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報告書&レポート

2011年3月17日 バンクーバー事務所副所長 片山 弘行 資源探査部探査第3課課長代理 村上 尚義 資源探査部探査第3課 上久保 寛
2011年11号

カナダ・ブリティシュコロンビア州/ユーコン準州、米国アラスカ州の2010年探鉱活動について‐Roundup 2011報告‐

 2011年1月17日から20日にかけて、カナダ・バンクーバーにおいてブリティッシュコロンビア鉱業協会(Association of Mineral Exploration British Columbia, AME BC)主催でRoundup 2011が開催された。本会議は、例年1月にバンクーバーで開催されている鉱業大会であり、直前に開催されるCambridge House社主催のVancouver Resource Investment Conferenceと合わせて、この時期のバンクーバーの一種の風物詩ともなっている鉱業イベントである。
 本会議では、まず各州の2010年の探鉱状況を報告するオープニングセッションが開催されたのち、技術的なテーマを主とするテクニカルセッションに移る。セッションと同時に、州政府、鉱山会社、探鉱ジュニア、各種コントラクターがブースを構えるセクションが設けられるとともに、探鉱ジュニアやプロスペクターが保有案件のボーリングコアを展示するコアシャック、探鉱図面類を一覧できるマップテントなど、案件発掘をする側にとっても非常に有益な機会を提供している。
 本稿では、主としてオープニングセッションで講演されたカナダ・ブリティッシュコロンビア州、ユーコン準州、米国・アラスカ州の3州の2010年の探鉱活動についてその概況を報告する。

1. ブリティッシュコロンビア州

 ブリティッシュコロンビア州(以下、BC州)では、2010年、10億C$以上が鉱山建設及び拡張工事に投じられ、3.22億C$が探鉱費に費やされた。探鉱費は、2007年の4.16億C$、2008年の3.67億C$には及ばないものの、2009年の探鉱費1.54億C$を大幅に上回る結果となり、一昨年の金融危機の影響から回復基調にあることが分かる。
 BC州では2010年現在、金属鉱山が10(Endako, Gibraltar, Highland Valley, Huckleberry, Kemess South, MAX, Mount Polley, Myra Falls, QR, Shasta)、石炭鉱山が10(Brule, Coal Mountain, Elkview, Fording River, Greenhills, Lions Creek, Quinsam, Trend, Willow Creek, Wolverine)操業中であり、これら生産鉱山からの2010年の生産額は60億C$と報告された。そのうちの60%に相当する36億C$は石炭の生産から、23%は銅の生産からもたらされている。2010年は、Highland Valley、Endako、Gibraltarの各鉱山で拡張工事が進められ、それら3鉱山における2010年の投資額は4億C$を超える。また、小規模ながらBarkerville Gold Mines社のQR金鉱山が600 t/日の処理量で2010年中頃に再開し、MAX鉱山の拡張(選鉱処理量を1,000 t/日に拡張)が2010年4月に認可された。Kemess Southは2011年1月に閉山予定であるが、Kemess Northとして知られている派生鉱体が坑内掘りによる開発に向けて準備が進められている。
 Mt. Milligan、Copper Mountain、New Aftonの3プロジェクトでは再開/新規開発工事が進められており、2010年の投資額は3.5億C$近くにも及んだ。New Gold社のNew Afton銅・金鉱山は、2012年に処理量11,000 t/日で坑内掘り鉱山として再開予定であり、建設費用は5.9億C$と見積もられている。Mt. Milligan銅・金プロジェクトは、所有者であるTerrane Metals社の買収により、現在はThompson Creek Metals社が所有している。2010年はアクセス道路、キャンプの建設及び電力線の敷設が開始され、建設費の総額は9.15億C$、期間は2.5年を要すると見積もられている。
 開発前の案件では、Copper Fox Metals社のSchaft Creek銅・金・モリブデンプロジェクトがFSを実施中であり、Teck Resources社とNovaGold社のGalore Creek銅・金プロジェクトは開発経費の低減を目的とした再設計が完了したところである。Richfield Ventures社のBlacKWater-Davidson金プロジェクト、Amarc Resources社のNewton金プロジェクト、Seabridge Gold社のKSM金・銅・モリブデン(・レニウム)プロジェクトにおける大幅な鉱量増加、Imperial Metals社のRed Chris銅・金プロジェクトにおける深部鉱体への拡大といったものが、2010年の探鉱トピックスとして取り上げられた。

