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報告書&レポート

2010年4月22日 サンティアゴ事務所  大野克久
2010年18号

2009年 チリの銅・モリブデン生産及び輸出入動向について(その2)

 1. モリブデン生産及び輸出入動向
(1)生産・輸入
 チリにおいては、モリブデンは銅の副産物として、モリブデン精鉱が生産されているが、モリブデン価格次第では、銅キャッシュコストがマイナスになる場合もある等、モリブデンを産出する銅鉱山では重要な収入源の位置づけである。
 2009年のモリブデン生産量は、34.9千tで2008年比1.2千t(3.7%)増であった(表1)。しかし、チリ全体として銅鉱山から産出されるモリブデンは近年減少傾向にあり、2005~2009年の過去5年で約13千t(27.3%)減少している(表1、表2)。
 これは、CODELCO Norteのモリブデン品位低下によるところが大きく、その減少分を補完する形で近年はモリブデン精鉱輸入が拡大している状況である。
COCHILCOによると、CODELCO Norteでは今後2、3年は高品位部を採掘予定なので、CODELCOのモリブデン生産量は増加し、さらに2010年にはLos Pelambres、Collahuasi、Andina(第1期)等モリブデンを含有する銅鉱山生産拡張工事が完了することから、2010年のモリブデン生産量は40千t程度に回復することを見込んでいる。
 モリブデン精鉱の輸入先は、米国、メキシコ及びペルーで輸入量の90%以上を占めているが、2009年はペルーのモリブデン生産減少したことに伴い輸入量が減少し、メキシコからの輸入が増加している(図1)。
 生産・輸入されたモリブデン精鉱は、モリブデン精鉱のまま輸出される他、モリブデン焙焼鉱、フェロモリブデン、三酸化モリブデンの形態に加工され、輸出される。
 ちなみに、モリブデン焙焼鉱はCODELCO、Molymet、Xstrata及びAACで生産され、フェロモリブデン及び三酸化モリブデンはMolymetで全量生産されている。
 Molymetは、2010年1月にチリ第Ⅱ州Mejillonesに13.6千t/yのモリブデン焙焼プラントを建設した他、XstrataもAltonorte製錬所で休止中の焙焼プラントを再稼働させる他、モリブデンリーチングプラント(モリブデン精鉱中の銅除去)も建設予定で、これが完成するとAltonorte製錬所のモリブデン焙焼鉱生産能力は12千t/yから28千t/yに拡大することになる。

表1. チリ モリブデン生産・輸出入一覧(Mo量:一部JOGMEC推定)
単位:t(Mo量)、輸出量下段 %
  2005 2006 2007 2008 2009(p) 2009/2008 増減
割合%
生産量 48,040.7 43,277.6 44,912.1 33,686.5 34,924.9 1,238.4 3.7
輸入量
  Mo精鉱 11,880.3 12,143.2 15,290.2 15,059.6 17,735.7 2,676.1 17.8
小計 [1] 59,921.0 55,420.8 60,202.3 48,746.1 52,660.6    
輸出量
  Mo焙焼鉱 24,275.6 24,823.9 25,980.1 28,326.5 35,385.5 7,059.0 24.9
46.8 42.0 41.5 55.7 68.2
Mo精鉱 18,901.1 21,435.4 24,203.9 8,557.6 7,401.0 -1,156.6 -13.5
36.5 36.3 38.6 16.8 14.3
フェロMo 5,746.8 8,680.6 9,102.8 10,368.6 6,640.0 -3,728.7 -36.0
11.1 14.7 14.5 20.4 12.8
三酸化Mo 2,914.7 4,104.9 3,365.2 3,587.7 2,464.2 -1,123.5 -31.3
5.6 7.0 5.4 7.1 4.7
小計 [2] 51,838.2 59,044.9 62,652.1 50,840.4 51,890.6 1,050.2 2.1
バランス [1]-[2] 8,082.9 -3,624.1 -2,449.8 -2,094.3 770.0 2,864.3
出典:COCHILCO、チリ・Servicio Nacional de Aduanas
※純分換算:Mo焙焼鉱60%、Mo精鉱56.6%、フェロMo62%、三酸化Mo66.7%

