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報告書&レポート

2010年7月22日 リマ事務所  山内 英生
2010年36号

Xstrata Copper社のペルーにおける活動状況

 2010年5月25日に、Xstrata Copper社 Southern Peru DivisionのJose Marun氏(Vicepresidente Ejecutivo de Operaciones)による「プロジェクトの進展と持続的開発」と題する講演会が、カナダ・ペルー商工会議所の主催により、ペルー共和国リマ市において開催されたので、その講演の概要を以下に紹介する。

1. Xstrata Copper社の概要

 Xstrata Copper社は、鉱種別に特化したXstrataグループの5つの子会社のうちの銅開発に特化した子会社で、オーストラリアのブリスベンに本社を有する。
 同社は、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、チリ、米国、フィリピン、パプア・ニューギニア、ペルーの計8か国で活動を展開し、南北アメリカ大陸や南太平洋諸国で5つの大規模銅開発プロジェクトが進行中である。2009年の銅生産量(精鉱及びSxEwカソードの合計)は907千tであり、世界第4位である。
 現在、15,000人の従業員を抱えるほか、米国及びカナダではリサイクル事業にも参画している。

2. Xstrata Copper社の事業戦略

 会社の事業戦略は事業の成功と共に変化してきた。当初は鉱山の買収等が中心で、オーストラリアやアルゼンチンにおいて銅鉱山を取得することで生産量を増やしてきた。
 ペルーにおいては、2006年にBHP BillitonからTintaya鉱山を取得、また、同年にカナダのFarconbridgeを買収し、Antamina鉱山への資本参加(33.75%)を果たした。これら一連の鉱山取得・買収を通じて、コスト競争力を高め、効率良い操業によってこれらの資産の価値を維持しつつ最大限に活用すること、また、生産量を最大化することを目標とした。
 現在は、鉱業界、特に銅に関しては買収等の活動が活発な時期を経て安定段階に移行してきたことに伴い戦略も変化し、これまでに買収や合併等を通じて取得した探鉱プロジェクトや鉱山を推進・開発することに重点をシフトしている。同社は投資総額7,000百万US$にのぼるプロジェクトを計画・実施中であり、年間550千tの増産が実現する見通しである。投資総額7,000百万US$のうち80%をペルーに投資する計画であり、この投資計画には、ペルーのAntamina鉱山拡張計画も含まれている。Antamina鉱山の拡張工事は2011年末から2012年始めには完了する予定であり、意欲的に拡張計画に取り組んでいる。
 その他にも複数のプロジェクトが進行中であり、これら世界各地で進行中の探鉱プロジェクトや拡張計画により、2015年までに約60%増産し、年間銅生産量1,500千tを目指している。
 Xstrataグループにとって持続的成長は最も重要な企業理念であり、健全かつ無事故の労働環境、世界トップクラスの環境対策、優良なCSR、人材教育を4つの柱としている。
 2005年は世界第9位の銅生産企業だったが、2009年はCODELCO、Freeport McMoran、BHP Billitonに次いで世界第4位となった。今後の目標はこのランキングを上昇させることにある。

