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報告書&レポート

2011年7月15日 金属企画調査部 廣川満哉 渡邉美和
2011年36号

国際レアアースサミット(2011)報告

 2011年5月16~18日、「国際レアアースサミット2011(2011国際稀土峰会、International Rare Earth Summit 2011)」(亜州金属網主催)が、中華人民共和国の浙江省杭州市の歌徳大酒店(Goethe Hotel Hanzhou,China)で、開催された。参加登録者187名(当日参加もあり、参加人数約200名)と、レアアースの生産者、トレーダー、ユーザーなど幅広い参加者があった。日系企業では、三徳、住友商事、アドバンストマテリアル、日立高技術国際貿易、包頭三徳電池材料、五鉱三徳希土材料が参加、日本以外の外国企業ではGE(米国)及び韓国、カナダの企業等、マスコミはロイターとKBS(韓国)が参加し、会場はほぼ満席状態であった。
 以下に行われた7講演の概略を報告する。

写真1. 会議を示す案内設置
写真1. 会議を示す案内設置
写真2. 会場の歌徳大酒店
写真2. 会場の歌徳大酒店

1. レアアース産業と貿易の持続的発展を実現するために

 商務部中国国際貿易経済協力研究院
   国際市場研究部主任 趙玉敏(Zhao Yumin)

 2011年5月10日に国務院が発表したレアアースに関するコメントを受けた内容とレアアース政策の歴史と現状を述べたもので、目新しいものはなかった。
 5月10日の国務院の発表内容の主な要点は以下のとおり。

 (1) 指導的思想、基本原則、発展目標の明確化
  ① レアアース産業の持続的な発展
  ② 環境保護と資源節約のため、違法行為を取り締まる。

③ 大型企業が主導するレアアース産業構造の構築
(南方のイオン型レアアース産業ベスト3の企業グループの産業集中度を80%以上に高める)

 (2) 健全な産業監督管理システムを確立し、産業管理を強化する。
  ④ 「レアアース工業汚染物質排出基準」を厳格に執行し、レアアース産業の環境リスク評価制度を制定する。
  ⑤ レアアースの指令性生産計画管理を改善する。また、レアアース製錬分離企業に対して、生産許可制を実行する。

⑥ レアアース輸出企業の資質レベルを向上させる。違法行為を行っている企業に対して、法に基づいて相応の法的責任を追及する。

⑦ レアアース輸出管理を強化する。国内資源と生産、消費及び国際市場の状況を考慮して、年度のレアアース輸出割当総量を合理的に確定する。

  ⑧ レアアース製品価格形成メカニズムを改革して、レアアースの価値と価格の統一を徐々に実現する。
  ⑨ 法によってレアアースの探査・採掘・製錬・加工・製品流通・応用の普及・戦略的備蓄・輸出入等の段階の管理を強化する。

 (3) 法に基づいて良好な産業秩序を的確に維持する。
  ⑩ 不法な採掘や指標の抑制量を超えた採掘を断固として取り締まる。
  ⑪ 違法生産と計画を超えた生産を断固として取り締まる。
  ⑫ 生態を破壊し環境を汚染する行為を断固として取り締まる。
  ⑬ レアアースの不法な輸出及び闇取引行為を断固として取り締まる。

 (4) レアアース産業の整理再編を加速し、産業構造を調整・最適化する。
  ⑭ レアアース資源開発の整理再編を深く推進する。
  ⑮ レアアースの製錬分離総量を厳格に抑制する。
  ⑯ レアアース産業のM&Aを積極的に促進する。
  ⑰ 企業の技術開発を推進する。

写真3. 白立忠氏の発表
写真3. 白立忠氏の発表

 (5) レアアース資源備蓄を増強し、レアアース関連産業の力強い発展を進める。

⑱ 南方のイオン型レアアース(重希土類)と北方のレアアース(軽希土類)採掘を総合的に計画し、戦略的資源備蓄地として、国家の設定鉱区を策定する。

⑲ レアアースの重要な応用技術研究・開発
及び産業化を促進する。

 (6) 組織のリーダーシップを強化し、良好な発
   展環境を構築する。

2. 中国レアアース工業の現状および分析

 甘粛希土新材料有限会社
      副社長 白立忠(Bai Lizhong)

 本発表ではこれまでの中国におけるレアアース産業発展の経緯と現状が説明された。その中で、中国のレアアース需要について、2009年には7.3万tと1978年の73倍に、特に新材料分野(希土類磁石、蛍光材料など)での比重が伸び、2010年には消費の55.2%、30品目以上に達している。2015年には世界需要は21万t、国内需要は13.8万t、2020年には国内需要19万t(新材料分野13万t)と予測している。国内需要の増大に比例して輸出管理枠が減り、今後も減る可能性があると指摘している。2010年来、米国、豪州、カナダ、ベトナム、インドなど中国以外での生産が計画、開始され、中国の世界での比率が低下していくため、中国の産業はレアアース分離技術と新材料技術を高めて、世界のレアアース産業をリードしていく必要があるとしている。