図1. BC州における操業鉱山からの鉱種別生産額割合

図1. BC州における操業鉱山からの鉱種別生産額割合
(出典:Roundup講演資料)

図2. BC州における探鉱費の推移(1971~2010年)

図2. BC州における探鉱費の推移(1971~2010年)
(出典:BC州森林・土地・天然資源事業省)

図3. BC州における主たる操業鉱山及び探鉱案件

図3. BC州における主たる操業鉱山及び探鉱案件
(出典:BC州Open File 2011-1)

2. ユーコン準州

 ユーコン準州では、2010年時点での主要操業鉱山はMinto銅・金・銀鉱山だけであるが、同鉱山の設備拡充及びその他新規鉱山の建設に1.5億C$が投じられた。また、砂鉱床以外に対する探鉱費には1.6億C$が投じられた。これは過去最高額であり、特に金価格の高騰を受けた金探鉱が非常に盛んとなった。
 唯一の操業鉱山であるCapstone Mining社のMinto銅・金・銀鉱山は、現在採掘している主要鉱体が2011年春に終掘予定であり、現在、同社は周辺鉱体を精力的に探鉱、NI43-101準拠の資源量を算出した。坑内採掘と同時に行う拡張ピットに対する許認可も申請しており、認可が得られれば主要鉱体のマインライフは2年延長される。
 開発中鉱山では、Yukon Zinc社のWolverine亜鉛・銀・鉛・銅・金鉱山が2011年3月にフル生産開始となることが紹介された。同鉱山は坑内掘りで1,700 t/日の処理量にてマインライフ9.5年、現在97名の従業員をフル生産時には190名まで増員させるとしている。Alexco Resource社のBellekeno銀・鉛・亜鉛鉱山も2010年建設完了、11月に選鉱施設が稼働開始し、2011年1月1日でフル生産開始となった。
 2010年の探鉱費1.6億C$のうち、58%は金を対象とした探鉱に投じられ、鉛‐亜鉛が15%、銅‐モリブデンが12%、銀が10%となっている。探鉱費の増大に伴い、鉱区取得数も過去最大となっているが、それでもなおユーコン準州全体のわずか8%の面積を占めるにすぎず、探鉱余地はまだ残っているとしている。もっとも探鉱活動の盛んな地域として、Kinross Gold社のWhite Gold金プロジェクトに代表されるDawson Rangeとして知られるエリア、Atac Resources社のRau金プロジェクトに代表されるSelwyn Basinとして知られるエリアが挙げられた。これらのエリアでは、ほとんどが金のプロジェクトであるが、Dawson Rangeエリア南からMinto鉱山周辺にかけてはベースメタルを対象とした探鉱も盛んであり、そのうちの一つとしてWestern Copper社のCasino銅・金プロジェクトが紹介された。本案件は、NI43-101準拠の予測資源量として16.96億t(平均品位Cu 0.14%,Au 0.16 g/t,Mo 0.019%,Ag 1.37 g/t,銅換算品位0.37%)が計上されており、2011年に新たなプレFSレポートが作成されるとのことである。
 Selwyn鉛・亜鉛プロジェクト(旧称Howards Pass)は、2009年に所有者であるSelwyn Resources社が中国企業のYunnan Chihong Zinc & Germanium Co. Ltd.と契約を締結、Chihong社が1億C$を拠出してJV会社Selwyn Chihong Mining Ltd.を設立した。2010~2011年にかけて実施される許認可取得、FS、エンジニアリング等に89百万C$を投じるとしている。

図4. ユーコン準州における探鉱費の推移

図4. ユーコン準州における探鉱費の推移
(出典:ユーコン準州エネルギー・鉱山資源省)

図5. ユーコン準州における主たる操業鉱山及び探鉱案件

図5. ユーコン準州における主たる操業鉱山及び探鉱案件
(出典:Yukon Exploration & Geology Overview 2010)

