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報告書&レポート

2010年7月29日 バンクーバー事務所  大野 隆幸
2010年37号

米国鉱山実態調査報告~ポゴ金鉱山~

 2010年5月25日~27日に米国鉱山実態調査の一環として、アラスカ州Fairbanks近郊のPogo Gold Mine(以下、ポゴ金鉱山または同鉱山)を訪れた。ポゴ金鉱山は、2009年7月から日本企業(住友グループ)が100%権益を所有しており、住友金属鉱山(株)がオペレータとなって間もなく1年となる節目の機会に、同鉱山の概要及び操業状況等について報告する。

1. ポゴ金鉱山の概要
 ポゴ金鉱山は、アラスカ州中央東部の都市Fairbanksから東に約145 km、北極圏から南に230 km、標高約390~1,200mに位置(図1参照)し、ハードロック金鉱山としてはアラスカ史上最大規模を誇る。
 同鉱山は、2009年4月にTeckが自社の40%権益(Teckの持分全て)を売却、住友が権益を購入し、住友グループで100%の権益を所有することとなった。現在の権益比率は、住友金属鉱山アメリカ社(住友金属鉱山(株)100%出資の子会社)85%、SCミネラルズアメリカ社(住友商事(株)グループ100%出資の子会社)15%となり、住友金属鉱山(株)の鉱山事業としては、海外初のオペレータを獲得、現在、米国で日本企業が100%権益を所有する数少ない鉱山の一つとなっている。
 同鉱山の操業は、坑内掘鉱山として2006年1月から鉱石処理を始め、2007年に商業生産を開始、2009年10月には累積生産金量100万oz(31t)を達成した。現在の年間生産量は約38万oz(12t)でマインライフは10年(延長の可能性大)としている。

図1. ポゴ金鉱山位置図
図1. ポゴ金鉱山位置図

2. 沿革
 1991年  :グラスルーツ探鉱開始
 1994年  :金属鉱業事業団(現JOGMEC)の海外地質構造調査開始(第1孔目で高品位石英脈を捕捉)
 1997年  :Teck参入(権益比率:住友金属鉱山アメリカ社51%、SCミネラルズ社9%、Teck 40%)
 1999年  :坑道探鉱実施
 2000年  :環境認可申請及び環境影響評価審査プロセス開始
 2004年  :主要環境認可発効及び本格建設工事開始
 2006年1月:鉱石処理開始
 2006年2月:金生産開始
 2007年5月:本格商業生産開始
 2009年7月:Teckの40%権益を取得(権益比率:住友金属鉱山アメリカ社85%、SCミネラルズ社15%)

3. 地質・鉱床
 ポゴ金鉱山の鉱床は、当初、ストーンボーイ探鉱プロジェクトにおけるポゴ地区において、金属鉱業事業団(現JOGMEC)による海外地質構造調査の第1孔目でコア長4.5m・平均金品位27.0g/tの含金石英鉱化帯を捕捉したのが端緒である。その後の探鉱の結果、本鉱化帯はアラスカ州でも最大規模の金鉱床に発展し、Liese鉱床(図2参照:以下、リサ鉱床)と命名された。命名されたリサ鉱床を開発することを目的にポゴプロジェクトとして、ストーンボーイ探鉱プロジェクトから独立させた。
 リサ鉱床は、原生代~古生代中期の片麻岩と中生代白亜紀の花崗岩質貫入岩中に胚胎する大規模石英板状鉱体で、複数枚の鉱体がほぼ平行に20~30度の緩傾斜で賦存する。主な、採掘対象はL1、L2と呼ばれる2鉱体(図3参照)で、2009年末現在のポゴ金鉱山の埋蔵鉱量は、1,048.7万t(金量139t)である。