3. レアアースの価格が上昇する中での高効率NdFeB磁石の優位性

 烟台首鋼磁性材料股莉ス有限公司
    研究開発部課長 崔勝利(Cui Shenqli)

 レアアースの価格上昇傾向やNdFeB磁石の低酸素プロセスと従来のプロセスを比較して、低酸素プロセスの優位性を説明した。本プロセスの採用によりレアアース使用量を減らせると強調していた。
 最近のレアアース価格高騰の要因については、以下の4つの政策が挙げられるとした。

① 新排出基準発表
 2011年3月に排水の新排出基準「GB26451-2011」が環境保護省から出され、レアアース産業の排出者に適用されることになったことから、このままでは90%のレアアース精製分離工場が閉鎖となる。基準を満足すべく改善するとコストは70%上昇すると見込まれる。

写真4. 崔勝利氏の発表
写真4. 崔勝利氏の発表
写真5. 会議場内の聴衆
写真5. 会議場内の聴衆

② レアアースの使用量増加
 2009年初めからHEVの普及と風力発電産業の進展によりNdFeB磁石使用量が急増する。このため、Pr,Nd,Dy、Tbが戦略的メタルとしてより重要になる。

③ 資源税の増税
 2011年3月に資源税についての新政策が財務部から発表され、t当たり0.5~3元が30~60元へと10倍に増加した。

④ 輸出枠の減少
 (これまでの報道のとおり)

4. 大震災後の日本のレアアースマーケットの状況

 上海有貿稀貿易公司総経理 中村総一郎

 日本は震災により原発中心のエネルギー政策の見直しが図られ、省エネや再生エネルギーの需要が増大する。このため、省エネ照明や電気自動車、太陽光発電や風力発電には、大量のレアアースが必要となってくる。中国で生産した中間製品を日本へ輸出し、日本から優先的にモーターを輸出することにより、双方にメリットがある。中国がレアアースの規制を強めたら日本は中国以外のルート開発や脱レアアースを達成し、中国の中間製品業者は輸出先を失うことになる。

5. 中国レアアース資源の特性と戦略備蓄の研究

 中国国土資源経済研究院 李瑞軍(Li Ruijun)

 国土資源経済研究院は、レアアースの需給、政策のレビュー、備蓄政策、EL政策の4つを説明した。配付資料はなかった。冒頭、本発表は政府の意見ではなく、個人的な見解と延べていた。
 最近の規制量推移について以下の報告があり、REO生産量と国土資源部採鉱総量規制が2010年に至りバランスした。

写真6. 李瑞軍氏の発表
写真6. 李瑞軍氏の発表
写真7. 李瑞軍氏プレゼンは図を多用
写真7. 李瑞軍氏プレゼンは図を多用

表1. REOの規制と生産

  国土資源部
採鉱総量規制(t)
工業情報化部
REO生産規制(t)
実態
REO生産量実績
バランス(t)
④=
③-①
同左比率
⑤=
④/①(%)
2006年 86,520 132,506 45,986 53.2
2007年 87,020 131,780 120,800 33,780 38.8
2008年 87,620 130,000 124,500 36,880 42.1
2009年 82,320 119,500 129,405 47,085 57.2
2010年 89,200 89,200 89,259 59 0.07

 また、鉱産地戦略備蓄の決定の仕組みに関して、「鉱産地備蓄委員会」が組織化され、その下で「中央地質勘査基金管理センター」が主体となり「工業情報化部関連部署」「財政部関連部署」及び必要に応じて「その他機関」により方策が決定され、「鉱産地戦略備蓄公司」が運用するなどの仕組みの紹介が目をひいた。

表2. レアアースの所管部門の変遷

全国希土(開発)応用普及指導グループ事務所 1975年 ~ 1987年
国務院希土指導グループ事務所 1988年 ~ 1993年
国家計画委員会希土事務所 1994年 ~ 1997年
国家発展計画委員会希土事務所 1998年 ~ 2002年
国家発展和改革委員会希土事務所 2003年 ~ 2007年
国家工業情報化部原材料工業司金属材料二処 2008年 ~ 現在

