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報告書&レポート

2010年6月10日 サンティアゴ事務所  菱田 元
2010年28号

Exploration Forum 2010報告-チリ探鉱の現状-

 Exploration ForumはCESCO(Centro de Estudios del Cobre y la Mienria:チリ銅・鉱業研究センター)主催のチリ銅鉱業の探鉱に焦点を当てた会議で、毎年4月初旬にサンティアゴで開催されるCRU(Copper Research Unit)主催の世界銅会議の前日に開催される。探鉱に必要となる基本地質情報の整備、探鉱技術と鉱床発見、探鉱資金の調達、探鉱に関わる環境や地元コミュニティとの関わり等をテーマに、チリ政府機関、鉱山会社、チリ及び関係資源国の大学・研究機関等の鉱業に従事する人々が講演を行うものである。
 2010年で第3回目となるExploration Forum 2010は2010年4月6日にサンティアゴ・シェラトンホテルで約290名を集めて開催された。プログラムは表1のとおりである。また、Modulo 2とModulo 3の間の昼食会では、現在世界最大の銅生産量を誇るEscondida鉱山の発見に大きな貢献をした米国の探鉱事業家David Lowell氏が特別講演を行い、自らの探鉱実績を振り返った。

表1. Exploration Forum 2010プログラム
Introduction 1 Global Exploration Trends -An Overview of Worldwide Spending- Michael Chender, CEO, Metals Economic Group (MEG)
2 Deternimation of the investment in Mineral Exploration José Joaquín Jara, Comisión Chilena del Cobre (COCHILCO)
Modulo 1   Present exploration situation in Chile  
3 Exploration in the Centinela District -Recent discovery: Caracoles Porphyry- Ricardo Muhr, Vicepresidente de Recursos Mineros, Antofagasta Minerals
4 Discovery of the Los Sulfatos Deposit, Los Bronces District, Chile Vicente Irarrázaval, Vicepresidente de Exploraciones, Anglo American
5 The Caspiche Story: Unveiling a World Class Cu-Au Deposit in the Maricunga Belt, Region III – Atacama, Chile Glen Van Kerkvoort, Chief Geologist, Exeter Resources
6 Exploration in the Sierra Gorda Project Russell Alley, Presidente,Quadra Mining Chile
7 Discovery of the Santo Domingo Deposit and Far West’s Exploration Experience in Chile Rick Zimmer, CEO,Far West Mining Ltd.
Modulo 2   Impact of the new environmental establishment and theme on indigenous people in the mineral exploration  
8 Theme on Indigenous people and development of mineral resources Jason Wilson, Prospectors and Developers Association of Canada, Director delPrograma de Comunidades y Desarrollo de Recursos Mineros
9 Mining in Chile and the law of indigenous community Marcelo Olivares, Quinzio y Cía.
10 Luis Cordero, Lawyer and Professor of Law, University of Chileresponsible for presentation and procedure of the law that the environmental institutions redesigned. Rodolfo Camacho, Representante de la Confederación de la Producción y el Comercio (CPC) en Consejo Consultivo de CONAMA
Modulo 3   The role of geological information in the mine development
11 Government Geoscience for Mineral Exploration: Public Policy Rationale and Impact Murray Duke, ex Director General GSC’s Central and Northerm Canada Branch
12 Geological Information Service in CanadaEnhanced Public Geoscience -What does it mean to Canada ?- David Boerner, Director General, Central and Notherm Canada Branch/Geological Survey of Canada, Earth Sciences Sector, Natural Resources Canada
13 Geological Information Service in PeruChallenges for geological and mineral institute, and metallurgical-INGEMMET (engineering of mining and metallurgy) in the 21th Century Walter Casquino, Presidente, Consejo Directivo del Instituto Geológico, Minero y Metalúrgico (INGEMMET)
14 Geological Information Service in ChileMineral Exploration in Chile and National Service of the Geology and Mining Alejandro Vio, Director Nacional, Servicio Nacional de Geología y Minería (SERNAGEOMIN)
Modulo 4   Is the exploration financing possible in Chile ?-Round Discussion-  
15 Finance Option for Small- and Medium-Size Mining Projects in Chile Héctor Valenzuela, Gerente General, Administradora de Fondos BCI
16 Road map for mineral exploration in Chile 2010-2015 Cristián Quinzio, Director,CESCO