3. Xstrata Copper社のペルーにおける活動と今後の展望

 Xstrata Copper社にとって、ペルーは鉱物埋蔵量、優秀かつ経験豊富な人材等の面から重要な戦略国である。また外国からの投資に開かれた国であることも重要なポイントであり、ペルーに対する大規模な探鉱投資は今後も継続され、それが新たな鉱床の発見につながると確信している。(図1)
 2004年のLas Bambasプロジェクト取得以降、2006年のTintaya鉱山買収やAntapaccayプロジェクトの取得、Antamina鉱山への参画等、ペルーにおけるベースを着実に広げると同時に、2004年から積極的かつ不断の探鉱活動により埋蔵量の把握と増加に努めてきた。その結果、現在Xstrata Copper社がペルー国内に保有する全プロジェクトについて、開発実行可能である。
 通常、鉱業プロジェクトの開発が決定・実現されるには平均10~12年かかるが、各プロジェクトを急ピッチで進めており、例えば、Antapaccayプロジェクトは現在取得後4年が経過したばかりだが、既にEIA(環境影響評価)を提出済みであり、2012年半ばの生産開始を目指している。
 これらの積極的な探鉱活動の成果として、現在同社がペルー国内に所有するTintaya鉱山、Antapaccayプロジェクト、Las Bambasプロジェクト、Coroccohuaycoプロジェクトの銅の鉱物資源量(精測、概測及び予測量)は合計20億t、平均品位0.81%となっている。(表1)
 2012年にはAntapaccayプロジェクト、2014年にはLas Bambasプロジェクトが生産を開始する予定である。また、Tintaya鉱山は2013年に閉山予定だが、同鉱山のSxEw施設はCoroccohuaycoプロジェクトに再利用する計画である。現在100千t/年のペルー国内の銅生産量を、2014年までに600千t/年とすることを目指している(Antamina鉱山の生産分は考慮していない数字)。

図1. ペルーの戦略的重要性 ・世界的に重要な鉱物生産国
-銀生産世界1位
-銅生産世界2位
-金生産世界6位

・外資による鉱業投資を推進
-1994~2009年の鉱業投資総額:
   19,000百万US$
-今後の投資計画:35,000百万US$

・魅力的な探鉱ポテンシャル
-探鉱投資対象国として世界3位

・ペルーにおけるXstrata Copper社の活動
-Tintaya鉱山-Antapaccayプロジェクト
-AntaminaにおけるJV
-Las Bambasプロジェクト

図1. ペルーの戦略的重要性 (出典:Xstrata HP をもとに作成)

表1. Xstrata Copper社がペルー南部に有する銅の鉱物資源量
鉱山/プロジェクト 資源量 合計
(百万t)
精測
(百万t)
概測
(百万t)
予測
(百万t)
Tintaya 数量 65 51 1 117
銅品位 1.20% 1.10% 0.80% 1.15%
Antapaccay 数量 180 390 150 720
銅品位 0.68% 0.57% 0.30% 0.56%
Coroccohuayco 数量 2 30 60 92
銅品位 3.01% 3.20% 3.06% 3.10%
Las Bambas 数量 228 658 246 1,132
銅品位 0.59% 0.86% 0.68% 0.77%
合計 475 1,129 457 2,061
0.72% 0.83% 0.87% 0.81%
(出典:Xstrata HP をもとに作成)

4. 新規開発及び拡張プロジェクトの概要

(1)Antapaccayプロジェクト
 [1]開発投資額:1,500百万US$
 [2]選鉱量:70千t/日
 [3]銅生産量:160千t/年(最初の10年間)、平均銅生産量は140千t/年
 [4]マインライフ:20年以上(平均銅生産量は140千t/年)

資源枯渇によりまもなく閉山を迎えるTintaya鉱山から10 kmの近距離にあることから、完全な新規プロジェクトと比較してコスト的に優位である。一方、Antapaccayプロジェクトにより同エリアの開発年数は20年延長された。現在100千t/年のTinataya鉱山の産銅量は、Antapaccayの操業開始により60%増加して160千tとなる見通し。
FSは2009年10月に完了しており、同年12月にEIAをエネルギー鉱山省に提出した。また、住民との関係も良好であり、EIAに関する公聴会は4千人の出席を得て成功裡に終わった。先日、EIAに対する質問状への回答書をエネルギー鉱山省に提出済みであり、2010年Q2でのEIA承認、2012年半ばの操業開始を目指している。

(2)Las Bambasプロジェクト
 [1]開発投資額:4,200百万US$
 [2]選鉱量:140千t/日
 [3]銅生産量:400千t/年(最初の9年間)、平均銅生産量は315千t/年
 [4]モリブデン生産量:5千t/年
 [5]マインライフ:18年以上

