPDAC会場は、大きくは展示場と会議場とで構成されている。さらにその展示場は、探鉱会社や鉱山会社が展示する「Investors Exchange」と、各国政府や関係機関そして分析、ボーリング会社等サービス関連の企業が展示する「Trade Show」に分かれる。JOGMECのブースもこのTrade Showのフロアーのなかにあり、今回は初めて区画を増やして2区画を借りて展示することになった。
 会議場エリアではこういった展示以外に、Convention Programとして多くのテクニカルプログラムや企業の投資説明会等が終日行われた。また、会場周辺のホテル等ではレセプション等のイベントが数多く開催された。なお、Investors Exchangeとは別に、会議場と展示場の間のスペースを活用した探鉱会社による展示(Core Shack)も行われた。

写真3. 会場Reception(1) 写真4. 会場Reception(2)
写真3. 会場Reception(1) 写真4. 会場Reception(2)

写真5. Investors Exchange会場入口 写真6. Trade Show会場入口
写真5. Investors Exchange会場入口 写真6. Trade Show会場入口

(1) Investors Exchange
 Investors Exchangeの会場はPDACの中心であり最も熱気のある会場である。ジュニア探鉱会社を中心に1000以上のブースにおいて新規プロジェクトに関する展示が行われ、各社が熱心な説明を行っていた。世界中の投資案件(とは言ってもやはり南北アメリカのプロジェクトが多い)が一堂に集まり、商談や情報交換が活発に繰り広げられている光景を目にすれば、鉱業に関しては完全復活とまではいかなくとも一時の勢いをかなり取り戻したと感じることができる。

写真7. Investors Exchange会場風景(1) 写真8. Investors Exchange会場風景(2)
写真7. Investors Exchange会場風景(1) 写真8. Investors Exchange会場風景(2)

写真9. Investors Exchange会場風景(3) 写真10. Investors Exchange会場風景(4)
写真9. Investors Exchange会場風景(3) 写真10. Investors Exchange会場風景(4)

 鉱業の最新動向を直接肌で感じることができるのは、各社が積極的に案件のPRを行うこの会場であり、会場全体を一通り回れば新しい時代の趨勢を見ることができる。会場が広いため全てのブースをつぶさに見ることはできないが、やはり金の探鉱案件が多いことは2009年と同じであった。そしてウランは大きく減少して、その代わりとしてリチウムとレアアース、ニッケルの案件が増えた印象である。一方、ベースメタル、特に鉛、亜鉛の案件は、2009年よりも減少してほとんど見なくなってしまった。
 2009年は一部のブースに空室があって会場全体に重苦しい雰囲気が漂っていたが、2010年は各ブースの説明者の様子も明るく活気があった。また、各ブースの中国重視も印象的で、ブースによっては中国語を話す担当者(多くはアルバイトで、中国系カナダ人が当地に多いからこそ可能ともいえる)を専門に置くなど明らかに中国シフトの対応を敷いているブースもあった。中国に対する期待感をますます大きくしていることが随所に窺えた。この会場にブースを借りられない探鉱会社も多く、会場ブースの空きを待っている会社(約60社)は会場外に設けられたCore Shackにおいて展示を行っている。

写真11. Investors Exchange会場風景(5) 写真12. Investors Exchange会場風景(6)
写真11. Investors Exchange会場風景(5) 写真12. Investors Exchange会場風景(6)

写真13. Core Shack展示会場風景(1) 写真14. Core Shack展示会場風景(2)
写真13. Core Shack展示会場風景(1) 写真14. Core Shack展示会場風景(2)

(2) Trade Show
 この会場は各国政府及び関連機関の展示ブースが中心となる。地元カナダは連邦及び各州からの参加があり、もちろん最大である。このほか豪州、メキシコ、ペルーといったJOGMECと関係の深い資源国はほぼ全て(地震が発生したチリを除く)、さらには南ア等のアフリカ諸国やアジア、欧州からも多数の参加があった。自国への投資を促進するために資源国が中心となるが、それぞれ国の特徴を出すなり工夫を凝らした展示を行っていた。夕方になるとビール等飲物を振舞う(2009年は有料であったが2010年は無料も多くあった)ブースもあった。

