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報告書&レポート

2011年2月10日 ロンドン事務所  小嶋吉広
2011年06号

マラウィの鉱業投資環境

 JOGMECロンドン事務所では、現在、マラウィにおける鉱業投資環境調査を実施しており、先般、現行鉱業法の内容及び新鉱業法の検討状況につき現地調査として関係機関へヒアリングを行ったことから、本稿ではマラウィの鉱業投資環境として報告する。

1. 一般概況

図1. マラウィ位置図

 マラウィは南部アフリカの北東に位置し、タンザニア、ザンビア、モザンビークと国境を接する。人口は約1,500万人、面積は約12万km2でこれは北海道と九州を合わせた面積に相当する。世界銀行のデータによると、マラウィの一人当たりGNI(Gross National Income)は280 US$(2009年)であり、世銀が統計を取っている213か国・地域の中で、208位に位置する最貧国である。
 世界的なNGOであるTransparency Internationalが世界各国政府の手続きの透明性・アカウンタビリティについて数値化して発表しているが(Corruption Perception Index (CPI))、その2010年版によるとマラウィは全世界175か国中85位(日本:17位)、サブサハラ・アフリカの中では47か国中10位となっている(サブサハラで1位はボツワナ)。マラウィは、政府の手続きの透明性に関して世界的に低い方ではなく、これは各種の許認可手続き等を伴う投資環境を分析する上で重要な要素の一つであるといえる。


2. 経済における鉱業分野の重要性

 2004年に就任したムタリカ大統領(2009年に再選)は、農業部門の立直し、財政の健全化、国家予算の効率的配分に取り組んだ結果、それまで平均して2%程度であったGDP成長率は、2006年以降7%台まで改善した。2008年には、主要輸出産品であるタバコの葉の生産が好調であったことから、GDP成長率は9.7%にまで上昇した。2009年は7.7%、2010年は6.5%と成長は若干鈍化が予想されたものの、2011年はマラウィ初の大規模鉱山であるカイレケラ・ウラン鉱山が本格生産を迎えることから、7.2%にまで回復すると見込まれている。
 ムタリカ大統領はその強力なイニシアティブの下、2006年にMGDS(Malawi Growth and Development Strategy)を策定した。MGDSでは、タバコの葉の生産に取って代わる新たな外貨獲得源として、鉱業セクター、観光セクター、製造業等を挙げた。鉱業セクターについては、それまでGDPの1%程度にしか過ぎなかったが、これを2011年までに10%にまで引き上げることを目標とした。カイレケラ・ウラン鉱山が2009年に生産を開始したものの、GDPそれ自体が急速に成長していることもあり、10%の目標を達成することは難しく、2~3%程度になると見込まれている。鉱業セクター拡大のためには、カイレケラ以外の更なる投資が不可欠である。

3. 世界銀行による支援

 世界銀行は、マラウィの持続的経済成長に向け、鉱業セクターを経済の牽引役とするべく、鉱業行政におけるガバナンスの向上、許認可手続きの効率化、環境社会配慮手続きの適正化のための支援プログラムを現在行っている。このプログラムにおいては、カイレケラ・ウラン鉱山等の大型開発案件に係る許認可手続きに対処するため、2009年までに新鉱業法の制定、2012年までに新鉱業法の実際的運用と鉱業行政能力の向上を完了させる予定であった。しかしながら実際のところ、新鉱業法は現在、内閣で審議中であり、国会への提出は2011年9月頃、法案成立は最速でも2012年1月となる見込みで、結果としてカイレケラ鉱山の操業開始に追い越される形となった。

4. 生産中又は開発中のプロジェクト

 マラウィで現在、生産中又は開発中のプロジェクトは表1のとおりである。

表1.生産中又は開発中のプロジェクト
表1.生産中又は開発中のプロジェクト

5. 鉱業法制

 現行の鉱業法は1981年に制定されたものであるが、上述のとおり現在マラウィ政府内部で新鉱業法を検討中である。以下マラウィの鉱業法制について、現行の鉱業法での記載をベースとし、新鉱業法の検討内容についてヒアリングで聴取した情報を適宜加えつつトピックスごとに説明する。なお、新鉱業法の内容は、マラウィ政府での検討如何により今後変更があり得ること予めご承知いただきたい。

[1] 鉱業ライセンス

 主なライセンスは表2のとおりである。新鉱業法においてもライセンスの分類・内容は概ね現行法どおりとなる見込みであるが、排他的探査権に延長の規定が加わる予定である。
 また、現行法ではライセンスに対象鉱種が明示されており、探査や採掘の際にはその許可された鉱種に対してのみ権利を有する規定になっているが、新鉱業法では鉱区内のすべての鉱物に対して排他的権利を有する規定に変更される予定である。