1. 2009年の探鉱トレンド(世界、南米、チリ)
 Global Exploration Trends u0013 An Overview of Worldwide Spending-
 (Michael Chender, CEO, Metals Economics Group (MEG))

 MEG(Mineral Economics Group)が3年連続でこの会議の冒頭を務めた。MEGは毎年3月にカナダ・トロントで開催されるPDAC(Prospectors and Developers Association of Canada)年次総会において前年の世界の探鉱投資状況を発表しているが、この結果を中南米、更にはチリについて焦点を当てた形でまとめ直したものを紹介した。
 (1)2009年世界の探鉱トレンド
 非鉄金属の探鉱トレンドについて概観した。金については2002年以降、探鉱予算は増え続けていながら、新鉱床発見は1997年以降減少傾向にあり、2005年に小ピークがあるもののそれ以降再び急激に下がっている。銅についても同様で、2002年以降、探鉱予算は増え続けているが、新鉱床発見は1997年以降減少傾向にある(図1)。

図1. 銅の鉱山生産、新規発見鉱量、探鉱費(出典:MEG, 2010)
図1. 銅の鉱山生産、新規発見鉱量、探鉱費(出典:MEG, 2010)

 1990年代以降、非鉄金属探鉱予算と銅価格及び金価格はおおむね正相関を示していた。2008年10月のリーマンショック以降、探鉱予算と銅価格は急激に減少したが、金価格は下がらなかった。ジュニア探鉱会社については、探鉱資金総額と実行されたファイナンスの件数が2006年1月以降非常に良い正相関を示す。
 (2)2009年中南米とチリの探鉱トレンド(世界との比較)
 大手鉱山会社、中規模鉱山会社、ジュニア探鉱会社、政府系及びその他機関の1997年以降の探鉱費を比べると、2004年以降、ジュニア探鉱会社の探鉱費の伸びが大きくなり大手鉱山会社を抜くが、2008年10月のリーマンショック以降は大手鉱山会社の探鉱費がジュニアを上回ることとなった。この傾向は中南米でより顕著であり、特にチリでの2009年の探鉱費における企業規模別シェアは大手鉱山会社74%、中規模鉱山会社7%、ジュニア探鉱会社14%、政府系及びその他機関 5%となっている。
 探鉱費を対象鉱種について比べると、1996年以降、世界では金探鉱がベースメタル探鉱をほとんどの時期で上回っている。一方、中南米では2000~2001年と2007年以降はベースメタル探鉱が金探鉱を上回っている。チリでの2009年探鉱費における対象鉱種シェアはベースメタル73%、金25%、その他鉱種2%となっている。
 1996年以降、世界の探鉱費における探鉱ステージ別(グラスルーツ探鉱、後期探鉱(advanced stage)、既知鉱山周辺探鉱)シェアをみると、グラスルーツ探鉱のシェアが減少傾向にあるのに対し、後期探鉱(2003年以降)、及び既知鉱山周辺探鉱(2007年以降)のシェアが増加傾向にある。中南米もこの傾向は同様であるが、特に既知鉱山周辺探鉱のシェアが2006年以降急激に伸びている。チリの2009年探鉱費における探鉱ステージ別のシェアは、グラスルーツ探鉱30%、後期探鉱18%、既知鉱山周辺探鉱 52%となっている。
 世界を豪州、カナダ、米国、アフリカ、中南米、東南アジア・太平洋州、その他の7地域に分けた場合、1996年以降の探鉱費の地域別シェアは中南米地域が22~28%で第1位である。中南米地域での探鉱費を国別にみると、2009年はペルー、メキシコ、チリであった。

