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報告書&レポート

2010年8月26日 シドニー事務所 原田 富雄 増田 一夫
2010年43号

豪連邦選挙結果により新資源税の行方が混沌

 2010年8月21日、新資源税の導入を左右しかねない連邦議会選挙が行われた。2010年5月2日により発表された「資源利潤超過税(RSPT)」が資源業界の反発を招き、当時のラッド首相が失脚、跡を引き継いだギラード現首相は、大手資源企業3社(BHP Billiton、Rio Tinto、Xstrata)との妥協により、2010年7月2日にRSPTを廃止、新たに「鉱物資源利用税(MRRT)」)を発表した。しかしながら、準鉄鉱石大手、磁鉄鉱鉱山、ジュニア企業及び炭層メタンガス開発事業者を中心として、MRRT税制にも反対する声が依然としてあがっており、野党保守連合を率いるアボット野党自由党党首も新たな資源税制に関して見直しが必要としてMRRT導入に反対との姿勢を示す中での選挙であった。
 即日開票の結果は、豪州選挙史上稀な激戦となり、2大政党とも下院議席の過半数を獲得できない事態となり、無所属議員の取り込みによる多数派工作が繰り広げられる異例の事態に発展しているが、本稿では選挙結果が新資源税に及ぼす影響を含めて述べる。

 2010年8月21日、連邦下院解散及び上院半数改選の同時選挙が実施され、即日開票の結果、ギラード首相率いる与党労働党が議席数を大幅に減少させる一方、野党保守連合が議席数を大幅に増加させる結果となった。豪州では下院の過半数を得た政党が政権党として政府を構成する議会制民主主義をとっているが、今次選挙では両政党共に下院の過半数に届かず、政権党が確定しない宙ぶらりん(ハング・パーラメント)の状況となった。
 下院の最終議席数が確定するのは、不在者投票や郵便投票などの開票、集計後となるが、どちらの政党が政権に就くかは、総計で5議席になる見込みの、非二大政党下院議員がどちらの政党を支持するかに委ねられる事態となっている。
 仮に、両党も多数派工作に失敗すれば、エリザベス女王の代理であるBryce連邦総督も再選挙以外に選択肢が無いとの報道がなされているが、その場合であっても豪州の国民性から国民が納得できるだけの時間が必要と言われており、政治の空白が暫く続くことが予想される。
 24日の時点における下院の確定政党勢力分布、並びに国営ABC放送の予測勢力分布は次のとおり。(開票率78.3%)

下院政党勢力分布
 政党 選挙前実議席数 現行確定議席数 予測議席数
 労働党 83 72 73
 保守連合 64 69 73
    (自由党) (55)
    (国民党) (9)
 無所属 3 3 3
 グリーン党 0 1 1
 合計 150 145 150

 一方、今次上院半数選挙では、上院定数76人の内、[1]各州選出上院議員については、2004年10月の連邦選挙での当選議員、[2]もしくは2004年当選議員の後任となった当該政党の議員(註:議員が任期中途で辞職した場合、下院では補欠選挙を実施するが、上院の場合には、当該辞職議員が前回当選時に所属していた政党から後任が選ばれる)、そして[3]2007年11月選挙で当選したACTとNTの選出上院議員、の3つのケースで、計40人の改選選挙となった。上院の場合は、最終当選者が確定するまでに選挙後1~2週間を要するが、次表からも明らかなように、2011年度が始まる2011年7月1日からスタートする新上院でも政権党が過半数議席を確保できない状況が継続すると見られており、しかもグリーン党が「バランス・オブ・パワー」を掌握するのが確実視されている。

上院政党勢力分布予測
政党 今次改選選挙前 2011年7月以降予測
 労働党 32 31
 保守連合 37 35
 グリーン党 5 9
 家族優先党 1 0
 無所属 1 1
 合計 76 76

 以上の選挙結果を受け、選挙期間中に一つの争点となっていた鉱物資源利用税(MRRT)導入に関して次の点が考えられる。
○与党労働党がグリーン党と協調路線をとる場合
 鉱物資源利用税(MRRT)導入には連邦上下院で法律案の承認が必要となるが、前ラッド政権下で提出された地球温暖化防止法案(CPRS)が上院で2度否決された経緯があるだけに、グリーン党の主張に一定の歩み寄りを見せることが考えられる。グリーン党のBrown党首は、選挙戦において新資源税導入に賛成する立場をとっている。更には、教育に関して公立校支援には20億A$の追加税収が必要としており、また、法人税率軽減の観点からこれらの財源をMRRT課税率の引き上げに求めており資源業界にとって厳しい状況の出現が予想される。事実、選挙結果を受けて、ジュニア資源企業はグリーン党の躍進がMRRTのパラメータをより複雑なものに変えてしまうとして懸念を表明、またビジネス団体も新資源税に端を発した政治不信が金融業会に及ぼす恐れが助長されると表明している。
○野党保守連合が政権を獲得した場合
 アボット野党自由党党首は、MRRT導入は見送るとともに、MRRT導入により取り下げられた資源超過利潤税制度の基で存在した「探鉱費還付制度」が廃止されたことに伴い、中小探鉱事業者を支援するために、2011/12年度に探鉱開発プログラムとして150百万A$の助成を含む総額418.3百万A$の資源分野へのインセンティブを用意する意向を示していた。また、資源企業が望む「フロースルー株式制度」導入についても導入を予見させるポジションをとっており、こうした政策は資源業界に好意的に受け止められている、しかしながら、これらの財源を日系企業や日本政府も加盟する世界炭素回収・貯蔵技術研究所(GCCSI:本部はキャンベラ)の廃止に伴う余剰金に求めており、温暖化防止策の重要な柱を失うことに関して、グリーン党からの支持は受け入れられないと考えられる。

おわりに
 下院選挙の帰趨が判明するのに1週間以上がかかると見られており、政権党の組閣が完了するのは、更にその翌週で、新大臣宣誓・認証式は組閣内容の公表から数日後となる。また、新下院議員の任期がスタートする新議会の第1回集会は、選挙の実施日がQ4でもない限りは、選挙日から約1か月後となる。
 一方、上院に関し、当選者の任期がスタートするのは、6州選出の議員の場合は2011年7月1日(註:それまでは今次選挙で落選した議員も上院議員を継続する)、首都特別地域(ACT)並びにNT州選出の4人の上院議員に関しては、投票日である8月21日からとなっており、MRRTの動向に関して今後の政権再編の動きに注目する必要がある。

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