閉じる

報告書&レポート

2010年5月27日 リマ事務所  山内 英生
2010年23号

ペルーの2009年の鉱産物生産量及び今後の見通し

 ペルーは世界有数の鉱業国であり、また、2009年の輸出総額26,885百万US$のうち約6割(16,361百万US$)を鉱産物が占めるなど、鉱業は同国にとって最も重要な産業の一つとなっている。
 鉱産物輸出額のうち約8割を占める銅、亜鉛、金の主要3鉱種について、エネルギー鉱山省から公表された2009年の生産量及び今後の生産の見通しについて報告する。

1. 2009年の鉱石生産量

表1.ペルー鉱石生産量(2009年)
鉱種 2009年
ペルー
生産量
2008年
ペルー
生産量
増減 2009年
世界
生産量
2009年
ペルー
世界シェア
2009年
世界順位
( )は08年順位
銅(千t) 1,274.7 1,267.9 0.5% 15,876.0 8.0% 2(3)
亜鉛(千t) 1,509.1 1,602.6 -5.8% 11,447.0 13.2% 2(2)
鉛(千t) 302.4 345.1 -12.4% 4,127.8 7.3% 4(4)
金(t) 182.4 179.9 1.4% 2,364.6 7.7% 6(5)
銀(t) 3,854.0 3,685.9 4.6% 20,803.1 18.5% 1(1)
錫(千t) 37.5 39.0 -3.8% 310.4 12.1% 3(3)
モリブデン(千t) 12.3 16.7 -26.3% 223.6 5.5% 4(3)
出典:エネルギー鉱山省(2008年、2009年ペルー生産量)
World Metal Statistics 2010.2(世界生産量及び世界順位)

図1. 鉱産物生産量の推移

(1) 銅
 2009年の銅の生産量は1,274.7千tであり、2008年に比べ6.8千t、0.5%の増加にとどまり、ほぼ2008年生産規模を維持する結果となった。鉱山別では、ペルー最大のAntamina鉱山が4.5%、Cerro Verde鉱山が4.9%、Cuajone鉱山が4.3%の減産となるなど、上位3鉱山が減産したものの、2008年第3四半期から生産を開始したGold FieldsのCerro Corona鉱山の生産量増加分などがこれを補う形となった。
 供給構造では、外資系企業による上位5鉱山が全体の9割近くを占めている。
 世界順位では、2008年に比べ減産となった米国を抜き、チリに次ぐ世界第2位の産出国に返り咲くこととなった。

表2.ペルー・上位10銅鉱山の生産量(2009年)

鉱山名 権益所有企業 2009年生産量(t) 2008年
生産量(t)
増減
合 計  
精鉱 SX-EW
1 Antamina BHP Billiton33.75%、Xstrata33.75%、
Teck 22.5%、三菱商事10%
343,179 343,179 0 359,179 -4.5%
2 Cerro Verde Freeport McMoran53.6%、Buenaventura18.2%、
住友金属鉱山16.8%,、住友商事4.2%
308,370 214,706 93,664 324,172 -4.9%
3 Cuajone Group Mexico 80% 192,082 188,953 3,129 200,782 -4.3%
4 Toquepala Group Mexico 80% 161,958 127,125 34,833 148,295 9.2%
5 Tintaya Xstrata 107,233 81,779 25,454 110,770 -3.2%
6 Cerro Corona Gold Fields 38,644 38,644 0 7,675 403.5%
7 Cobriza Doe Run 18,519 18,519 0 20,685 -10.5%
8 Condestable Condestable 16,818 16,818 0 20,663 -18.6%
9 Cerro Lindo Milpo 15,664 15,664 0 9,731 61.0%
10 Colquijirca Brocal 9,919 9,919 0 8,985 10.4%
    1,212,386 1,055,306 157,080 1,210,937 0.1%
  その他   62,339 56,645 5,694 56,930 9.5%
  総 計   1,274,725 1,111,951 162,774 1,267,867 0.5%
出典:エネルギー鉱山省