2. 探鉱の成功事例:新鉱床発見及び後期探鉱プロジェクト
 チリにおける最近の新鉱床発見、及び後期探鉱プロジェクトについて5件の発表があった。内訳は大手鉱山会社2件、カナダ中堅鉱山会社1件、カナダ・ジュニア探鉱会社2件である。

(1)Exploration in Centinela District u0013 Recent Discovery: Caracoles Porphyry Deposit
  (Ricardo Muhr, Vice President of Mineral Resource, Antofagasta Minerals)

 
 Centinela鉱区はチリ第Ⅱ州のほぼ中央部に位置し、NNE-SSW方向に約40 km伸長する(図2)。中生代から新生代にかけての火山岩・堆積岩の中に始新世後期から漸新世前期に生成されたポーフィリー銅・金・モリブデン鉱床及びexotic銅鉱床が胚胎する。鉱区内のEl Tesoro鉱山(操業中)、Esperanza鉱山(開発中、2010年10月に生産開始予定)、El Telegrafo鉱床については、Antofagasta Minerals S. A.(以下AMSA)が70%権益、丸紅株式会社が30%権益を有する。この鉱区内で発見されたCaracolesポーフィリー銅鉱床については、AMSA探鉱担当副社長Ricardo Muhr氏が報告した。

図2. Centinela鉱区:各鉱床・鉱化帯の位置
図2. Centinela鉱区:Carecoles鉱床ボーリング断面図

図2. Centinela鉱区:各鉱床・鉱化帯の位置、
及びCarecoles鉱床ボーリング断面図
(出典;Antofagasta Minerals, 2010)

 Centinela鉱区の探鉱は1960年頃にまで遡るが、1979年以降1992年までの間にUtah International、Kennecott、Northern Mines(Luksicグループ)、Anaconda、Mantos Brancosの各社が順次探鉱を実施している。
 Esperanza鉱山周辺についてはAnaconda社の1999年の探鉱をAMSAが引き継ぎ、1999~2001年の探鉱で酸化鉱71百万t;銅品位0.42%、硫化鉱443百万t;銅0.63%、金0.26 g/t、モリブデン0.01%の資源量を獲得した。更にAMSAは2001~2004年の探鉱で、2003年にTelegrafgo鉱床(資源量733百万t;銅0.49%、金0.18 g/t、モリブデン0.014%)を発見、2004年末にはEl Tesoro鉱床の東(Tesoro NE鉱床の南)に位置するLlano/Paleocanal鉱区、Centinela鉱区、Polo Sur鉱区で鉱化帯を確認した。
 2006年にAMSAはEquatorial Miningを買収しCentinela鉱区の北側と南側を含む面積520 km²の鉱区を獲得しCentinela鉱区を更に強固なものとした。2007年にTelegrafgo鉱床の南側で探鉱が開始し、物理探査で推定された層厚100m以上の被覆層の下を見るための深度350mのボーリングで弱いChalcocite Blanketと深成鉱化作用を捕捉した。その後の探鉱で酸化鉱体が深度100m~200mに、硫化鉱体が深度200m以深に続き、高品位鉱体が深度120~170mに胚胎することを確認した。現在のCarecoles鉱床の資源量は酸化鉱160百万t;品位Cu 0.47%、硫化鉱1,013百万t;品位Cu 0.46%、Au 0.18g/t、Mo 0.014%である。また、Centinela鉱区の資源量は1985年当時は1.9百万t;品位 Cu 1.5%であったが、現在は酸化鉱6.4億t;品位Cu 0.56%、硫化鉱43億t;換算品位Cu 0.46%と大きく増加した。
 発表の最後に、Muhr氏は探鉱の成功の要因としては以下を挙げた。『探鉱チームの確信と辛抱強さ;地質モデルの構築とタイミングの良い適用;系統的で辛抱強い探鉱;会社経営陣の持続的サポート;鉱区の整理統合;最新技術の適用』