表2. チリ主要鉱山別モリブデン生産量一覧
単位:千t(Mo量)
  2005 2006 2007 2008 2009(p) 2009/2008増減
率 %
CODELCO 36.6 27.2 27.9 20.4 22.0 1.61 7.9
  CODELCO Norte 26.8 17.8 19.1 12.9 14.0 1.06 8.2
Salvador 1.3 1.4 1.2 0.9 1.0 0.13 14.9
Andina 3.2 3.3 2.5 2.1 2.0 -0.12 -5.7
El Teniente 5.3 4.8 5.1 4.5 5.0 0.54 12.2
Collahuasi 0.8 3.4 4.0 2.5 不明    
Los Bronces 2.1 2.6 2.6 2.5 不明    
Los Pelambres 8.7 9.9 10.2 7.8 7.8 0 0.0
Salvador 1.3 1.4 1.2 0.9 1.0 0.13 14.9
その他 -1.4 -1.1 -0.9 -0.4 不明    
合計 48.04 43.28 44.91 33.69 34.92    
出典:COCHILCO、RMD
※データの関係で、その他がマイナスになっている。

図1. チリ モリブデン精鉱輸入量(国別、年別)
図1. チリ モリブデン精鉱輸入量(国別、年別)

(2)モリブデン鉱産物輸出状況
 チリ国内で生産・加工されたモリブデン精鉱、モリブデン焙焼鉱、フェロモリブデン及び三酸化モリブデンの形態に加工され輸出されているが、過去5年間でモリブデン焙焼鉱輸出が20%程度拡大し、2009年にはモリブデン生産の約70%がモリブデン焙焼鉱として輸出されている(表1、図2)。
 モリブデン焙焼鉱について、2009年輸出量は、35.4千t(グロス)で2008年比7.1千t(24.9%、グロス)増であった。輸出先では、日本、中国、韓国、オランダ、ブラジルの5ヶ国で約90%を占める(表1、図3)。
 リーマンショック前の2007年までは、日本向けが約50%で最大の輸出先であったが、2009年は2008年まで殆ど輸出されていなかった中国向けが19.7千t(33.5%、グロス)で最大の輸出先となっている(図3、図4)。
 従来、モリブデン市場における中国の位置づけは、自国生産のモリブデン精鉱(約40千t:Mo量)及び海外からのモリブデン精鉱輸入により、モリブデン焙焼鉱等モリブデン鉱産物として加工し、輸出するポジションであったが、2009年はモリブデン鉱産物輸出が大きく減少している(表3)。
 中国のモリブデン焙焼鉱の大幅な輸入増の背景には、2009年に銅地金同様に中国国家備蓄局(SRB)によってモリブデン備蓄が実施された(市場報道)こともあるが、モリブデン価格が上昇基調の2010年でも輸入は継続している状況を踏まえると、依然として中国のモリブデン需要が強いと考えられる(2010年2月時点で5.8千t、うちチリからの輸入が2.7千t(ともにグロス))。
 モリブデン精鉱についても、同様に、輸出量の約30%である3.9千t(グロス)が中国向けに輸出されている(図5、図6)。
 一方、フェロモリブデンについて、チリからの中国向け輸出は無く、リーマンショックで2008年輸出量は減少したものの、2009年は徐々に回復基調に向かっていると考えられる(図7、図8)。

図2. チリ モリブデン鉱産物輸出量(Mo量換算)
図2. チリ モリブデン鉱産物輸出量(Mo量換算)

図3. チリ モリブデン焙焼鉱輸出量(国別、年別)
図3. チリ モリブデン焙焼鉱輸出量(国別、年別)

図4. チリ モリブデン焙焼鉱輸出量(国別、四半期別)
図4. チリ モリブデン焙焼鉱輸出量(国別、四半期別)