3. アラスカ州

 アラスカ州では、2010年現在、主要操業鉱山が6、開発中鉱山が3、ステージの進んだ探鉱案件が3案件存在する。また60以上の探鉱案件が実施されており、そのうちの24案件では1億US$以上の探鉱費が費やされた。小規模なものまで含めると、アラスカ全土では234以上の砂鉱床、227以上の砂利・採石鉱山が操業しており、これらすべてを含めて鉱山業全体で3,350名分のフルタイムの雇用、2,500名分以上の周辺雇用が生み出されている。
 アラスカ州に投じられた探鉱費、開発費及び生産鉱山の生産額の合計は、1996年頃から顕著な増加傾向が認められ、2006年からは急激に増加し2007年に40億1,940万US$にまで達した。2008~2009年は世界的な金融危機の影響を受けて大きく落ち込んだものの、2010年は急激な回復を見せており、その総額は35億1,400万US$となっている。そのうち、30億4,120万US$は生産鉱山からの生産額であり、アラスカの生産鉱山がアラスカ州経済に及ぼす影響が大きいことが分かる。
 アラスカ州で操業している鉱山は、Red Dog鉛・亜鉛鉱山、Fort Knox金鉱山、Pogo金鉱山、Kensington金鉱山、Greens Creek銀鉱山、Usibelli石炭鉱山である。これら6鉱山で産み出される生産総額30億4,120万US$のうちの42%にあたる12億6,700万US$は亜鉛の生産からもたらされており、36%にあたる11億US$が金の生産からもたらされている。
 2010年の特記事項としては、Kensington鉱山が操業開始となったことが挙げられ、2010年は1.56 tの金が生産される見通しである。また、Red Dog鉱山のメインピット北隣のAqqaluk鉱体の採掘が2010年3月に認可され、これによりRed Dog鉱山のマインライフが2031年まで延長される見通しとなった。
 2010年にアラスカ州に投じられた探鉱費は2.282億US$に及び、これは全米の探鉱費総額のうち30~35%を占める。もっとも探鉱費の多かった2007~2008年の3.291~3.473億US$の水準には及ばないものの、2009年の1.8億US$と比較すると順調な回復の兆しが認められる。鉱床タイプ別には、斑岩型銅・金・モリブデン鉱床探査に全体の40%、貫入岩関連型金鉱床探査に33%の探鉱費が投じられている。斑岩型案件では、Northern Dynasty Minerals社とAnglo AmericanのJVで実施されているPebble鉱床の探鉱が最も進んでおり、2010年は72.9百万US$の探鉱費が投じられ、2011年には許認可申請が開始される見込みである。また、新たにアラスカ州最南端のPrince of Wales島のUcore Rare Metals社所有のBokan – Dotson Ridgeプロジェクトが、米国内における数少ないレアアース案件として紹介された。

図6. アラスカ州における操業鉱山からの生産額、開発費、探鉱費の推移

図6. アラスカ州における操業鉱山からの生産額、開発費、探鉱費の推移
(出典:Alaska’s Mineral Industry 2009及びRoundup講演資料)

図7. アラスカ州の主たる操業鉱山及び探鉱案件

図7. アラスカ州の主たる操業鉱山及び探鉱案件
(出典:Roundup講演資料)

4. まとめ

 BC州、ユーコン準州、アラスカ州での経済活動は、いずれも世界的な金融危機の影響を受けた2008~2009年の低迷期からは着実な回復傾向が認められ、再び以前のような活況を呈している。このことは、探鉱活動や鉱山開発が促進され、投資機会も増すことから歓迎すべきことであるとともに、参入費・買収費等の高騰も招く。またこれら3州は、日本をはじめとする極東アジア諸国にとって最もアクセスし易い地域であり、かつ地質ポテンシャル、投資環境とも良好なことから、今後さらに中国・韓国系企業との競争も激化することが予想される。
 一方で、昨今のレアメタルに対する危機意識の高まりとともに、レアアース等を対象とする探鉱案件も着実に増加し、かつ大きく取り扱われつつある。本地域におけるレアメタル案件は、その多くが緒についたばかりであり、現時点では開発の可能性について言及されることは少なかったが、その動向に今後も注目すべきと思われる。

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