(2) Discovery of the Los Sulfatos Deposit, Los Bronces District, Chile
(Vicente Irarrazaval, Vice President of Exploration of South America, Anglo American)

 Anglo Americanはチリ首都圏州でLos Bronces銅鉱山を操業しているが、2009年7月にその6 km南南東でLos Sulfatos鉱床を発見したと発表した。Rio Blanco鉱床(Andina鉱山)を含めるとこの地域は世界で最も重要な銅鉱床分布域の一つで、2009年の銅生産量は448千t(Los Bronces鉱山 238千t+Andina鉱山210千t)、銅含有量は2億tを超える。銅鉱床は新第三紀中新世の貫入岩や角礫岩に関係している。Anglo American南米探鉱担当副社長Vicente Irarrazaval氏が探鉱の経緯とLos Sulfatos鉱床の概要について報告した(図3)。

図3. Los Braonces鉱山及びLos Sulfatos鉱床を含むAnglo American社鉱区
図3. Los Braonces鉱山及びLos Sulfatos鉱床を含むAnglo American社鉱区
(出典;Anglo American, 2010)

 Los Sulfatos鉱床周辺は1922年にAnaconda社が調査に訪れたとの記録がある。1963年にLos Bronces鉱山の露天採掘が開始された。1972年にENAMIが、1978年にExxonが権益を取得しLos Bronces鉱山の操業に関わった。Exxonは1990~1991年にLos Sulfatos鉱区でボーリングを実施している。
 2002年にAnglo American社はLos Bronces鉱区内のDisputadaの権益を取得し、この鉱区の探鉱優先順位の修正を行った。2004~2008年にヘリコプターでの動員撤収による探鉱ボーリングを23孔、計18,334m実施し新鉱床確認に至った。経緯は以下のとおり。
# 2004年:優先順位第1位のゾーンで最初のボーリングを実施し、ポーフィリー鉱化帯を2箇所で確認。
# 2006年:ポーフィリー鉱化帯の中心を確認。品位 Cu±1%の鉱化帯を捕捉。
# 2007年:品位Cu ≦1.5%の鉱化帯が、ポーフィリー岩体及び角礫岩体に広がっていることを確認。
# 2008年:品位Cu ≦1.5%の鉱化帯が、黄鉄鉱帯の下位に連続していることを確認。
# 2009年:探鉱坑道の掘削を開始。

 Los Sulfatos鉱床は角礫岩体及びポーフィリー岩体の分布面積が3×1 kmの範囲内に胚胎し、1次硫化銅鉱物(黄銅鉱、斑銅鉱)が卓越する。銅高品位部(Cu>1%)は角礫岩体中のみならずポーフィリー岩体中にも見られ、深度方向及び北東方向は未探鉱でオープンである。Los Sulfatos鉱床の資源量は、確定資源量:12億t、品位Cu 1.46%、Mo 0.02%、推定資源量:40~50億t、品位Cu 0.8~1.0% である。
 この探鉱成果から得た教訓としてVicente氏は以下を列挙した。『鉱区内の鉱床胚胎ポテンシャルを早く見極める;鉱区内の未探鉱ゾーンの探鉱優先度を上げる;それまで模範としてきた地質鉱床モデルを再検証する;プロジェクトに貢献的な探鉱チームを組織する;Anglo社の高度な管理体制によるサポート;辛抱強さ』
 
(3) The Caspiche Story: Unveiling a World Class Copper-Gold Deposit in the Maricunga Belt, Region Ⅲ-Atacama, Chile
 (Glen Van Kerkvoort, Chief Geologist, Exeter Resources)