表2.現行法での鉱業ライセンスの内容
表2.現行法での鉱業ライセンスの内容

[2] 税制・ロイヤルティ

 現行の鉱業税制は表3のとおりである。 現行の鉱業法では、ロイヤルティ率が法令で定められているにも関わらず、政府との協議により決定することも可能となっている。この点は投資家がプロジェクトの投資判断をするに当たり不確定要素となるため、改善の必要性があると世銀は指摘している。カイレケラ・ウラン鉱山では、豪Paladin社とマラウィ政府との協議の結果、売り上げに対するロイヤルティ率は最初の3年間は1.5%、4年目以降は3%となったが、他方法令では5%と規定されている。
 なお新鉱業法におけるロイヤルティ率は、現行法と同程度の水準とする方向で検討されている模様である。

表3.マラウィの鉱業税制
表3.マラウィの鉱業税制

[3] ローカル企業又はマラウィ政府の参画

 ローカル企業又はマラウィ政府によるプロジェクトへの参画については、現行の鉱業法では根拠規定はなく、投資家との協議事項とされている。カイレケラ鉱山プロジェクトの場合は、マラウィ政府とPaladin社との協議の結果、マラウィ政府がプロジェクト権益の15%を取得することとなった。その代わりにPaladin社は、利潤税の免除と法人税の引き下げ(30%→27.5%)を取り付けたとされている。
 新鉱業法では、政府が必要と認めるプロジェクトについては、ローカル企業又はマラウィ政府(あるいはその両方)が最高で30%までプロジェクトの株式を時価で取得できる方向で検討されている模様である。

[4] 鉱物資源委員会(Mineral Resources Board)

 現行鉱業法と現在検討中の新鉱業法の大きな変更点の一つに、鉱物資源委員会の設置が挙げられる。鉱物資源委員会は、天然資源・エネルギー・環境大臣が鉱業ライセンス発給を検討する際に、大臣を補佐・助言する機関として新たに設置が検討されている。メンバーは以下の機関のトップ(またはそれに準じる者)から構成され、議長は同省の次官(Principal Secretary)、事務局はコミッショナーが務める。

(想定される機関) 鉱山局、地質調査所、国土局、警察庁、歳入・租税庁、経済・計画局、環境局、植生・野生動物局、林野局、法務省

[5] 環境への配慮

 マラウィでは、1996年に制定されたEnvironment Management Actにより環境影響評価(EIA)の提出が義務付けられ、そのガイドラインとして2002年にEnvironment Impact Assessment Guideline for Mining Projectが制定され、法制度は十分に整備されている。しかしながら、その運用が十分でなく、カイレケラ鉱山の開発に当たり環境面での手続きが不備であると一部NGOが非難したこともあり、世銀は環境行政のキャパシティ・ビルディングに取り組んでいるところである。
 新鉱業法においても、地域住民等ステークホルダーとの情報共有・意見聴取を万全なものにすべく、排他的探査権申請時より環境社会配慮のレポートの提出を義務付ける見込みである。
 また、鉱業ライセンスの発給に関しては、上述の鉱物資源委員会が大臣を補佐する権限を有するが、環境面での懸念がある場合には、環境局は鉱物資源員会に対し異議を申し立て、ライセンスの発給を差し止めることができるよう、環境局の権限強化が新たに規定される見込みである。

5. 課題及び今後の展望

 現在、マラウィの電力需要は347 MWであるが供給能力は287 MWしかなく、慢性的な電力不足に陥っている。また、国内の送電網整備も遅れており、全国民の7%しか電気にアクセスできない状況である。マラウィ政府の予想では電力需要は今後急激に増加し、2015年に598 MW、2020年には874 MWにまで拡大する見込みである。この事態に対応するため、政府はマラウィ湖からの唯一の流出河川であるShire川にKapichira水力発電所(出力64 MW)を建設中であるが、運転開始は2013年の予定であり、さらなる電源開発が喫緊の課題となっている。
 マラウィ政府はこれまで、電力インフラについてはIPP(Independent Power Producer)やPPP(Public Private Partnership)主導で整備することを計画していたが、十分な資産が得られず、整備計画が遅延していたため、現在のような絶対的な電力不足に陥ってしまった。今後の中長期的な電力需給見通しは、以下のとおりである。

図2. マラウィの電力需給予測(2010~2030年)
図2. マラウィの電力需給予測(2010~2030年)

 米国政府は2011年1月にマラウィの発電・送配電整備に350.7百万US$の無償援助を決定し、マラウィ政府が計画するところの中長期的電力整備計画について資金調達の目途が立ったことから、電力の中長期的需給ギャップの解消については少し展望が見えてきたところである、
 また、投資環境という観点では、2011年1月に仏がマラウィに対し今後5年間で10百万ユーロ規模の地質図整備に係る技術協力を発表している。
 このように、各国の支援により投資環境整備が徐々に進行しつつあり、今後、鉱業セクターへの投資が一層促進されるものと期待できる。

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