図2. ポゴ プロジェクト 図3. ポゴ・Liese鉱体
図2. ポゴ プロジェクト 図3. ポゴ・Liese鉱体

              
4. 操業状況
 同鉱山の採掘手法は、リサ鉱床の「緩傾斜の脈状鉱床」、「高品位(平均約18g/t)」、「脈幅が変化に富み、鉱脈が多くの断層によって切断されている」という特徴を勘案し、より採掘実収率を重視した充填採掘法(Drift and fill mining method)が採用された。鉱石はLHD(Load Haul Dump)で坑内運搬トラックにて坑内貯鉱ビンへ運搬される。保安上の配慮から破砕鉱石の抜鉱完了後はロックボルトと溶接金網、場合によっては吹付コンクリートを併用して支保(図4参照)を行っている。
 採鉱された鉱石はSAG MillとBall Millによって破砕、磨鉱され、先ず、Knelson選鉱機による比重選鉱によって金を回収する。比重選鉱によって回収できない金は浮選により浮選精鉱として回収する。浮選精鉱は、微粉砕後、シアン浸出させ、CIP(Carbon-in-pulp)法によってカーボンに吸着回収する方法を採用している。カーボンに吸着した金は溶離され、比重精鉱を高濃度シアンバッチ処理し回収した金と共に電解処理した後、低周波炉において精製され、最終産物は、金品位94%(銀6%)のドーレとして販売される。(図5~7参照)
 同鉱山の鉱石処理では、1日の鉱石処理量を2,500tとした場合、概ね、浮選尾鉱2,250t、CIP尾鉱250tが発生する。ポゴ鉱山では、米国アラスカ州の環境規制を考慮(米国の環境法では自然水系と外界物質との接触には厳しい制約があり、通常の尾鉱ダムでは認可が難しいと判断)し、CIP尾鉱全量に浮選尾鉱の一部とセメント混合し、ペースト状にして配管流送により坑内充填している。
 また、残りの浮選尾鉱は脱水処理してケーキ状にして堆積するドライスタックを採用することで堆積量を減らし、堆積場の敷地面積を最小限にし、地表と堆積物との間には隔離層を設けている。(図8参照)
 同鉱山の生産体制は、金生産を開始した2006年2月からリーマンショック発生時の2008年9月頃までは、金を含む金属価格全般が歴史的な高値で推移したこともあり、活況を呈した鉱業界において、ポゴ金鉱山のような厳寒地でかつ遠隔に位置する鉱山の人員確保は困難を極めた。2007年12月までの間の直轄人員は250名を下回る水準で推移し、フル生産操業の実現には人員不足の状態が続いた。2008年に入り、ゴールドボーナス制度(金の市場価格変動に応じて一定割合をボーナスとして支給する制度)の導入等の企業努力もあり、ようやく270名に達し、生産操業は安定してきた。
 更に、採用環境の好転により、2009年には離職者が減少し、現在は、300名前後を維持している。(図9参照)
 生産実績については、2006年初頭の鉱石処理開始直後は、選鉱設備の初期トラブルや人員不足、技術者の技能不足により苦心したが、2007年以降徐々に生産量を伸ばし、2008年には坑内出鉱量を約2,400t/日確保、選鉱処理量も2,200t/日前後とした。2009年に入り、更に操業改善を推進し、現在では2,400~2,700t/日の坑内出鉱量を確保している。また、年間の金生産量も、2006年の3.5t、2007年は8.1t、2008年には10.8tと着実に生産量を伸ばしており、2009年には12.1tを生産するまでに至る。2009年10月には累積生産量31t(100万oz)を達成した。
 今後の同鉱山の運営について経営陣に伺ったところ、現行、坑内の好調な出鉱体制の下、金価格の歴史的な高水準を背景に、今後とも開坑掘進を積極的に進め、将来の採鉱切羽の確保に努めて行く方針とのことであった。
 以上のことから、現在のポゴ金鉱山を取り巻く環境(安定したオペレーション体制、並びに市況好調)による積極的な鉱山運営が伺えた。

図4. 採鉱 図5. 選鉱処理フロー
図4. 採鉱 図5. 選鉱処理フロー

図6. 選鉱処理

図7. 電解精錬
図6. 選鉱処理 図7. 電解精錬

図8. 尾鉱処理

図9. ポゴ金鉱山操業人員推移
図8. 尾鉱処理 図9. ポゴ金鉱山操業人員推移

5. おわりに
 ポゴ金鉱山は、米国において、日本企業が100%権益を所有し、オペレーションを行う鉱山として、非常に整理整頓がなされていること、従業員へのきめ細やかなサポート体制が確立されていること、安全・安心を旨とした業務管理・運営が徹底されていること等、随所に日本的経営センスを感じることができた。
 また、同鉱山では、今後も積極的に探鉱を実施予定とのことであり、同鉱山のマインライフ延長も期待するところである。
                      

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