 チリ第Ⅲ州に位置する”Maricunga Belt”はチリ/アルゼンチン国境の西側に南北方向に約100 km延びる金鉱床地帯で、第三紀漸新世~中新世の火山岩類にポーフィリー金・銅鉱床及び高硫化系浅熱水性金(・銀)鉱床が胚胎する。Caspiche金鉱床はMaricunga Beltの南部に位置するが、周辺ではVolcan(金304t)、 Maricunga (Refugio)(金199t)、Cerro Casale(金895t、銅353万t)といった鉱床も探鉱中である。カナダ・ジュニア探鉱会社Exeter社Glen Van Kerkvoort氏がCaspiche金鉱床の探鉱成果を紹介した。
 Caspiche鉱区は1986~1990年にAnglo American、1996~1998年にNewcrestが探鉱を実施し、2005年にExeter社が探鉱を開始し現在に至っている。Caspiche鉱区は西にポーフィリー・システム、その約2 km東に高硫化系浅熱水性システムがあり、両システムを対象として探鉱ボーリングが実施されてきた。
 ポーフィリー・システムの探鉱では約1×1 kmの範囲に深度方向500m~1,200mのボーリングを実施し、火山角礫岩、石英閃緑岩、閃緑斑岩、及び基盤の堆積岩中に金・銅の鉱化を捕捉した。鉱石鉱物はchalcopyrite, pyrite, tennantite, enargite, bornite, luzoniteから成り、金粒がchalcopyriteに取り囲まれている。金品位は中心部が Au > 1.0 g/t、その周囲がAu 0.6~1.0 g/t、更にその周囲がAu 0.3~0.6 g/tで、Exeter社が2010年5月に発表したNI 43-101基準による資源量は粗鉱量 14.7億t;銅品位0.20%、金品位 0.51 g/t(銅287万t、金755t)である。

(4) Exploration in the Sierra Gorda Project, Chile
 (Russell Alley, President, Quadra Mining)

 カナダ鉱山会社Quadra Mining社は米国ネバダ州でRobinson銅鉱山、アリゾナ州でCarlota銅鉱山、チリ第Ⅱ州でFranke銅鉱山を操業している。同社が探鉱実施中のチリ第Ⅱ州Sierra Gorda銅プロジェクトは、2010年3月に中国の国有送電会社の関連会社 国家電網国際発展有限公司が900百万US$で50%権益を取得し参入したことで注目を集めた。そのプロジェクトについてQuadra Mining社Russell Alley社長が紹介した。
 Sierra Gorda鉱区はBHP Billiton操業のSpence銅鉱山の約10 km南西に位置し、1966年ITT Geophysical Inc. 1968年CIMA Mines、1982~1984年Chevron、1991~1992年Outokump、1997年RTZが探鉱を実施した。これらの探鉱によるボーリング掘進長総計は102,856mで、鉱区内ではSalvador鉱床とSanta Catalina鉱床の存在が確認された。
 Quadra社は2004年から探鉱を開始し、同年に地上磁気探査、2005年にIP/比抵抗電気探査を実施した。2006年にIP異常に対してボーリングを実施した結果、Santa Catalina鉱床の東側(Santa Catalina Este)深部に銅鉱化帯の連続を確認した(鉱化帯幅338m、品位Cu 1.05%)。これまでにQuadra社は655孔、計175,000mの探鉱ボーリングを実施している(図4)。

図4. Sierra Gorda銅探鉱プロジェクト:ボーリング断面図
図4. Sierra Gorda銅探鉱プロジェクト:ボーリング断面図
(出典;Quadra Mining, 2010)

 現時点の硫化鉱の確定資源量として粗鉱量1,345百万t;品位Cu 0.42 %、Mo 0.025 %、Au 0.067 g/t、推定資源量として粗鉱量 455百万t;品位Cu 0.38%、Mo 0.012%、Au 0.044 g/t。酸化鉱の確定資源量として粗鉱量250百万t;品位Cu 0.33%、推定資源量として26百万t;品位Cu 0.28%の数字が示された。Scoping Study(予察的経済評価)による資源量は銅量換算で1,020万t。鉱山開発計画は設備投資額16.61億US$、キャッシュコスト0.79 US$/lb、銅生産量138,000t/年、モリブデン生産量7,250t/年、金生産量1.1t/年、マインライフ25年である。

(5) Discovery of the Santo Domingo Deposit and Far West’s Exploration Experience in Chile (Rick Zimmer, CEO, Far West Mining Ltd.)