図2. 上位5銅鉱山の占める割合

(2) 亜鉛
 2009年の亜鉛の生産量は1,509.1千t、2008年に比べ93.5千t、5.8%の減産となった。要因としては、2008年にペルー第2位の生産量を誇ったIscaycruz鉱山が2008年3月から金属価格の下落を理由に生産を中止したことが大きく影響している。同鉱山の生産量は2008年の175千tから2009年の23千tへ、152千tの大幅な減産となっている。一方、Antamina鉱山は2008年に比べ113千t、29.4%生産量をのばした。
 なお、Iscaycruz鉱山を操業するLos Quenuales社(Glencoreの現地子会社)は、2010年5月に、金属価格の回復に伴い、同鉱山の操業を再開すると発表している。
 Antamina鉱山を除くと、生産量が数万tオーダーの多数の中規模鉱山がその供給を担う構造となっている。
 2009年の世界の亜鉛生産量が2008年に比べ622千t、5.2%減産となったことに伴い、生産量シェアは13.2%(2008年は13.3%)、世界順位第2位を堅持する結果となった。

表3.ペルー・上位10亜鉛鉱山の生産量(2009年)

鉱山名 権益所有企業 2009年
生産量(t)
2008年
生産量(t)
増減
1 Antamina BHP Billiton33.75%、Xstrata33.75%、
Teck 22.5%、三菱商事10%
495,420 382,842 29.4%
2 Cerro de Pasco Volcan 104,648 136,104 -23.1%
3 Cerro Lindo Milpo 81,379 78,272 4.0%
4 San Cristobal Volcan 76,534 77,883 -1.7%
5 Colquijirca Brocal 70,364 85,111 -17.3%
6 El Porvenir Milpo 64,962 54,495 19.2%
7 Atacocha Atacocha 62,901 61,716 1.9%
8 Animon Administradora Chungar 59,982 84,986 -29.4%
9 Americana Casapalca 38,105 33,421 14.0%
10 Andaychagua Volcan 34,663 39,883 -13.1%
    1,088,958 1,034,713 5.2%
  その他   420,171 567,884 -26.0%
  総 計   1,509,129 1,602,597 -5.8%
出典:エネルギー鉱山省

図3. 上位5亜鉛鉱山の占める割合

(3) 金
 2009年の金の生産量は182.4tであり、2.5t、1.4%の増産となった。鉱山別では世界最大規模のYanacocha鉱山が7.8t、率にして13.9%増産したことが特筆される。
 一方、Pierina鉱山は鉱量枯渇に近いこともあり、32.4%の大幅な減産となった。
 金の生産量は、上位5社で全体のおよそ7割を占めている。

表4.ペルー・上位10金鉱山の生産量(2009年)

鉱山名 権益所有企業 2009年
生産量
(kg)
2008年
生産量
(kg)
増減
1 Yanacocha Newmont 51.35%、
Buenaventura 43.65%、IFC 5%
64,017 56,196 13.9%
2 Alto Chicama Barrick Gold 31,335 36,546 -14.3%
3 M.D.D Madre de Dios 17,215 16,708 3.0%
4 Orcopampa Buenaventura 8,550 8,274 3.3%
5 Pierina Barrick Gold 8,421 12,450 -32.4%
6 Acumulacion Tucari Aruntani 5,325 4,601 15.7%
7 Acumulacion Parcoy Consorcio Minero Horizonte 5,008 5,162 -3.0%
8 Santa Rosa-Comarsa Minera Aurifera Santa Rosa 4,919 5,237 -6.1%
9 Retamas Minera Aurifera Retamas 4,750 4,323 9.9%
10 Carolina Gold Fields 4,443 1,088 308.4%
    153,983 150,585 2.3%
  その他   28,420 29,285 -3.0%
  総 計   182,403 179,870 1.4%
出典:エネルギー鉱山省

図4. 上位5金鉱山の占める割合

2. 地金生産量

 La Oroya製錬所は、米国Doe Run社が所有する銅・鉛・亜鉛の製錬所であるが、同製錬所が資金繰りの悪化によって2009年6月から操業を停止したことに伴い、金属地金生産量は大幅に減少した。La Oroya製錬所の操業会社であるDoe Run Peru社は2010年4月に、同製錬所を7月に再開すると発表しているが、先行きは不透明である。
 一方、Cajamarquilla製錬所では生産設備の拡張工事が実施されており、これにより亜鉛の生産能力は倍増し、年間320千tになると見込まれている。
 さらに、Southern Copper社が操業するIlo製錬所についても、設備の近代化計画が進められている。