ペルー政府との契約に基づいて順調に進行しており、2010年10月には開発オプション権を行使するか否かの期限を迎えるが、Xstrata Copper社としては、期限前に同権利を行使する計画である。なお、開発オプション権を行使した場合、契約に定められた投資を実行する義務が発生し、投資を履行しない場合、権益を失うことになる。
Las Bambasプロジェクトは、Tintaya鉱山、Antapaccayプロジェクトと近距離にあることから、操業コストが大幅に低下するなど、様々な相乗効果が見込まれている。Xstrata Copper社のペルー南部における最大の戦略は、低コスト操業による競争力の強化にある。
ただし、Las Bambasプロジェクトにおける探鉱は未だ十分でなく、ボーリング調査をしなければならないエリアが多数残されている。
地域住民との関係は良好であり、2010年1月、プロジェクトの実施に伴うFuerabamba村の移転に関して、同村による合意書への署名を得た。また、計2万ページにのぼるEIAを既に提出しており、承認を待っている段階である。
2011年Q3の建設開始、2014年Q3からの操業開始を予定している。

(3)Antamina鉱山拡張プロジェクト

Xstrata社は、Antamina鉱山において33.75%の権益を保有しており、このような優良な鉱山に参加していることに満足している。現在、1,300百万US$を投じた拡張計画(選鉱能力を38%増加)を実施中であり、2012年Q1に完了予定である。

5. 持続的発展プログラムの実施状況

 Xstrataグループにとって、地域社会の持続的発展は非常に重要なテーマであり、現在、Antamina鉱山、Tintaya鉱山からは自発的拠出金やCanon税、Las Bambasプロジェクトからは社会基金等を通じた経済・社会的貢献を実施している。
 Canon税に関しては、Tintaya 鉱山の操業によりCusco県に対して2005~2009年の5年間に560百万Soles(約196百万US$)が還元されたが、AntapaccayプロジェクトはTintaya鉱山よりも生産量が多くなることから、Canon税の納付も増える見通しである。Tintaya鉱山の自発的拠出金により成り立つTintaya基金は、4.5百万US$で教育、医療等、多岐の分野にわたるプログラムを実施している。現在までに、Cusco県Espinar郡を中心にトラクターの寄贈等を通じた農業や酪農への支援のほか、インフラ整備等500以上のプロジェクトを実施してきた。
 Las Bambasプロジェクト周辺地域は貧困が激しく、特に健康・教育の分野に力を入れた対策を行っている。また、研修を行うことでLas Bambasプロジェクトの労働力の一部となる人材開発を行っている。Las Bambasプロジェクト周辺は、鉱山がかつて存在したことのない地域であることからも、数年前から入念な住民対策を開始している。また、養殖や道路整備のほか、住民と共同の環境対策調査等を実施している。

6. 質疑応答

[1]Tintaya鉱山の閉鎖後は、選鉱プラントをAntapaccayに移転して利用するのか?

(回答) Tintaya鉱山内のプラントは規模が小さく、Antapaccayの選鉱プラントとしては適さないことから、生産終了時に閉鎖する予定。Antapaccayプロジェクト向けには、別途新たな選鉱プラントを建設する予定である。

[2]Las Bambasプロジェクトへのアクセス道と、精鉱の輸送ルートはどこを通るのか?

(回答) Tintaya-Antapaccay-Las Bambasを通るアクセス道を建設する計画のほか、同じルートに精鉱パイプラインを敷設する予定である。なお、AntapaccayからMatarani港までは鉄道による輸送を行う計画である。

[3]プロジェクト実施における電力エネルギー供給は?

(回答) プロジェクトに必要な電力は確保されている。

[4]社会・環境対策の成功の秘訣は?

(回答) 持続的開発、地域との良好な関係は、重要性の高い包括的テーマであり、秘訣はない。
アドバイスとして言えるのは、金は重要だが全てではないということ。地域住民との心情的な交流・つながりを持つことが大切である。

[5]Fuerabamba村の移転について?

(回答) 移転先の村では、好みや必要性に応じて5種類の家屋(200m²)から選定することができる。また、学校、上下水道、教育施設などを完備する予定である。

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