 Santo Domingo銅鉱床はチリ第Ⅲ州コピアポ北方約100 kmに位置する酸化鉄銅金(IOCG)型鉱床である。カナダのFar West Mining Ltd.(以下Far West社)Rick Zimmer CEOが探鉱経緯について報告した。
 BHP Billitonはチリ北部でIOCG型鉱床の探鉱プロジェクト(Candelariaプロジェクト)を実施していたが、2002年に同社所有のこの鉱区にFar West Mining社がオプション契約で参入。南北方向延長300km、総面積5,145 km²の8ブロック鉱区において飛行距離10,700 line-kmの空中重力探査(FALCON)を実施。2005年初めにFar West 社がEarn-inを完了。その後BHP BillitonはNSR 2%を残して撤退し、Far West社が鉱区権益100%所有となる。
 重力及び磁気データに基づき地質構造解釈を行い、2003年~2005年に計25,000mの探鉱ボーリングを実施。2005年7月に鉱化帯を捕捉し、2006年5月に資源量139百万t;品位Cu 0.59%、2007年9月に資源量234百万t;品位Cu 0.55%を発表。2008年5月にScoping Studyを実施し、2009年5月に確定資源量383百万t;換算銅品位0.57%、(銅約158万t、鉄精鉱62百万t、金0.7t)を発表。その後、更に400孔、計130,000mのボーリングを実施。プレFS完了は2010年12月、生産開始は2013~2014年を予定している。
 鉱床は、安山岩質凝灰岩を交代した磁鉄鉱/赤鉄鉱マント中の黄銅鉱と黄鉄鉱からなる。早期に沈殿した磁鉄鉱に酸化流体がオーバープリントし、黄銅鉱、赤鉄鉱、及び微量の輝銅鉱と斑銅鉱が沈殿している。鉱床は弱変質安山岩により被覆されており、地表徴候はほとんど認められない。鉱床の一部は酸化しており、主要酸化銅鉱石はchrysocollaとalmagre1である。


1(*almagre(Cu2S・FeOOH・nH2O):赤黒色ガラス質のCu-Fe-sulfohydroxideで高品位の銅を含有する。

3. その他のセッション
 その他以下の3セッションが行われた(表1)。
Modulo 2

 セッションのタイトルは「環境についての新しい法制度と探鉱における先住民」。まずPDAC事務局のJason Wilson氏がPDACのカナダ先住民問題への取り組みを紹介し、1) 鉱業界へ先住民参加を増やしていくことを奨励。2) 資源による政府歳入を共有していくことを提唱。 3) 土地所有権についてのより迅速な解決策の提唱。4) 明確で効率的なプロトコルを展開 の4点が政策的イニシアティヴの鍵となると述べた。
 チリのQuinzio & Cia弁護士事務所のMarcelo Olivaraes氏は、チリ人口の4.6%を占める先住民の権利とチリ鉱業との関係について紹介した。チリ北部の鉱業地域ではこれまで深刻な先住民問題は発生していないが、2009年、チリは国際労働機関(ILO)の169号条約(原住民及び種族民時条約)を批准したことから、今後はこれが規範となっていく。
 弁護士でチリ大学法律学科の教授でもあるLuis Cordero氏とCONAMA(国家環境委員会)の相談アドバイザーRodolfo Camacho氏が、チリの環境対策法制度の今後の展望と探鉱との関係について対談した。
Modulo 3
 セッションのタイトルは「探鉱事業の発展における地質情報の役割」。4件の講演があった。最初の2件でカナダ(コンサルタント及びカナダ地質調査所)、次の1件でペルー(INGEMMET)、最後の1件でチリ(SERNAGEOMIN)の事例が紹介された。地質調査所等の国の機関がどこまで探鉱をサポートすればよいのかに焦点が当てられた。カナダのコンサルタント(元カナダ地質調査所)J. M. Duke氏は、カナダQuebec州において連邦政府と州政府が実施した基本図作成(広域地質マッピング)がうまく民間鉱山会社の探鉱投資を引き出した例を紹介した(図5)。SERNAGEOMIN総裁 Alejandro Vio Grossi氏はSERNAGEOMINの大きな2つの役割;鉱区管理及び基本図作成について述べた。基本図作成の役割には鉱物資源探査のみならず、自然災害(火山噴火や地震)対策や環境対策のための情報提供も含まれているが、今後の基本図作成の予算額は10年間で約157百万US$(年間15.7百万US$)とのことである。