表5.製錬所生産状況
製錬所名 権益所有企業 2009年
生産量(t)
2008年
生産量(t)
増減
 Ilo Group Mexico 80% 243,810 248,388 -1.8%
 Oroya Doe Run 15,668 53,831 -70.9%
 Cajamarquilla Votorantim 1,139 1,635 -30.3%
合 計   260,617 303,854 -14.2%

 Cajamarquilla Votorantim 139,722 146,884 -4.9%
 Oroya Doe Run 9,773 43,440 -77.5%
合 計   149,495 190,324 -21.5%
 Oroya Doe Run 26,082 114,259 -77.2%
合 計   26,082 114,259 -77.2%
 Funsur Minsur 34,388 38,865 -11.5%
合 計   34,388 38,865 -11.5%
出典:エネルギー鉱山省

3. 今後の生産見通し

 エネルギー鉱山省Gala鉱山次官は、2009年の鉱業投資は金融危機にもかかわらず22億US$を超え、2008年を30%上回ったと発表した。また、2010年はさらなる投資の増加が見込まれ、複数の鉱山企業からEIA(環境影響調査)の実施や投資を前倒しで実施する意向が同省に伝えられたことを明らかにした。さらに、今後6年間に300億US$の鉱業投資が計画されていることから、2010年の鉱業投資は2009年を2倍以上上回る50億US$に達する可能性を示唆している。
 SNMPE(ペルー鉱業石油エネルギー協会)のFlury会長は、今後5年間に多くの新規あるいは拡張プロジェクトの実施によって、銅の生産量は70%増加するとしている。
 主な鉱業投資プロジェクトを以下に示す。
[1] Antamina鉱山拡張計画
 Antamina鉱山は、2010年1月に、同鉱山における銅・亜鉛増産計画に対して1,285百万US$の投資を行うと発表し、その後拡張工事が開始されている。これにより、Antamina鉱山の1日当たりの処理能力は13万tとなり、2012年以降の銅及び亜鉛の生産量は40%増加することが見込まれている。
[2] Toromocho銅開発プロジェクト
 ペルー中部フニン県、リマの東方120 kmに位置する銅開発プロジェクトで、国有案件の民営化に伴い2003年5月にPeru Copper社(加)が開発オプション権利を取得、その後、Chinalcoが2007年に同社を買収し、開発を進めている。
 鉱量は2,127百万t(銅:0.47%、モリブデン:0.018%、銀:7g/t)で、総額2,200百万US$が投じられ、2012年の生産開始が見込まれている。
予想生産量は銅250千t/年、モリブデン5,200t/年となっている。
[3] El Galeno銅開発プロジェクト
 ペルー北部カハマルカ県に位置する銅開発プロジェクトで、中国のMinmetals(五鉱集団公司)、Jiangxi Copper(江西銅業集団公司)が2008年1月に同プロジェクトを所有していたNorthern Peru Copper社(加)を買収した。
 鉱量は968百万t(銅:0.44%、金:0.135g/t、銀:2.637g/t、モリブデン:0.013%)で、2,500百万US$が投じられ、2012年の生産開始が見込まれていたが、開発工事のスタートが遅れることが予想されることから、生産開始は2013~2014年にずれ込むと言われている。
 予想生産量は銅144千t/年、金82,300oz/年、銀2百万oz/年、モリブデン2,300t/年となっている。
[4] Las Bambas
 ペルー南部のアプリマック県、クスコの南西260 kmに位置する銅開発プロジェクトで、2004年にXstrataが政府入札により開発オプション権を取得した。
 鉱量は1,136百万t(銅0.77%、モリブデン0.018%、金0.062g/t、銀3.719g/t)で、4,100百万US$が投じられ、2014年の生産開始が見込まれている。
 予想生産量は銅400千t/年、モリブデン5,000t/年である。

 以上のように、金属価格の回復傾向を背景に、探鉱開発プロジェクトが押し進められている一方で、鉱山開発に反対する地元住民による反鉱山運動などが発生している。最近の例では、Southern Copper社が進めるTia Maria銅開発プロジェクト(アレキーパ県)に関して、水資源不足や環境汚染を懸念する農民などによる反対運動によって、今年4月にパンアメリカン・ハイウェーを封鎖する大規模な抗議デモが発生し、EIA取得に必要な公聴会が3回にわたって延期されているほか、環境影響評価の分析のため、プロジェクト活動が90日間にわたって中断されている。
 今後も鉱業投資の増加に伴い、反鉱業活動や社会争議の増加が懸念されている。

ページトップへ