写真15. カナダOntario州展示場 写真16. カナダBC州展示場
写真15. カナダOntario州展示場 写真16. カナダBC州展示場

 このような中で強い印象を受けたのは、やはり年々存在感を着実に拡大している中国と、前回に比べてパビリオンを広げたインドの進出である。中国系の企業の出展も含め、中国からの参加者はここ2~3年急激に数を伸ばしていると聞く。2009年同様会場内で熱心にメモを取りながら話を聞いている中国人の姿を何度も見かけた。この大会に対する中国の熱の入れようは我々が想像する以上のものがある。
 また、2010年のインドは鉱山省と各州政府が共同で大きなパビリオンを設けており、今後PDACにおけるプレゼンスを拡大してくるのは間違いない。
 こういった中で残念ながら日本からの参加者は2009年同様多くはない。展示という形での参加は例年通りJOGMECとカンボジアとアルバニアのプロジェクトを紹介するJICA のみ。日本企業からの出展は全くない。

写真17. ブラジル政府展示場 写真18. 豪州政府展示場
写真17. ブラジル政府展示場 写真18. 豪州政府展示場

写真19. 中国政府展示場 写真20. インド政府展示場
写真19. 中国政府展示場 写真20. インド政府展示場

2. JOGMECブースについて
 今回で7回目となるブースの展示であるが、例年同様Trade Show会場の区画を借りて展示した。ただし、すでにご紹介したように今回は2区画を使ったため、JOGMECの活動に関するPRのほかに意見交換を行うスペースも設けるなど、プロジェクトを積極的に発掘する観点からも効果的な活用が可能になった。訪問者数は数百人規模で2009年と大差無いが、事務所で用意したJOGMECのロゴ入りボールペンの数を削減したため冷やかし客は明らかに減少した。
 2009年に比べ金融事情も緩和されてきたとはいえ、プロジェクトを提案するために企業がわざわざJOGMECブースを訪問するケースが著しく多くなっている。今回のJOGMECブースが有望なプロジェクトを発掘する場として十分に活用できたことと思っている。
 JOGMECの知名度に関して言えば、全体として引き続きPRを行っていく必要性はあるものの、今回で7回目ともなればかなり認知されてきた感はある。
 今回はJOGMECとNatural Resources Canada(NRCan)が共同でNorthwest Territoriesにおいて実施しているメタンハイドレードの生産テストに関するパネルも展示した。訪問者は学生からGeologistまで多様であり、JOGMECの幅広い活動について一般の人にも分かりやすいPRの方法を検討することが、次回以降の課題である。

写真21. JOGMECブース(1) 写真22. JOGMECブース(2)
写真21. JOGMECブース(1) 写真22. JOGMECブース(2)

写真23. JOGMECブース(3) 写真24. JOGMECブース(4)
写真23. JOGMECブース(3) 写真24. JOGMECブース(4)

3. おわりに
 カナダは世界のMiningをリードする資源国の一つである。PDACの会場に一歩入ると、カナダが世界の鉱業の一つの中心にあることに納得がいく。大小さまざま多数の鉱山会社が一堂に会し、世界中の探鉱案件についての情報交換が行われている。カナダ国内の案件よりもむしろ南米等の国外の案件の方が多い様な印象も受けた。つまりPDACに参加することで世界の鉱業の動きを知ることができ、参加しないとその最新の動きに乗り遅れることが心配される。
 世界が注目するこのような場において日本企業の存在感が薄いということは、資源の輸入大国として大変残念であり懸念を抱く。逆に中国、インド、韓国などは、資源開発の重要性を自ら認識し、その存在感を急速に増している。資源の獲得競争が世界的に激しさを増す中、情報収集のみならず日本のプレゼンスを拡大する意味でもPDACに参加する意義は大きい。
 JOGMECは金属資源の探鉱だけではなく、石油・ガス、備蓄、環境等の非常に幅広い活動を行っている。JOGMECをパートナーとすることのメリットを積極的にPRするなど、新たな戦略的対応が求められる。資源国のポテンシャルを最大限に引き出すうえでJOGMECの役割は大きいと感じた。

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