図5. カナダQuebec州北部Grand Nord地域における連邦・州政府基本図調査費(赤棒)、鉱山会社探鉱費(青棒)、及びカナダ全体の探鉱費(線)の推移
図5. カナダQuebec州北部Grand Nord地域における連邦・州政府基本図調査費(赤棒)、
鉱山会社探鉱費(青棒)、及びカナダ全体の探鉱費(線)の推移
(出典;Murray Duke, 2010)

Modulo 4
 最後のセッションのタイトルは「チリ探鉱において資金調達は可能か:テーブル討論」。話題提供者として、チリ投資ファンドBCIのHector Valenzuela社長が「チリにおける中小規模の探鉱・鉱山開発プロジェクトにおける資金調達の選択法」と題して講演した。鉱山開発について閉山と環境対策の前までを3つのステージに分け、(1) 探鉱の初期段階(リスクが非常に高い)では自己資金、個人投資家、(2) 探鉱の後期(scoping study, FS)(リスクが高)では投資ファンド、ベンチャーキャピタル、個人投資家、(3) 開発・生産段階(リスクが中から低)では銀行、投資ファンド、による資金調達が適当であると述べた。

4. まとめ
 チリでは、鉱山会社が既存鉱山の周辺探鉱に力を入れているのはMEGの数字からも明らかである。実際、Anglo AmericanやAntofagastaのような大手鉱山会社は、既存鉱山・鉱床の周辺で大規模新鉱床を発見し成果を上げている。一方、割合は少ないものの、銅・金を中心としてジュニア探鉱会社も探鉱を継続して成果を上げており、チリの地質鉱床ポテンシャルは依然として高いといえる。
 Santo Domingo鉱床発見のケーススタディを発表したカナダ・ジュニア探鉱会社Far West Ming Ltd.CEO Rick Zimmer氏は、講演の最後に「チリは鉱業投資環境の良い国である。」と前置きした上で、以下の改良すべき点を挙げた。
・重複鉱区についての規則変更:現在、上掛け申請を拒否するのは鉱区所有者の責任で、これは小規模鉱山会社にとっては大変重荷となっている。
・オンライン鉱区申請図の整備:スウェーデンや豪州で運用されているようなオンライン鉱区申請図を整備する。
・鉱区の開放:現在、大部分の鉱区が長期にわたり探鉱の進展のないまま保持されている。鉱区へのアクセスが制限されていることは、探鉱投資を制限する大きな要因となっている。時間制限を設けた鉱区保持により、より良い探鉱投資環境が達成される。
・地質/物理探査データベースの整備:地質/物理探査データベースの整備は一般公共の関心事である。多くの国において地質データ評価作業に対する要求が上がっている。
上記は、SERNAGEOMINの役割であるが、地質情報の整備及び鉱区管理システムについては一層の充実が待たれるところである。
 サンティアゴ証券取引所に上場している鉱山会社は少なく、非金属鉱山会社のSQM、鉄鉱山会社のCAP、銅鉱山を操業するPucobreの3社のみである。チリ政府は、近年チリでのグラスルーツ探鉱の割合が低下していることを懸念しており、ジュニア探鉱会社や中規模鉱山会がより容易に探鉱資金を調達できるよう、サンティアゴ証券取引所への上場を推進するための法案を2010年末までに国会に提出することを検討しているが、その動向も注目される。

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