表3. 中国 モリブデン鉱産物輸出入推移
単位:t(グロス)
  2005 2006 2007 2008 2009
Mo精鉱 輸出 2 103 356 892 487
輸入 34,199 19,531 10,771 3,974 14,322
輸出-輸入 -34,197 -19,428 -10,415 -3,082 -13,835
Mo焙焼鉱 輸出 27,601 28,786 24,854 22,734 8,426
輸入 6,487 5,183 3,104 906 47,499
輸出-輸入 21,114 23,603 21,750 21,828 -39,073
フェロMo 輸出 25,177 18,598 21,133 5,824 654
輸入 223 141 479 718 487
輸出-輸入 24,954 18,457 20,654 5,106 167
Mo酸化物・
  水酸化物
輸出 764 1,895 2,189 203 90
輸入 160 17 32 64 123
輸出-輸入 604 1,878 2,157 139 -33
出典:GTA

図5. チリ モリブデン精鉱輸出量(国別、年別)
図5. チリ モリブデン精鉱輸出量(国別、年別)

図6. チリ モリブデン精鉱輸出量(国別、四半期別)
図6. チリ モリブデン精鉱輸出量(国別、四半期別)

図7. チリ フェロモリブデン輸出量(国別、年別)
図7. チリ フェロモリブデン輸出量(国別、年別)

図8. チリ フェロモリブデン輸出量(国別、四半期別)
図8. チリ フェロモリブデン輸出量(国別、四半期別)

2. まとめ
 2009年のチリにおける銅・モリブデン生産及び輸出入動向を振り返って見ると、中国以外の国で銅、モリブデンの輸出量が減少している中、中国向け輸出だけが著しく拡大しており、中国の資源需要の勢いが再認識されるとともに、チリ・中国間の産消国の関係が拡大してきていることが明らかとなった。特に銅地金、モリブデン焙焼鉱の輸出について、銅地金で2008年比86.3%増、モリブデンに至っては2008年の約400倍という伸びを示し、2010年2月の段階でも中国向け輸出の勢いが衰えていない状況である。
 2010年についても、中国需要を中心に銅、モリブデン市場が展開されるのはほぼ間違い無いと考えられる(他方、2010年4月7日にサンティアゴで開催されたCRU世界銅会議において、CRUは、中国の銅在庫が積み上がっており、2010年H2は在庫取り崩しが進み、中国の銅地金輸入量は減少するとの見方を発表)。
 また、2009年10月のChina Mining時に開催されたSantiago Gonzalez前チリ鉱業大臣と中国国土資源部大臣との会談の中で、国土資源部大臣よりチリは投資先として重要な位置づけであるとの発言がなされたが、この言葉を裏付けるかの様に2010年3月には中国国家電網国際発展有限公司が900百万US$を出資し、カナダQuadra MiningのSierra Gorda銅プロジェクトに参入する等、具体的な動きが展開されている。
 これまで、中国はチリから銅地金、銅精鉱を輸入するスタンスであったが、鉄鉱石における市場価格に連動した買鉱契約締結の動き、IMF、米国等からの中国元切り上げに対する強い要請、中国国内での銅精鉱生産が減少している一方、製錬所が拡張されている状況等を勘案すると、今後はQuadra Miningの事例のように中国企業によるチリ銅鉱山権益確保の動きが本格的に展開され、銅精鉱としての輸入が増加すると想定される。
 モリブデンについても、2009年に中国が純輸入国に移行し、更に9%/yで需要が拡大するとの見方がある他、世界各国の原子力発電所建設、鉱山機械等超硬工具向けのモリブデン需要が増加する一方、鉱山企業各社が技術開発中の銅の一次硫化鉱を対象としたヒープリーチングが商業移行すると、チリでは銅副産物としてのモリブデン生産が減少する可能性が高い。
 この様な状況の下、Molymetは中国との関係強化及び事業規模拡大を念頭に、China Molybdenum子会社のLuoyang High-Tech Tungsten Molybdenum Materialの50%株を37.7百万US$で取得する予定を発表した他、2012年末の稼働を目指して中国の内モンゴル自治区で8千t/yの生産規模を有するモリブデン精製プラントを建設中である等、積極的な事業を展開している。
 サンティアゴ事務所では、銅及びモリブデンを中心としたチリと中国の関係についての動きを継続的にフォローし、ニュース・フラッシュ等で報告することとしたい。

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