図1.鉱産地戦略備蓄の運用関連図
図1.鉱産地戦略備蓄の運用関連図

6. レアアースの需給と価格

 カナダ,Byron Capital Markets,Manager,John Hykawy

 レアアース元素毎の需給と将来の価格の予測について講演があった。
 (1) ランタン
 中国は年間23,500 t供給可能、今後新規供給が22,400 t見込まれる。Molycorp社はハイブリッド車の需要増によりランタン消費量が増加すると言っているが、トヨタはハイブリッド車を2010年68万台販売し、その充電池中のランタンは8,200 tに過ぎない、一方で2010年の供給は30,000 tであった。次世代のプリウス、ホンダ、シボレー、日産は全てリチウム電池を採用する予定であり、今後はリチウム電池が主流となるため、ランタンの需要は増加しないと予想する。

 (2) セリウム
 中国の供給量は年間39,900 tで主な需要は研磨剤と自動車用触媒である。新規供給が36,400 tあるので、いずれ供給過剰となる。Molycorpは今後セリウム需要が急増すると言うが、予想ではあまり増えない。

 (3) PrとNd(磁石)
 中国からの供給は年間19,700 t、新規鉱山からの供給が年間13,900 tある。自動車は、需要増に寄与するが風力発電は寄与しないので供給過剰である。プリウスには1.2 kgの磁石(370 gのNdとPr)を使用するが、プリウスの値段は30,000 US$なので、レアアース1 kgあたりの収入は81,000 US$となる。一方、3 MW風力発電は2 tの磁石(620 kgのレアアース)を使用するが、風力発電の値段は4.5百万US$なので、レアアース1 kgあたりの収入は7,300 US$にしかならない。つまり、単位重量当たりの収入が少ない風力発電では、レアアース(ジジム価格)の価格が上がると製造コストが上昇して、収益を圧迫すると予想する。

写真8 杭州市内で見かけた「混合動力客車」(ハイブリッド)と書かれたバス
写真8 杭州市内で見かけた「混合動力客車」(ハイブリッド)と書かれたバス

 (4) DyとTb
 中国からの供給は年間1,300 tだが、新規鉱山供給が177 tしかない。高温で保磁できる磁石の需要は増加している。その需要は製造プロセスや冷却システムの導入によって減少できるが、プリウス1台には650 gの磁石が使用されているので、Dy10%を含有しても65 g必要となる見込みである。

 (5)需給予測
 ランタン、セリウムの価格が60~80 US$/kgを維持するのは現実的ではなく、いずれ4 US$台まで下落する。一方、Nd/Pr/Smは高品質な磁石の需要があるため、供給不足となり高値を維持する。また、Dy/Tb/Euの価格も上昇するが、Euはある程度供給されると予想する。

7. 価格高騰を受ける蛍光体産業の動向

 浙江省照明電器協会 理事長 翁茂源(Weng Maoyuan)

 価格高騰を受けて省エネを進める蛍光体産業の動向について説明があった。2011年より始まる第12次五カ年計画で予定されているLED照明生産額は表3の通りである。この計画によるとLED照明の生産額は毎年50%以上増加し、従来品の生産の伸びは低下していくことになる。

表3. 第12次五カ年計画の照明生産額

単位:生産額(億元)、対前年比(%)、シェア(%)

区分 生産額
従来品 LED照明 照明総額
2011年 生産額 505 35 540
対前年比 13 50 15
シェア 93.5 6.5
2012年 生産額 565 56 621
対前年比 11.8 60 15
シェア 91 9
2013年 生産額 619 95 714
対前年比 9.5 70 15
シェア 86 14
2014年 生産額 629 171 800
対前年比 1.6 80 12
シェア 78 22
2015年 生産額 572 324 896
対前年比 -9.1 90 12
シェア 64 36

*従来品には省エネ蛍光灯を含む

まとめ

 2011年5月10日の国務院のレアアースに関するコメント発表を受けて、5月18日商務省がレアアースを含む鉄合金を輸出枠に入れることを発表するなど、政府の関与とコントロールが強まり、今後もその傾向は継続すると考えられる。このため、中国国内でレアアースを原料に製品を製造しているメーカーは、付加価値を上げることが必要で、技術を日本等に求める傾向も強まっている。このことは、第12次5ヶ年計画でも掲げられているように中国政府の狙いでもある。
 一方、中国以外のレアアース資源開発に伴い、元素毎に見ると将来的に需要供給のアンバランスが生じる元素があり、軽希土類は供給が多くなる一方で省資源やリサイクル、代替開発が急速に進み、将来的には供給過剰になり価格も下がるものとの予測も見られる。しかし、重希土類については、その供給が増えなければいずれ供給不足に陥るとの予測があった。
 レアアースは多くの製品に使用されるのでその需給動向は複雑ではあるが、今後は中国の政策動向を注視しつつ、元素毎の需給状況を把握していくことが適切なレアアース資源確保に寄与すると考える。

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